【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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幕間 本戦リーグ ドミニカ戦1戦目

「まもなく、U-17国際平和記念野球大会の本戦リーグの初戦が始まります。大事な初戦。日本の相手は注目株のドミニカ共和国です。

実況アナウンサーは私、下沢がお送りします。解説は代表監督の長本監督の娘で元プロ野球選手の長本和菜さんです。長本さん、よろしくお願いします」

 

「ええ、よろしく」

 

「それでは桜ジャパンのラインナップをご紹介しましょう!

1番、ショート、伊藤美亜

2番、セカンド、平沢萌恵

3番、センター、川口息吹

4番、指名打者、楠川由梨

5番、ファースト、岡本美穂

6番、レフト、穴吹芽依

7番、サード、清藤奏子

8番、キャッチャー、小林依織

9番、ライト、藤堂雨音

先発投手は大野亜由子です」

 

「無難なメンバーね」

 

「長本さんのこの試合注目している選手は誰でしょうか?」

 

「そうね…5番6番…岡本さんと穴吹さんね。彼女たちは代表選出後はあまり打ててない印象が皆さんあると思うけど、高校級としては十分スラッガー。

特に穴吹さんはあの星光学院で2年生にしてレギュラーを勝ち取ってる強者よ。一部の化け物級を除けばこのチームでも優秀なスラッガー。そろそろ一発を期待したいところね」

 

「無難なメンバーと先程おっしゃいましたが、どのような点が無難なのでしょうか?」

 

「なんというか…印象?

まぁセンターは本当は岡田さんを起用したいところでしょうけど、疲労対策かしら。彼女は走塁や打撃で注目されがちだけど、彼女の『売り』は守備範囲ね。確かに川口さんと藤堂さんもそれなりには広いけど、それ以上にあの総合的な速さを持つ岡田さんには敵わないわね。守備の薄いプロ野球球団からは喉から手が出る逸材ね

それに対して、清藤さんは強力なライナーに対応するのが得意な選手。引っ張り方向の壁になりますから、右の強打者が揃っているドミニカ相手には無難な選択。

楠川さんは多分故障明けで守備練習が取れてなかったのね。名ショートだけに、伊藤さんという代わりでも穴に見えてしまうわ。

安全策を採った…という意味で無難なメンバーということよ」

 

「なるほど。

それでは、勝負の行方を左右するのはどんなポイントでしょうか?」

 

「そうね……リードオフマンかしら。

伊藤さんは何故かラッキーなことが起こりやすい性質みたいで、打席時に相手の失策で出塁することや、打球がイレギュラーバウンドすること、守備時も簡単なゴロや凡フライが多くなる傾向があるわ。彼女の出塁から、いかにして彼女をホームに返すか…それが鍵ね。

6回裏終了までにリードしていれば、ミス・ゼロの川口息吹さんや、打たせてとる睦月さんという名クローザーという切り札がある以上、日本の勝利にグッと近づくでしょう」

 

「川口選手と言えば、野球人生で今だに自責点ゼロ継続中だそうですね」

 

「様々な投法を扱うランダム投法という武器と、世界でも珍しいジャイロボーラー。普通の選手じゃ打てないし、多分プロ相手でも強い投手でしょうね。特にジャイロボールを抑えに使われるだけだと目もタイミングも慣れないから、そうそう打てないわ」

 

「なるほど。彼女にはクローザーが最適な投手ということですね」

 

「まぁね。あれだけの変化球…肘とか関節への負荷に対する対策としても有効ね」

 

 

「さぁ、ここで両チームが両翼のラインに沿って整列します。まずは先攻のドミニカ共和国国歌です」

 

「ドミニカ共和国はメジャーリーグの下請け工場とも言われ、数多のメジャーリーガーを排出してるわ。年齢層的にはアマチュアフリーエージェントとしての『売り時』ちょうどの選手たちだから、選手も結果を残そうと必死になってくるわね」

 

「人口は約一千万人で、東京都と神奈川県の間くらい。観光業が盛んな国です」

 

「カカオの生産もしてるわね」

 

「続きまして、日本国国歌です」

 

「国際大会においてはメジャーリーガーの参加が無いことが多いわ。その結果、世界で2番目の規模を誇る野球リーグを持つ日本は近年トップチームでの勝率が上がり世界ランキング2位に浮上。ま、リーグの規模がこれだけあるのだから当然ね」

 

「後攻の日本は守備に散ります。守備を再度紹介します。

ファースト、岡本

セカンド、平沢

サード、清藤

ショート、伊藤

レフト、穴吹

センター、川口

ライト、藤堂

バッテリーはキャッチャー小林と先発投手が大野のバッテリーです」

 

