【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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全国高校野球選手権大会、新越谷の初戦は2回戦の6日目第4試合から!


第35話 恋実りし少女のパワー

6日目の8月12日。

この日の試合はなんと超乱打戦が3試合全て発生して、試合時間がとても押していた。

第4試合の私たちはなんと18:34に試合開始した。

 

ちなみに、第3試合は特に『馬鹿試合』で、両チーム合わせて38得点46安打翌日再試合というぐずりっぷりを示した。

 

もはやナイターである。

 

さて、新越谷のオーダーは以下の通り。

 

1 稜(遊)

2 珠姫(一)

3 希(左)

4 理沙先輩(三)

5 私(捕)

6 光ちゃん(投)

7 主将(中)

8 白菊(右)

9 芳乃(二)

 

詠深と菫がベンチスタートだ。

私は赤いキャッチャーミットを付けてキャッチャーボックスに座っている。

 

対する東祥大東祥のオーダー。

 

1 岩貞陽菜(遊)

2 双葉あゆみ(二)

3 芦立愛梨(左)

4 飯島舞那(三)

5 佐々木彩夏(中)

6 小野美桜(投)

7 村田愛(一)

8 横山羽桜(右)

9 高槻夜亜(捕)

 

東祥大東祥は静岡の強豪で、梁幽館や咲桜等よりも強いと思ってぶつからなければ容易にのまれてしまう。

 

光ちゃんの球はいつにも増してキレもあるから落ち着いて行けば抑えられるはず。

 

「しまっていくわよ!」

 

私はマスクを右手で外して、声を張り上げた。

 

 

1回の表、東祥大東祥の攻撃。

1番、ショート岩貞さん。背番号6。

右打ちの好打者で、かつ足も良い。

ここは様子見に…

 

(スプリット!外してもいいから、変化強めで!)

(わかった!)

 

夏の甲子園という未知の舞台で、私たちの第1球が投げられた―――

 

「ストライク!」

 

空振り。初っ端から落ちる球とは思わないわよね。

 

(スライダーで詰まらせて打ちとろう)

(気持ち低めに…だよね?)

(その通りよ)

 

スライダーは詰まった当たりをレフト線に出したが、理沙先輩の好守備で捕殺(キャッチアウト)

ワンアウトノーラン。

 

 

2番、セカンド双葉さん。背番号4。

右打者で、小技の上手い職人。

 

(この人は甘い球は初球から振ってくるわ。スライダーでうちとるわよ)

(変化は鋭く…だね)

 

初球スライダーを詰まらせて、セカンドゴロ。芳乃も少し動きは硬いけど一塁送球アウト。

ツーアウトノーラン。

 

 

3番、レフト芦立さん。背番号11。

県大会では代打のみの出場で、6打数3安打の活躍を見せてる。

 

(初球スプリットでゴロ打たせられれば御の字。打たれなければ2球目のチェンジアップの布石でどう?)

(いいと思うよ。低めに抑える?)

(ううん、ここは強気にインコースギリギリ突くイメージで!)

 

私は少し厳しめのコースを要求するけど、光ちゃんはいい笑顔で頷いてくれる。

初球スプリット、空振ってストライク。

2球目、速いスプリットを見せた後にチェンジアップでタイミングを外させてフライに打ちとる。センターフライ。

スリーアウト。

 

「ナイス光ちゃん!完投行けるわよ」

「うん、ありがとう」

 

ふわりと微笑む光ちゃんがかわゆい。萌える。

 

 

 

1回の裏。新越谷の攻撃。

1番、ショート稜。

左打席に入る。足を活かすための出塁率向上に、左打ちを習得した稜。その彼女の十八番が盗塁…と言えるくらいには成長を見せて欲しいところ。

 

初球、見逃してボール。

 

左打ちは彼女の選球眼…というかバットを何でもかんでも振ってしまう癖が無い分バットが止まる。

 

「速いわね…」

 

