【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第21話 因縁の準々決勝開幕

 

私たち新越谷高校は埼玉県ベスト8…しかも、夏季大会でだ。

夏季大会は3年生最後の大会なので、ほぼ新チームである我らが新越谷高校はかなりのビハインドがあった。それを覆してのベスト8。途中にはAシード梁幽館、Dシード熊谷実業を含む。今やダークホースとして高校野球ファンや残る他校からも注目視される存在となっていた。

 

傍から見れば、昔は強豪だったものの、ここ数年実績がなかったところに不祥事で約半年の停部。そして停部明けの最初の大会で、なおかつ1年生主体の少人数チームで、優勝候補の梁幽館と強力打線を持つ熊谷実業を打ち破ってベスト8という立ち位置まで登ってきていたのだ。

 

 

「今日は打線が伸び悩むと思うから、みんな気合い入れて守備につこうね!守備から流れをつくる試合になるよ!先発は詠深ちゃん、お願いね!」

「任せて!」

 

試合前、球場の外で円陣を組む。

 

「さぁ、ここから先は梁幽館クラスの化け物揃いだ。柳大川越も練習試合のあれが全力なわけが無い。でなければここまで勝ち残れるわけがない。気合い入れなおして行くぞ!」

「おう!」

 

主将も経験が浅い。前世でとはいえ3年最後の夏の経験がある私がどこまでフォロー出来るかが勝負だね…

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

新越谷のラインナップは以下の通り。

 

1 希(一)

2 菫(二)

3 主将(中)

4 理沙先輩(三)

5 光ちゃん(左)

6 私(遊)

7 白菊(右)

8 珠姫(捕)

9 詠深(投)

 

打撃好調な理沙先輩を4番に据えた強力クリンナップ。理沙先輩は今大会7割オーバーの打率をたたき出している上に3本塁打を放っている。現行で最も打力が優れている打者だ。

さらに足の速い主将が3番になったことで取りうる戦術の幅も広がっている。

 

そして対する柳大川越のラインナップ。

 

1 大島(中)

2 亀平(二)

3 山本(左)

4 浅井(捕)

5 石川(三)

6 平田(右)

7 森野(一)

8 阿部(遊)

9 朝倉(投)

 

2番3番の1年生は原作通り強ストレート対策か。というより多分ミート力が良いのかもしれない。私のランダム投法対策も含んでるのかも。

 

三塁側のベンチなので、芳乃は選手陣の体力温存も兼ねて一塁コーチャーに専属だ。

三塁側応援スタンドには1年生主体とはいえ吹奏楽のメンバーも来てくれている。クラスメイトたちも最前線で応援してくれている。

 

「朝倉さんはほぼ、私たちと同じ土俵で戦ってるわ。でも、大野さんは最後の夏。継投されたら点はそうそう入らないと思った方がいいわよ。これは私と芳乃が何年も高校野球を見続けてきた結論よ。夏の3年生ほど怖いものはない」

 

私はベンチ前で集まったみんなに向かってそう忠告する。

 

「だから、まずは1点、先制しよう!」

「強くなったところを見せてやろう!」

「おお!」

 

芳乃と主将の激励に、みんなで声を合わせる。

 

 

 

 

礼を済ませて、柳大川越が守備に散る。

 

 

 

「まずはチャンスメーカーのご登場ね」

「いきなりクライマックスかよ」

 

1回の表、先頭打者は希。

 

練習試合ではセンターフライに打ち取られたものの、朝倉さんから唯一打てた希。……まぁセーフティも含めれば私は安打打ってるのだけど…

監督と芳乃両方から指示は出ていない。

 

初球、直球をセンター前に運んでセンター前ヒット。ノーアウト一塁。

 

「よし!先頭打者安打!」

「さすが、アベレージヒッターね」

 

ベンチの私と三塁コーチャーの稜が大声で言葉をやり取りする。

 

希は芳乃にプロテクターを渡しつつ喜びを分かち合う。

 

