【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
川口息吹・芳乃姉妹生誕祭!
おめでとう、2人とも!
目次
・光ちゃんとのチョメチョメ
・バッティングゲーム
以上
☆☆☆☆☆
・光ちゃんとのチョメチョメ
8月7日。
今年も西宮にある阪神甲子園球場で開催されている全国高等学校野球選手権大会。
2年連続3回目の出場を果たした新越谷高校の面々は、去年と同様に小学校を借り切り、合宿形態での生活をしていた。
「ここに来ると思い出すわね。あの時のこと」
「そっか々…ちょうど1年になるんだ…」
「まぁ甲子園の日程は1日ズレてるけどね」
今年は8月6日開会式。去年より1日早い。
「まさかあのマンガと同じ告白されるとは思わなかったわよ」
「でもその割にポケットにボール持ってたよね?」
「た、たまたまよ!たまたま!」
「球だけに?」
「さむっ」
光ちゃんのオヤジギャグ…まぁこの世界ではオヤジという言葉はないのだが、とにかくギャグが寒くて身震いする。夏なんだけどなぁ…
「もう1年なんだ…早いわねぇ…昼はスイーツ食べて、夜はみんなにお祝いしてもらって…夜中はこうして2人で密会って。あのミット貰ったけど、結局捕手やらなくなっちゃったわね」
「あはは…U-17の時に稜ちゃんが控え捕手の練習もしてたもんね。あのミット使ったのってカナダ戦3戦目が最後?」
「そうね。今はボロボロにしたくないから保存加工した上で家に飾ってあるわ」
新越谷での私の立ち位置は、抑え投手と好打者という2点に絞ったもの。
今となっては色んな守備位置を守れるユーリティープレイヤーとしては捕手はもうやってない。大抵、左翼手か二塁手。
新越谷では同世代最高中堅手の主将がいるし、右翼手は打撃才能を開花させた白菊が専門で構えてるし、一塁手と三塁手は新越谷の誇る安打製造機と主砲の定位置だし…遊撃手は稜が捕手に回らない限り稜が1番遊撃手でスタメンはほぼ確定だ。
稜は足の速さと捕手能力を磨いて、今となっては控え捕手兼代走として活躍している。主将並に速くなったその脚に加えて、直感力に優れた稜のリードやスタートによって、盗塁だけで言えば主将を超えるかもしれない存在になってる。
というわけで、私は基本的に左翼手か二塁手で、もう1人出てくる選手によって変わる感じ。例えば菫なら二塁手に入るから私は左翼手、光ちゃんが左翼手に入るなら私は二塁手…みたいに。
「去年よりも人も増えたよね」
「あの時は応援に来てくれたのも1年生ばっかりだったわね…新しく入ってきた1年生も野球で注目してくれた子達が多くて、正式に応援団を組織することになったのも驚きよ。他の高校とは違って、吹奏楽部から独立した応援演奏団も組織されてるし…」
「チアガールも、ね」
光ちゃんがジト目で私を見る。
うっ…チアの子達をチラチラ見てるのバレてたか…
「そ、そんなにチアガールが好きなら…私、着てもいいよ?」
…………
「……ほわぁっ!?」
そんなの即夜戦じゃない!?
チアガールの光ちゃん…うん、その場で押し倒す自信しかないわね。
「そんなにチアガール好きなんだ…」
「そりゃぁね。光ちゃんがあんなえっちな服着たら…ね?」
「……チアガールってえっち?」
「うん」
「…よくわからないけど、今度チアの班長さんに言って服借りてくるね」
「是非是非!」
そんなバカ話も交えつつ、私と光ちゃんはここ一年半の思い出を語り尽くして行った。
まるで漫画やアニメのような(そもそも漫画の世界だけど!)話だった。
「早いものね…もう1年半も経つんだ…」
「そうだね…」
肩を寄せあってお互いに身体の熱を感じ合う。いや、熱いな。あっ…光ちゃん……
「ね、息吹ちゃん…」
やっぱりか…
「ダメよ。
「
「……あの頃の純情な光ちゃんを返して欲しいわね」
私はそっと光ちゃんの唇を奪った。
「これで我慢しときなさい。今回は明日試合なのよ?」
「うーん、してくれたら明日ホームラン打てる気がするよ」
「う…」
3年生になった光ちゃんは、身長こそ伸びなかったが筋力は上がっており、ホームランバッターとしても活躍が期待されているプロ注目選手。本人は私がどんな進路にいきたいかで進路を変えるとか言い出してる状態なので、頭を抱えているのだ。
明日の初戦は、光ちゃんをはじめとした3年生の進路に関わる重要な試合。既にもう数少ない公式戦で、結果を残すのは重要だ。
そう、進路のためだから!うん、うん、進路のためなら仕方ないわね!
