【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第47話 台湾戦

11月12日。

 

長本監督はホテルで昼食を食べ終わったところで、ベンチ入りメンバーとスタメンを発表すると言った。

 

「いいか?このチーム初の歯応えのある敵が台湾だ。これから発表するスタメンは現状で最も強力なチームとして作った。決勝リーグへ向けてお前らはどんどんアピールしてくれ。ベンチメンバーも、アピール機会はあるから、気張りや」

 

台湾戦スターティングメンバー

 

1 伊藤美亜(指)

2 平沢萌恵(二)

3 川口息吹(左)

4 楠川由梨(遊)

5 岡田怜(中)

6 川原光(一)

7 山崎摩利(三)

8 小林依織(捕)

9 藤堂雨音(右)

先発 睦月久乃

 

「――そして、ベンチ外は大野と田崎の2名。それ以外はベンチ入りだ。特にベンチ入りメンバーの投手陣は今回はブルペンデーを仕掛けるから、肩はそれなりに作っておけよ」

 

ブルペンデーというのは、本来の意味では先発投手を起用せず、中継ぎを小刻みに繰り出していく戦術のこと。このチームでは投手陣を先発と中継ぎと抑えといった役割分けを完全にすることは難しいので、単に小刻みに投手陣を使っていくという意味で使われている。

 

 

それから数時間後に球場入りした私たちは、先攻なので台湾の後に球場の練習を行う。

私も3番レフトなので、ブルペンではなく守備練習に。

…私、抑え投手なはずなのに、この球場のブルペンほとんど使ったことないんだけど。

 

そんな話はともかくとして、グループHの第3戦目、日本対台湾の試合がいよいよ始まる。

 

台湾は日本、韓国についでアジア勢3番手で、それ以下との大きな違いにプロ野球があるかないかという差がある。日本、韓国、台湾はプロ野球が存在しているのだ。

中国は中途半端で、実業団のようなものはある。野球で食べていける国はアジアではこの4カ国だけだと思う。

 

さて、そんな3番手の台湾ではあるものの、オリンピックでは金メダルをとったこともある爆発力はある。

 

そんな台湾を相手に、とうとう試合が始まる。

 

 

1回の表、日本の攻撃。

 

1番、伊藤さん。

 

9球を投げさせて相手投手の球筋をチームメンバーに分析させる。

10球目、森永ヘッドコーチからの打撃指示(サイン)。当てに行った球は芯を外し、ショートの守備範囲。だが、ショートが力んだか送球は若干逸れてファーストが捕球エラー。伊藤さんは無事に出塁する。

 

 

2番、平沢さん。

 

長本監督と森永ヘッドコーチが顔を寄せて頷きあった結果、森永ヘッドコーチから送りバントのサイン。

平沢さんはこれをきっちり送って、ワンアウト二塁に変える…と思いきや、伊藤さんは三塁へ暴走、これをタッチアウトにするべくサードへの送球が逸れて台湾ベンチに入った。

一塁から三塁方向に投げた投手。彼女が投げる時にはもちろん二塁は蹴っていたので、伊藤さんには2個の安全進塁権が与えられてホームイン。ワンアウト走者なしとなる。

 

 

3番、私。

 

先程のプレーで精彩をかいたのか、ボールが続きフォアボール。

一塁に安全進塁したところで、投手がこちらを見てないことに気づく。ってか誰も見てない?……サイレント進塁してみよう。

 

ごく当たり前みたいな顔して、普通に歩いていく。

ごく普通に。

 

二塁を踏んだ。誰も気にしてないから、多分野選かな。この手のサイレント進塁は盗塁扱いにしてくれると嬉しいのだけれど…ないものねだりね。

 

 

4番、楠川さん。

 

私のサイレント進塁にニヤッと笑ってる。

私は二塁から第1リードを取り、投手の牽制に備える。

1度牽制が入ってから、初球、大きく高めに外れてボール。

投球モーションに入ったところで、私は第2リードをシャッフルで取る。

そして、()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()2()()()()()()

それに気づいたキャッチャーがセカンドに送球。スタート!私は三塁へ走る。

捕手牽制を利用したディレイドスチールだ。

 

捕球したセカンドからサードへの送球は間に合わず、私は三塁に。ワンアウト三塁。

 

2球目、ようやく入ったストライクゾーンの球に反応した楠川さんだったけど、打ち損じてセカンドゴロに。

セカンドは一塁送球して楠川さんがアウト。

その隙に私はホームインしてツーアウトに変わる。

2点目。

 

 

5番の怜先輩もセカンドゴロでスリーアウト。

 

 

 

