【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
開会式前、詠深と梁幽館の吉川さんという珠姫の新旧相方のやり取りを見て、もしかしたら珠姫にめんどくさい女を集める何かがあるのかもしれないと思ったことは、もうとうに忘却の彼方だ。なぜなら、私の記憶に開会式というものは無いからだ。否、もう忘れたい。
手足が同時に出てたとか、黒歴史にも程がある。
さて、初戦を飾るのはバリバリホームの越谷市民球場。ゴミ処理場の特徴的な煙突兼展望台がよく見える。近隣自治体を含む広い範囲の燃えるゴミを燃やしているのだとか。
さて、肝心の影森戦のスターティングメンバーを発表しよう。
1 希(一)
2 菫(二)
3 光先輩(左)
4 主将(中)
5 理沙先輩(投)
6 白菊(右)
7 珠姫(捕)
8 稜(遊)
9 詠深(三)
私は今回はベンチスタート。影森のプレーを私たち川口姉妹で完全に丸裸にする算段だ。
5番の理沙先輩だが、希、私、光先輩、主将の化け物勢を除けば、現行で2番目に良いバッターだ。打率やOPSや塁打数などでは低い数値となってはいるが、打点では部内3位で、パワーのある打撃で犠飛なども狙いに入る比較的得点力のある打者。どちらかと言うと白菊に近い選手で、ホームランも視野に入る。5番6番のホームランバッターで打てなかった場合は、7番の打撃好調な珠姫が控えている。そんな布陣となっている。
7分間のノックでは、エラー率の比較的高い稜と白菊の動きも悪くない。詠深もサードの動きもだいぶ慣れてきた様子。公式戦ということもあり、動きが鈍るかと思ってたから、これはありがたい算段。
ブルペンでは私が座って、理沙先輩が投げ込む。きちんとストライクゾーンに投げ込まれていて良い。カーブの制球が少し危ういが、許容範囲内。珠姫なら何とかできる…多分。
ちなみに、理沙先輩が先発なのは原作同様影森の戦術を警戒してのこと。詠深はテンポが遅い方なので、ナイス判断と言える。
そして、後攻の影森のノック。
「静かなノックだな…」
「声出さないチームなんてあるのね」
「ま!こっちは声出して圧かけていこうぜ!」
「その通りだ」
主将や理沙先輩からしても初めての公式戦に出場するのだ。いつも通りの会話に胸を撫で下ろす。主将は良くも悪くもチームの屋台骨。2年生であることと場数が少ないことも踏まえれば折れてしまう可能性も無きにしも非ず。…まぁ私がどうこうできることではないんだけど。
影森程度なら守備はともかくとして、打線はハマりさえすれば大量得点を狙える布陣。いざ行かん。
……緊張しているのかも、私も。いくら前世の記憶があったとしても、結局は10年以上前のこと。心臓がいつもよりも早いのは興奮か緊張か…
「珠姫、理沙先輩だけど、直球は入ってる。カーブはちょっと危ないわ」
「分かった。理沙先輩は重い球が持ち味だからね。ストレートで打たせていくリードだね」
『1回の表、影森高校の攻撃は、1番
整列を終えてゲームが始まる。
スリークォーターで放たれた理沙先輩の直球はインハイ、ライトとセカンドの間に飛ぶ。
「ライト任せたわよ、前!」
「ハイッ!」
守備の甘い白菊を狙ったのか、はたまたたまたまか…白菊の守備範囲ギリギリに落下してきた球は僅かに間に合わずグラブで弾いてしまう。
「あ〜お嬢〜!!」
白菊の道場の方々が落胆する。とはいえ幸いにも前に落ちたので、フォローに向かっていた菫が捕球し、一塁から走りかけていた打者へ投げる動作をとり二塁走塁を防ぐ。
エラーで、ノーアウト一塁。
「白菊ちゃんナイス!後ろ逸らすよりマシやけん、気にせんとや」
「はい…」
2番打者はバントの構え。
投球フォームに入った瞬間に一塁ランナーがスタート。
「走った!」
サッとバントのか前から打撃フォームに戻し、スイング。そう、バスターエンドランだ。
「オーライ!」
「ボールひとつ!」
「オッケー!」
ショートへのボテボテだったが、一塁ランナーは二塁へ。打者は一塁アウト。進塁打となる。
3番打者へは1球目カーブ。制球も曲がりも甘くセンター前へ落とされる。主将のレーザービームも、間に合わず二塁ランナー生還。打者は一塁へ。
とはいえ、白菊のエラー走者なので、まだ自責点はゼロだ。
「理沙先輩、たまたまです。あんな攻撃いつまでも続きません」
「練習試合で打たれ慣れてるから大丈夫よ」
「打たせていきましょう!まだ自責点ゼロですよ!」
「すいません〜」
稜の自責点発言に突き刺さる白菊。
