【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第54話 優勝決定戦

 

 

 

 

優勝に王手をかけた2戦目。

 

 

日本は少しだけスタメンを変えた。

 

1 伊藤美亜(二)

2 川原光(左)

3 川口息吹(指)

4 岡田怜(中)

5 楠川由梨(遊)

6 岡本美穂(一)

7 山谷彩(三)

8 山崎摩利(捕)

9 藤堂雨音(右)

投手 田崎真智子

 

日本の鉄腕、田崎さんがマウンドに上がる。

 

対するアメリカもアルテラさんが1番指名打者に変わったくらいしか変わりない。

 

優勝に王手をかけた日本と、後がないアメリカ。

そんな気迫の溢れるプレーの中で、アメリカの恐れていた投手戦にもつれ込む。

 

今の桜ジャパンは、投手を中心に失点を抑えて打線は数点をもぎ取るという勝ち筋が多い。

逆にアメリカは投手力は数人を除いてそこまで高くなく、打線の爆発力で大量得点の乱打戦を制してきた。

 

つまり、投手戦の様相は日本有利…とテレビやラジオの実況と解説者は口を開いた。

 

 

だけど、6回の表にワンアウトランナー一三塁のピンチに救援登板した光ちゃんが崩れて1失点。直ぐに投手交代で睦月さんが登板するも、7回表までに2失点を喫する。

 

3点を追う最終回裏。

先頭打者の5番楠川さんは主砲としてのプライドの一振でソロホームラン。

6番岡本さんも長打コースを放つもレフトのファインプレーでレフトフライに倒れる。

7番山谷さんは本業投手であるにも関わらず、3年の意地でレフト前ヒット。

8番山崎さんはワンアウトということもあり、送りバントは選択せずに強振してライトフライ。一塁ランナー山谷さんはタッチアップで二塁へ。

9番藤堂さんに代えて代打穴吹さんは最後まで球を見極めるも空振り三振に倒れ、日本の敗戦となった。

 

 

 

 

迎える最終戦。

長本監督たち指揮官陣は昨日の敗戦からスタメンを刷新した。

 

1 川口息吹(三)

2 川原光(左)

3 伊藤美亜(二)

4 岡田怜(中)

5 楠川由梨(遊)

6 岡本美穂(一)

7 山谷彩(投)

8 小林依織(捕)

9 藤堂雨音(右)

 

DHを使わず、1~3番の順番を入れ替えた。

 

長本監督曰く…

最も打率の良い私が先頭になるのは本来なら必然。

変態こと光ちゃんは私とくっつけておいた方がパフォーマンスが良い。

残った人材で3番を任せるなら伊藤さんが最も期待できる。

 

らしい。

 

光ちゃんの扱われ方よ。実際私が打つと光ちゃんも打つ傾向があるらしいから笑えるわよ…いや、笑えないわよ…

ま、まぁホテル暮らしということもあるし、ココ最近毎日致してるのが好調の理由だよって真顔で光ちゃんに言われた時には本当に笑えなかったわ。それが本当でも嘘でも笑えないわよ…

嘘ならまぁ冗談…笑えない冗談で済むけど、本当なら帰国後の春の選抜どうするんだか…毎日なんて出来ないわよ?場所的に。

 

まぁそんな下世話な話はともかく、私たち日本代表は最終戦の球場へ足を踏み入れた。

 

 

 

さて、雨天中止となった3試合が後日開催から順位の確定を急いだことと、韓国の帰国に伴う不戦勝によってパラオに余裕が生まれ、最終日の正午からのデーゲームでの変則トリプルヘッダーが行われた。

最終戦のドミニカ対イタリアの前に、イタリア対キューバ、ドミニカ対パラオの2試合が行われた。

その結果、イタリア対キューバは投手戦を制したイタリアが予想を覆す金星を挙げ、ドミニカ対パラオはナックルボーラーユキの好投と抑えの子が素晴らしいピッチングで勝利した。

 

その波に乗ったように最終戦の多くは投手戦が繰り広げられている様だ。

 

 

 

私たち日本対アメリカも山谷さんの安定したピッチングと、世界一位の野球大国のプライドと意地でランナーをホームに帰させないアメリカの底力がぶつかり、3回を終えた今でも双方無失点に終わっていた。

 

 

 

 

4回の表、日本の攻撃。

 

1番、私。

 

初回で帰塁アウトで三塁のチャンスを潰した汚名返上のため、塁に出たいところ。

初球、膝元を抜ける落ちる球。多分スプリット。見逃してボール。

 

