【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
U-17桜ジャパンの先発陣を紹介する。
元々は田崎真智子さんと大野亜由子さんの2人エース体制に加えて、3番手の先発に山谷彩さんを、4番手に宇田川瑠菜さんを候補にあげた。
そして、右の抑えに私、左の抑えに睦月久乃さんを。
さらに、右のリリーフに風間花詠さん、左のリリーフに光ちゃんを。
それぞれ名前を上げた。
また、日程調整のためにリリーフ陣にも先発機会があるかもしれないこと、先発ローテの順番次第でもリリーフの可能性はあると言うことも話してはいたけど。
さて、とうとう迎えるアジア予選。
日本はアジア予選をシードで予選本戦に出場している。ちなみに、アジア予選本戦のシードは日本と韓国の2カ国で、くじ引きの結果、韓国がAブロック、日本がBブロックだ。
さて、そんなBブロックのメンツを紹介するわね。
日本、中国、フィリピン、スリランカ、タイ、インドの6カ国。
この中から3カ国が本線に出場出来る。
ちなみに、各地域の出場枠は以下の通り。
アジアが6、南北アメリカが10、ヨーロッパが9、アフリカが2、オセアニアが4+1。オセアニアは4枠だけど、開催国枠のオーストラリアを含めると+1になる。
そんなわけで、アジア予選本戦のBブロックは死の組とも言われている。
いや、日本にとっては全員勝って当たり前の相手なんだけど…フィリピン、スリランカ、タイ、インドの4カ国は、日本や韓国や台湾や中国といったアジア四強の次に位置する第2グルーブ。どこが勝つか分からない混戦模様なのだ。
だからこそ、日本や中国相手にもなるべく失点しないような試合をしてくることは間違いない。
日本はいかにしてそれを突き崩して点を取るかが課題…まぁ…その……まぁアレよ、ニュージーランドの方がよっぽど強いから。
そんなわけで、私たちはアジア予選に突入した。
この時、長本監督からとある指示が出された。
それは、試合で本塁打を意図的に打たないこと。いや、正確には本塁打を打った次の試合はスタメンを外すと言われた。どのような意図があったのかは分からないけど…
初戦はスリランカ。
全力で打つといつまでもイニングが終わらなそうな重厚打線と、大野さんの85球での完全試合が噛み合って11-0の勝利。
2戦目のインド戦。
1回2回で5点ずつ取ったあとは適当に流していたら、先発していた山谷さんがいきなり繋がった当たりを打たれ、流石に気を抜きすぎたかとみんなが気を引き締め直したところ、5回6回で合わせて13点をもぎ取り23-1で勝利。
3戦目はタイ。
4番手先発の宇田川さんがところどころ危ないシーンもありながらも、楠川さんの予選初ホームランなどで11-4で勝利。
ただし、これで4戦目の楠川さんのスタメンが消える。
4戦目はフィリピン。昔は日本を下すこともあった古豪ではあるけど…うん、お察しください。
先発は予備の先発として名前が上がっていた光ちゃん。
光ちゃんの打たせてとるスタイルがハマって完全試合となり、9-0で勝利。
そして、アジア圏で四強の1つである中国を迎える。
とはいえ、中国の野球事情はアジア四強に数えられてはいるものの、他の四強と比較すると大きな壁がある。正確には三強プラスワンなのだ。
具体的に言うと…多分、新越谷が夏の県大会3回戦で当たった馬宮クラスの実力しかない。だいぶ格下ではある。
そんな中国戦で、私は初のDHに指名される。
多分、私の打撃力と抑えとしての能力を最大に活かす方法の1つとして試しているのだと思う。
スタメンは以下の通り。
1 青木玲奈(一)
2 伊藤美亜(三)
3 川口息吹(指)
4 楠川由梨(遊)
5 岡田怜(中)
6 平沢萌恵(二)
7 小林依織(捕)
8 藤堂雨音(右)
9 山崎摩利(左)
先発 田崎真智子
現在、壮行試合からの通算成績で、打点トップはなんと怜先輩。6試合22打点のイカれた成績。2位は私で13打点、3位は楠川さんで11打点である。
後攻の日本は守備につくけど、私は指名打者なのでベンチでくつろぐ。
アジア予選Bブロックの会場は日本なので、それなりに球場の施設はしっかりしており、クーラーが体を冷やさないくらいに緩くかかっている。
1回の表、中国の攻撃。
1番、2番、3番と共に凡退で直ぐにチェンジ。
1回の裏、日本の攻撃。
1番、青木さん。
2-2まで粘ってショートゴロ。
ワンアウト。
2番、伊藤さん。
伊藤さんは、成績に加味されない特筆するべき特徴がある。
彼女の打球はイレギュラーバウンドや野手のミスなど、相手の
他にも彼女の打席では、フルカウントになった時は四球になりやすい傾向や、失投率が高かったり、『ラッキーガール』なのだ。