 

2番の菫。

 

(バント無し…粘って球数投げさせて、様子を見ていきましょう。本来は先頭打者の役割ですが、中村さんは打ってチャンスメイクが仕事ですからね…)

(了解)

 

朝倉さんの変化球は2つが判明している。以前から使っていたスプリットと、練習試合後に完成させたカットボール。スプリットは光ちゃんので練習はしてるけど、やっぱり球速(たまあし)が違いすぎる。

 

4球目でカットボールを空振りした菫。ワンアウト一塁となる。

 

「すみません、スプリットが見られませんでした」

「新球種だけでも十分ですよ。それに、立ち上がりも悪くなさそうなことが分かりましたし…何よりここからは中軸ですから」

 

 

3番の主将。

スプリットを打たされてセカンドゴロ。一塁コーチャーの芳乃の観察眼に基づくリードとスタートの合図でなんとか進塁打となる。ツーアウト二塁。

 

 

迎える4番理沙先輩。

得点圏のチャンスに回ってきた。

 

「理沙先輩かっ飛ばせー!」

「ホームラン!」

 

だが、追い込まれてからカットボールを振らされてなんとか当てたもののサードゴロになる。スリーアウト。

 

 

「簡単には打たせてもらえなそうですね」

「でもバットには当たっていますし、基本は狙い球を絞って好球必打で良いでしょう」

「速球派の攻略法はそれがシンプルかつ効果的ですものね」

「ええ」

 

監督と私は認識のすり合わせをたわいない会話の中に行う。選手と監督と芳乃(指揮官)の間で認識が異なっている場合は悲惨なことになる。

 

「さあ!切り替えていこう!1回裏、しっかり守ろう!」

 

 

 

1回の裏。先頭打者は練習試合と同じく大島さん。

柳大川越は研究もしっかりと行ってきてるはず。練習試合の時とは事情が異なる。慎重に、変化球のサインを珠姫は出す。

 

初球ツーシーム。

 

「朝倉の後だと遅いなぁ」

「今のは変化球でしょ」

「梁幽館の時は結構凄かったぞ」

「そういやあの時の抑えの子も凄かったな…」

「今日もショートか」

 

梁幽館の時と同じく埼玉県営大宮公園野球場で試合は行われている。当然地元の高校野球ファンもその時見に来ていた人もいる。

 

2球目遅いストレートをファール。

3球目はあの球を外角低めにいい球だったもののファールにカットされる。相当対策されてるわね…

 

4球目。強ストレートは……

 

カン!カットされてファール。

 

 

え、ちょ、原作じゃあ初回はまだ空振り取れたはず…!

 

(その速いストレート、高めに浮くことが多いのは研究済みっス)

 

珠姫も、顔が引きつっている。

 

 

 

「打たせていいわよー!」

 

私は詠深と珠姫に聞こえるように声を張る。

 

5球目、ツーシームでショートゴロ。狙ったように言い出しっぺの私に打たせたわね……

 

ともかくこれでワンアウト。

 

 

2番3番も凡打に抑えて三者凡退。スリーアウトとなる。

 

 

 

2回の表。

光ちゃんが先頭打者。私はネクストサークルに入る。

 

光ちゃんは練習試合で柳大川越と戦ってない。あるいは…と思ったけど、レフトフライに倒れる。

 

 

次に私が左打席に入る。

 

「打ってー息吹ー!」

 

久保田さんよりもコントロールが正確で、キレがある変化球もある。正直久保田さんより全然朝倉さんの方が打ちづらい。中田さんも速球派だったけど、投手としては朝倉さんの方が上かも。……まぁその分中田さんや久保田さんみたいな打力は無いから帳尻が合うのかも。

 

芯の外れた音と球がショート前に転がったのが見える。間に合え…!

