【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

12 / 65
第11話 野球とは…

 

 

リンダ・L・グリフィンらの戦術課題に基づく分類法によると、球技はターゲット型ゲーム、ネット・壁型ゲーム、侵入型ゲーム(ゴール・ポール型ゲーム)、守備・走塁型ゲーム(投・打球型ゲーム)に分類されるらしい。野球は言うまでもなく最後の守備・走塁型ゲーム(投・打球型ゲーム)に分類される。

いずれにせよ球技は、G・ハーゲドルンが提唱しているドイツ語の球技を表す"Sport Spiel"の概念であるSport(スポーツ)Spiel(遊戯)を一つにした別の新たな上位概念…つまり他者との遊戯という側面を持つスポーツだ。だからこそ……

 

 

 

2回の裏、白菊の本塁打(ホームラン)で逆転後、7番8番の珠姫と稜が打ち取られて、この回を終える。スコアは1-2で新越谷リード。

 

3回は2者走者(ランナー)を出すが、ダブルプレーも含めて4人で抑えた。

裏の攻撃では詠深でワンアウト。希、菫のヒットと、光先輩のライトゴロで二・三塁。主将の一撃で1点を追加したものの、二塁から走塁した菫が本塁タッチアウトでスリーアウト。1-3とリードを広げる。

 

4回表、2連打を4番5番の中軸に打たれて一・三塁。6番はショートゴロで三塁走者(ランナー)は本塁タッチアウト、ワンアウト一・二塁に。7番はレフトヒット、二塁ランナーが三塁を回って本塁を狙うもタッチアウト。その間に一塁ランナーと打者が走塁してツーアウト一・三塁。8番はライトフライに倒れてスリーアウト。

裏の攻撃は理沙先輩がレフト単打で出塁するも、白菊のライトライナーで帰塁が間に合わずツーアウト走者(ランナー)なし。あれはライトの好守備(ファインプレー)で、正直理沙先輩は責められないプレーだった。珠姫がレフトフライに倒れてスリーアウト。

 

 

 

 

 

5回の表が始まるところで、冒頭の話に戻る。

 

「…自分たちの野球をするっていうのは間違ってないとは思うわよ。でも…」

「そうだね…そろそろ影森をこっちに向かせたいよね」

 

影森の打線は意外にも原作よりもよく当たり、既に理沙先輩の投球成績には7被安打が計上されている。だが、ギリギリのところで自責点は防いでいる。

 

「理沙先輩の球威も落ちてきてて打球の質も良くなってきてる…息吹ちゃん、肩できてる?」

「さっき稜に座ってもらって投げ込んだからいつでもいけるわ」

「うん、じゃあいつも通り火消しお願いね。それから―――」

「まぁそうなるわよね…分かったわ」

 

野球はチェスや将棋や囲碁などと同じように、相手プレイヤーがいなければ立ち行かない、2者のぶつかり合いのゲームだ。相手に飲まれるのは負け筋だけど、そもそも相手として見てないのは球技のゲーム性としてあまり褒められた姿勢ではない。

気がつくと、ワンアウトランナー満塁で迎えるは4番打者。監督がタイムをとって守備交代を球審に申告しに向かう。

 

理沙先輩の投球成績は、投球回4 1/3回、投球数39、被安打10、失点1、自責点0。先発投手としてはいまひとつな成績だけど、急造投手としてはまずまずの結果。これなら先発の選択肢に入れられる。

私は長くても3イニングくらいしか投げられないので、長いイニングが投げられる投手が多いのは助かる。まぁその代わり、毎日でも登板できるタイプなのだが。

 

『選手の交代およびシードの変更をお知らせします。ピッチャーの藤原さんがサード、サード武田さんに変わって川口息吹さんが入ってピッチャーへ、それぞれ代わります。5番、藤原さん、サード、背番号5。9番、川口息吹さん、ピッチャー、背番号7。以上のように代わります』

 

毎度毎度ウグイス嬢って大変な仕事だよね。どこがどう代わったとか、文章で伝えるのって結構分からないもんだもん。お客さんの半分以上は電光掲示板を見てようやく分かるんじゃないかな?

