【完結】川口息吹は憑依転生者な器用貧乏だけどかわいい   作:風早 海月

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第55/最終話 川原光と私

 

 

 

 

メルボルンから帰国した私たちを空港で迎えてくれたのは大勢のファン…という訳でもなく、少数のコアなファンといった極小数であった。

それもそうだろう。いくら野球大国と言えど、トップチームでもない年齢制限チームの注目度なんてそう高くない。ちょっとガッカリだけど。

 

「さ、私らも帰ろう」

 

怜先輩…いや、主将のその声に、私たち新越谷4人は帰路に…

 

「待ったー!」

「おかえりなさい!」

「へへっ、マイクロバスのごとーちゃーく!」

「ふっふっふ、こんなこともあろうかと、大型免許を取っておいて良かったです」

 

藤井先生たち新越谷の面々が迎えに来てくれた様だ。

って藤井先生って大型免許持ってるの!?凄い!

 

「ま、マイクロバスには中型免許で足りるんですが」

 

ガクッとなるのを堪えて、改めてみんなに向き直る。

 

『ただいま!』

『おかえり!』

 

数ヶ月離れたとしても、共に戦った仲間。それだけでもう帰ってきた気持ちになる。

 

「さぁ、乗ってください!世代最高の選手に選ばれた4人がいるのに春の選抜で無様は晒せませんよ!帰ったら練習です!」

 

藤井先生はどうやら人数が減って鬼教官に転身したらしい。

 

「息吹さん、何か言いましたか?」

「イエス、ノー、マム!」

 

思わず気をつけをしてしまったわ…怖っ。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

さて、この物語の締めくくりに、私と関わったみんなのこれからの事を記しておく。

 

 

まずは新越谷組から。

 

新越谷は今回の国際大会出場から貰った春の選抜への切符を手に入れるためのリーグ戦に出場し、これを1位通過した。

星光学院が1位通過を防いでくるかと思ったものの、穴吹さん抜きで自力で出場を決めていたのでそもそもリーグ戦に参加していなかった。

 

続く春の選抜はベスト4まで勝ち上がったわ。まだまだこれからということを痛感させられたわ。

 

さて、ここからという時に、新入生が入ってきた。その中にはパラオ代表のユキ=マツイ=ヒロコが入ってきたのには驚いた。野球留学で、日本のプロ野球を目指して日本にやってきたのだとか。

 

投手陣は理沙先輩と光ちゃんの3年生2人、詠深と私の2年生2人、そして1年生にユキともう1人いて、合計6人。特に先発適性のある理沙先輩、光ちゃん、詠深に加えてユキが入ってきたのは大きかった。

春季大会ではユキの存在を隠すためにベンチにすら入れなかったけど、夏の地方大会からは理沙先輩→詠深→ユキ→光ちゃんという強力ローテで乗り切り2年連続3回目の夏の甲子園を決めた。

1番の強敵はやはり梁幽館と柳大川越。彼女達もレベルアップがだいぶ進んでいて、特に梁幽館はユキのナックルを捉えられて危うく負けるところだった。吉川さんも打ち崩すのに苦労したし…

 

やはり3年生の気迫は他とは違うウチでも凄く、理沙先輩は投打に渡っての大活躍、怜先輩はファインプレーの守備や好走塁を中心に、光ちゃんも代表で投手をやった経験も相まっね三振の山を築いている。

 

 

夏の甲子園は決勝進出…つまり準優勝で幕を下ろした。

本当なら先輩たちに旗を持たせたかったけど、メダルと盾でごめんなさい。

 

 

その後の国体は3年生と2年生半数と1年生を混ぜた準一軍で参戦(秋季大会は残留組の2年生と1年生で参加)して、夏の甲子園の決勝戦カードを準決勝で当たったものの、やはり主力の2年生が半数では厳しい戦いになりベスト4で終わった。

 

 

 

 

その後の光ちゃんと同世代の人達の進路はこんな感じ。

 

理沙先輩は育成指名の1位でパ・リーグの琉球ドルフィンズと育成契約。

光ちゃんは本指名で1位指名を2球団から受けて、大洗アングラーズと満額で契約。

主将…怜先輩は大学野球へ進み、なんと陸上部を兼部する契約で入学金から授業料まで全て免除になるのだとか。

 

他にも、桜ジャパンで共に戦った穴吹さんと岡本さんと田崎さんも本指名を受けてプロ野球へ。

奪三振姫こと大野さんはメジャー挑戦のため、アメリカの大学へ進学。アメリカでのドラフト指名を目指している。

 

同じ埼玉県からは梁幽館の小林さんがプロ野球で支配下契約。吉川さんは大学野球へ。

意外にも影森のライト…畠さんは野球とは全く関係のない声優の道へ進むらしい。

 

 

 

3年生が抜けて、私が主将を引き継いだ。

怜先輩に勝たせられなかった分、今度こそ…と意気込んで、秋季大会ではいい所まで行って春の選抜の切符を手に入れた。

 

 

その後2年連続2回目の春の選抜へ。

冬の間に成長した1年生たちと春の選抜を駆け抜け、甲子園で初の優勝旗を持ち帰った。

ちなみにこの春優勝からユキの世代とその下の世代と3年連続で春の選抜を優勝し、史上初の春三連覇を達成した高校として名を馳せることになる。

 