「し、仕方ないわね…」
その言葉を聞いた光ちゃんは、嬉しそうに私をその場に押し倒した。
なお、後輩数人がそれを見て自らを慰めていたのに翌朝になってから気づき、2人して顔を真っ赤にしたのはもう後の祭りであった。
ちなみに、2年生3年生は最初から察していたのか自販機コーナーには近寄ってこなかったのにもさらに後から気づき、その恥ずかしさを対戦相手にぶつける勢いで光ちゃんと私の継投でのパーフェクトゲームと大量得点となった。
☆☆☆☆☆
・バッティングゲーム
「ライト!レフト!センター前!ショートゴロ!―――」
昼間は借りてる小学校のグラウンドで、1年生の守備相手に実戦形式のバッティング練習を行っていた。センターだけは主将だけど。
2年生3年生は自主練としている。
さて、バッティング練習とはいえ、1年生たちの守備練習でもあるのだ。私はそのためにひとつの縛りを受けながらバッティング練習をしている。それは、球審のように立つ芳乃の支持したバッティングをすること。
1球づつ指示が飛んでくるけど、1打席中にひとつ指示が達成出来ればOKなルール。
「サードフライ!」
これにはきちんと対応してサードにフライを捕らせる。これで7打席の成功となり、このゲームで単独トップに躍り出た。
ちなみに、今の順位はこんな感じ。
1位 私(7/9)
2位 希(6/9)
3位タイ 稜(5/9)
3位タイ 理沙先輩(5/8)
5位 菫(4/5 途中棄権)
6位タイ 1年生(3/8)
6位タイ 1年生(3/9)
8位 白菊(1/9)
という感じ。
白菊はうん、もう仕方ないよね。こういうタイプの打ち分け苦手だし。大丈夫よ!白菊は一発があるから!
6位タイの1年生2人は内野手と外野手ではあるものの、スタメンを争う2人で、常にライバル同士…まぁ芳乃がそうやって仕向けてるんだけど。2人のうち出ない方のポジションに私が入るのが最近の定番である。
次の番は理沙先輩。ここで理沙先輩が成功すれば希と並ぶ2位タイとなる。
「センターホームラン!」
ここでまさかのホームラン要求。理沙先輩もちょっと引きつつもフルスイング。去年までよりもパワーのあがった理沙先輩の打球は左中間を抜けたホームランとなった。
「うーん、まぁ成功です!」
芳乃の審判で理沙先輩が2位タイに浮上する。
10打席勝負で、今は9打席目のターン。
私と希で首位争いだ。ちなみに、希は新越谷に台頭しているホームランバッター3人に差別化するために安打製造機に磨きをかけており、春の甲子園の打率はなんと私を超えている。
ちなみにホームランバッター3人は、主将、私、理沙先輩の3人で、その他に一発の期待がある白菊も数えれば新越谷の打線が強化されているのが分かると思う。
十数分後、10打席目で失敗した私と成功した希で、1位タイ成功率70%となった。
「次は負けんよ!」
「ハイハイ」
ちなみに、この手の勝負をオーストラリアから帰国してからほぼ週一で希から受けている私の通算成績は10勝9敗6分…今日の分を足すと7分か…になる。
これまでやってきて、2つ以上の差が着いたことは無い。
希とはいいライバルと言える存在だし、ありがたい存在だ。前世の知識はもうほとんどアドバンテージにならないけど、希とのライバル関係はそれを超えるアドバンテージになると思う。
ゲームに参加していた1年生2人は悔しそうに膝を叩いていた。
打撃の主力たる3年生3人が抜ける穴は大きいけど、今レギュラー争いをしてる2人の1年生を中心にどうにか世代交代の準備をしている。
3年生の3人も、藤井先生も世代交代は初めてのことなので、来年は厳しいかもしれない。でも、私たちの母校が強豪と呼ばれるくらいには後輩たちも育てていきたいと、先輩になった初めての甲子園…3年生最後の甲子園で、強くそう思った。