【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい 作:風早 海月
1回表の新越谷の攻撃は私のホームランの後、8番の稜がポテンヒットで出塁し、白菊が空振り三振で攻撃を終えた。
「稜、ナイス打順調整よ」
菫にそう言われた稜は少し微妙な顔をしつつも、守備につく。
1回裏の柳大川越の攻撃は1番センター大島さんを三振に打ち取って、続く2者も凡退。球数にして8球。たった3人で攻撃を終了した。
2回の表、新越谷の攻撃は再び1番の希から。
何故か私に視線を送ってから打席に立つ。え?もしかして白菊だけじゃなくて私もライバル扱い?
初球の変化球…ツーシームをファール。続く2球目でストレートを捉えてレフトへ運ぶ。ノーアウト一塁。
続く2番の菫は今度は送りバントのサインが送られる。
綺麗に送りバントが成功し、ワンアウト二塁。小技も打撃もこなす菫は2番にふさわしいだろう。
さらに3番珠姫が初球を進塁打。ツーアウトランナー三塁。
そしてチャンスに4番の主将。得点圏打率では原作チーム随一だったけど、ここではセンターライナーでスリーアウト。
2回裏、柳大川越の攻撃は4番のキャッチャー浅井さんから。あの球を2球続けてすぐにインハイにストレートを入れる。詠深の遅いストレートはあの球と変わらない球速であるため、瞬時に見分けるのは難しい。
続く5番6番もそれぞれ4球でしとめる。
詠深は2イニング投げて19球。彼女のスタミナを考えればまだまだ序の口だろう。珠姫の球数配分も上手い。
3回表。
5番の理沙先輩からの攻撃は、5番理沙先輩、6番詠深、と凡退。
ツーアウトランナーなしで回ってきた私の打席。私と稜で出れれば次の回はまた1番希から…私は稜に視線を送る。頼むわよ。
初球低めにストライク見逃し。2球目・3球目ボール。ここから7連続で際どい内側の球で、大野さんの制球力が戻ってきているのを感じるが全てカット。変化球も。11球目と12球目にボールが出てフォアボールで出塁。ヒットを狙いに行くのは力がいるので、1日に何度もは出来ない。ここは温存一択よね。
8番稜は初球、2球目とフルスイングするも空振り。
最後の3球目。気負い過ぎたのか投球フォームを見た瞬間からスイングを初めてボールが来る頃にはもう振り切った後だったが……まぁ、なんていうか……R〇〇KIESの代打役がやったあれだ。振り切った後のバットにコンッ!と当たり、高いバウンドが嵌ってツーアウト一・二塁。
両陣営の選手から嘘だろ…という目で見られていた稜だった。一応ヒットの記録になる。
9番の白菊は力強いフルスイングで三球三振となった。稜は2連続で残塁。
3回裏、柳大川越の攻撃。
未だランナーを許していない詠深の投球は下位打線では簡単に打ち取れる…とまでは言わないけど、再び三者凡退。投球数は僅かに6球だった。
4回表、新越谷の攻撃。
3巡目の1番希は今日初のピッチャーゴロで凡退。
続く菫は粘って粘ってツーシームで凡退。
どうにか塁に出て4番5番に繋げたい珠姫はセーフティバントをチョイス。意表を突いたサードへのバントで一塁へ。
4番の主将もどうにか塁に出るが、続く理沙先輩がフルカウントからのカットで1球は粘ったものの三振でスリーアウト。
4回の裏。ここから柳大川越の2巡目の攻撃。ここからが本当の野球だった。
1番の大島さんは2球見送ってから絞り球が来たのかレフト前ヒット。私も送球が間に合わなかったが、二塁へは阻止する。
好打順でノーアウト一塁…これはまずいよねぇ…
すると、ランナーの大島さんが詠深のあの球にキャッチャーも捕球に精一杯だろうと当たりをつけてリードを広くとってると、詠深はくるりとファーストへ牽制球を送る。キャッチした希と、ランナーの大島さんの顔が引きつってる。あの牽制はコピーしたら武器になりそうだよね?
打者への第1球を捉えられた。ボテボテのゴロは詠深の左を通り過ぎ、走ってきた菫が確保したが、もう投げるところはなかった。オールセーフ。
「ドンマイ!たまたまよ!」
「こういう時こそ集中しなよ!次は抑えるよ!」
私が詠深や内野に声をかけると、同じように主将も声を上げた。
だが、悪いことは続くもので…甘く入ったあの球を3番の打者にライトに運ばれ、しかも白菊のバックホーム送球は大きく外れてランナー2人をホームに迎えてしまった。幸いにも逸れた送球は詠深が予め待機していたためそれ以上の被害は抑えられた。
そこで、珠姫はタイムをとる。この状況はやっぱり変わらないか…でも、それだと点差的に勝てるかも…?
再び捕手席に戻った珠姫は、4番の浅井さん相手に3球連続であの球を投げさせ、見事討ち取った。ワンアウト二塁。点差は3点。まだ余裕…だよね?
5番打者初球を見逃し。二塁ランナーは盗塁を仕掛けるがサードタッチアウト。これでツーアウトノーラン。
だが、すぐに2球目を打った。ライナー性の当たりはファーストミットへ。スリーアウト。
5回表、新越谷の攻撃。
5番の詠深から打順はスタート。
初球、2球目と綺麗なスイングだが、空振り。だが、下手な鉄砲数打ちゃ当たる、詠深の打席も同じように何度もあればたまには打つ。……いや、投手だからって0.050はヤバいと思うよ?真面目に。光先輩に先発奪われちゃうよ?クローザー専門になっちゃうよ?