 

そして、夏の大会。

私たちの最後の大会。

第100回の記念大会のため、埼玉県は北埼玉と南埼玉に分割。私たちは北埼玉で無双して北埼玉代表の地位を獲得。

 

夏の甲子園は決勝戦で、東東京代表の葛飾農業高校…成長した宇田川さんと対戦。高校生離れした…プロの中でも最上位クラスの速球を武器にした宇田川さんは強かった。でも、ストレートに強い私たち新越谷はその僅かな有利から投手戦を制し、新越谷に初の夏の優勝旗をもたらすと同時に春夏連覇を達成。

前述の春三連覇の二連覇目で春夏春連覇を達成しており、これも史上初である。

 

 

春夏連覇を達成した私たち新越谷の3年生はスカウトが大変群がった。とはいえ、最終的にプロ野球志望届を提出したのは珠姫、希、そして私の3人だけ。

稜と菫は大学野球へ。白菊は再び剣の道へ。詠深と芳乃はプロへ進んだ珠姫と希の専属トレーナーとなった。……まぁ詠深はほとんどヒモだが。

 

 

 

私たちの高校野球はこうして終わった。

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

自由登校になった冬。

私は光ちゃんに家から連れ出されて、一人暮らしになっていた光ちゃんの家のベッドの上で横になり、ぼーっと天井を見ていた。

 

 

 

「終わっちゃった…」

 

終わってみれば、やり切った感覚もあるけど、それ以上にあの仲間とはもう二度と戦えないと思うと寂しい。

 

「本当に終わったんだ…」

 

国体では、ピッチャー詠深、キャッチャー珠姫、ファースト希、セカンド菫、ショート稜、レフト私で、ライト白菊…という怜先輩たちの穴こそあれどほぼ初期メンバーのチームで優勝をさらった。

でも、それが本当に最後。

 

今の新越谷にある練習場はもうユキたち2年生を中心に始動してる。あそこに私の居場所はない。

 

これが○○ロスって気持ちなのかも。前世ではなんだかんだ引退後も練習に付き合ってたし…こんなに何も無くなったのは初めてかもしれないわ…

 

「息吹ちゃん、お疲れ様」

「光ちゃんは…去年大丈夫だった?」

「うん。確かに悲しかったけど、プロ野球の世界はもっと高いレベルの選手が世代を超えて戦えるって楽しみだったから…でも、息吹ちゃんの場合は、燃え尽き症候群みたいな感じかな?それだけこの高校野球を全力で駆け抜けてきたんだもんね」

 

光ちゃんは私をそっと抱きしめた。

 

「キャプテンとして、1.2年生をここまで引っ張ってきて、春夏連覇。凄かったよ。でも、だからこそ疲れちゃったんだよね。みんなを引っ張って全力で働いて、それが実った。だから、誇っていいんだよ。もっと。

 確かに、あのメンバーで野球は出来ないかもしれないけど、あのメンバー…あの11人は、絶対にあの時間を忘れないから。下の子たちだって、そう。

 これから一緒にプレー出来なくても、思い出は変わらないから」

 

 

 

 

 

「もう抱え込まなくていいよ。みんな思い出はあるから」

 

 

光ちゃんはそう言って、私の上に乗って口付けを落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後になって聞いた話では、自由登校になる前から引退後しばらくしてからぼーっとする様になった私を心配した仲間たちが光ちゃんと連絡を取り、メンタルケアを頼んだのだとか。

 

メンタルケアどころか…いや、それは言わないでおくわ。

 

なんにせよ、燃え尽き症候群から、光ちゃんの《メンタルケア》で乗り越えた私は、支配下契約した大洗のキャンプに入ったり、みんなと共に卒業証書を受け取ったり、最後の高校生活を楽しんだ。

 

……光ちゃんが高校性活楽しもうね、とキャンプ中は凄かったことは他の同級生たちには内緒の話。

 

 

 

 

そして、2019シーズン。私はプロ野球選手となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





最後まで拙作を読んで頂き、ありがとうございました。

本当はこの後も継続するプロットは存在したのですが、最初期のプロット通りに春の選抜より前で終わらせることにしました。
実は第49話の辺りでこの作品の全ての試合結果や試合データを誤って消してしまいまして…続けるに続けられなかったという理由もあるのですが……

それはそれとして、実はこの作品は私史上で初めて完結した作品となりました。それもこれも、読者の皆様のおかげでございます。
更新の途絶えていた時も気長に待って下さり、原作球詠カテゴリーの中でも(そもそも球詠原作が少ないのですが)高い評価を頂けていたのはとても励みになりましたし、こんなに読者様が待ってくださるのに…と筆が進まなかった時の脱却も皆様のおかげです。


今後、劣等生の新作(既に更新開始している奴です)を書くのは決まっているのですが、もう1作をどうするか迷っております。
皆様におかれましては、最後のアンケートで需要の参考にさせて頂けると幸いです。

今後、また他の作品でお会いすることを祈って、最後のあとがきとさせていただきます。
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