【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第17話 馬宮戦

打撃フォーム改造を開始してから数日。その成果を試す…と言ったらあれだけど、4回戦が始まろうとしていた。相手は馬宮高校。取り立てて強いチームではないけど、ノリと勢いはそこそこ。

球場は梁幽館戦が行われた埼玉県営大宮公園野球場と徒歩で移動出来る距離感であるさいたま市営大宮球場。

 

本日のラインナップ。

1 希(一)

2 菫(二)

3 私(左)

4 主将(中)

5 光ちゃん(投)

6 理沙先輩(三)

7 白菊(右)

8 珠姫(捕)

9 稜(遊)

 

久しぶりに私はレフトに。背番号7のはずなのに大会ではこれが初レフトなのよね…

 

久々の外野に守備に入ってプレイが始まる。

 

1回の表、馬宮の攻撃は1番山崎さん。珠姫じゃないよ?

 

光ちゃんの投球はコントロールがあまり良くない。コースを狙う球はボールが比較的よく出るため、光ちゃんは球数が増え気味。詠深の球数制限の件で話したけど、100球の制限は他の投手陣にも適用することになっている。

だけど、光ちゃんの良さは配球による駆け引きが比較的やりやすいことだと思う。ただでさえ変化球が多いから、絶対の決め球に頼る投手なら目がなれる2巡目以降は当たりやすいけど、変化球の数で圧倒するタイプはアベレージに駆け引きでうちとる。巡目はあまり関係ない。

 

見逃し、空振り、ボール、ボール、空振りで三振、ワンアウト。

 

実戦レベルにある変化球は5つ。チェンジアップ、スライダー、シュート、スプリット、シンカー。さらにストレートは回転が良くポップアップする上方向への変化球ともいえるもの。これはそうそう打たれない。

 

 

2番は正田さん。

見逃してからライト前ヒット。これは単純に駆け引きに負けたパターンね。2番の上位打線だけど、大した打力はなさそう。

 

 

3番の西田さん…馬宮の主将。

シュートで詰まってピッチャーゴロに。1-4-3のダブルプレー。

スリーアウト。

 

 

1回の裏。

1番は希。

 

「打て中村!」

「梁幽館から奪ったスリーベース期待してるぞ!」

 

梁幽館戦ほどではないけど、観客がそこそこ入っている。そして、野次が飛ぶ。

希は初球レフト線に捉えて一塁へ。ノーアウト一塁。

 

 

2番の菫は送りバント成功でワンアウト二塁。

 

 

3番の私。打撃フォーム改造の成果を見せよう!

 

初球見逃してストライク。

次も見逃してストライク。ストライクツー。

3球目は打つ気で振ったけど、少しズレたみたいね。キャッチャーと球審の頭を超えてネットにあたる。ファール。カウント0-2。

 

「いぶきー!ホームラン!」

「うてー!」

 

クラスメイトが応援席に来ていた。これは希望に応えないとね。

4球目、レフトを抜きかけた打球となったが、レフトの横っ飛びファインプレーで二塁走塁は断念。ワンアウト一・二塁。

さすがに初っ端ホームランはいかなかったみたいね。まだ少し不安定な新しいフォーム。ボールのど真ん中を叩いちゃったみたい。

 

 

続く4番の主将もライトヒット。若干詰まったけど、セカンドが梁幽館ほどの守備力はなかったのが幸いだった。これでワンアウト満塁。

 

 

さらに5番光ちゃんがレフトへ大きなフライを犠牲フライとして、希が生還する。私も三塁へ進出する。ツーアウト一・三塁。

 

 

6番の理沙先輩はよくボールを見極めてレフトへの単打。私が生還してツーアウト一・三塁。主将の瞬足のおかげで三塁に進めて、得点チャンスが維持される。

 

だが、7番の白菊はライトに深いフライが出てスリーアウトとなり、2者残塁となった。

 

単打と犠牲プレーでの得点となり、チームの基礎力の確認が出来た。

 

「ないばっち」

「光ちゃんもナイス犠飛よ」

 

光ちゃんと理沙先輩が声を掛け合いながら守備に入っていく。

 

「先輩方調子いいっすね!」

「後輩に負けてられないからな」

「希と息吹はめちゃ打ちますもんね〜」

 

稜と主将も珍しい組み合わせで話しながら守備に向かう。

 

私はチラリと珠姫に視線を向けてからレフトの守備位置へ走り出した。

 

 

 

2回表、馬宮の攻撃は、三振、左飛、二ゴロでまたも凡退。光ちゃんの変化球の多さと珠姫の強気なリードは相性が良い。……いや、珠姫が万能過ぎるだけかな。

 