「小林さんは安定感のある守備力と強肩依織バズーカで知られてるわね。安定したスタメンマスクでしょう。

ここから始まる本戦決勝リーグでは先発ローテが重要だけど、これで先発ローテ先頭が大野さんに確定したわ。純粋なイニングイーターとしてでは田崎さんの方が上に思えるけど、防御率や奪三振能力も考えると確かに良い選択じゃないかしら」

 

「長本さんでしたら、先発ローテはどのように組みますか?」

 

「そうね…1番手に大野さん、2番手に宇田川さん、3番手に山谷さんかしら。田崎さんも先発向きだけど、先発の控えとロングリリーフに取っておきたいわね。3番手に山谷さんは正直安定感ね。高校3年生とは思えない落ち着いた投球をこれまで見せてくれてるわ」

 

「山谷は10月のドラフト会議で3球団から一位指名を受けた実力派です。交渉権を獲得したブルズ盛岡と満額契約を結んだとのことです」

 

「投打の二刀流が出来る山谷さんだもの。ブルズ盛岡はピッタリかもしれないわ」

 

 

「さぁ、両国国歌が終わり、先に日本が守備に就いて始球式です。始球式にはオーストラリア出身の元メジャーリーガー、リリー・ジュリーさんが登板します」

 

「試合のゴングがなるわね」

 

「リリーさんが、今、マウンドでワインドアップ。投げました!速い!キャッチャー小林、取りこぼすも体を張って止める好守備!元内野手とはいえ、鋭いピッチングの始球式でした!」

 

「高校生とはいえ、世代最高クラスの選手とも言える小林さんが取りこぼす程の球ねぇ…始球式とは思えないわね」

 

「はい、素晴らしい投球でした!

さぁ、大野さんがマウンドに登り、打者がバッターボックスに入って球審がプレイボールを宣言。試合が始まります!」

 

 

《中略》

 

 

「先発大野、4回を投げ終えてノーヒット。唯一3回の四球1つ以外では出塁を許していません」

 

「4回終えて6奪三振。これはノッてるわね」

 

「アウトカウント12個のうち半数を三振で討ち取っている計算になります」

 

「4回の裏、日本の攻撃に移ります。先頭は2番セカンド平沢。

1回の1打席目は綺麗な送りバントを決めてワンアウト三塁のチャンスに持ち込んだ平沢。ノーアウトランナー無しの先頭としてはどのようなバッティングを見せてくれるか!

ピッチャー第1球…投げました。見逃してストライク。外いっぱいのいい球です」

 

「今のはいい判断ね。カウントが悪くなってない状態でわざわざカットにいく必要は無いわ」

 

「続いて2球目…投げました。外に大きく外れてボール」

 

「ドミニカのキャッチャーはよく止めたわね。止めなくとも暴投にはならないからスルーするかと思ったわ」

 

「ノーアウトランナー無しでカウント1-1。さぁ、第3球を…投げました!打ち上げた!引っ張ってレフト方向!レフトは既に足を止めている…アウトです。ワンアウトランナー無しに変わります。

いやぁ、長本さん。今のはチェンジアップでしょうか」

 

「多分シンカーの失投でしょうね。ドミニカ側からすると救われた形ね」

 

「続いては3番センター川口。左バッターボックスに入ります」

 

「両打ちだけど、右打ちの多い川口さんが左…セーフティも視野に入れてるわね」

 

「ピッチャー投げました!内角膝元でボール!」

 

「ドミニカバッテリーは逃げ腰ね。川口さん単独でも怖いのに、後ろに控える楠川さんのせいで完全に逃げ腰になってるわ。2人ともこれまで6割前後の打率を誇るもの。そりゃ怖いわね」

 

「2球目を打ったー!入るか!?」

 

「いえ、切れるわね」

 

「ライトポール横に切れて特大ファールとなります」

 

 

《中略》

 

 

「4回の裏、3番川口がカウント3-1からのワイルドピッチで二塁まで進む好走塁によってワンアウト二塁の得点圏にランナーを進めて、日本の主砲がやってきました!4番ショート楠川!」

 

「追加点の期待がかかるわね。ここで点を取れれば日本は波に乗るわ。逆に点を取り切れなければ形勢は五分からドミニカ優勢に変わるでしょうね」

 

「初球、高めに浮いてボール」

 

「1球外して様子見…川口さんがキャッチャーに対していい感じにプレッシャーを与えているわ」

 

「2球目…投げまし…打ったー!ライト方向に大きな当たり!」

 

「フェンス際かしら…落ちればツーベース確定ね」

 

「ライト走る!センターも走る!だが打球の方が速い!フェンス直撃!

