【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
べ、別にネタに詰まったとかじゃないんだからね!(ツンデレ)
「始まりました、高校野球中継です。実況は私、梶が。解説は元プロ野球選手の野崎さんでお送りいたします。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「さて、準々決勝ですが、ダークホース新越谷高校と、Bシード柳大川越がぶつかります。野崎さん、まずは柳大川越の特色はどうでしょうか?」
「そうですね。柳大川越は極めて投手力のある守備主体のチームです。2年生ながら速球派としては完成の域にたどり着いている朝倉。エースでサイドスローサウスポーで、技巧派で柳大川越の守備を上手く使える3年生大野。両ダブルエースの疲労を抑えられる程度には投げられる野手兼任投手の山本投手。役割分担も完璧でしょう。朝倉から大野に継投した場合ならその変化に対応するのが大変でしょうね」
「では新越谷はどうでしょうか?」
「新越谷高校は2回戦の影森、4回戦の馬宮と、点差コールドを決めていることと、3回戦梁幽館での両チーム合計35安打の乱打戦になっていたこともあり、データの上では打高投低のイメージです。なんですが、私実は新越谷高校の録画を見まして、そのイメージが崩れました。打高投高が正解だと思います」
「どういうことでしょうか?」
「1年生エース武田のストレートは投げる回数が少ないですが、なかなかのものでした。そして、何よりコントロールの良いチェンジアップとツーシーム。そして、落差の大きい縦スラ。先発投手としては完璧とは言えないまでも、1年生としては最高と言えるでしょう。さらに、2年生サウスポー投手川原は球速こそ並ですが、数多くの変化球を持っているとの事でした」
「取材で確認したところ、シュート、シンカー、スプリット、スライダー、チェンジアップと、5種類もあるそうです」
「ええ。さらに1年生クローザーの川口息吹は今のところ自らに付けられる失点は許しておらず、防御率はゼロ。しかも今大会ではレフト、ショート、ピッチャー、キャッチャーと、オールマイティな守備位置をこなしています。私はこの川口息吹が鍵を握ると思います」
「と言いますと?」
「彼女の投球は1球1球、投げ方が違うんですよ」
「主将の岡田への取材では、チーム内ではランダム投法と言われていて、様々な選手の真似をランダムに行うことで、本来できない1球ごとの投手を交代してるのと同じになると言っていました」
「投手は必ず1人の打者の打席を完了させなければ交代できませんから。そして、何より彼女の打撃にも注目したいです」
「打撃と言うと…新越谷は今大会打率4割オーバーが7人もいるようですね」
「はい。乱打戦の他はほとんどコールドでしたからそういう点も考慮には入れなければなりませんが、かなりの猛打チームです。中でも3本塁打で野手兼任投手の藤原が注目を集めていますが、私は1年生の川口息吹を注目しています」
「どういうことでしょうか?」
「彼女のOPSは藤原の2.250よりも高い2.350なんですよ。さらに二塁打三塁打の本数は藤原0に対して4本。本塁打も1本…ランニングホームランですが、記録しています。走攻守全て揃った1年生クローザー。ロマンを感じませんか?」
「なるほど、確かに聞いているとそう感じてきました」
「逆に柳大川越の鍵は先頭の大島でしょう。彼女は走塁判断が甘いきらいがありますがそれを補うだけの走力と出塁力があります。そこから3年生の上位打線に繋いでいく起点となるでしょう」
☆☆☆☆☆
「さて、現在、先攻の新越谷がシートノックに入っています。まもなく試合が始まります。ここで両チームのライナップをご紹介します。まずは先攻新越谷高校」
「1番ファースト中村、背番号3」
「アベレージヒッターの快速左打者です」
「2番セカンド藤田、背番号4」
「打率3割台で出塁率5割超の良い2番」
「3番センター主将の岡田、背番号8」
「2年生主将で、快足です」
「4番サード藤原、背番号5」
「強烈な本塁打を今大会3本放っています」
「5番レフト川原、背番号11」
「投げて良し打たせて良し」
「6番ショート川口息吹、背番号7」
「大会防御率ゼロのクローザー」
「7番ライト大村、背番号9」
「1本塁打の強力な一撃を持ちます」
「8番キャッチャー山崎、背番号2」
