【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第38話 雨の中の激闘

10日目の第二試合。

UVカットのアンダーシャツとかも用意してたけど、これは必要なさそうね。

 

あいにくの雨天であり、第一試合の開始が遅れ、時刻は14:30

ようやく私たちの試合が始まる。

 

「今日は雨だから、内野はゴロが増えて、外野のバウンドは滑るから注意ね!足元も外野は特に滑るから気をつけて!」

「「「おぉ!」」」

「それから、投手陣はあまり無理な投球はしなくていいからね!珠姫ちゃんもボール交換はこまめにね!」

「「はいっ」」

 

芳乃は、雨の試合の注意を言っていく。

 

今日のメンバーはこのようになっている。

 

1 希(一)

2 光ちゃん(左)

3 主将(中)

4 理沙先輩(三)

5 私(二)

6 稜(遊)

7 白菊(右)

8 珠姫(捕)

9 詠深(投)

 

元々は理沙先輩を先発に、菫を入れた打撃重視な形だったけど、雨を受けて変更した。雨の中でも投げ込みをしてきた詠深を先発に、体調が芳しくない菫を下げる。さらに、小技もこなせる光ちゃんを2番に据えることで、雨天時の打撃練習で1歩抜きん出てた2年生組3人を上位打線に纏めて配置している。

 

対して、星光学院は…

 

1 向中野満理奈(右)

2 笹川栞(二)

3 穴吹芽生(左)

4 楠川由梨(遊)

5 片柳麻衣子(三)

6 高塚亜子(一)

7 村尾唯(捕)

8 黄玲子(投)

9 田原鞠奈(中)

 

背番号通りの全力レギュラー…誰もが、他の全国区レベルの高校でクリンナップを張れるほどの強打者たち。

特に4番の楠川さんはあと1本で高校通算本塁打が100本に到達する。

 

雨という環境下で、調子も良くはない、それでも私にとってはこの試合、とても楽しみにしている。早く始めたくてうずうずしてしまう。

 

じゃんけんの結果、先攻は星光学院。

 

 

サイレンとともにお互いに礼をすれば、試合は直ぐに始まる。

私は内野用のグラブをはめて、セカンドに入る。

 

1回の表。

星光学院の攻撃は、1番向中野さん。

左打席に入る。

 

プレイボールが宣言され、詠深がゆっったりとした動作で『あの球』を放った。

まずは初球見逃してストライク。

雨だからか、球審のストライクゾーンは広めみたいね。

 

詠深も、コントロールが少し上手くいってないみたいで、少し不満げな表情。

 

しとしとと降る雨の中、試合は続く。

 

2球目、ツーシームに引っ掛けた向中野さん。

詰まった当たりはぼてっと中途半端に転がり、セーフティーバントのようになって内野安打となる。

 

 

2番笹川さん。

初球から遠慮なくフルスイング!甲高い金属音とともに、左中間へ!

私は一応ベースカバーに、稜が中継に入る。芝生に滑ったバウンドは光ちゃんのグラブを弾いた。一塁ランナーの向中野さんは三塁を蹴った!バックアップした主将が遠投!バックホームを狙うレーザービーム!これも雨に滑ったか大きく外れて一塁ランナー向中野さんホームイン。

エラー2つで1点を失い、なおもノーアウト三塁。

 

「どんまいどんまい!雨だし、これくらいは予想通りよ!」

 

 

3番、穴吹さん。

初球、強ストレートを空振りストライク。

2球目、カットボールを観客席に流れてファール。

3球目、ボール球で様子見か…?と思いきや、あの球をど真ん中に放り込む。落差でボール球と思ってしまった穴吹さんは手を出さずに見逃し三振。ワンアウト。

 

 

「とうとうきた…」

「次の伝説と呼ばれてる星光のキャプテン…」

 

4番、楠川さん。

くるりと回したバット。

得点圏三塁に走者がいる。追加1点は諦める必要あるかも…

 

初球、ツーシーム。迷わず見送る楠川さん。ストライク。

2球目、もう一度ツーシーム。これも見送り。ストライク。

3球目、楠川さんの雨に濡れた長い黒髪が揺れた。

 

カァン!と甲高い打撃音。

ライト方向。いや、右中間。

右中間を抜いて…落ちてきた。

快足飛ばした主将の守備範囲。

 

パシッ!

捕殺。三塁ランナースタート!