2球目。ピッチャーの投げた瞬間、なぜか私は来る球をスプリットと予感した。

その直感に従って、さっきの落ち方を思い出しつつバットを振った。

インパクトの瞬間、気持ちいい快感が背筋を走った。だけど、多分まだ100%の快感ではない。この快感に秘められた可能性を感じる。

走った私は二塁打となり、次の光ちゃんにチャンスを繋げる。

 

 

2番、光ちゃん。

ノーアウト二塁のチャンスに、長本監督はココ最近使ってきていた送りバントの指示をせず、強振の指示。

初球から打ちにいった光ちゃんの打球は外野フェンス際に落ちて、バウンドした打球がフェンスを越えて行った。エンタイトルツーベースだ。

 

さぁ、先制した日本は波に乗れるかな?

 

 

3番、伊藤さん。

伊藤さんには送りバントのサイン。

初球、ファーストとピッチャーの間に転がした打球は、ピッチャーとファーストとセカンドでお見合いになって内野安打となる。

つくづくラッキーガールね……

 

ノーアウト一三塁になる。

 

 

4番、怜先輩。

大一番に4番を任されるまでに成長した主将。その実力は既に同世代では日本トップクラスにまで成長している。

いや、ポテンシャルがあったのは認めるけどさ、成長しすぎな気もするよ?これ埼玉の地方大会一蹴出来そうな勢いで光ちゃんと芳乃含めて成長してるんだけど。

あっさりライト奥に打ち込んで2点タイムリーツーベース。

 

「おかえり。ナイスタイムリーエンタイトルだったわよ」

「うん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

え?……もしかして光ちゃんもあの感覚を?

……私らなんか変な物食べたかしら?

 

 

5番、楠川さん。

日本の本来の4番。とはいえ、いつも打てる訳ではなく…

レフトフライに倒れる。が、怜先輩なら二塁からでも十分に犠牲フライになる距離。超特急岡田、ホームベース行きがまいりまーす。白線(ファウルライン)の内側まで下がっておまちくださーい。

得点は4-0と、一気に突き放した。

 

ワンアウトノーラン。

 

 

6番岡本さんは、粘ってから右中間に長打コースを打つも、センターのポジション取りとファインプレーでセンターフライ。

7番山谷さんは、サード強襲するも、お手玉からの捕球を成功させたサードのファインプレーに阻まれサードライナー。

 

スリーアウト。

 

 

 

4回の裏、アメリカの攻撃。

 

2番打者から。

次の3番がアルテラさんなので、ここはきっちり抑えたいところだったんだけど…左前安打で出塁される。

 

 

さて、嫌な流れになって欲しくない私たちとしてはここで切りたい。特に超強打者のアルテラさんを()()ことで嫌な印象を与えたい。

ま、サードの私にはあんまり関係ないんだけど。

 

山谷さんは焦らずのんびりとしたセットポジションからカットボールを外一杯に投げ込む。アルテラさんは手を出さずに見逃してストライク。

2球目は内角高めにカットボール。これも見逃してストライク。

0-2に追い込んだ山谷さんはアウトローに3度目のカットボールを投じた。アルテラさんの目が光るのが見えた気がした。

ものすごい勢いで打った打球はレフトへ。あれは入ったわね。…はい、今入りました。ツーランで4-2に持ち込まれ、なおもノーアウト。嫌な流れが始まりかけている。

 

 

4番打者は一塁方向へのゴロだったものの、岡本さんが拾い損ねるエラーで一塁生存。

 

5番打者は初球のカットボールをバントしたものの、上手く転がらず2-4-3のダブルプレーに打ち取った。

これは流れ変わる併殺ね。

 

6番打者は勢いの萎んだアメリカの流れを無視するように左中間安打。

 

7番打者で山谷さんが三振に打ち取り、アメリカの勢いをチェンジで断ち切った。

 

 

 

5回の表、日本の攻撃。

 

8番小林さんと9番藤堂さんが凡退し、ツーアウトで迎える1番は私。

サインは出ていない。

初球、『あの感覚』に導かれるのに合わせて全身を使ってスイング。

 

―――あッ…

 

全身に走った快感が教えてくれる。これが『絶対に入った』という確信だと。

バックスクリーン直撃の完璧な本塁打。強過ぎず余計な力を使わない最適なホームランだった。

走った快感はまるで光ちゃんとシた時に感じたものと同じ位の凄まじさ。世の中のホームラン王たちはきっとこの快感にハマった人達なのかもしれないわね…やめられないとまらないってやつかしら。