それは、世界でも起こる。
3球目、レフト前安打で単打となると予想された打球。落ちた瞬間にいきなりファールエリア方向に大きなバウンド。そのまま観客席に入っていったので、エンタイトルツーベースとなる。これも、ラッキーガールのひとつの形ね。
ワンアウト二塁。
3番、私。
後ろには楠川さんと打点マニアがいるので、敬遠はない。
中国相手に遠慮は無用と長本監督は言っていたので、遠慮なくレフトの頭を超えるアーチを放る。
ツーランホームラン。2-0で先制。
4番楠川さんと5番怜先輩は申告敬遠される。
ワンアウト一二塁。
6番、平沢さんには犠牲フライのサイン。
きっちりと仕事をする平沢さんのフライはライト奥に。
楠川さんはホームイン。快足怜先輩は際どいタイミングだったけど、捕手がボールをこぼしてセーフ。4-0。
7番、小林さん。
こちらには打順調整の出塁をサインで求められる。
次の8番は藤堂さんなので、打撃は期待できないためだ。
粘って粘って四球となり、一塁に出塁する。
8番の藤堂さんはレフトにフライを打ち上げて、スリーアウト。
2回の表、中国の攻撃。
4番を三振、5番をショートフライに打ち取るも、6番にライト前安打を打たれる。
7番はセカンドゴロでスリーアウト。
2回の裏、日本の攻撃。
9番、山崎さん。
今日の山崎さんは本職のキャッチャーではなく、レフトの守備についている。
今回の打順には面白くて単純な戦術で組まれている。
まず、9番、1~3番は、9番、1番、2番で出たランナーを安打で返す3番という意味が込められている。
そして、5~8番は犠牲フライ狙いの得点力打線。5番が出塁、6番が送るか安打、7番で犠牲フライ、6番安打の場合は8番も犠牲フライ…という感じ。
怜先輩が確実に出塁するには、得点圏にランナーを置く方が打率は良いので、その前には4番楠川さんがいる。いつも9番の藤堂さんが8番に置かれたのは、安打を打つのは期待値の低い藤堂さんだけど、フライを打つのは結構多いため。
そして、これが上手くいくと、おおよそ3~6点は取れるというわけ。初回はこれがハマって4点を取れた。
さて、山崎さんも安打を安定して生産できる打者ではある。
とはいえ、打率1.00なんて基本ありえない。
サードフライでワンアウト。
1番、青木さんは意表を突いたセーフティで出塁。
2番、伊藤さんはショートライナーとなるも、捕球エラーでワンアウト一二塁。
チャンスで回る私。
ライト線に飛ばして、タイムリー安打となる。
ワンアウト一三塁で、4番楠川さん。
中国は守備のタイムを取って、バッテリーと内野手と監督コーチを交えて何かを話す。恐らく、この場面で楠川さんと怜先輩をどう処理するか…それが問題となっているのだろう。
今回の予選Bブロックでは、上位3チームが本戦のグループリーグへと進む。
そして、4チーム毎のグループリーグの振り分け方が予選の順位で決定されるので、なるべく高順位で抜けたいのが中国の意思。
だけど、Bブロックではタイとインドが中国相手に善戦したことで、中国のBブロック2位通過が危うい。
今日、日本に中国が負けた場合、一足先に全試合を終了しているタイとの得失点差勝負となる。タイと中国の得失点差は試合前で9点。中国はこの日本戦で点差が9点の状態で負けると、今度は直接対決の結果になるためタイが2位通過となる。つまり、中国はこの試合で点差を8点以下に抑えたい。
そして、2回の裏、ワンアウト一三塁で日本が5点のリードをしている中、打順は4番の楠川さんと5番の怜先輩と続く。
中国に許される得点差は後3点。共産党の期待を背負った彼女たちに、こんな序盤で貴重な点を自ら押し出しで与えるのは許されない行為であった。
楠川さんは逃げ気味のボール球をセンター前に弾き返す悪球打ちでタイムリー。
ここで、妥当に敬遠しておけばまだ希望は繋がったろうに…
ワンアウト一三塁で続く怜先輩はライト線のフェンス際に特大のアーチを打ち上げ、野外球場特有の突風もあって、高校初本塁打となる。
得点が9-0となる。
急速に士気の削がれた中国を相手に31-0の滅多打ちで、日本は予選Bブロックを全勝で1位通過を果たした。
ちなみに、6回の裏で全員がピッチャーゴロを打ったのはわざと。長本監督が「もう面倒だからピッチャーゴロ打て。ピッチャーゴロ以外打ったら1日の水分補給は激苦健康茶な」と言ったためである。ちなみに、4人全員がピッチャーゴロだったけど、伊藤さんは例によってエラーで出塁してしまったうえ、続く私のピッチャーゴロで二塁まで進んでいる猛者である。
このチームで一番ヤバイのこの伊藤さんよね…光ちゃんと同じような小さくて愛くるしい体躯なのに、このラッキーガールは異常だよ!