【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第16話 コピーからフュージョンへ

トスバッティングを庭で夜やるのはさすがに近所迷惑になるので、そうそうに切りあげることとなった。ダウンをして、練習着を脱いで洗濯機に放り込む。

 

「うーん、時間も時間だし…夜ご飯食べる時間も考えたら、2人ずつでお風呂でもいいかな?」

「あ、えっと…組み合わせはどうするん?」

「うーん、お泊まり会の定番くじ引きだよ!」

 

芳乃がドンっ!と箱を置く。あ、これって…

 

「抽選会の箱を真似て作った奴ね。確か中身は番号振ったピンポン玉だったかしら?」

「そうだよ!1~4までのボールを入れてあるから、奇数は先、偶数は後って感じでどうかな?」

「私はそれでいいよ」

「う…私も!」

 

希がソワソワしている…!?

 

「希、トイレならあっちよ」

「わざとかいな!?」

 

まぁ予想はつくけど…やっぱりよしのぞかぁ……目の前で妹の恋路を見るのはなんかなぁ……弄りたくなるわよね?

 

「じゃあ希ちゃんから!お客さんはシードだよ〜」

「シードって…」

 

番号引くだけなのにシードもなにもないだろうに。

 

「私は1番ばい」

「私は4番だね」

 

お客さん2人が上手く分かれた。

 

「じゃあ私先に引くわね……2番よ」

「ってことは、私が3番…希ちゃんと先だね」

 

アワアワしてる希。そっと耳元に囁いてみる。

 

「……裸の付き合い?」

「っ!?」

「大丈夫?希ちゃん」

 

何故か希は咳き込む。芳乃が背中をさする。

 

「だ、大丈夫…」

「じゃあお風呂行こっか」

 

ピシッと固まった希を芳乃が引っ張っていく。

 

「ごゆっくり〜…光先輩、部屋着でも着ます?制服だとゆっくり出来ないですよね」

「ううん、もう少しでお風呂だから…その後着替えた方が洗濯物少なくて済むよ」

 

ちなみにうちはガス乾燥機がある。だからこそ今日洗ったアンダーシャツや練習着を明日には希と光先輩には返せるのだ。だからあまり洗濯物を減らすという考え方を少し忘れていた様だ。

 

「それもそうですね…」

 

私と光先輩の間でなんとも言えない気まずい沈黙が流れる。

私たちは野球でしかお互いを知らなかった。原作でもほとんどのキャラの趣味なんて描写されていなかった……はず。さすがに私も細かくはもう覚えてないけど。せいぜいが朝倉さんの釣りとか、菫の甘味好きとか…それくらいだったはず。

 

「光先輩って普段何してるんですか?」

「えっと……バイトかな」

「そういえばバイト先で軟式チームに入ってたとか」

「うん。でもやっぱり野球は硬球の方が楽しいかな…」

「何が違うんです?」

「硬球の方が遠くまで飛ぶんだよ。逆に軟式はゴロ打って当たり前ってところがあったから…」

「へぇ…」

 

硬式しか知らなかった。軟式はほとんど触ったことなかったし…

また沈黙が流れはじめる。

 

「……あのね、息吹ちゃん」

「はい?」

「その…敬語やめない?」

「え?」

「息吹ちゃんいつもの話し方でいいんだよ?私、息吹ちゃんに敬語使われてると距離感が遠い気がして…」

「でも、先輩ですし…」

「それはそうだけど…息吹ちゃんともっと仲良くしたいなって…」

 

何この生き物かわいすぎでは?顔を赤くしてモジモジしながらこんないじらしいこと言ってくるなんて…反則よね。これでムキムキマッチョじゃなければ…いや、だとしてもこの表情は私の性癖を超えて天秤を揺らしてくる…!