「ガールズ時代に全国を正捕手として経験」
「9番ピッチャー武田、背番号1」
「梁幽館相手に勝ち投手となっています」
「以上が先攻新越谷高校のラインナップです。続いて、柳川大附属川越高校のラインナップです」
「1番センター大島、背番号8」
「快足好打の1番」
「2番セカンド亀平、背番号4」
「職人亀平」
「3番レフト山本、背番号7」
「スイングが気持ちいい選手」
「4番キャッチャー浅井、背番号2」
「安心感のある3年生の4番」
「5番サード石川、背番号13」
「1年生でシード校のクリンナップに入ってきた新星」
「6番ライト平田、背番号17」
「同じく1年生の新星」
「7番ファースト森野、背番号3」
「こちらも職人技を持つ打者」
「8番ショート阿部、背番号6」
「守備範囲の広さは折り紙付き」
「9番ピッチャー朝倉、背番号11」
「ダブルエースの速球派」
「以上が柳大川越のラインナップです」
シートノックが終了して、両校整列する。
「両校整列します」
「やはり並ぶと新越谷の人数の少なさを感じますね」
「新越谷の選手登録は合計11人で、記録員もありません」
「主将の岡田と藤井監督への取材で、川口芳乃は元々マネージャーだったらしいのですが、人数の少なさから彼女もコーチャーや伝令に立つために選手登録としたそうです。熊谷実業との5回戦では選手の疲労などの観点から出場したとか」
「監督ではなく彼女がサインを出すこともあるそうで、梁幽館との3回戦でも見ました」
アナウンサーは梁幽館戦も同じ人だ。
「さぁまもなく試合が始まります。先攻は新越谷、守備についているのは柳大川越です」
「柳大川越の守備は守備位置の良さがあります。打者がどのように打つかを全員がきちんと理解している証拠ですね」
「1番ファースト中村がバッターボックスに入り、プレイボール。初球、ピッチャー朝倉、投げました!打ちました!良い当たり!センター前に落ちます!先頭打者出塁!新越谷、ノーアウト一塁です!」
「新越谷が不祥事により去年の夏から今年の春まで停部していて、停部明けに最初の練習試合がこのカードだったそうですから、お互い手の内は知っているのかもしれませんね」
「2番セカンド藤原、バントの構えは無い」
「ここは球を見ていくのでしょうね」
「初球見逃して、ストライク!」
「やはり速いですね。速い割に回転も良く、球筋も素晴らしい。2年生にして完成していると言っても過言でない速球派です」
「ピッチャーセットポジションから…第2球投げました!これはファールになります……一塁走者を目線で牽制しつつ、セットポジション、投げました!これもファール。これもストレート…」
「藤田もよく見ていますね。四球を選べる選球眼もあります」
「第4球…投げました!これは空振り!ワンナウト一塁へと変わります。ここまでご覧になって立ち上がりどうでしょうか?」
「良いですね。5球ともゾーンのコースですから、コントロールできていると思います」
「続いて3番センター岡田です」
「走攻守こなせる頼れる主将ですね」
「ピッチャー初球、セットポジションから………投げました!初球見逃しストライク!キャッチャー振りかぶって一塁送球を…諦めます。走者中村一塁に戻っています。ピッチャー朝倉、横目で一塁を確認しつつ、セットポジション…投げました!2球目はファール」
「今のは良く手が出ましたね、外いっぱいの良いストレートでした」
「第3球…投げました!打者岡田避けてボール!」
「あの速度で目掛けてこられると怖いですよ〜」
「ピッチャーセットポジション、投げました!4球目もファール!」
「ボール球を避けてからの手元を抉るようなカットボールを当てたのは凄いですね」
「第5球…ランナースタートして、投げました!打ちました!打球はセカンド捕球!二塁送球諦め一塁送球アウト!進塁打となり、ツーアウトランナー二塁です」
「今のは走者が完全に間を盗みましたね。おかげでゲッツーを避けられました」
「初回、ツーアウト二塁で得点圏にランナーを置いた上で4番藤原」
「県内最速投手の熊谷実業久保田からホームランを奪っていますから、これは期待できます」
「藤原の今大会打率は7割5分を誇り、3本塁打を放っています…ピッチャー投げました!空振り直球ストライク!」
「パワーを感じるスイングです」
「主将岡田と4番藤原は去年の例の不祥事により停部する前から残留した選手です。自らのせいではないだけに相当悔しい思いもあったことでしょう」