私は中継に入ってる。主将はレーザービームを選択。

今度は珠姫のミットに収まり、理沙先輩との挟殺プレーに持ち込み、理沙先輩がタッチアウトにする。スリーアウト。

 

各種コンディションは最悪に近い状況で、初回を1失点に抑えたのはとても大きい。しかも、詠深もそこまで多く投げてないし、希望はある。

 

 

1回の裏、新越谷の攻撃。

1番、希。

星光学院のエース黄さんは左腕(サウスポー)なので、左対左の戦いだ。

 

「芳乃、黄さんってどんな投手?」

「うーん、高校野球では平凡な選手…かな。中学までは変化球2つで圧倒してたみたいだけど、高校レベルだと…まぁ全国区レベルでは平凡…でいいと思うよ。少なくともプロは注目してないよ」

「確かカットとツーシームだっけ?」

「うん。こういう雨の日はゴロになりやすいから、打たせて捕るタイプの黄さんは有利…」

 

コンっ!

 

3球目、詰まった当たりになった希の打球は、ショートゴロとなってアウト。

 

 

「こんな感じに」

「星光って強豪なのに投手は普通なのね」

「星光学院は投手はスカウトしてないからね…とはいえ、3年間もの間強豪校として投げてきたプライドは並じゃないみたい」

 

 

2番の光ちゃんもセカンドゴロに倒れ、3番の主将は三振となる。

 

 

「……芳乃?」

「ちょっと待って」

 

芳乃は主将に近づく。

 

「怜先輩、足、見せて貰えますか?」

「―――ッ!…流石芳乃だな…誤魔化せないか」

 

靴下を脱いで、左足を見せる。

足首が腫れていた。

 

「よくこれであのレーザービームを投げられましたね…楠川さんのフライを追いかけ始める初動の時ですよね?」

「こりゃ参ったな。…どうする?」

 

主将が抜ければ、そこに誰かが入らなければならない。打順は3番の重要な仕事だ。入れるのは芳乃と菫だけ。

 

「…菫ちゃん、行ける?打順は3番、正直私じゃ力不足だから…」

「ええ、頑張るわ」

「息吹ちゃんはセンターに入ってね。外野陣の中では2番目に守備範囲広いから」

「ええ、任せなさい」

 

 

2回の表、星光学院の攻撃。

 

5番、片柳さん。

守備位置の変更で、私はセンターへ、セカンドに菫が入る。主将は医務室に。

 

初球、カットボールを振り抜かれて内野の頭を超える。私が捕球して二塁走塁を牽制。単打に抑える。ノーアウト一塁。

 

 

6番、高塚さん。

送りバントの構え。

内野陣が前進する…のを見越した高塚さんのプッシュバント!

理沙先輩の頭を超える大きなバント。

サード越えバント内野安打という変な記録となる。

ノーアウト一二塁。

 

 

7番村尾さん。

またしても送りバントの構え。

先程のことを考えて、前進が中途半端になり、安全に送りバントを成功させてしまう。ワンアウト二三塁。

 

 

8番黄さん。

打撃も凄い。

詠深のあの球を初球で捉えて、レフト前ヒット。

1点の追加点と、二塁ランナーの高塚さんも三塁へ進み、ワンアウト一三塁に変わる。

 

 

9番の田原さん。

強ストレートをライトに打ち上げる。タッチアップに備えて送球に備える新越谷。

白菊のグラブに収まったと同時に三塁ランナースタート。本塁への送球!

雨天練習での白菊のレーザービームは成功率が低い。菫の中継に、珠姫へボールが渡る。クロスプレー!

 

どうだ…!

 

球審は、ゆっくりと腕を広げた。

セーフだ。

 

ツーアウト二塁。点差は3点に広がる。

 

ちなみに、本塁でのプレー中に、一塁ランナーの黄さんはひっそりと歩いて二塁を踏んだようだ。サイレント走塁で有名なプロ選手が前世でもいた気がする。

 

 

1番の向中野さんに打順が戻り、2巡目。

珠姫の強気のリードで3-2のフルカウントに。

そこから粘って13球目、高めに浮いた強ストレートを詰まらせた当たりは、向中野さんのパワーも相まってライト前へ。

二塁ランナーの黄さんは三塁を蹴る。白菊は一塁送球すれば終わりのはずが、判断を誤り珠姫にバックホーム。野球未経験者だと、こういう些細なことでミスをしてしまうことがあるけど、それは仕方の無いこと。とりあえず失点は抑えられたので良しとする。

黄さんは引き返して三塁へ。

その間に向中野さんは快足を活かして二塁へ。

ツーアウトなおも二三塁。

 

 

2番、笹川さん。

あの球を初球に打ちに来て、高く私の方へ舞い上がる。

 

「っ…!伸びない…!」

 

雨の影響かフライがあまり伸びず前に落ちる。三塁ランナー黄さんはホームを狙う!