 

「セーフ!」

「ナイスボテボテだったね」

「まぁ…そうね。それにしても、初めてね…芯を外したのを当たる前にハッキリ分かったのは」

 

芳乃にプロテクターを渡して、一塁に戻る。

多分今のを木製バットでやったら折れてたわね。金属バットにして良かったわ。

 

 

7番白菊はライトフライ。私はタッチアップして二塁へ。

 

8番珠姫は三振でスリーアウト。

 

 

 

2回の裏、4番浅井さんから三者凡退させてこの回を終えるだが、5番6番は明らかに強ストレートを捉えていた。

 

「珠姫…」

「うん…調子はいいよ。けど、強直球(ストレート)間違いなく狙われてる」

「やっぱりね。私が強ストレートを真似できるのと同じ理由ね」

「うん、見抜かれてるね」

「最悪4回まで引っ張ってくれれば、理沙先輩と光ちゃんで1回づつ、私がきっちりセーブするわよ」

「うん、多分息吹ちゃんにはお願いすることになるから…お願いね」

「任せなさい」

 

次の試合の咲桜高校戦のためには私はなるべくアレを隠し抜きたい。だから、使えても1~2イニングだ。

 

 

 

 

 

 

3回の表。

打順は9番詠深から。

 

「よーし、自援護しちゃうぞ〜!」

「次希ちゃん出たら菫ちゃんは送りますか?」

「そうですね…」

「ちょっとは見て!?期待して!?」

 

まぁ安定のアウト献上機の詠深。良いスイングしてるんだけどなぁ…動体視力悪いのかな…でもサードとファーストでエラー練習でもほとんどないしなぁ……

 

 

ワンアウトノーランで希。

直球3球を連続で、ファールファールファール。全てゾーン内で、低めに投げられている。

 

4球目…

 

(カットボール…!息吹ちゃんもボテボテしか打てんかったやつ…!でも…飛ばすっ!)

 

真の外れたガン!という音だが、ライト線方向へ。一塁の頭を超えるフライ…落ちる…?

 

「アウト!」

 

スライディングしながらセカンドが捕球。ツーアウト。

 

 

2番菫はセーフティを狙うも失敗。あえなく三振した。

 

 

 

3回の裏、柳大川越の攻撃。

捉えられてはいるものの、未だ無安打無走者である詠深。対するは7番森野。

 

初球からコースの良い球を投げる。

あの球とツーシーム、遅いストレートで緩急こそ少ないもののだからこそ詰まってしまう配球をする珠姫。

 

サードゴロ、ファーストゴロ、レフトフライで三者凡退。

 

「凄いじゃない、ヨミ!」

「1巡目パーフェクトだな!」

 

菫と稜にもみくちゃにされる詠深。だが、次の攻撃は上位打線…しかも、あの球やツーシームはカットされる。球数が増えるのは必至だ。

 

 

 

4回の表。

打順は3番主将から。

 

主将はカットで粘りに粘るが、スプリットで三振を取られてワンアウト。

 

 

4番理沙先輩は良い当たりを左中間方向に飛ばすものの、フェンス際で捕球。センターフライにうちとられる。

 

 

5番光ちゃん、運良くストレートを左中間に放ち、本日初の得点圏走者が出る。ツーアウト二塁。

 

 

6番の私はあれを還す義務がある。何としても生還させる…

左打席に入り、カットで粘る。狙うはスプリット1本…だけど、カットボールがフェアに転がってしまってサードゴロを取られた。スリーアウト。

 

 

 

 

4回の裏、柳大川越の2巡目が始まる…!

 

 

 

 




今日はここまで!

第9~13話辺りでアンケを取っていた球種希望は圧倒的に多いジャイロボールとスプリットということで。
宜野座カーブ…知名度低いんですかね…?トップスピンのかかった真っ直ぐ縦に落ちるカーブなんですけど…


最後に、新越谷がどこまで行けるかということですが、全国行かせることにしました。
原作が秋の大会始まるまで進められないですから……
それなら全国で暴れさせてもいいですよね!
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