 

ホームインして、ネクストから出てきていた光ちゃんとハイタッチからのハグ。うん、ホームランの快感より光ちゃんの方が良いかも。

 

「ナイスホームラン。高校通算15本目だよ。おめでとう」

「え、そうなの。自分でも知らなかったわ…ありがとう」

 

チームのみんなとハイタッチを交わし、最後に打席に向かう光ちゃんにファイトってジェスチャーを送った。光ちゃんは頷いてダートサークルを球審の後ろを通って左打席に入った。

 

 

2番、光ちゃん。

今日は三塁側ベンチなので、左打席の光ちゃんの表情がよく分かる。

打席に入った途端、なぜか幸悦とした表情になっていた。

 

「ふん、《入ったな》」

 

長本監督が私の横でそう口にした。

 

「どういうことですか?」

「お前も感じただろう?あの快感を。あれはZONEと呼ばれるやつだ。個人個人で効果も引き金も違うが、あたしはお前さんらにそれがあると感じたのさ。それがあたしのZONEだからね」

 

なんと、球詠は超能力漫画だったの?いやいや、そんな訳…

 

「近いところじゃ楠川もそうだ。あの子の引き金は4番かそれと同等の責任を感じた時。お前の引き金は恐らくあんたの観察眼を最大限引き出している時。あとは…ええと、お前たちと小林が戦った時の1番」

「中田奈緒さんですか?」

「あぁ、そいつもあるな。あいつのZONEは特殊で、チームの主将や精神的支柱としての覚悟が引き金さね」

「結局、ZONEってどんな効果が?」

「ZONEは個人ごとに異なっているけどね、あんたの場合なら極限の集中…といったところかね。投球時に使えれば、それこそ針の穴通すような投球ができるだろうよ」

「それを光ちゃんも持っている…と?」

「そうだな。あいつの引き金と効果は…」

 

カァン!という音と共に光ちゃんが私の先程のホームランの弾道をなぞるようなホームランを放った。

 

「胸を焦がすような変態的な恋心さね。だから、あの子は引き金引きっぱなし。ちなみに効果は基礎スペックの底上げっぽいから分かりづらいがね。あとは特殊な効果も付加されたみたいだね。恋心を向ける相手のZONE効果を借りれるのか」

「それって…」

「これがあたしがあの子を変態と言う理由さね。あの子を初めて見た時にはそんなZONE効果を借りれるなんて能力付いてなかったのに、あんたへの想いが強すぎて…ってことさ」

 

話からするに、長本監督のZONEは他者のZONEを見分ける力ということなのね…(現実逃避)

 

「息吹ちゃん!」

 

私に体当たりでもするように飛び込んできた。

 

「お疲れ様。本塁打、やったわね」

「うん。息吹ちゃんのことを考えてたら打てちゃった」

 

光ちゃんはハニカミながら私を見るのだった。

 

 

さて、流れに乗った…訳ではなく、3番の伊藤さんはセカンドゴロでアウト。スリーアウトでチェンジとなる。

 

 

 

5回の裏、アメリカの攻撃。

 

ここで、投手は光ちゃんに継投。

ピッチャー光ちゃん

サード山谷さん

レフト私

と、それぞれ守備位置変更となる。

 

交代時に私の胸元に顔を埋めて匂いを吸っていった光ちゃんはZONEが強まっているのかいつもよりキレの良い変化球で三振の山を築き上げた。

 

 

 

6回は日本とアメリカどちらも三者凡退。

光ちゃんはさらに私の汗ふきタオルを吸って、ここまでアルテラさんを含めて6連続奪三振。

 

 

 

7回も日本は三者凡退。

最後の打者は藤堂さんだったけど、代打は出さず。

 

 

 

 

 

 

7回の裏、アメリカの攻撃。

6-2という得点。

 

3点を守り切れば文句無しの日本の優勝。

4失点でも引き分ければかろうじて日本の優勝。

5失点した時点で日本の優勝が消える。

 

そんな大事な場面で、長本監督は光ちゃんの続投を決断。

光ちゃんの全力投球で代打攻勢のアメリカを9連続奪三振で光ちゃんが完璧に抑え込んだ。

 

 

最後の打者を三振に打ち取った瞬間、割れんばかりの歓声が響いた。

私はマウンドの光ちゃんに抱きついて、みんなが見ている中でキスをしたのは覚えているけど、他のことは忘れてしまうほどに乱舞した。

 

きっとみんなも忘れてるわよ…ね?

 

 

ね?

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