慌てて拾い直し、一塁送球してアウト。ホームインの方が早かったけど、この場合は得点が認められないので、胸を撫で下ろす。

スリーアウト。少し前めに守備位置を取っていたのが幸いしたようだ。

 

2者残塁で、裏の攻撃に移る。

 

 

2回の裏、新越谷の攻撃。

4番、理沙先輩。

初球、キレのあるカットボールだったけど、アウトコースに外れてボール。

2球目、ツーシームを捉えるも、レフト線に切れてファール。

3球目、再びカットボールがアウトコースに外れてボール。

4球目、ツーシームは低めに外れてボール。これで3-1。

5球目、ストレートが低めに入ってくるのを予感していたのか綺麗なコンパクトスイングで左中間へ。単打となって、ノーアウト一塁。

 

 

5番、私。

今日は木製バットは封印。雨だと金属バットの方がいい気がする。

 

初球、胸元を抉るカットボール。

私は無意識的に左足を外にズラして、オープンスタンスに。そのまま引っ張り方向にかっ飛ばす。

私と理沙先輩は駆け出す。レフト線とフェンスのぶつかるあたりに落ちた打球をレフトの穴吹さんが取りに行く。

理沙先輩が三塁を蹴る。私は三塁に。

理沙先輩は生還して、1点を返す。ノーアウト三塁。

 

 

6番、稜。

左打席に入っている稜。左対左の戦い。

初球、低いストレート外れてボール。稜の選球眼は、本当に上がった。希並…とまではいかないけど、今なら安心して6番のクリンナップの後詰めを任せられる。

2球目、ツーシームを引っ掛けた稜。ショート前に転がるけど、雨で濡れて転がらず、内野安打となる。

ノーアウト一三塁。

 

 

7番、白菊。

足の速い稜が同点のランナーとなって、応援席からの期待が寄る。

芳乃は白菊と稜と私の3人とサイン交換をする。芳乃らしいかな。

 

初球、スクイズのようにバットを動かした白菊に反応した黄さんは、大きく外した。稜のスタートを見ていたキャッチャーの村尾さんは慌てて二塁送球も、セーフ。

そう、偽装スクイズだ。稜に盗塁が記録される。

 

だけど、それで終わりじゃあ、芳乃じゃない。

 

2球目、投球動作と共に私と稜はスタート。内角高めのカットボールに、白菊は()()()に転がす。

二三塁で、バントを見たファーストの高塚さんは、こちらには飛んでこないと判断してしまった。その判断の早さが仇となり、一瞬の硬直を作り出してしまった。

 

「回れー!」

「いけー!」

 

私はホームイン。稜も快足自慢で、ツーランスクイズを敢行している。ファーストの高塚さんは一塁で白菊をフォースアウトにしてからキャッチャーの村尾さんに送球。稜と村尾さんのクロスプレー…!

 

審判は、腕を広げる。セーフ!

 

同点となった。

ワンアウトノーラン。

 

 

8番の珠姫はショートゴロ、9番の詠深はファーストフライで凡退し、スリーアウトとなる。

 

だが、ここから新越谷がペースを握った。

 

 

3回の表の星光学院の攻撃を、詠深の調子が持ち直してきたことと珠姫のリードがハマって3人凡退で終えると、裏には上位打線の6連打と白菊の犠牲フライと珠姫のスクイズが決まって、一挙に5点を追加して勝ち越しに成功した。

 

 

ところまでは、順調だった。

 

4回の表、星光学院の攻撃。ワンアウト一塁の場面で、審判団がタイムをかけて集まってしまったのだ。

 

「ねぇ、これって不味くない?」

「確か、雨弱まってるのは昼の間だけで、夕方になるとまた酷くなるって…」

 

雨天のため、試合を中断すると発表され、私はため息をついた。

 

「芳乃、帰る準備始めるわよ」

「そうだね…」

 

 

1時間半後、降雨ノーゲーム、翌日再試合が放送されて、今日の試合は中止となった。

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