【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
東京のとある会議室に集まった高校球女たち。
芳乃がいたらウハウハしてるわね、確実に。ってかサイン絶対ねだってるわね。
「久しぶり」
「あ、楠川さん…」
私と光ちゃんに話しかけてきたのは、星光学院のキャプテンにしてこの桜ジャパンU-17のキャプテン、楠川由梨さん。誕生日が早生まれだったらしく、3年生ながらも招集されている。
「夏大準優勝、おめでとうございます」
「ありがとう。でも私の代こそはって思ってたから、少し残念だったんだけどね。それより、君たちのキャプテン、足はどう?」
「はい、全治1ヶ月って話だったのが、最近ではリハビリも始めてるらしいです」
「そっかぁ…あの人の足の速さ、すごいもんね。それに圏内打率もすごいらしいし…私でも6割超だよ」
楠川さんは苦笑する。いや、うちらがやばいだけです。私含めてだけど…
「プロでも、代打の仕事人とか出来そうだよね」
それは確かに。あれだけの打点マニアだもんね。
新越谷は、今回私と光ちゃんが離脱すること、主将の左足の負傷、菫の不調などの理由から秋の新人戦以降の対外試合を中止することになっている。
まぁ主将の足は結構早く治ってる様だけど。
色んな高校の制服を着た女の子たちが13人集まったところで、4人の大人が入ってきた。
1人は言わずと知れた長本洋子監督。
次の美魔女が森永梨亜子コーチ。
次は星光学院戦で会った石田茉穂コーチ。
最後が恐らく室蘭の谷口結美コーチだろう。
「今日は集まってくれてありがとう。うちがヘッドコーチの森永です。まずは指導側の紹介から。こちらが長本洋子監督、こちらが谷口投手コーチ、そちらが石田打撃コーチです」
演台に立った森永ヘッドコーチが指導者を紹介する。
「まずはまぁ見ての通り、18人しかいません。えー、外野手として招集した柏葉高校の川下楓結さんは夏の合宿中での故障があり、不参加となります。これに伴って、外野専門の選手が皆無になりました。そこで、新たに招聘して補充することになります。調査の関係から関東圏のみしか追加調査が出来ませんでしたが…では入ってきてください」
入ってきた2人のうちの片方を見て、私と光ちゃんは目を剥いた。
「埼玉県、新越谷高校2年の岡田怜さんを追加招集することに決まりました。彼女は左足を故障していますが、治癒が早く、既に復帰の目処が立っていることから招集することになりました」
森永ヘッドコーチの言い分に、静かなざわめきが起こる。日本代表に新越谷から3人もの選手が選ばれたのだから、それは自明だ。
「また、選出の遅れていた1人も追加で、神奈川県、風花学院2年、風間花詠さんを招集します。今から皆さんにお配りするのが、最終的なこのチームのメンバーとなります。あ、2人も席に座ってくださいね」
私は配られたメンバー表を見る。
・岡本美穂(2年/内/左左/旭川学園高/北海道)
・平沢萌恵(2年/内/右右/仙台高/宮城)
・清藤奏子(2年/内/右右/福島大耀高/福島)
・楠川由梨(3年/内/右両/星光学院高/栃木/主将)
・伊藤美亜(2年/内/右右/城東高/高知)
・青木玲奈(2年/内/左両/須崎高/長崎)
・岡田怜(2年/外/右右/新越谷高/埼玉)
・川原光(2年/投外/左左/新越谷高/埼玉)
・大野亜由子(2年/投外/左左/大阪桜雅高/大阪)
・睦月久乃(1年/投外/左左/五島高/長崎)
・田崎真智子(2年/投外内/右右/本部海洋高/沖縄)
・山谷彩(3年/投外内/右右/聖カメリア学院高/山口)
・川口息吹(1年/投外内/右両/新越谷高/埼玉)
・宇田川瑠菜(1年/投/右左/葛飾農業高/東京)
