【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
各グループの最終戦を終えて、首位確定。首位は無条件で決勝リーグ進出だ。
その後に3イニング制のランダム抽選による勝ち抜きプレーオフが行われて、勝者2チームも決勝リーグへ進出する。
決勝リーグ進出チームは以下の通り。
グループA:イタリア
グループB:ドミニカ
グループC:キューバ
グループD:アメリカ
グループE:オーストラリア
グループF:韓国
グループG:カナダ
グループH:日本
敗者復活:オランダ
敗者復活:パラオ
プレーオフ通過とはいえ、パラオがベスト10に勝ち残ったことに、世界中の野球ファンがどよめいた。
12月4日、決勝リーグが始まる。
決勝リーグは3回総当り。同じ相手と3連戦して、中3日を挟んで次の相手と当たる。
投球制限があるので、必然的に投手の層が厚いチーム有利となる。
「これから各試合の先発投手を発表する。1試合目、大野。2試合目、田崎。3試合目、山谷。この先発陣に何らかのトラブルがあった場合は基本的に宇田川を入れる。先発は必ず90球未満で降板させるのでそのつもりで投げや」
長本監督が決勝リーグ前の戦術ミーティングで話した投手の投入構想だ。
同じ相手と3連戦後に、中3日の休養日があるので、90球未満ならば先発ローテーションが守れるということ。
これまでの先発はきちんとローテを守ってきたわけではないけど、1番手が田崎さんで、2番手に大野さん、3番手に山谷さんと言った具合だった。これは調子の好不調に左右されずらい田崎さんを重用していたということ。
でも、きちんとローテを行う必要がある本戦リーグにおいては、『抑える力』を優先して、大野さんが1試合目のローテに入る。そして、3試合目の『シメ』の先発に、安定感に信頼のある山谷さんを入れる。
実に理にかなったローテである。
1回戦の対戦カードは以下の通り。
イタリア対オランダ
ドミニカ対日本
キューバ対カナダ
アメリカ対韓国
オーストラリア対パラオ
注目カードは優勝候補本命のアメリカと穴とも言われる韓国が初っ端から対戦する。
ちなみに、本命アメリカ、対抗日本、穴韓国、大穴キューバ、注目ドミニカと評判だ。
ちなみに、南北アメリカ予選でキューバとドミニカのカードで、キューバ圧勝の予想が外れて、接戦を引き分けて得失点差でドミニカが首位に立ったという経緯もあり、ドミニカの注目は急激に上がっている。
そんなドミニカ相手の私たち日本である。
大事な初戦。
スタメンは以下の通り。
1 伊藤美亜(遊)
2 平沢萌恵(二)
3 川口息吹(中)
4 楠川由梨(指)
5 岡本美穂(一)
6 穴吹芽衣(左)
7 清藤奏子(三)
8 小林依織(捕)
9 藤堂雨音(右)
投手 大野亜由子
左肩の痛みが抜けたが、守備練習が直前に取れなかったことから、楠川さんは指名打者となって、指名打者予定だった伊藤さんがショートに入っている。
また、怜先輩は野手陣休養も考えてベンチスタートだ。
注目株であるドミニカと対抗馬の日本の試合とて、注目度は高い。
その初戦、日本は岡本さんと穴吹さんのアベック砲もあり、5-1で勝利。
2戦目は4回で田崎さんが同点に追いつかれ、5回6回をDHだった光ちゃんに継投。そこから3点を追加して、最終回で私に継投。光ちゃんに勝ち星が付き、私にセーブが付いた。
3戦目、山谷さんが先発登板。1回の裏で1点、4回の裏で1点の、合わせて2点と打線は微妙な流れだったものの、山谷さんと睦月さんの継投で完封。睦月さんにはセーブが付く。この試合、私はベンチから出なかった。
1回戦を終えて、3連勝で首位に立つのは日本、アメリカ、キューバ。
得失点差で1位アメリカ、2位キューバ、3位日本の並び。
続いて4位に2勝1敗のイタリア。
そこに1勝1敗1分のオーストラリアとパラオが得失点差でオーストラリア5位、パラオ6位に付ける。
中3日を挟んで、2回戦に移る。