 

「し、仕方ないわね…」

「うんうん、そっちの方が息吹ちゃんらしいかな」

「そう?お気に召したようでなによりよ」

 

なんでこんな急に距離感近づいてきてるのかしら?……もしかして最初から?性格的に言い出せなかっただけ?もしかして。

 

さっきよりも増して気まずい…いや、なんとも言えない雰囲気の沈黙が、芳乃と希がお風呂からあがってくるまで続いたのだった。

 

 

なお、何故か希が鼻血を出していたが、逆上せたのだろうか?(確信犯)

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

結局お風呂の組み合わせで布団に入った私たち4人は、それぞれ眠れない夜を過ごした翌日。私は監督と主将に打撃フォーム改造のためのシートバッティングをお願いしていた。言わば実戦形式の打撃練習だ。

 

「確かに、うちの守備力は少し改善の余地があるからな…主将としてはその案を受け入れる価値があると思う」

「私も同感ですね。ですが…いえ、芳乃さんが監督してやっているなら大丈夫ですね」

 

恐らく監督は大会期間中にフォーム改造をすることの危険性を解こうとしたのだろうが、芳乃への信頼でそれを止めた。

 

 

 

「では、ワンアウト一三塁!」

 

その日のシートノックをシートバッティングに替えた。

芳乃と監督がランナーを再現する。状況を監督が声を張って周知する。

 

右打席に立った私はスクエアスタンスに構える。バットは金属バット。

 

初球、アウトローに入ってきたツーシームを引っ掛けてサードへ。

私は走らないが、監督は走り出す。三塁の芳乃も走らない。打者は走らないことにしているのだ。

 

セカンドセーフ。満塁だ。

 

「ワンアウト満塁!」

「息吹が内野安打って珍しいな」

「アンタと違ってね」

「うっせー」

 

二遊間が気の抜けたコントをしている。

次の打席、私はオープンスタンスに切り替える。

スイングはダウンスイングをイメージ…ダウンスイングでボールを上に飛ばすのは難しい…が、それを出来てこそ頼れる打者となりうるのだ。

 

2球見送って3球目のあの球をレフト線へ。レフトに入っていた光先輩は間に合わず。三塁芳乃はホームイン。一塁に戻っていた監督は三塁へ。ツーベースヒット。

 

引っ張り方向でも流し方向でもいいけど、とりあえずセンター方向より左右の方がフェンスまでの距離が短い。

 

「ワンアウト一三塁!2失点ですよ!気合い入れてください!」

 

3打席目。ライトへ飛ばしたフライは白菊が抑える…と同時に監督スタート。三塁ランナーホームイン。犠牲フライで3失点。

 

「ツーアウト一塁!」

 

4打席目。遅いストレートが低めに入ってきたが、これを完璧なスイングでレフト線に打ち返す。フェンスの中ほどに当たりホームランが記録されるけど、本来ならフェンス直撃のスリーベースと言った具合か。

 

 

この日、フェンスの中ほどより上に当たる当たりは出なかった。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

真似(コピー)とは違って、創造(オリジナル)というのは難しいものだ。なんでみんなは出来るんだろうね。これが才能の差と言うやつかしら?

 

「お疲れ様、息吹ちゃん」

「光先輩、お疲れ様」

「息吹ちゃん、先輩禁止」

「そ、そこも?」

「うん、もちろんだよ」

「ええっと…光…さん?」

 

光先輩はぷいっと顔を背ける。かわいい。こんなキャラじゃなかったよね?どうしたんだろう?

なんにせよさんはダメらしい。

 

「ええっと…光ちゃん?」

「はいっ」

 

満面の笑みになる光先輩…いや、光ちゃん?なんか違和感ありまくりだけど…

 

「お、お熱いねぇ!」

「アンタは黙ってなさい」

 

部室に入ってきた稜が私と光ちゃんを茶化してくるが、続けてきた菫が首根っこ掴んで黙らせる。でも、菫ちゃんこっちを見てニヤニヤしてる時点で同類なんだよねぇ。あの2人もなんだかんだで仲良いよね。

 