・風間花詠(2年/投外/右右/風花学院高/神奈川)
・小林依織(2年/捕/右右/梁幽館高/埼玉)
・高槻夜亜(2年/捕/右右/東祥大東祥/神奈川)
・近藤唯(2年/捕/右右/東雲高/茨城)
・石田彩花(1年/内外捕/右右/桜花朔莉高/福岡)
・山崎摩利(2年/内外捕/右右/能登工業高/石川)
その横には指導者たちによる分析結果の講評が記されていた。
・岡本美穂(2年/内/左左/旭川学園高/北海道)
打てるバッターとしても、内野手としての判断力も、それぞれ高い。残念なところは調子に波があること。適性ポジションは3。
・平沢萌恵(2年/内/右右/仙台高/宮城)
足の速い内野手で、守備範囲が広い。打撃は小技が苦手なのがネックだけど、それなりに打てる。適性ポジションは456。
・清藤奏子(2年/内/右右/福島大耀高/福島)
高い打撃力と、ライナー性の球に対する守備力が特徴的。引っ張り打ちの多い海外の強烈な打球対策に効果あり。適性ポジションは35。
・楠川由梨(3年/内/右両/星光学院高/栃木/主将)
言わずと知れたホームランバッター。守備力もそこそこ。適性ポジションは45。
・伊藤美亜(2年/内/右右/城東高/高知)
流し打ちで、味方の進塁支援が得意。守備位置も多彩に守れ、代打適性も高い。適性ポジションは3456。
・青木玲奈(2年/内/左両/須崎高/長崎)
左右両打ちのできるバッター。右は小技が甘いが、ミート率は高い。適性ポジションは3。
・岡田怜(2年/外/右右/新越谷高/埼玉)
快足に伴う走塁と守備範囲が売り。打撃では得点圏打率が8割超の打点マニア。適性ポジションは789。
・川原光(2年/投外/左左/新越谷高/埼玉)
多彩な変化球を持つ。特に上への変化の大きいストレートは武器。打撃では長打も小技も良く、使いやすい。適性ポジションは179。
・大野亜由子(2年/投外/左左/大阪桜雅高/大阪)
左の速球派で、高い奪三振能力を誇る。打撃は代表チーム内では相対的に低めに見えるが、それなりに打てる。適性ポジションは19。
・睦月久乃(1年/投外/左左/五島高/長崎)
カットボールとチェンジアップを駆使して打たせてとる野球をする。捕手のリード次第ではおお化けする可能性も秘めている。適性ポジションは1789。
・田崎真智子(2年/投外内/右右/本部海洋高/沖縄)
スタミナが良好で、先発最有力。制球力もそれなりに高く、こちらも捕手のリード次第で変わる。適性ポジションは15679。
・山谷彩(3年/投外内/右右/聖カメリア学院高/山口)
丁寧な投手で、カットボールとスライダーとシンカーを高い精度で投げられる。打たせてとる、三振、どちらも可能なオールラウンダー。適性ポジションは14567。
・川口息吹(1年/投外内/右両/新越谷高/埼玉)
この夏話題のジャイロボーラー。代表レベルでは捕手は難しいものの、全てのポジションをこなせるやばい選手。打者としては長打はもちろん、1打席20球近く粘ることもある程にカットに定評がある。適性ポジションは13456789。
・宇田川瑠菜(1年/投/右左/葛飾農業高/東京)
速球派。1年生で体格がまだ出来ていないことを加味すれば、将来的には日本人最速級も夢ではない投手。制球力は甘め。適性ポジションは1。
・風間花詠(2年/投外/右右/風花学院高/神奈川)
速球派。球質が重く、打たれても凡打にさせる威力がある。外野手としても強い肩でのレーザービームは圧巻。適性ポジションは1789。
・小林依織(2年/捕/右右/梁幽館高/埼玉)
埼玉の名門梁幽館で2年生ながらも正捕手となる程の実力派。特に牽制球を指して「依織バズーカ」と称される素晴らしい刺殺劇を見せつける。また、カットも得意としており、粘り強い打撃をする。適性ポジションは2。