1回の裏、台湾の攻撃。

 

投げるのは睦月久乃さん。

カットボールの魔術師で、配球のほとんどはカットボールという異色の投手。

 

ブルペンデーなので、睦月さんは全力投球。

 

三者凡退に抑える。

 

 

 

2回の表、日本の攻撃。

 

光ちゃんは三振、山崎さんはライトフライ、小林さんは三振だけど振り逃げで一塁、藤堂さんはセンターフライでスリーアウト。

 

このチームでは初めて一巡目無安打で終わる。

……無安打で2点リードってなんぞ。

 

 

 

2回の裏、台湾の攻撃。

 

4番からの打順。

センター前に詰まった当たりで単打を打たれる。

 

5番もフルスイングでライト線に詰まった当たりを出して、連続安打。ノーアウト一三塁へ。

 

ノーアウト一三塁のピンチだけど、長本監督は1点を失ってもゲッツーを取るシフトを敷くようにサインを出してくる。

長本監督の采配通り、6番はピッチャーゴロを打ち、1-4-3のダブルプレーとなる。その間に三塁ランナーはホームインして、点差が1点になる。

 

7番はサード山崎さんがトンネルしたせいで二塁に出塁。

またしてもピンチとなる。

ここで長本監督は交代のカードを切る。

1年生の速球派宇田川さんをマウンドに上げる。

 

8番を相手に、何とかショートゴロで凡退させてスリーアウト。

 

 

 

3回の表、日本の攻撃。

 

1番、指名打者の伊藤さんからという好打順。

伊藤さんは叩きつけて大きなバウンドとなったゴロが落ちてくるまでに一塁に走り込む技あり内野安打を打つ。

 

ちなみに、ようやく出た本日初の日本の安打だ。

 

 

2番、平沢さん。

盗塁に走った伊藤さんを援護する空振り。ノーアウト二塁となる。

 

台湾としても、イカれた数字を持つクリンナップ3人に無死で回したくないので、ワインドアップの全力投球。それを見た伊藤さんはさらに三塁へ走り込んでセーフ。

 

カウント1-2から4球目、投球モーションから平沢さんはバントの構えに。ファーストとサードが前に突っ込んでくる。

三塁ランナー伊藤さんも走り始める。

投げた投手も前に走り出す。

平沢さんはその投手の頭を超えるプッシュバントを仕掛けて走り出す。

これぞ日本の機動力野球…一塁平沢さんはセーフ。伊藤さんもホームインで1点を追加する。

 

 

3番、私。

 

2球待ってから、3球目に森永ヘッドコーチからエンドランのサイン。

ライト線に飛ばしてツーベースヒット。一塁ランナーの平沢さんはその足とエンドランの指示で好スタートを切っていたこともありホームイン。4点目。3点差に広げる。

 

 

4番、楠川さんは大きく打ち上げて、ファーストファールフライ。タッチアップした私は三塁を踏んだ。

 

 

5番、怜先輩。

的確に外野に飛ばした打球はセンターフライで犠牲フライとなる。5点目。

 

 

6番光ちゃんはレフト前に安打を打つものの、7番山崎さんはセカンドゴロでスリーアウトとなる。

 

 

 

3回の裏、台湾の攻撃。

 

9番打者からで、ライト前に安打を出してノーアウト一塁。

 

台湾はここから好打順で、応援席から押せ押せムードが伝わってくる。

宇田川さんはそれに飲まれたか2人連続で四球を与えると、ノーアウト満塁のピンチ。

ここからクリンナップは厳しい。スタンドのムードは台湾のチャンスに盛り上がっている。

 

ここでタイムをとった日本は、ベンチから森永ヘッドコーチが出てきて、バッテリーに話しかける。多分続投。打たれても、4点差がある分、満塁本塁打でも同点までだ。このピンチを乗り越えることにこそ、宇田川さんの成長がある。

 

3番を持ち前の速球で三振に打ち取る。

 

だが、4番にスリーベースを打ち込まれて1点差に詰め寄られる。

なおもワンアウト三塁のピンチ。

 

5番を相手に、何とか凡退…かと思いきや、ショート前に転がった打球を捕球した楠川さんが珍しくジャックル(お手玉)。国際試合で、応援席がアウェー感漂う中で慌てた楠川さんはファーストへの送球エラー。バックアップした藤堂さんは流石の守備力を見せたけど、ホームインは防げず。何とかバッターランナーは一塁に留めたという状態だった。

 

長本監督はこれでも宇田川さんを下げるつもりはないようで、6番をセカンドゴロでダブルプレーに打ち取ってスリーアウト。

宇田川さんは半泣き。楠川さんも申し訳なさそうに励ましている。

 