2回戦の対戦カードは以下の通り。
オランダ対日本
イタリア対カナダ
ドミニカ対韓国
キューバ対オーストラリア
アメリカ対パラオ
2回戦の大番狂わせが2つ起こる。
キューバ対オーストラリアで、ホームゲームなのが背中を押したか、キューバ相手に黒星を2つ押し付ける大健闘。順位が浮上する。
そして、パラオもユキが登板した2試合目で白星を上げて、野球大国アメリカ相手に1勝をもぎ取っている。
日本とオランダのカードは順当に日本が3連勝。単独首位に躍り出る。
まぁ順当にとはいえ、3試合目の先発ローテである山谷さんは登板せずに宇田川さん-風間さん-睦月さんの継投で3失点を喫しており、打線も微妙に4得点と伸び悩んでいる。
ここまで6試合を終えて、日本は全勝、単独首位。
とはいえ総得点23点は、2位に付けているアメリカの63点、3位のキューバの48点、4位のオーストラリアの37点と、他のチームより大きく劣っている。
世界に通じる打線を常にスタメンにできるほど、日本の選手層は厚くない…ということだ。
事実、ここ数試合で、私、楠川さん、怜先輩の並びはあまりない。疲労への配慮と戦力均一化によって、これまでの爆発的な火力だった打線の繋がりが切れているのだ。
とはいえ、悪いことばかりではない。
ようやく岡本さんと穴吹さんの調子が上向いてきて、山崎さんを含むこの3人が上位打線と下位打線を繋ぐ役割を果たし始めている。
現状では、私、楠川さん、怜先輩、伊藤さん、岡本さん辺りが
青木さん、伊藤さん、平沢さん、光ちゃん辺りが1番2番。
6番に穴吹さん、山崎さん辺りが良く入れられてるように感じる。
安定してきた感覚はチームの全員が持っていて、失点の少なさもそれを物語っている。
さらに3回戦もカナダ相手に3連勝をあげた日本は、首位独走。
とはいえ、何事もなく…という訳でもなく、1試合目では中盤に突入するという場面でピッチャー強襲を受けた大野さんを下げて風間さんを緊急登板させたというハプニングがあった。幸いにも翌日には打球を受けた右腕の痺れもとれたが、ゾッとするプレーだった。
だけど、ゾッとするプレーは3試合目にも起こる。
7回の表、カナダの攻撃で、7-5の2点リードを守れば3連勝の日本は抑えに私を起用。
この時、スタメンマスクの小林さんは代打で下がっており、2番手に入った山崎さんは私のジャイロ捕球をたまにとちることがあるため、3番手の近藤さんがマスクを被った。
まずはワンアウトを取ったまでは良かったのだが、代表戦初被安打を受けた私は次の打者の初球で手を滑らせてしまい、ショートバウンドで近藤さんの喉元へ。残念なことに、マスクとプロテクターの間を抜けて…医務室に運ばれました。ちなみにチームメイトから付けられたあだ名は『捕れない魔球』だって。
日本は専業捕手2名、兼業捕手1名の3人捕手体制。既に2人下がっている中、近藤さんが下がるので、捕手がいない状況となってしまった。
という訳で、私が責任取ってマスクを被ることに。まぁ私以外経験者いないし。ピッチャーは私とのバッテリー経験を加味して光ちゃんが登板した。
私がマスクを被ったことでカナダの人達や観客の多くが目を剥いていたのは笑った。
一応、近藤さんは戦線復帰可能だった。ありがたやー。
謝ったら、あれは自分が受け間違ったせいだからって、逆に本業捕手がいなくなってしまった状況を支えたことを褒められた。近藤さんってなんかバブみ感じる人なのよね…これはこれでありね。
ちなみに、近藤さんの悩みは胸の大きさで、大きすぎてプロテクターが浮いてしまい、去年の夏の大会ではその隙間にファールチップが飛び込んで肋骨を折ったらしい。
まぁそんなことはさておき、2位アメリカとは1ゲーム差。
特に、1試合平均11.22点をあげているアメリカの火力を相手に、日本の投手陣が機能するかは未知数だ。
私は次にぶつかるオーストラリアの資料を見ながら、ぼやっと芳乃から貰ったアメリカの研究資料を思い出すのだった…