二塁ランナー川口は落ちることを信じていたのか既に三塁を蹴っている!ホームイン!日本追加点!楠川は二塁まで進んでタイムリーツーベースです!」

 

「素晴らしい打撃だったわ。膝下に入ってくるボール球を悪球打ち。まさかライト越えのタイムリーツーベースになるとは」

 

「主砲が日本に流れを呼びました。続く5番は左打ちのファースト岡本。彼女も長打力のあるバッターです。

今、プレイが再開されて初球…見逃してストライク。内角高めの手を出しづらいところに抉るようなシュートが入ってきました。

セットポジション。二塁ランナーを警戒しています。

2球目を…投げました!打ちました!ライト方向に飛ぶ!先程の楠川とほぼ同じ弾道だ!二塁ランナー楠川は既に三塁を回ってホームへ…いや、フェンスを超えた!ホームランです!5番岡本、ツーランホームランだ!」

 

「いい風が吹いてるわ」

 

「現在、球場にはホームからみてライト方向へ風が吹いていますから、追い風になっていますね」

 

「……そうね(そういう意味ではなかったのだけど…まぁいいわね)」

 

「ドミニカのキャッチャーがピッチャーを落ち着かせるように球を手渡しに行きます。

さぁ、流れに乗って行きたい日本の6番はレフト穴吹」

 

「穴吹さんは主砲の楠川さんと同じ星光学院。新チームの主砲として活躍が期待されている選手よ」

 

「ピッチャー、ワインドアップで…投げました。低めに見逃してストライク」

 

「悪くない球を投げているのだけど…日本の調子が乗ってる状態を抑え切れてないわね。ここで畳み掛ければ勝ちに大きく近づくわ」

 

「2球目…これも見逃して、今度は外に外れてボール。わざと外しましたかね」

 

「そうね。振る気があるのか確かめている球じゃないかしら」

 

「穴吹、2球目も微動だにせず見逃していますが…」

 

「多分2球は待球の指示でも出てるのではないかしら。次は打つわよ」

 

「ピッチャー振りかぶって…投げました!当たった!いい当たり!これはまさかの連続ホームランか!?」

 

「…入ったわ」

 

「ソロホームラン!日本さらに追加点!連続ホームランです!5-0!この回日本は4点の追加点を上げました!」

 

「大分日本優勢な流れになったわね」

 

 

《中略》

 

 

「6回に1点を返されましたが、4点のリードのまま最終回を迎えます。この守備でリードを守りきれれば日本は大事な初戦を征することになります。

7回の表、ここで選手交代があります。

センター川口がピッチャー。

指名打者伊藤がショート。

川原光がセンター。

青木玲奈がファースト。

山崎摩利がサード。

近藤唯がキャッチャー。

楠川、岡本、清藤、小林の4人がベンチに下がります。

 

交代後のポジションを読み上げます。

ピッチャー川口

キャッチャー近藤

ファースト青木

セカンド平沢

サード山崎

ショート伊藤

レフト穴吹

センター川原

ライト藤堂

以上に変わりました」

 

「ミス・ゼロの川口さん登板にドミニカベンチは完全に士気低下してるわ」

 

「川口さんはこれまで練習試合含めて1度も自責点が付いたことがないクローザーとして有名です。1度タイムリーを打たれたことはありますが、前に投げていた川原の自責点となっています」

 

「その1度のタイムリーもランナーのタッチアウトで試合を終えるプレーになってるわ」

 

「さぁ、投球練習を終えて、ドミニカの3番が右バッターボックスに入ります。

第1球…投げました!見逃してストライク!この球です!この魔球がジャイロボールです!」

 

「初速からの減速が少ないからタイミングがズレる上に、ストンとあっさりと落ちる球なのでボールの上っ面を叩きやすいという性質もあるわね。特にあの落差は空振りの誘発に最適ね。見逃してもストライクゾーンに入るのだもの」

 

「落ちる球というのはどうしてもゾーンで取って貰えないことがありますが、川口の制球力はきちんとゾーンに入るピッチングです」

 

「そうね。制球力はとても良いわ。あとは球速がもう少しあれば最高ね」

 

「第3球を空振り三振!」

 

 

《中略》

 

 

「空振り三振ー!日本勝ちました!抑えの川口、三者連続三振であっさり試合を閉じました!日本の守護神です!」

 

「素晴らしい試合だったわ。でも、まだまだ日本代表には成長の余地があるわ。試合の中で進化する子もいるだろうし、これからも日本代表の活躍に注目してほしいわ」

 

「試合後のヒロインインタビューと談話、日本戦以外の試合はホームページ及び動画配信サイトにて公開予定ですので、ご覧下さい!

明日のドミニカ戦2試合目は動画配信サイトにてライブ配信予定ですので、そちらもよろしくお願いします。

本日の実況は下沢、解説は長本和菜さんでお送りしました。それでは長本さん、本日はありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

 

 

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