【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第50話 決勝リーグ中盤戦概略

4回戦は日本はオーストラリアとのカード。

 

日本の1戦目のスタメンには楠川さんの名前はない。

 

1 伊藤美亜(遊)

2 川原光(一)

3 川口息吹(指)

4 岡田怜(中)

5 穴吹芽衣(左)

6 平沢萌恵(二)

7 清藤奏子(三)

8 小林依織(捕)

9 藤堂雨音(右)

投手 大野亜由子

 

地味にフルスタメンな藤堂さんは異常な疲労回復速度だけど、守備職人としても酷使可能な外野手がいることは非常に助かる。

…まぁ元々の構想では指名打者を使わずに投手やあまりの捕手を使う予定だったのだから、似たようなものかも。

 

この試合で、先頭打者の伊藤さんは日本の高校野球ではあまりいい顔をされないカット打法を披露した。もちろん、特別に変な打撃フォームではなく、ただコンパクトなフォームなだけなので、日本の高校野球でもアウトにはならないと思うけど…チームへのジャッジが厳しくなるのは自明なので封印してたのだとか。

先頭で17球粘った伊藤さんだけど、明らかにバッテリーが諦めたようなボール球までカットしてたのは笑った。オーストラリアの捕手の絶望感が私にも伝わってくるほど。

 

1試合目は8-0で白星を上げる。

 

2試合目はメルボルンの夏にしては珍しく土砂降りの雨が夜に降り始めた。

メルボルン近郊で同時に行われている5試合のうち、ドミニカ・パラオ戦、カナダ・韓国戦、イタリア・キューバ戦の3試合が降雨ノーゲーム。残りのオランダ・アメリカ戦と日本・オーストラリア戦は降雨コールドゲームだ。

 

これまでも小雨は多々あったものの土砂降りは初めてで、特にコールドゲームの方の2試合は途中から泥仕合となった。

 

アメリカとオランダはゴロが伸びずに内野安打となることが多発し、オランダはアメリカ相手にタイムリー内野安打で8打点を上げて、1点差で勝ち星を上げた。

日本は小雨だった序盤こそ優勢だったものの、だんだんと雨が強くなる中で田崎さんの制球が乱れて逆点され、その勢いのまま敗戦した。

ちなみに、長本監督は降雨ノーゲームか降雨コールドがあると睨んで、投手は雨天の中故障しやすい環境でも故障に強いという信頼がある田崎さんをひたすら投げさせ、そのおかげで3試合目ではオープナーを飾った睦月さん、リリーフの風間さんと光ちゃん、控え先発の宇田川さん、そして私に本来の先発の山谷さんという、ほぼ1人1イニングを守る(山谷さんだけ2イニング)ブルペンデーを決行。見事勝利を掴んだ。

 

降雨ノーゲームとなった3試合は、最終戦の9回戦後に行われることに。

 

 

続く5回戦は注目カードにして、直接対決の結果が問われる日本とキューバのカードがある。

 

韓国対オーストラリア

カナダ対アメリカ

日本対キューバ

オランダ対ドミニカ

イタリア対パラオ

 

日本対キューバの試合については後回しにして…

韓国とオーストラリアは、韓国の2勝1分。

カナダ対アメリカは順当にアメリカが3連勝。

オランダとドミニカは、ドミニカが2勝1分。

イタリア対パラオは、不戦敗含むパラオが2勝1敗。

 

 

さて、注目カードの日本対キューバ。

大事な1試合目。

 

初回4点を上げ意気揚々な日本だったものの、大野さんが調子を崩したようで3回に2点、4回にはソロホームランを浴びて3失点で降板。3回で日本も1点追加して2点差になるも、それから点は入らず。

続く風間さんは4回から6回までをピンチこそあったものの無失点で凌いだが、7回の先頭打者を相手にファールフライをエラーで生存させると、その後その打者は安打で出塁。続く打者も安打で一二塁に。さらにライトフライのタッチアップで一三塁に。

ワンアウト一三塁で、2点差。この場面で登板するのは抑えの睦月さん。

ショートゴロで本塁生還を出すも、1点は守り抜いてセーブした。

 

2試合目は、前日にリリーフで登板制限にかかった風間さんがベンチから外れ、先発ローテ内の山谷さんが指名打者として参戦。打者としても優秀な山谷さんは1安打2犠飛で2打点。

昨日と同じく、4点を初回に上げてから追加点3点を上げながら逃げ切る形で勝利。

 

3試合目はキューバのエースが登板して、山谷さんとの投手戦に。

今回は指名打者を指定せず、山谷さんを5番投手として打順に組み込む。

なかなか点が入らずゼロ点だったものの、6回の表、とうとう均衡が崩せた。先頭打者の1番山崎さんが単打で出塁し、2番平沢さんは送りバント成功でワンアウト二塁。3番の私も単打で一三塁。4番楠川さんはボール気味に悪球打ちはせず、5番投手山谷さんに回す。満塁で山谷さんは期待に応えて左翼方面に本塁打を放った。

一挙4点を加えた後、日本は6回7回をきっちり守って3連勝とし、山谷さんは完投勝利を飾った。

 

 

 

中盤戦も後半に入り、6回戦へ。

 

日本の相手はイタリア。

イタリアは日本の野球をかなり研究してきており、機動力で翻弄する攻撃を見せる。

 

初戦は大野さんが降板してから、光ちゃんがリリーフで崩れたのと内野のエラーが重なって2失点。打線が繋がらなかったこともあり、2-3で敗戦。

 

2試合目…ここで事件が起こる。

ここからはこの2試合目を細かく話すことにする。

 

先攻の日本は以下のスタメンで開戦する。

 

1 伊藤美亜(遊)