ベンチに悪い空気が流れる。

 

「まだ中盤!これからだぞ!落ち着いて、いつも通りに!」

 

新越谷で、ムードの力をよく知っている怜先輩が声を張っている。ちなみに、怜先輩は桜ジャパンで実質的な副主将な扱いを受けてる。

 

 

 

4回の表、日本の攻撃。

 

台湾のエースは尻上がりに良くなってきてる。

8番小林さん、9番藤堂さんが凡退。

1番伊藤さんはイレギュラーバウンドで内野安打となって出塁するも、2番平沢さんはショートゴロでスリーアウト。

 

 

 

4回の裏、台湾の攻撃。

 

7番を三振に打ち取り、8番はレフト前安打。

9番はフルカウントまで粘ったものの、三振。ここで盗塁を仕掛けた一塁ランナーも依織バズーカで刺殺。

 

この回、両チーム共に無得点となる。

 

 

 

5回の表、日本の攻撃。

 

先頭は私。

レフトフライを打ち上げるも、グラブで弾いたレフトのおかげで二塁まで進む。

 

 

4番、楠川さん。

さっきのエラーから調子が乗らないのか三振でワンアウト。

 

 

5番、怜先輩。

 

初球で、ディレイドスチールを仕掛ける。楠川さんの時に走らなかったので、台湾側も走ると思ってなかったようで、余裕で三塁に。

2球目、ライト前安打を放った怜先輩のタイムリーで勝ち越し点を取る。

 

 

6番、光ちゃん。

怜先輩の足の速さを信じて、三塁線方向にセーフティバント。成功して、一二塁になる。

 

 

7番山崎さんはレフトフライで、ランナー一三塁に。

8番小林さんはライトに大きなフライを打つも、ギリギリフェンスに届かずライトフライとなり、スリーアウト。

 

 

 

5回の裏、台湾の攻撃。

 

ここまで2.1回を投げた宇田川さんを降板。

新たに山谷彩さんが登板する。

 

山谷さんは突出して特徴のある成績は残してないけど、オールマイティ性と安定感は抜群で、3番手先発投手として縁の下を支える投手だ。

 

きっちり5回を3人で切る好投を見せた。

 

 

 

6回の表、日本の攻撃。

 

尻上がりの台湾エースの90球を超える力投に、9番藤堂さん、1番伊藤さん、2番平沢さんが凡退する。

 

 

 

6回の裏、台湾の攻撃。

 

山谷さんを降板させて、風間花詠さんが登板。

重い玉を武器に、2つ安打を浴びるも、無失点で回を終える。

 

 

 

7回の表、日本の攻撃。

 

1点差のリードのまま、日本の攻撃に入る。

3番の私は台湾ベンチから申告敬遠が行われる。ノーアウト一塁。

 

 

4番の楠川さんは勝負。

初球、低めに外れてボール。私は走って二塁でクロスプレー…セーフで盗塁成功。ノーアウト二塁になる。

その後、楠川さんはショートゴロに倒れる。

 

 

5番の怜先輩と6番光ちゃんはベンチから申告敬遠。ワンアウト満塁のチャンスに。

 

 

7番山崎さんに代えて代打穴吹さん。

レフト前に当たりを出して、各走者塁を1つずつ進めるシングルヒットで1点追加。なおも満塁のチャンス。

 

 

8番小林さんに代えて代打岡本さん。

ライトフライで犠牲フライ。1点をさらに追加。

 

 

9番藤堂さんは代打が送られず、セカンドゴロでスリーアウト。

 

 

 

7回の裏、台湾の攻撃。

 

ショート楠川さんに代えて清藤さんが入ってサード。

レフトの私がピッチャー。

DH伊藤さんがショート。

代打穴吹さんがレフト。

代打岡本さんに代えて近藤さんが入ってキャッチャー。

指名打者が解除される。

 

8番を三振に打ち取り、9番はピッチャーゴロ、1番はセカンドゴロでスリーアウト。

 

ジャイロボールが実力のあるチームにも対応出来ることが分かって良かった。

 

試合終了。

8-5で日本の勝利。

 

 

勝ち投手は宇田川さん。

私にセーブが付く。

 

今日は不振が課題と言える。内野安打の割合が多すぎ。

はてさてどうしたものか…






二つに分けるつもりが、あっという間に書き上げちゃったのでそのまま投稿します笑
感想・評価・お気に入り登録、お待ちしております!

8月7日の息吹ちゃんの誕生日には、誕生日特別記念話を投稿予定です!是非お楽しみに!
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