・高槻夜亜(2年/捕/右右/東祥大東祥/神奈川)
こちらも名門東祥大東祥の正捕手。動体視力の高さから、捕球はもちろん、打撃でも貢献する。適性ポジションは2。
・近藤唯(2年/捕/右右/東雲高/茨城)
リードが上手く、投手の観察力が高い。適性ポジションは2。
・石田彩花(1年/内外捕/右右/桜花朔莉高/福岡)
捕手と野手の両方をこなす。打撃は豪快なスイングが持ち味。適性ポジションは235789。
・山崎摩利(2年/内外捕/右右/能登工業高/石川)
マルチポジション。視界が広く、守備時の走者・ベースコーチの動きをまで細かく気を配れる。適性ポジションは23579。
「はい、えー、まずはU-17国際平和記念野球大会の選手のルールと生活面について説明します。まずは年齢制限は知っての通りなので割愛します。
えー、チームメンバー…まぁ代表関係者として球場に入れるのは、指導者4人、出場登録選手18人の22人までです。選手20人の中から、各試合ごとに登録選手と補助メンバーを選出する必要があります。選出外となった方はホテル待機となりますのでご了承ください…まぁ大抵の場合は先発投手ともう1人という形になると思いますが…
パスポートの取得は皆さん個人持ちでお願いします。既に持っている方は、あちらに最大年末まであちらにいることになりますので、有効期限に気を付けてください。
それから、査証…ビザですね。開催国オーストラリアはビザが必要なのですが、大会関係者は団体特例ビザが発行され、入国手続きなども英語が話せない方も呼ばれる可能性もありますから、簡略化されますから安心してください。但し、空港で迷子になったら国境警備の兵隊さんに逮捕されちゃうかもしれないので、絶対にフラフラと離れないでください。
えー、生活上必要な消耗品は連盟の方から送ることが出来るので、申請書を出してください。例えば、生理用品とかだとブランド名から形とサイズまで記載してないと違う種類を買われちゃうかもしれないので、なるべく正確に細かく記載してください。
食事等は泊まる合宿所でも出ますが、えー、外で食べても構いません。門限と開門の時間さえ守っていただければ外出は自由です。まぁその場合は犯罪等に巻き込まれないよう、必ず複数人で行動してください。
その他、配ったこのしおりに従って行動するようにお願いします。私からは以上です。
最後に長本監督から一言で今回の説明会を終えます。監督、お願いします」
老婆…と言うには筋肉がきっちりと付いている老人が壇上に登る。彼女こそ、数々の偉業を成したスーパースターだ。選手としても、監督としても。
「チームとしての総合能力の高さが高校野球やシニアとかじゃあ求められる。だが、そんな綺麗にまとまっちまった野球をするガキが世界に出たらあっという間に潰されちまう。だからあたしはお前らを選抜する基準を『成績』よりも『尖り』を優先した。
ここにいる人間は何かしら尖ってやがる。あたしはそれを全力で保証しよう。
尖っていることが強さであるということ、それは幸いにも新越谷が体現してくれた。新越谷で尖ってないやつの方が少ないように見えた。ここにいるだけでも、主将岡田の足は陸上短距離の全国区並みだし、川口息吹は言わずと知れたジャイロボーラーに
全員が何かしら尖ってやがる。他にも成績的には呼ぶべきって選手は多いんだろうが、自信もっていけ。あたしが、世界で戦うために必要な存在だと認めたんだ。
胸張って、勝ちに行くぞ。野球大国アメ公は元より、他の国も蹴散らせ!」
とっくに70を超えている…もう80近い老婆とは思えぬ闘争心むき出しの熱いセリフが、私を含めた20人の選手の胸を打った。