【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
……藤井先生のインタビュー
「準決勝第1試合、勝ちました新越谷高校監督の藤井監督です。よろしくお願いします」
「お願いします」
「まずは決勝戦進出おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「初回、7安打5被安打の両チームビッグイニングから立ち上がり、いかがだったでしょうか?」
「そこは予定通りでした。2回戦の梁幽館戦で打ち負けない打力を持っているのは確認済みだったので、この試合をいかに乱打戦に持ち込むかが鍵でした」
「しかしながら先発投手の藤原さんを1イニングで降板させました。これについてはどのような意図の采配だったのでしょうか?」
「2回の表の攻撃で得点が伸びなかったことと、ゲッツーを取られて、あちらに流れを持っていかれる可能性があったためでしょう」
「でしょう、ということはその采配は川口芳乃さんが下したのでしょうか?」
「ええ。以前話したこともありますが、彼女は本来マネージャーです。正確にはマネージャーではなくゼネラルマネージャーだとは思いますが」
「中間管理職は厳しいですね」
「ええ」
インタビュアーと藤井先生は冗談めかして笑う。
「2回から6回まで双方共にロースコアで推移しましたが、この辺りはどうでしたか?」
「正直に言って生きた心地がしない展開でした。細々と追加点は加えていましたが、初回の乱打戦を見ればいつ盛り返されるか分からない展開でした」
「確かに、事実5回6回で逆転を許しています。これについてはいかがだったでしょうか?」
「エラーなどが続く非常に怖い状況でした。あそこでもう1から2点ほど加えられてればここにいたのは私ではなかったでしょう」
「6回の裏、川原さんの肩辺りに打球が当たっていたようにも思いますが、具合の方は大丈夫でしょうか?」
「折れてはいないそうですが、午後にはスポーツ専門医に受診させてどうなるか…川原さんはかなりの強打者でもあったので非常に残念です」
「7回の三重盗、あの時はサインプレーだったのでしょうか?」
「芳乃さんは盗塁のサインを出していました。一応練習…というよりプレーの確認はしたことがある場面でしたが、ビハインドでかつ最終回の表でする攻撃ではないと肝が冷えました」
「最後に決勝に向けての意気込みをお願いします」
「選手たちには3年生がいないので、変に気負わず、のびのびと楽しんでもらいたいと思います」
「決勝戦進出を決めた新越谷高校藤井監督でした。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
………主将岡田怜のインタビュー
「準決勝第1試合勝ちました、新越谷高校主将の岡田怜選手です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「決勝戦進出おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「今大会唯一2年生が主将を務めるチームが決勝戦に進出しましたが、今のお気持ちはどうでしょうか?」
「昨年の不祥事からもう二度と高校野球は出来ないと思っていたのを、今の1年生たちに救われて、ここまで連れてきてもらいました。ここ数試合では思うような打撃が出来ていないので、決勝戦ではみんなに恩返しできる一撃を決めたいと思います」
「この試合を振り返って、MVPを決めるとしたら誰でしょうか?」
「迷わず田辺さんです。彼女がいなければ恐らくヒットがあと数本は増えたと思います」
「この試合を終えて、岡田さんの得点圏打率は8割8分9厘となりました。この数字を見ていかがでしょうか?」
「正直チャンス以外で打てていないという点で、先程も言った通り思うような打撃ができてないので、次の決勝戦には調整したいと思います」
「最後に決勝戦への抱負をお願いします」
「勝負強い打者として、相手投手にプレッシャーをかけられたらと思います」
「決勝戦進出を決めた新越谷高校主将の岡田選手でした。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
なお、怜は緊張でインタビューに向かう時の歩き方が手足同じ方に出ていたのは別の話。
さらについでの話だけど、元々怜のインタビュー枠は無く、光のインタビュー枠が怪我のため抜けてしまったために急遽入れられたものだったのは、ナイショの話。