「あの、この後ちょっと寄り道していかない?」

「でも光せん…ちゃんの最寄り駅ちょっと遠いんじゃない?」

「んー、明日はまだ試合じゃないし大丈夫だよ。その代わり明日もう一回お泊まりしてもいい?」

「え…わ、分かったわ、布団は用意しておくわよ」

「一緒でいいのに…」

「何か言ったかしら?」

「なんでもないよ!」

 

まぁとりあえず、どこか寄り道というのは妥当な気分転換ではある。

 

「どこに行きますか?」

「レイクタウンでどうかな?」

「じゃああのチョコのお店はどう?美味しいらしいけど、行ったことなくて…まぁ近すぎて行かなかったというのもあるけど」

「あそこね、そこそこ美味しかったわよ。安定のブランド力ね」

「菫も邪魔してるじゃん」

「う、うっさいわね」

 

やっぱり二遊間コンビは面白いなぁ…

 

「良かったら菫ちゃんと稜ちゃんもどう?」

「えー、私はパスー。甘いもの別に今は要らないかなー」

「私もパスね。短期間で2回目行くほどのお店ではないわ。今日は家でプリン作ってあるからそれも待ってるし…」

「菫のプリンなら食べたいなー」

 

菫…その言い方はこれから行こうとしてる人に対してどうなのよ。稜の方は意味深ではないよね?ね?

 

うーむ、CPは今どうなってるの?

とりあえず王道の詠深×珠姫でしょ?

次に王道の希×芳乃。

二遊間コンビの菫×稜もかな…?

主将と理沙先輩ってどうなんだろ…

 

それくらい?まぁ順不同で、どっちがネコでどっちがタチとかは知らないけど。そもそも後者2組はどんな関係か知らないし…

 

着替え終わった私と光ちゃんは、おつかれ、お先に失礼と声をかけてからレイクタウンへつま先を向けて歩き出した。

 

「光ちゃんはいつも甘いもの食べるの?」

「ううん、ほとんど食べないかな。プロテインくらいじゃないかな」

「プロテインは甘味に含まれるのか…究極の至上命題?」

 

いわゆる「バナナはおやつに含まれますか?」というのと同じ分類だ。

 

イメージの問題だけど、バナナはそもそも木になっているから果実だ。果実はおやつではなくデザート…つまり食事の一部という扱いだと思うのだ。つまりおやつではない。

さて、プロテインはどうか。プロテインは現在ジュースのように飲めるように改良されているらしい。ということは、プロテインはジュースの括りだ。ジュースとは甘いもの。だが、ジュースは甘いが飲み物というグループ。食べる物である括りのスイーツではない。よって私はプロテインは甘味には含まないと結論づけよう。

 

「あ、ここ…」

「結構混んでるね…」

「仕方ないわね、テイクアウトして外で食べる方が良さそうね」

「うん」

 

レイクタウンから出た私たちは詠深と珠姫の話してた池のほとりで食べることにした。

 

レイクタウンって名前だけど、実際には(lake)じゃなくて(pond)なのだが。調整池と言うやつだ。正式名称は大相模調整池。2015年の台風で越谷市各地が冠水した中、120万立方メートル(東京ドームの容積1個分)もの大容量をもって周辺地域及び下流地域の冠水被害を軽減させた。

 

芝生の上に座って、チョコスイーツをつつく。

 

347億円の事業費のかかった調整池を見ながら無心にスイーツをぱくつく。

 

なんか考えてることが…風情ないよねぇ…

 

「美味しい…けど、これにこの値段?」

「甘いものって高いわよね…」

 

なお、光ちゃんはやっぱりプロテインの方が良いらしかった。それがその身体の秘密なんだね。

 

 

 

 

 




連日投稿!

お気に入り、評価、ありがとうございます!感想もください!(欲しがり)
しかも、球詠原作のSS、15件中お気に入り数最多(2020/11/20、17:00現在)を記録しました!嬉しい限りですね!(井の中の蛙ですが…)今後もよろしくお願いします。


週末は投稿できるか分かりませんが、ご了承ください

アンケについて、作り直しました!今まで投票してくださった方ごめんなさい!
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