 

 

2回裏、新越谷の攻撃は8番珠姫から。

珠姫は下位打線でプレッシャーが減ったのか、逆に活き活きして安打を放つ。ノーアウト一塁。

 

 

続く9番稜はライト前にヒット性の当たりを出したが、打球が早すぎてライトのグラブに収まるのが早く稜の快速をもってしてもアウトとなった。珠姫は何とか二塁へ進塁し、進塁打となる。

 

 

ワンアウト二塁で回ってきた希。

初球を綺麗に当てたがサードの好守備でレフトヒットのはずがサードライナーとなってしまった。たたらを踏んで珠姫は二塁へ帰塁する。セーフ。ツーアウト二塁。

 

 

菫はレフト前に上手く落として一・三塁。

 

 

そして回ってくる私の打席。

ベンチでヘルメットを手に私を見つめる瞳。ここで打てれば試合を決定する一撃となる……

私は金属バットをひとなでしてから打席に入る。

 

「お願いします」

 

スクエアスタンスに構えて、初球は球筋を見る。

ピクリとも動かない私を見てか、馬宮バッテリーは1球仰け反らせるようにボール球を投げる。それを避けてから3球目、落ちていくボールを見送ってボール。カウント2-1。

4球目…すっぽ抜けた球が私の顔目掛けて飛んできた。

 

「息吹ちゃん!」

 

が、咄嗟に振ったバットに当ててレフト線ギリギリにかっ飛ばした。自己防衛反応による馬鹿力と野球の経験と川口息吹という存在のセンスが合わさって出来た奇跡のようなプレーだ。普通なら避けてボールとなる球だ。

 

「行けー!」

「回れー!!!」

 

フェンスとレフト線が交わるさらに外側にこぼれていった打球。一塁を踏みつつ打球とレフトを確認。レフトは少し前めに守備位置を取っていたので、まだまだ走れる!

二塁、三塁と回る。希が三塁コーチャーにいた。

 

「息吹ちゃん、ゴー!!!」

「おっけー!」

 

私は全力で走った。部内4位の快足で走り抜ける。

バックホーム球は中継せずライトが端から遠投したようだけど……精度はお察しだよね。

 

「ノースライ!」

 

先にホームインしていた菫がだいぶ逸れたレーザービームとは言い難い遠投に、スライディングの必要が無いことを指示する。私はその指示通りにホームイン。失策や野手選択は記録されず、本塁打(ホームラン)が記録された。

試合が途切れて、投手の村井さんと、遠くて見えづらいが主将の西田さんが帽子をとって謝罪していた。私は軽く気にしないようにとジェスチャーで返す。

 

「ナイバッチ!」

「凄い走塁だったぞ!」

「息吹ちゃん、ナイスだよ!」

 

私はベンチに戻ると手荒い祝福を受けつつ、芳乃の前に出る。

 

「打撃改造手伝ってもらって、公式戦初本塁打打つぞって思ってたのにあんなフォームも何も無い反射でランニングホームラン記録しちゃった…本当は文句無しのホームランを芳乃たちにプレゼントしたかったんだけど…でも、これも私らしい初本塁打ね」

 

私が頭を掻きながらそういうと、芳乃は私に抱きついてきた。

 

「そんなことないよ!公式戦初本塁打、おめでとう!慌てなくても打撃改造の成果を今後は出てくるだろうし、高校通算100本塁打も夢じゃないよ!中田さんなんて目じゃない打者になれるよ!」

「…ありがとう、芳乃」

 

2回裏、ツーアウトノーラン。スコアは0-5で5点のリード。試合の流れは完全にこちらに引き込んだ。

 

私は光先輩に握りこぶしを向けた。私が頑張る理由の一つに光先輩に公式戦初勝利を捧げることがある。

前世の男子野球と違って、勝ち投手の権利は4投球回を投げることとなっているため、5回以降は私か詠深か理沙先輩が投げられる。今のところ全然抑えられているので完投でももちろん良い。

 

 

4番、主将はセカンドゴロでスリーアウト。

 

流れ来たと思ったんだけどね……

 

 

 

3回の表。馬宮の攻撃。

 

7番田町が凡退。

8番村野は配球を読まれたかレフト…つまり私の頭を超えていく大きな当たりで、ツーベース。ワンアウト二塁。

9番西山もライトに単打を打ち、一・三塁。

1番山崎さんはスプリットを待っていたようにセンターへ大きな当たりを放ち、センターフライ。主将が危うげなくキャッチした瞬間に三塁ランナー村野さんがスタート。主将のレーザービームは珠姫のミットに収まる時には既にホームイン。セーフ。珠姫は直ぐに二塁送球。一塁ランナーがそっとスタートしていたのだ。稜がキャッチしてタッチアウト、スリーアウト。