……中村希のインタビュー
「続いて新越谷高校中村希選手です。よろしくお願いします」
「ぇぁ…お願いします」
「この試合5打席4安打で、エラーも相まって、全打席で出塁しています。今日の打撃についてはどうだったでしょうか?」
「えっと…気持ちよう打てたと思います」
「7回表の三重盗、とても見事でした。記録にも記憶にも残るものだったと思いますが、盗塁で本塁を踏んだ時の感想を教えてください」
「うちが本当に本盗したんかいな…って感じでした」
「とうとう次は決勝戦ですが、準決勝第2試合の2校で戦いたい相手はいますか?」
「美園学園の園川さん!あん人相手に安打打ちたか!」
「決勝戦進出を決めた新越谷高校の攻撃の起点、中村選手でした。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
……藤田菫のインタビュー
「それでは続きまして、今日の同点三重盗の起点となった藤田菫選手です。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」
「猛打のイメージのある今大会の新越谷の中で、高校野球ファンの間では静かな職人との呼び声もあるらしいですが、ご自身はどうお考えでしょうか?」
「えぇっと……その……練習試合の頃からほぼずっと2番を打たせてもらっているので、監督や芳乃ちゃ…芳乃さんの期待の通りの結果を残せていると、自負はあります」
「本大会、乱打戦の多い新越谷では埋もれてしまいますが、遅ればせながら猛打賞おめでとうございます。本日3安打の結果についてはいかがでしょうか?」
「ありがとうございます……えぇ〜〜……っと、基本的に私は安打狙いは少ないので、純粋に嬉しいです」
「極めつけは三重盗の起点でした。あの時のご感想をお願いします」
「その……えー、と………正直生きた心地はしませんでし…たね。あの状況下で二塁ランナーが牽制を大きくとって牽制球を誘うのは、本当に肝が冷えました」
「勝ちました新越谷高校の職人、藤田選手でした。ありがとうございました」
「あっ、ありがとうございましたっ!」
その緊張したインタビュー映像の録画を、何度も何度も見せつけた稜が物理的にお仕置きされたのは別の話。
……川口息吹のインタビュー
「最後に、本大会最注目選手の1人である川口息吹選手です。よろしくお願いします」
「お願いします」
「まずは本大会4セーブ目、おめでとうございます。本日4セーブ目を上げて、本大会最多セーブが確定しました」
「ありがとうございます」
「本大会本日までの記録で、3本塁打、2三塁打、3二塁打、打率.733、OPS2.60、4セーブ、奪三振率11.8、WHIP0.75、そして何より防御率ゼロ。投打に渡って好成績を残していますが、その秘訣はなんでしょうか?」
「そうですね…精密な身体の操作ですね」
真顔で息吹はそう言うけど、それは知っての通り
「それは何度も何度も練習を重ねることで身につけた技能なのでしょうか?」
「それはインタビュアーさんも知ってるかもしれませんけど、私は高校に入るまで野球には触れてきてませんでした。ですが、山登りや酷道巡り、キャンプなどのアウトドアを通じて、身体の動かし方を学んでいたのだと思います」
キリッとした顔でそう答える息吹。
野球選手の真似を綺麗にコピーしていたセンスという心当たりがありすぎることに、平気で
閑話休題。
「あの魔球…ジャイロボールですが、野球に触れ始めて数ヶ月で完成させたということでしょうか?」
「正確には2週間で習得はしました。まぁ大会前1週間ほど前から調整を始めたので結局前半戦には間に合いませんでしたが、逆に切り札として柳大川越や咲桜の打線を抑え込めたと思います」
「投打で活躍していると先程申しましたが、正確には外野、内野、捕手、投手と守備位置もかなりの範囲を守っていました。これは普段から練習をされていたのでしょうか?」
「普段練習しているのに捕手は含まれてませんね。本来私が座るとしてもブルペン捕手としてだけですから。でも、川原さんは私が捕手をする方が調子が良いみたいなので、最近は試合でマスクを被ることも出てきました。今後は練習した方がいいですね」
「最後に決勝戦への意気込みをお願いします」
「県大会打率7割、5セーブで甲子園に行きたいと思います」
「大会最注目選手の新越谷高校川口息吹選手でした。ありがとうございました」
「ありがとうございました」