話は戻って、詠深は3球目を捉えてセンター前ヒット。ノーアウト一塁。
「ヨミ!チャンスメイクありがと!」
私がネクストサークルから歩きつつ一塁に声を上げる。詠深は走塁用グローブに包まれた手でサムズアップして答える。
バットを撫でてから打席に入る。
「お願いします」
実は私と大野さんは相性が良い。制球力の高い投手に粘って球数を投げさせることで甘い球を引き出すことが出来るから。
逆に県内最速投手の久保田さん…は見たことないから分からないが、球威の高い速球派の投手相手にカット戦術は難しい。そういう球はカットするにも力が必要で、いざ甘い球が来てもその時に打ち返す力が残っていないかもしれないから。
現時点で、詠深が打者14人球数35に対して、大野さんは打者24人球数89も投げている。これは私の粘りもかなり貢献していると考えて良いはず…そろそろ球威や制球力に不安の出始める3桁台が見えてきている。
今までの結果から歩かされる可能性もあるけど…練習試合だし、大野さんの性格からすると……勝負してくれると思う。だとするならば、大野さんはともかくとして、キャッチャーの浅井さんは早めに打ち取るリードをとるはず。
だからこそ…
初球、2球目と見送り、3球目からはボール球以外はカットする。
そして11球目。大野さんの100球目を高々とホームランにする。レフト方向へ飛んだ打球で、多分球場だったらせいぜい二塁打か三塁打くらいだろうか…
うーん、体重はこれでもバットに乗せてるんだけどなぁ……ん?あ、前世より軽いからか!あー、これはどうしようもないわね。せめて理沙先輩みたいな恵まれたパワーがあれば良かったんだろうけど…
これでノーアウトノーラン、スコアは7-2で5点差だ。
その後、稜は三振。ワンアウトノーラン。
そして9番の白菊。とうとうヒットが出た。と言ってもボールの上を掠めて大きくバウンドした打球で、余裕もって一塁に到達。
これでワンアウト一塁。
そんな状態で4巡目の1番希。
だが、3球目の変化球を引っかけてサードライナーに倒れる。
ツーアウト一塁。
そして続く2番の菫もまた優れた選球眼とカットで
ツーアウト一・二塁。
3番珠姫は初球ショートライナーに倒れてチェンジ。
5回裏、柳大川越の攻撃。
あの球を捨ててきたことで、四球が出る。
7番にはストレートを投げると狙われてヒット。
8番はストレート狙いに行きすぎてあの球をバントで掠めてしまいバントフライに倒れる。ワンアウト一・二塁。
そして9番の大野さん。
初球、2球目と無反応で見逃し。カウントは1-1。
そして、次の球にいきなり良い反応を示して、右翼へかっ飛ばした。スリーランホームラン。点数は7-5となり、2点差まで詰め寄る。
さらに1番の大島さんが内野安打で一塁。
2番も続き、レフト深めにヒットでワンアウト一・三塁のピンチ。
3番は詠深が打ち取りツーアウト。
4番のキャッチャー浅井さん。
初球のあの球を右中間に飛ばす。走者2名を返すタイムリーツーベースとなった。これで同点。
5番はレフトフライに倒れて、ようやくこの柳大川越ビッグイニングを切る事に成功する。
6回表。ここで柳大川越の守備に変更が出た。そう、とうとう朝倉さんが出てきた。
ここまで大野さんは5イニング7失点で、116球を投げた。
この回先頭は4番の主将。
「かっとばせー!」
「
主将は初球を見送って球を見ようとしたが、その時点でそのまっすぐは伸びていた。肌で感じたのだろう、速球派の
ファール、空振りで三振。
続く理沙先輩と詠深では歯が立たず。三者連続三振。
6回裏。
打順は6番から。だけど、詠深は尻上がり。
6番は三振、7番はセンターフライ、8番はショートゴロに倒れた。
「さあ!最終回しまっていくわよ!」
大野さんの声で柳大川越の守備はより堅くなる。
7回表。私が出れば最悪希まで繋がり、得点圏打率0を早期に芳乃に知ってもらうためにも、私は二塁に出ないといけない。
でも、速球派から二塁打…それもカット戦術をし続けて腕がプルプルしてる今の状態でできること……それは……
セーフティバント。
セーフティバント成功、ノーアウト一塁。一塁コーチに来ていた理沙先輩に肘当てやすね当てを渡す。
理沙先輩が目線で盗塁を示唆するので、私は頷く。
続いて8番稜は下手にバントをさせてアウトになるよりは…と言う意味も込めてフルスイングのサインが出される。が、三振。
続く白菊にも同じ指示だが、こちらも三振。
5巡目の希。
私は大きくリードをとる。そして、朝倉さんはそれに反応して牽制球を投げるが、それと同時にスタート。そして二塁へ盗塁成功。これは一塁から二塁へ送球する経験が少ないことを利用した盗塁で、特殊な盗塁とされる。
その後、空振り、空振り、ファール、ファールと続き、最後は直球を捉えたもののセンターフライに打ち取られた。
7回裏、最終回の守備につく。これで守り切れば引き分けとなる。
9番大野さんは見逃し、見逃し、ボール、空振りで三振。
1番の朝倉さんは投手ということもあり…とはいえ、全員が全員詠深のようでは無い。中田とかいう4番でエースもいるのだ。警戒しつつ…だったが、5球目で空振り三振。ツーアウトノーラン。
2番は初球のツーシームを引っかけてピッチャー返し。スリーアウト。
柳大川越戦は7対7の同点で幕を閉じた。
収穫と言えば、新越谷の打線は未熟だが玉が揃っていることが確認できたこと。あと3ヶ月、その原石を磨いて宝石となるかどうか。今や原作との乖離が始まっていて、それはもはや私にも分からない。