 

投球練習では理沙先輩を真似してスリークォーターで投げ込む。

数球投げた後、珠姫がボールを手渡しで渡してくれる。

 

「アレ、でいいんだよね?」

「うん。焚き付けにいこう」

 

そして、審判のプレイの声で試合を再開する。

 

右のアンダースロー(サブマリン)は影森の中山さんのコピー。4番打者は見逃しストライク。

これにはなにより捕手の返球の上手さとテンポの良さが不可欠。珠姫の捕手としての能力は折り紙付き。簡単にその条件を満たしている。

3球目は流石に振ってきたが、空振り三振。

 

続く5番打者もセカンドゴロに抑えてピンチを凌いだ(パーフェクトリリーフ)

 

「息吹ちゃん、ありがとう!」

「ナイスリリーフ!」

 

理沙先輩が後ろから抱きついてくる。私が失点した場合は3点までは理沙先輩の自責点となる。やっぱり気にはしてたみたい。

 

「練習試合防御率0.00、7試合5セーブは伊達じゃないですよ」

 

私は理沙先輩に苦笑いで笑い返す。お礼はそのおっぱ〇でいいですよ。わしわしさせてください。ぱふぱふでも可。

ちなみに私が着替えとかシャワーとかで見た中で、理沙先輩、白菊、珠姫がこの中では大きい。珠姫は小柄な分大きく見えるのかも。

 

「ほんとに、頼もしいわ」

 

 

5回の裏。稜は粘ったものの、ファーストライナーでワンアウト。

 

詠深と交代した私は9番。影森サイドの注意を引きつけるためにカウント0-2から12球をカット。そして、苛立ったのかセットを解いてワインドアップで投げ込まれた球は普通のストライクゾーンのボール1つ分外。私はさもボールだよね?という顔でスルー。原作で稜がやったやつのさらにウザイバージョンの出来上がりだ。その後、取るようになったボールを引き出して四球。

 

さらに希のライト前ヒットで一・三塁。

2番の菫はライトフライに倒れるが、ちょっと近いこともありタッチアップはこらえる。

3番の光先輩の一振で生還。なおもランナー一・三塁。

 

こんな状況で打点と言えばな主将が打たないわけがない。4番の主将はレフトツーベースを浴びせて、ランナー二・三塁。

5番の理沙先輩も左中間へのヒットでさらに2点追加。ランナー一塁。

 

白菊は深い当たりであったが、ライトがダイビングキャッチでアウト、スリーアウト。

この回4点を追加した。

 

 

6回の表、レフトに痛烈なスリーベースヒットを打たれたものの、影森コピー投法で4人できっちり抑える。

 

そして裏の攻撃。

 

「珠姫ちゃん!打てー!」

「キてるよ!」

 

こちらを見始めている影森の守備は綻び始める。球威が落ちて私のコピー以下になっていることもあるけど、テンポも遅く、ギクシャクし始めている。が、それでも…

チッ!と掠った球がセカンドゴロになり、アウト。ワンアウトノーラン。

 

「稜ちゃん!よく見て!」

「打撃練習思い出しなさい!稜!」

 

私の投球練習…影森コピー投法の練習を兼ねて本番さながらの守備で何度も打撃練習をした。だからこそ、テンポが遅くなってストライクゾーンに入ってくる球なら…カキン!

初球振っていった稜の打球はレフト前へ。ワンアウトランナー一塁。

 

 

続く私は、左打席に立つ。が、気持ちの先走ったスライダーでデッドボール。

 

「うぅ!」

「息吹ちゃん!」

「いっつ…大丈夫、故障はしてないわよ。芳乃が鍛えた柔らかい筋肉だもの」

 

芳乃がコールドスプレーなどの救急セットをもって近づいてきたので、そう言って追い返す。流石に硬球なので痛いことは痛いが、当たり所はお尻の下の方で、筋肉に当たっていたため骨折等の怪我はしていない。

 

プロテクターを芳乃に渡して歩き出す。投手の中山さんが帽子を取って謝罪してくるのに片手で応える。一塁を踏む時にファーストの小毬さんにも帽子を取って謝罪された。

押し出しで一・二塁。

 

