【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第45話 ひとときの休憩

 

U-17国際平和記念野球大会本戦に出場するチームが10月の中旬頃、確定した。

 

アジア 6

Aブロック:韓国、台湾、フィリピン

Bブロック:日本、タイ、中国

 

南北アメリカ 10

Aブロック:ドミニカ、キューバ、アルゼンチン

Bブロック:カナダ、メキシコ、コロンビア、プエルトリコ

Cブロック:アメリカ、パナマ、ブラジル

 

ヨーロッパ 9

Aブロック:オランダ、ドイツ、スウェーデン

Bブロック:スペイン、イギリス、チェコ

Cブロック:イタリア、イスラエル、フランス

 

アフリカ 2

南アフリカ、ジンバブエ

 

オセアニア 4

Aブロック:グアム、アメリカ領サモア

Bブロック:ニュージーランド、パラオ

 

開催国枠

オーストラリア

 

 

本戦の抽選会のネット中継を新越谷の部室で見ていた芳乃が眉を顰める。

 

「これって…日本のグループリーグ、死の組だよ…」

 

グループリーグの抽選は予め決められた方式で行われる。シードのように、強いチームが分散するように決められている。

予め決められた4つの集団の中で、被らないようにA~Hグループに振り分けられ、それが4集団分で1グルーブ4チームでリーグが構成される。

 

第1集団が、アジア予選ABブロック1位、南北アメリカ予選ABCブロック1位、開催国オーストラリア、ヨーロッパ予選ACブロック1位の8チーム。

第2集団が、アジア予選Aブロック2位、南北アメリカ予選ABブロック2位、ヨーロッパ予選Bブロック1位、ヨーロッパ予選ABブロック2位、オセアニア予選ABブロック1位の8チーム。

第3集団が、アジア予選Bブロック2位、南北アメリカ予選Cブロック2位、南北アメリカ予選BCブロック3位、ヨーロッパ予選Cブロック2位、ヨーロッパ予選Bブロック3位、アフリカ予選1位、オセアニア予選Aブロック2位の8チーム。

第4集団が、アジア予選ABブロック3位、南北アメリカ予選Aブロック3位、南北アメリカ予選Cブロック4位、ヨーロッパ予選ACブロック3位、アフリカ予選2位、オセアニア予選Bブロック2位の8チーム。

 

まずは第1集団がくじを引く。

くじを引くのは各国の監督だ。

 

 

 

グループA

イタリア、ニュージーランド、南アフリカ、ジンバブエ

 

グループB

ドミニカ、ドイツ、イスラエル、フィリピン

 

グループC

オランダ、キューバ、チェコ、中国

 

グループD

アメリカ、イギリス、コロンビア、プエルトリコ

 

グループE

オーストラリア、スペイン、アメリカ領サモア、フランス

 

グループF

韓国、メキシコ、ブラジル、スウェーデン

 

グループG

カナダ、グアム、タイ、アルゼンチン

 

グループH

日本、台湾、パナマ、パラオ

 

 

 

芳乃が死の組と評したのは、日本にとってではなく、台湾とパラオにとってだ。今年の台湾とパラオはグループリーグ突破を目指せる戦力があった。だけど、日本の予選の出来を考えるとグループリーグ突破は難しいだろう。

そして、グループリーグ敗者復活戦に出れるのはグループリーグ2位のみ。パラオと台湾はグループリーグ2位争いで片方が敗退するのが確定しているのだ。

 

「台湾は投手陣が良いらしくて、韓国相手に3失点に抑えてるよ!パラオはニュージーランドに1点差で負けたけど、投手力のチームみたいだね!」

「どっちもも強そうだぜ…」

「あんたじゃあ打てなそうね」

「でも、レベル的にはいい相手かもしれないわね、私たちにとっては」

 

二遊間コンビの苦笑いを呼びそうなやり取りに、理沙先輩が冷静に分析する。

 

「言うなれば、せいぜい県大会クラスってことだね」

「私の球でも通じるかなぁ、ねえ、タマちゃん?」

「まぁ…国際試合球だから、その調整がきちんと出来たらね」

「ヨミちゃんは来年のU-18に呼ばれる可能性あるから、覚悟した方がいいよ!」

 

芳乃が珠姫と詠深に、春大出場への算段を話す。

 

「そっか…春の選抜に出場出来たら、U-18桜ジャパンの選考候補だもんね〜。でも、私が呼ばれるのかなぁ〜?」

「国際大会は指名打者制度があるから、ヨミちゃんも結構いい線行ってると思うよ!今回のU-17は、多分元々は招集人数の少なさを連投制限中の投手を外野手に起用する運用方針だったから…ね」

 

まぁ打撃を無視しても、今の詠深なら良くて宇田川さんのポジション…4番手先発かな。

 

新越谷の面々は、人数不足に伴う対外試合不可能で、公式戦を含む全ての試合を中止している。その分、各個人の問題点や課題点の克服に力を注いでいる。

 

詠深はフォーム改更と新変化球の習得。

珠姫はリードの複雑化と打撃力向上。

希は筋トレによる長打力向上。

菫は復調と体力トレーニング。

理沙先輩は球速・制球向上と芯を捉える能力の向上。

稜は出塁率向上のための左打ち特訓。

白菊はミート力向上。

芳乃は体力トレーニングと筋トレ。

 

菫のリハビリメニューと芳乃のメニューをほぼ同一化することで、菫の体調への配慮もしている。

理沙先輩と白菊と稜と希の4人は藤井先生の配球で動くピッチングマシンを相手に実戦形式の打撃練習。

 

 

そして、何より喜ばしいことに、新越谷の野球部にバスを初めとした多数の設備が配備されました!