2 平沢萌恵(二)

3 川口息吹(左)

4 岡田怜(中)

5 山崎摩利(三)

6 川原光(指)

7 岡本美穂(一)

8 小林依織(捕)

9 藤堂雨音(右)

投手 田崎真智子

 

日本の主将で主砲の楠川さんはベンチスタート。

 

 

 

 

1回の表、日本の攻撃。

 

1番、伊藤さん。

球筋を見極める待球の後、あまり調子の良くなさそうな変化球を叩きつけて、フライのように大きく跳ね上がるバウンドで内野安打。

 

2番、平沢さん。

安定に送りバント成功でワンアウト二塁へ。

 

3番は私。

抜きの甘いカーブをセンター前に返して、ワンアウト一三塁。

 

ワンアウト一三塁のチャンスで、4番、怜先輩。

ツーストライクに追い込まれてから、3球見逃してフルカウント。選球眼も、この日本代表での練習や国際試合を通じて大幅に伸びた部分。流石、怜先輩。

その後、右中間を貫く打球で伊藤さんと私は生還。怜先輩は持ち前の快足でツーベースをスリーベースにする好走塁。

ワンアウト三塁で、なおもチャンス。

 

5番、山崎さん。

5球投げさせて、平行カウント2-2。

そこからいい当たりを三遊間に打つ。怜先輩は三塁コーチに入っていた石田コーチのゴーの声にスタートを切る。走塁の良い怜先輩だからこそ、ここは仇となる。

サードが打球に反応するも、グラブで弾く…が、それを落とさずにショートが捕球してキャッチアウト。ショートライナー扱い。

打った段階でスタートを切っていた怜先輩にはもちろん帰塁義務(リタッチ)が発生するも、好スタートをしていた怜先輩は帰塁アウトとなってスリーアウト。

 

 

 

1回の裏、イタリアの攻撃。

 

ピッチャー田崎さんは不調でも球筋に影響が少ない鉄腕投手として知られている。周期的に今日は不調日のはずなんだけど、ピルを使っているおかげもあるのか重そうには見えない。

走る球もコントロールこそ平凡だけど、いい球を投げてる。

 

初回はゼロで抑えて2-0での立ち上がりとなる。

 

 

 

2回はイタリアが初ヒットを打つも、盗塁を依織バズーカで刺殺。

両者無得点に終わる。

 

 

 

3回の表、日本の攻撃。

 

1番、伊藤さん。

ライトエンタイトルツーベースでノーアウト二塁へ。

 

 

2番、平沢さん。

ベンチからの待球サインに、平沢さんは適度にカットしつつ四球を選ぶ。ノーアウト一二塁。

 

 

3番、私。

ベンチから初球ランエンドヒットの指示。

ボール球だったので見逃して重盗成功でノーアウト二三塁に変わる。カウント1-0。

2球目、ここが事件発生点だった。

 

ベンチからの指示はヒットエンドラン。きっちりとライト前に流し打つ。が、ライトの好守備で二塁ランナーの平沢さんが三塁本塁間で挟殺(ランダウン)プレーに持ち込まれてしまった。キャッチャーからサードにボールが渡ったところで、平沢さんも切り返し…だが、ここで三塁側ベンチにいたみんなでさえ聞こえるほどのブツッという音と、一拍遅れた平沢さんの悲鳴によって球場全体がザワつく。

インプレー中は日本国内のルールとは違い絶対にタイムがかからないので、イタリア側の配慮もありすぐに平沢さんをアウトにして、私も二塁でストップする。

そこで責任審判でもある三塁審がタイムをかけて、救護班を呼ぶ。

桜ジャパンのベンチ入りメンバーがすぐに平沢さんの周りに駆けつける。

平沢さんの顔は苦痛に歪んでいるし、苦悶の声が漏れている。

 

…多分だけど、前十字靭帯逝ってる。

男子の場合は接触プレーで起こりやすいので、野球ではあまり損傷することは少ない。

逆に、女子の場合は骨盤の横幅が広いこともありX脚気味になりやすく、さらに膝関節も脛骨上部の平らな関節面(大腿骨と接する面)の体の後方に向かって下がる傾斜の角度が男子より大きいという傾向もあり、大腿骨経由で体重の負荷がかかるときに脛骨が前方にずれやすい。

 

平沢さんの足にその場で痛み止めが打たれる。

どうやら右足のようだ。

 

前十字靭帯再建術を受けた場合、スポーツレベルに復帰するまでに1年近くのリハビリを要する…通常のリハビリに3ヶ月から6ヶ月、スポーツ復帰までに6ヶ月以上と言われている。しかも、どれだけ努力しようとも復帰率は60~70%程と言われているため、平沢さんは痛みの山を超えたところで絶望に打ちひしがれると思う。

世代別国家代表に選ばれるほどの実力を持ちつつも、プロ入りは一気に遠のいたのだから…

 

 

試合を再開して、直後に4番の怜先輩が右中間を切り裂くツーベースでさらに追加点をあげた他には点は入らず、4-0で日本の勝利となったものの、日本は大きくダメージを負った。

 

 

3試合目。

小技使いの平沢さんが離脱したことで、2番の打順には小技も上手い光ちゃんが投入された。また、指名打者も指名せず、山谷さんを5番投手として投入。

初回に波に乗った日本の3点先取から両者点の動きは無く、山谷さんは4.2回、光ちゃんが1.1回、私か1回の継投で完全試合(パーフェクトゲーム)となった。

 

この日の内に長本監督を中心とした指揮官陣は、全日本野球協会に予め調査していた予備メンバー表から補充メンバー1名を緊急招集を依頼。

この大一番で呼ばれたのは…

 

 

 

 

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