「それを糧に、見返すだけの力を手に入れましたね、新越谷」
「はい…ピッチャー2球目、投げました!これは左にきれて大きなファールになります。ピッチャー3球目、投げましたが、これは見逃してボール。ボール1つ分外でしょうか」
「あれはおそらく手が出なかっただけでしょう。朝倉の投球はノビもキレも良いのに、コントロールもあります」
「ピッチャー4球目投げました!打った!左に引っ張って三塁線!サードは楽々捕球して一塁送球アウト!一者残塁で1回の表を終えます」
「開幕のセンター前ヒットは良かったですね」
「中村の初手安打ですね。中村は早打ちの傾向があるようで、追い込まれる前に打つことが多いようです」
「新越谷としてはここで1点欲しかった場面ですね。防御の堅い柳大川越相手に先制点は重要なファクターとなるでしょう」
「1回の裏、守備につく新越谷ですが、注目はどこでしょうか?」
「個人的には真ん中のラインが気になりますね。捕手の山崎、投手の武田、中堅手の岡田と、真ん中のラインは堅そうです」
「柳大川越の攻撃、1番センター大島。俊足の1年生で、新進気鋭、攻撃の起点です」
「新越谷の外野はやや前進守備」
「初球、ピッチャー武田……投げました!今のは…ツーシームでしょうか?」
「多分そうですね。良いツーシームです」
「2球目…投げました!打った!右にきれてファール。チェンジアップでした」
「きちんとコースを突いている良い球ですが々…あれはチェンジアップではなく遅いストレートかもしれませんね」
「どういうことでしょうか?」
「彼女のチェンジアップはストレートよりもコントロールが圧倒的に良い傾向があります。若しかすると、彼女のストレートは全力投球なのかもしれません」
「ピッチャー振りかぶって投げました!縦のスライダーはカットします、柳大川越の1番大島」
「彼女の普通のストレートがチェンジアップと言われていて、全力投球のストレートがストレートと呼ばれているのでは無いかと…何となくそう感じただけなのですが」
「なるほど、2種類のストレートという訳ですか…ピッチャー3球目、おおきく振りかぶって投げました!速いストレートはカット!」
「ストレートは高めに外れ気味ですが…たまたまですかね?山崎珠姫捕手だけに」
「……………5球目…投げました!打った!打球は転がってショート前!ショート川口息吹が丁寧に捕球してファースト送球アウト!」
「(スベッたぁ…全然ウケないじゃん)」
「柳大川越の攻撃、ワンナウトノーランで2番セカンド亀平……初球空振りストライク!テンポ変えてきましたね」
「武田はテンポ早い方でなさそうですが、その分テンポの変化は武器ですね」
「2球目…投げました!ファール!外いっぱいの縦スラですね」
「あの縦スラの落差でストライクゾーンに入っているどころかコントロール出来ているのが凄いところでしょう」
「3球目…投げました!打ち上げた!打球高く真っ直ぐ伸びる!センター岡田、足を止めます!キャッチ!ツーアウト!ツーアウトランナーなしで3番レフト山本」
「山本は春も打者としてある程度活躍してましたし、今大会も期待が持てます」
「ピッチャー第1球を…投げました!縦のスライダー空振り!」
「素晴らしいコントロールです」
「第2球、少しためます。……投げました!直球ファール!」
「強い球ですね、バッターの手も痺れそうです」
「第3球…投げました!ボール!打者の顔面前を通るブラッシュバックピッチです」
「では第4球は…」
「第4球投げました!外いっぱいのツーシーム!ファールになります」
「あれを当てますか…」
「顔の前で仰け反らせる球からの外いっぱいのゾーン球。ピッチャー第5球、振りかぶって…投げました!打球は転がって三塁線!サード捕球して一塁送球アウト!スリーアウト!初回、両校共に無得点で2回へ回ります!」
「最後の球はツーシームではなくチェンジアップですね。バッターもツーシームかカットボールかと思ったことでしょう」
「ここでコマーシャルを挟みますが、この後新越谷の攻撃に移りまして、高校野球中継は120秒後に再開いたします」
ちなみにアナウンサーの名前の梶は、最近読み直していたエヴァンゲリオンの加持リョウジから
解説の野崎は、8月のシンデレラナインの野崎夕姫から
それぞれ苗字だけ頂戴しています笑
……なんで加持リョウジから取ったんだろ……?
明日から準決勝です!