続く1番の希。レフトヒットで、二塁走者(ランナー)の稜は生還。私は二塁へ。点差コールドでサヨナラタイムリーとなった。1-8で新越谷の勝利だ。

 

「稜!ナイス走塁よ!」

「息吹もナイスリリーフだったぜ!」

「2人とも良かったばい!」

 

稜の走塁技術は主将と私に次いで上手い。正直一点を争う試合なら代走に出してもいいくらい。希も私と稜の背中を叩いて労ってくれる。

…それにしても、この世界で初めての公式戦……楽しかったな……

 

 

    1 2 3 4 5 6 7 計

影森  1 0 0 0 0 0   1

新越谷 0 2 1 0 4 1x   8

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

(以下、おまけ程度にご覧下さい)

 

 

 

 

☆No side☆

 

梁幽館のブリーフィング。戦略担当マネージャーの高橋友理を中心に情報を共有していた。

 

「次の3回戦の相手は新越谷高校です。かつては全国レベルの強豪でありましたが、例の不祥事により今春まで活動自粛。今は1年生ばかりの新チームですし、先日の試合以外はほぼノーデータですが、停部明けは主に県内外のベスト8~32級と活発に練習試合をしていて、8戦6勝1敗1引き分けという戦績を残しています。油断はできないかと」

「その通りだ」

 

友理の概説に、主将でエースで4番で通算50本以上の中田奈緒は追随する。

 

「最初の難関…宗陣は本来ベスト16以上で当たる相手だ。それを突破できたことでしばらく楽な相手が続くと気が緩んでいることだろう」

 

中田の言い分に、ギクリと反応するレギュラー陣。

 

「それは必ずしも悪いことではない。格下と思えるのは、激しい練習に耐え、強者の自覚を持っているからだ。ただ、野球をナメるな。何があるか分からん。自信を持っていつも通り勝つぞ!」

「おおっ!」

 

三々五々解散して、自主練に入る部員たち。レギュラー陣は友理を中心に集まる。

 

「映像見ますか?初戦にありがちな試合ですけど」

「みるみる〜」

 

事前情報が少しでもあるのと、全くないのは全く違う。

数倍速で見ていく中で、ただ野球観戦をしているかのような歓声をあげながらも、それぞれが分析していく。

 

「岡田と大村…打線ではこの2人は要注意だな」

 

希と理沙も塁打数では怜と白菊に匹敵するが、打撃センスがあるアベレージヒッターよりも、一撃の重いバッターを警戒するのが良い。塁に出られたとしても帰られなければ良いのだから。

 

「おーい、加藤。萩島で岡田と一緒だったんだろ」

 

レギュラー陣の1人が萩島ガールズで怜とチームメイトだった部員を呼ぶ。

 

「怜…懐かしいです。体も大きくなって、上手くなってますよ。停部してたのに頑張ったんでしょうねぇ」

 

さらに試合映像を進めていく。

 

「アンダーの子かわいい」

「初心者らしいよ」

「これで!?才能ってやつ?」

 

レギュラー陣の言に、珠姫の元相方の吉川は反応する。

 

「初心者?武田さん(エース)は投げてないんですか?」

「5番と7番の継投だよ」

 

それを聞いて、吉川は何故か腕を組んで訳知り顔で口を開く。

 

「初戦…勝ちたいだろうに、温存しやがったな」

「隠したというのが正しいかもね。どんなピッチャーか全く分からないし」

「さすが珠姫のチームだな、楽しみだ!ま、こっちも私を温存してたし五分だろ」

「アンタはただの2番手よ」

 

そこに、友理が口を挟む。

 

「温存…もあるかもしれませんが、実力もありますね。少なくとも急造だろう5番の投手の球威はそこそこのものですし、7番に至っては練習試合を取材した週刊ペナントが抑えとして紹介しているほどですから…本当に初心者なんですかね…」

 

友理の言い分に、中田は新越谷が一筋縄ではいかないと気を引き締めるのであった。

 

 

 

 




なぜ梁幽館を描いたかって?このシーン好きなんです。
野球をナメるな!ってカッコよすぎです〜。惚れてまうやろ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。