2球目、インコースギリギリを突かれたスライダーに反応せずストライク。カウント1-1。

3球目、アウトローに抑えたストレートは、無理をして打つ必要は無いと稜の新たな感覚は告げていた。カウント1-2。

4球目、少し抜けた球威の緩いストレートが真ん中インハイ寄りに入ってきた。ここだ!と言わんばかりのフルスイング…キャンッ!金属バットの快音1つ。レフト方向に飛ばす。内野の頭を超え、レフト前に落ちる。

稜は持ち前の足を活かして一塁を蹴っている…!?二塁走塁するの!?レフト芦立さんは落ち着いて打球処理。ショートの岩貞さんに送球。セカンドの双葉さんと挟殺プレーか…と思いきや、いつぞやの芳乃のようにするりと躱して二塁を踏んだ。ノーアウト二塁。

 

「すごいわね…いつの間にあんな避け方覚えたのよ」

「稜は自分の持ち味である足の速さを最大に伸ばす努力を続けてるのよ…夏大始まってから毎日2人で鬼ごっこよ」

「お熱いわね」

「あんたらに言われたくないわよ」

 

菫と軽口を言い合ってると、光ちゃんが少し拗ねたように私の左腕に絡んだ。

ちなみに菫はあの後も身体の倦怠感が抜けきらず、今回はベンチから外に出る許可はコーチャーを含めて2イニングまでとドクターストップがかかっているため、ベンチメンバーだけどコーチャーに出ていない。

 

 

2番、ファースト珠姫。

珠姫がファーストなのは珍しいし体が小さいのは多少不利だけど、捕球技術の高さは折り紙付きだから問題ない。

さて、芳乃のサインは送りバント。

 

初球、外された球には反応せずボール。

2球目、外いっぱいのストレートにコツンとバントを成功させる。一塁線に転がすと、二塁の稜は快足飛ばして三塁へ。

ファーストの村田さんは一塁ベースカバーに入ったピッチャーの小野さんに送球して一塁アウト。

 

 

3番、レフト希。

ワンアウト三塁のチャンスで迎えるはアベレージヒッター希。

単打でも打てれば…最低犠飛でも点が入る状況。

 

ここで東祥大東祥は一度目の守備のタイムを取り、背番号3の関根菜摘さんが伝令に走る。

東祥大東祥の監督である吉井監督は、かつて同じ東祥大系列のほかの学校でだが、甲子園で優勝を通算3度も導いた名将で老将。流れの分岐点に立っていると感じているのかも。

 

芳乃のサインは無しで変わらず。

 

プレイがかかる。

一度三塁に牽制球を差してから初球、コントロールを逸したのか、希の顔に向かう!危ない!

 

身をすくめた希。避ける練習はあまりしていなかったのが災いし、今回は救われた。

そう、すくんだ結果、ヘルメットに直撃した。そして、その衝撃でヘルメットが飛んで、希も後ろによろめいて尻もちをついた。

 

球審の判断で試合が止められる。

 

ネクストにいた理沙先輩と、ネクストに向かう準備をしていた私、ベンチから飛び出した芳乃が希の周りを囲む。

 

「大丈夫?無理して立っちゃダメだよ!」

「尻もちついてもうたけど、ふらついとらんし大丈夫だよ」

「とりあえず、私と芳乃で肩貸しながらベンチに下がるわよ。一応頭に衝撃がいかないようにゆっくりね」

 

頭の衝撃は馬鹿にできない。前世で死ぬ原因となったのも頭部に球を受けたことだし…

 

球審の指示で臨時代走が認められ、珠姫が一塁を踏んだ。

 

ピッチャーの小野さんはひたすらこちらに頭を下げていた。

 

 

4番、サード理沙先輩。

小野さんの精神状態から続投は不可能と吉井監督は判断したようで、ピッチャー交代。ピッチャーは背番号10番の荒川沙耶さんに。

今大会最高球速を誇る小野美桜さんは、たった7球でグラウンドを去った。

 

なおもワンアウト一三塁で迎える4番理沙先輩。

 

初球はストレートで外角低めを抉る。ストライク。

2球目、ストレート高めに外れてボール。

3球目、スプリット低めに外れてボール。

4球目、チェンジアップ低めに入ってきたところをジャストミート!快音上げて飛ぶ打球。レフト線…!