記録は犠飛とダブルプレー。

 

 

3回の裏、新越谷の攻撃。

 

5番光先輩から。粘ってよく見ていたものの、変化球に手を出してしまってレフトフライに倒れる。

6番理沙先輩。レフトにライナー性の当たりを出した。レフト真正面。捕球エラーで後ろに逸らし、二塁へ。

7番白菊も後に続き、セカンド強襲の強打球で一・三塁。

8番珠姫にはエンドランの指示。珠姫は下位打線に回されてはいるものの、それは捕手との兼ね合いのため。打撃成績は悪くない。確実にミートしたライト前ヒットで三塁ランナー理沙先輩を生還させる。ワンアウト一・三塁。

9番の稜はバントの期待値が良くないため強攻の指示。が、ショートゴロで6-4-3の併殺。スリーアウト。

 

 

4回の表、馬宮の攻撃。

 

稜の併殺でリズムが出てきたのか、打線が伸び始める。しかも上位打線だ。

2番正田さんはセンターヒット。

3番西田さんはセカンドゴロだけど、菫が捕球エラー…いや、強襲ヒットの記録。ノーアウト一・二塁。

 

お願い…光ちゃん……ここは堪えていこう!

 

4番村井さんはリードがハマったのか三振に抑えてワンアウト。

5番広沢さん。初球を振って5-6-4のダブルプレーとなってスリーアウト。

 

 

 

 

4回の裏、新越谷の攻撃。

 

 

「みんなお疲れ様!この回は希ちゃんからだし、点差コールドサヨナラのつもりで思いっきりいこう!」

 

1番希。

初球空振り。2球目ボールを見極めて見送る。

 

「見えてるよー!」

「スイングいいよ!」

 

3球目、右中間を抜ける当たりに、希が走る。ツーベース。

 

「ナイバッチー!」

「先頭出たよー!」

 

 

2番菫。

 

「菫ちゃん!落ち着いて打っていこう!」

 

芳乃は強攻指示。

菫はバントの構え。投球動作に入った瞬間にバットを引く。バスターだが、スルー。ボールフォア。

 

「ナイス見極め!」

 

 

3番の私。

芳乃からダブルスチールの指示が出る…が、バッテリーは今日ランニングホームランを打った私を敬遠する。捕手が立ったままだ。だが…私は知っている。前世で敬遠球をサヨナラ弾に変えたプロ野球選手がいることを。アラフィフでブランク10年以上でプロ野球選手復帰を目指すあの選手だ。

 

ボール3から4球目、油断したのか、飛び出せば打てる!

 

バッターボックスの白線を踏みしめてスイング!

カン!という音と共に打球が内野を超えて右中間に落ちた。

 

馬宮の守備陣はもちろん走者でさえ呆気に取られ、動きが止まる。

 

「走れー!」

「回れー!!!」

 

芳乃がベンチから大声で希と菫に叫ぶ。私は三塁を踏んだ。

スリーベースが記録され、希と菫は生還した。ノーアウト三塁。

 

スコアは1-9であと2点でコールドゲームだ。馬宮も絶対に守ると声を張る。

 

 

4番の主将。

2球見逃してから、外角低めの球を捉えてレフトヒットでツーベース。私は生還。

 

 

5番光ちゃんは送りバントを自分で選択して、ワンアウト三塁。

 

 

6番理沙先輩。

 

「かっ飛ばせー!」

 

理沙先輩の期待値ならホームランも視野に入る。

初球、低めに抑えるはずの直球が少し高まって、ど真ん中に入ってきた。

 

快音が鳴り響いた。理沙先輩は一塁までの半分で走る速度が軽くに変わっていた。

柵を超えて、ホームラン。私のランニングホームランとは違って文句無しのホームランだった。サヨナラツーランホームランだった。

 

悠々と本塁を踏んだ理沙先輩。1-11で4回コールド。

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

 

新越谷高校、4回戦突破…

 

 

 

 

 

 

 




日本シリーズ2戦が終わりましたね。皆さんはどちらが勝つと思いますか?

私は個人的にはソフバンですかね〜
光先輩のバッティングの元になってるギータがいますからね!

ちなみに家族は巨人ファンで、ソフバンが打った時に喜ぶどギロっと見られます……悲しい
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