決め手はもちろん日本代表に3人も選ばれたこと!

 

これを機に学校側も態度を改めることとなった。まだ2年生や3年生とはギクシャクしてはいるけど、これは大きいわね。

ちなみに、日本代表で私たちが活躍していることもあってか、新越谷野球部に寄せられる寄付金はうなぎ登りらしく、藤井先生が嬉々として手足のように操っているエアー式ピッチングマシンも新たに購入している。

 

「それにしても…良くもまぁHグループには日本の関係国が集まったわね」

 

パラオの野球は委任統治領時代に日本から伝来したもので、現地でもベースボールではなく「ヤキュウ」と呼ばれている。日本語らしき言葉が多数残っているのも面白いところで、「ダイジョウブ」「ベンジョ」「デンキ」「デンワ」などなど、全く同じ意味の言葉もあるほと。しかも、パラオの球場のスコアボードの回を記しているところには漢数字が書いてあるらしい。ちなみに日本以外で唯一日本語を公用語の1つに定めている国でもある。

台湾も言わずと知れた日本の元海外領土。特に有名なのは1931年の夏の甲子園で台湾代表が決勝まで勝ち上がったこと。もちろん野球も日本由来。オリンピック金メダルもとったことのある台湾は、一躍アジアの野球強国として日本、韓国に次いで名を馳せている。

パナマはさすが違うけど。

 

「そうだね。特にパラオは人口少ないのに、良くこれだけの選手が揃ったよね。確か2万人だったかな?」

「確か、ほとんどの人が親戚で、「あの人知ってる?」「あぁ、いとこだよ」ってなるらしいわね」

 

まぁ極論、血筋を辿れば誰もがみんな親戚だ…とはいえ、パラオの今回のチームの出来は異常。ニュージーランドと得失点差で迫るなんて…ね。

 

「順当に行けば、本戦トーナメントの初戦はカナダね」

「確かカナダは守備の堅いチームだったよ」

「柳大川越を思い出すわね」

「イメージは同じだよ!速球派と軟投派の2エースを上手く使ってるみたい」

「投手戦かぁ…となると、カナダ戦には大野さんを当てるのかな…」

「田崎さんって失投することが多々あるもんね。今のところ相手のレベルが低いことと、ラッキーが重なって誤魔化せてるけど」

 

芳乃の言う通り、純粋な投手能力では田崎さんより大野さんの方が良い。

田崎さんの良い点はとにかく球数が伸びても同じ調子で投げ続けられること。

防御率や被打率などでは大野さんの方が優秀なのだ。

 

「ねえねえ、せっかくお休みなんだし、クレープ食べに行かない?レイクタウンの池の方にクレープのキッチンカー来てるんだ〜」

「そうね、全員集合!これからクレープ食べに行くわよ!私が奢るわ」

「やった〜理沙主将代理、ゴチになります!」

「私チョコバナナがいいなぁ!」

 

ちなみに理沙先輩の懐が温かいのは、試合のないこの時期に単発のバイトを上手くこなしているから。

 

久々に揃った新越谷野球部は、連れ立って部室を後にした―――

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

10月14日。

再度招集されたU-17桜ジャパン。

アジア予選の会場は日本だったけど、とうとうこの日、世界へ羽ばたく日が来た。

 

多くの報道関係者やファンが詰めかける成田空港。

チャーター便に乗り込む私は、そっと光ちゃんの手を握る。

 

「笑って手を振って応えられる様な結果を残して来ましょう」

「うん、一緒なら、アメリカ相手でも勝てると思うよ」

 

光ちゃんの笑みに、幸せな気分になりながら、飛行機は離陸した。

 

およそ10~11時間の空の旅。

 

チャーター便は、前が通常配置のフルフラットシートとなっており、後ろがスタッガード式フルフラットシートとなっている。選手監督コーチのほとんどは後ろ側のスタッガード式フルフラットシートにいる。

まぁ私と光ちゃんは前の通常配置のフルフラットシートにいるんだけど。私たちみたいなカップル用途には向いているシートなのだ。

 

ちなみに、帯同するスタッフも、スタッガード式フルフラットシートの方に行っているので、付近にはせいぜいCAのお姉さんくらいしかいない。

 

だから、私と光ちゃんは思う存分、空の旅の間の時間いっぱいに使ってイチャイチャし続けるのであった。

 

なお、降りる時にCAのお姉さんからジト目で見られたのは気の所為でないと願いたい。

 

 

 

 

 

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