甲子園では浜風が吹くため、左方向への打球が伸びやすいと言われている。

 

「行けー!」

「届け…!」

 

そして、長く短い数秒の飛翔が終わり、落ちた打球。

他校と比べて見劣りする応援席がワッと沸いた。

 

初回先制スリーランホームラン。大会第17号となる。

 

理沙先輩が本塁を踏んで、ネクストの私とハイタッチをしてからベンチでみんなとハイタッチ。

この流れは断ち切れないわよね。

 

 

5番、キャッチャー私。

私は打力優先の右打席に入る…前に木製バット…今回の甲子園のために急いで作ってもらったメイプルのバットをひとなでしてから右打席に入った。

 

初球、低めに抑えたスプリット…でも、動揺してるのかキレが無いわ…よっ!

芯でとらえた打球は左中間を悠々と飛び去り、フェンスを超える。

 

ファンファーレを有志の吹奏楽部が響かせる。

 

大会第18号のソロホームラン…これだけだと盛り上がりに欠けるけど、2者連続アベックホームランということで、観客席が震える。

 

私は本塁を踏むと、ネクストで待ってた光ちゃんとハイタッチしようとしたところでギュッとハグされた。

 

ワンアウトノーラン。点数は0-4。

 

 

6番、ピッチャー光ちゃん。

光ちゃんは自己援護出来る打力も豊富な球種もあり、正しく二刀流な選手だ。

放心と動揺と諦観で気の籠ってない球を弾き返すのは容易だった。

 

初球、ストレートがど真ん中に緩く入ってきたのを、持ち前の豪快なフルスイングでかっ飛ばした。

打球はライト線か…今日は浜風が強めだから右方向は厳しい…ん?あれ?まだ伸びる…!まだ伸びる…ってまさか入るの!?浜風どうしたの!?

 

三者連続本塁打。大会第19号ソロホームラン。

プロ野球で有名なバックスクリーン三連発とは少し違うけど、三者連続本塁打は歴史的偉業よね。

 

あぁ!そういえば前世の時だけど聞いたことあった!アルプススタンドと外野スタンドとの間に存在する隙間は風の抜け道となっており、浜風が舞っている日でも右翼ポール際への打球はよく伸びるって!

 

ベンチに戻ってきた光ちゃんをギュッと抱きしめて、さっきの分もお返しする。

 

 

流れに乗ったところで、7番、センター主将。

3球目を詰まらせてしまい、セカンドゴロ。

ツーアウトノーラン。

 

 

8番、ライト白菊。

 

ロマン砲ここに来たれり。

 

1()()()()()4()()()()達成。

 

ツーアウトノーラン。点数は0-6。

 

観客席は3年生無し+部員11人の新越谷が初戦の初回に4本塁打をあげたことにボルテージ爆上がり。球場の雰囲気は完全に勝負がついたような空気が流れ始めていた。

 

 

9番、セカンド芳乃。

大きな当たりを量産している新越谷に、東祥大東祥は後退守備。

2球目セーフティバントで逆をつくものの、キャッチャー高槻さんの好守備で一塁アウト。スリーアウト。

 

初回を終えて、得点は0-6。

東祥大東祥は3人の投手のうちエース1人を既に降板。

対してこちらの投手陣は4人いる中、光ちゃんがわずか5球で1イニングを終えている。

さらに流れを呼ぶ三者連続本塁打に、1イニング4本塁打。

唯一新越谷側でケチが付くのは希の頭部死球が心配なくらい。

 

まだまだ甲子園マジックは怖いけど、大勢は決したと言っても過言ではないわよね。

私は防具を取り付けながら、光ちゃんと顔を合わせて笑った。

 

………そういえばこれであちらも点をボコボコ入れ始めたら、今日1日馬鹿試合になっちゃうわね。

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