ちなみに、練習試合7試合での理沙先輩の防御率は7.00。1イニングに1点は取られている計算となる。
4番打者はサードの詠深がフライをしっかりと掴みツーアウト。
「タマちゃんの言った通りでしたね!打たせてればいつかアウト取れますよ!」
「ええ」
続いて5番打者はレフト線へ。
「いったわよ!サード!」
打球は飛び上がった詠深のグラブの上を通り過ぎる。
だが、レフトは原作と違い、光先輩。投手もできる彼女のレーザービームは主将並だ。
「バックホーム!」
光先輩のレーザービームを珠姫がしっかりと捕球し、本塁タッチアウト。スリーアウト。
「光ちゃん!」
「ナイス光先輩!」
「さすがです!」
「あ、ありがとう」
理沙先輩、稜、詠深に囲まれながらベンチに戻る光先輩。どこかホッとした様子。やはり公式戦初試合で初登板は緊張があった様子。
「1点差は想定内だよ!早めに追いつこう!」
「おおっ!」
ベンチに集まったみんなに、芳乃が声をかける。
「希、1打席見にいってくれる?」
「任せて!」
希が打席に向かう。
「お願いしま…」
構えた途端に投げ込まれる。
「す」
希はそのテンポについていけず、あっという間にノーボールツーストライク。
慌てて構えを解いて一呼吸入れる。そして、もう一度構えた。
コン!という打撃音。詰まった当たりはサードゴロとなり、希は一塁アウト。
クイック…いや、スーパークイックと芳乃が名付けたのでそちらに倣うとして、このスーパークイックとあの高速プレーがあれば確かに椿峰にくらいつけるだろう。私と珠姫なら再現出来るか…梁幽館戦では難しいけど熊谷実業には使えるかも。……打たれるビジョンしか浮かばないわ。
「ごめん…」
「ドンマイ!どうだった?」
戻ってきた希に芳乃が聞き込みを始める。
「多分全部直球…大した球やないけど、なんか気持ち悪かった…」
2番の菫もセカンドゴロ。ツーアウト。
「
「
だが、3番の光先輩も大きな当たりではあったがレフトフライに倒れ、チェンジ。
そもそも稜のボークの語は正しくない。走者がいないため正確には反則投球であり、クィックピッチはボール扱いとなる。まぁギリギリOKなのだろう。
「初回三者凡退って初めてだな…」
「これが公式戦ということだな。しっかり守るぞ!」
初回三者凡退がなかったのは化け物勢のせいです。特に希のせいです。いや、おかげと言うべきだよね。
「あの!希さん!中山さんの球速ですが、マシンの最高設定が100%とすればどれくらいでしょう?」
「80くらいやない?」
「80ですか…ありがとうございます!」
白菊は希に聞きたいことを聞き終えるとすぐ守備位置へ向かっていった。
「…さてと。徹底して高速な試合作りをしてくるチームに対して間を取りつつリズムを崩していくか…」
「あえて被せていくかよね。椿峰や柳大川越でも崩せなかったその速度を私たちが崩せるとは思えないわ。被せていくしかないわね」
私と芳乃と藤井先生は守備について、珠姫が理沙先輩にボールを手渡しているのをみやりつつ作戦会議をする。
「確かに、高校野球の審判はテキパキしたのが好きですからね…時間を使うと相対的にダラダラしているように映るかもしれません」
「ですね。ただ…」
6番打者の畠さんをセカンドゴロに打ちとったのを見つつ言葉を探す。
「審判の方がこの高速プレーに飲み込まれすぎてなければいいんですが……」
続く2人もセンターフライ、レフトフライに倒れる。
駆け引きもなにもないこんな野球、面白いのかな…?
「おっしゃ!三者凡退!」
「ナイピ」
「6球で終わっちゃった」
「省エネ省エネ」
2回の裏。
打者は4番の主将。
2球見逃して、3球目がアウトコースに逸れたのを見てさらに見逃した…が、恐らく本塁上よりも外側だったもののストライクを取られてしまい、見逃し三振。
「広い…球審の方も速い展開につられているのでしょうか……」
「影森の打者は必ず振ってくるコースですからね…」
「1度とったからには今日はずっとストライクと考えた方がいいわね」
とある審判員の言を借りるとするならば、審判員が「そこは打てるだろう、打てよ」とジャッジした場合はストライク・コールなのだ。
5番の理沙先輩は引っ張り方向に強い当たりが出て
続く6番の白菊。
白菊は外野の頭を飛び越して
あえて解説するとするならば、白菊は距離の間合いではなく時間の間合いで合わせた…ということなのだが、こんなん再現性ないわ。
理沙先輩と白菊が本塁を踏み、逆転ツーランホームランとなった。
ちょっと短いけど、この辺で区切っておきます。
アンケの球種は上位2つを採用します。