ONE PIECE アンリミテッドドリーム ~羽ばたく天使と夢の狭間に~ 作:陰陽の使者
「うーん…おかしいわね…」
「どうしたの、ナミ?」
「あ、アイル。偵察は終わったの。」
「うん。特に何もなかったよ。」
「そう…なかなか着かないわね。」
ここは女性室。現在、地図を懸命にチェックする航海士、ナミと、それを後ろから見守る戦闘員、アイルがいる。
「まだ着かないの、その…不思議島。」
「ついにルフィみたいなこというのね…」
「いや、むしろルフィが言い出したことだけど…」
「…まあいいわ。この地図を見る限り、もう見えるはずなんだけど…」ナミは、地図上でペンで丸をつけた島を指差した。
「私たちはここよ。」ナミは、その島から少し右…つまり、東に少しずれた点に、船型の置物を置く。
「へえ…結構近いのね。何も見えなかったけど。」
「そこなの!船からしか見えない私たちはともかく、飛ぶことのできるあなたが見えないのはどういうことよ!」
「私に聞かれても…ごめん、ほんとに。力になれなくて。」
「…もう、いいわよ、謝らなくたって。」申し訳なさそうに言い、地図を凝視する。「あんたに怒鳴って、突然現れるわけもないしね。」
「う~ん…やっぱ、伝説かしらね?」
「もしそうだとしても、あの馬鹿船長は聞かないでしょうけどね。」イラつきの現況を思い出し、ナミの拳のペンはひび割れる。
「確かに。初め知ったときは、もう大はしゃぎだったからね。」
アイルは、数週間の出来事を振り返る…
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~数週間前、とある島~
「
「そうだ。このあたりに出るらしいんだ、その幻の島が!」
「幻って…あなた、それ見てわかったの?」
「ああ、俺は言ったことねえが、そこへ冒険しに行く若者がいるからな。」
「で、彼らは…?」
「全員、行ったっきりで帰ってこねえ。うちのダチも、その一人だ。」
「…ご愁傷様。」
「まま、気にせんでええ。あいつもかなりバカやってたからな。一人騒がしいのが減っちまっただけだ。
(そういうのは、涙拭いてからいうものだよ…)
「で、その…不思議島?何かあるわけ?」
「不思議島か…おもしれえこと言うねえ、譲ちゃん。」
「じ…譲ちゃん…?」
「んん…噂だけどな。そこには、ある秘宝があるってわけだ。」
「秘宝…どんな?」
「さあ…帰ってきた人はいねえから、それを確認するスベがねえんだ。」
「…じゃあ、おじさんはどう思うの?」
「…ここにさっき言ったダチの書いた地図がある。」
「え!どうしてそんなものが…」
「空瓶に入れて海をさまよってたんだ。その地図には、ホレ、ここだ。」
「…この島?ずいぶんと正確な形になってるわね。」
「あいつは、画家の腕は確かだった。頭冷やしてそっちをやってれば、うまく暮らせたっちゅうのに、ほんとおおばかだった。」
(ずいぶんと仲のいい友達だったのね…)
「で、これは僕の勘違いかもしれないが…この島こそ、
「え、でも…この島、
「もう確かめた。」
「…で、どうだった?」
「何もなかったんだ。ある曇りの日に、うちの町から、大量の船が行ったんだが、そこはただの海の一面。石ころひとつもなかった。俺も一緒に行ったから、それは確実だ。」
「…それじゃ、やっぱり存在が…」
「ケッ!俺は認めねえ。」
「おじさん、やっぱり飲み過ぎじゃ…」
「これはまだ初盤だってんだ!まだ飲んでるとは言えねえ!」
(うちの戦闘員とまったく同じセリフ…)
「いいか!うちのダチはよ、大ばか者でおっちょこちょいで、いつも腹立つ野郎だった!」
「なんかひどくありません?」
「その癖にな!一度も嘘をつくことはなかった!子供のころから、たった一度もな!」
「…」
「そんな奴が、こんな大事で、嘘をつく理由も訳もねえんだ!」
「おじさん…」
「ほかの連中は、あいつを夢見るバカだと言うが、それこそ嘘だ!俺が保障する!」
「…」
「…ちっ!笑うんだったら、笑え!」
「…そうする前に。」
「ああ?」
「その地図…借りていいんですか?」
「…何する気なんだ…テメェ、まさか…」
「ちょっと…調べてみたいの。」
「…ちっ。勝手に取っていけ。」
「え…いいんですか?」
「俺はもう、酔いすぎた老いぼれだ。おめえの冒険にかかわることはねえ。勝手にしていけ。」
「…じゃあ、そうさせてもらうわ。」
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~現在~
「…でその地図を見せたとたん、ルフィさんはもうノリノリで。なぜかウソップさんも信じちゃったし。あれは何のことかしらね?」
「さあ、ね?」不思議に笑ったナミは、再び地図を眺める。
「ともかく、存在しない島を解決しない限り、ここへいけないわけね。アイル、もう一度聞くけど…」
「ほんとにないのよ。ついでに島のあるはずの場所にも行ったけど…」
「…ああああ、もうどういうことよ!私に大いなる秘宝が待ってると言うのに!もし着かなかったら、あんたに十億借金もらうわよ!」
「あえ、そんな!」
「だってあんたが振り込んだ話じゃない!まったく」完全に頭を机に振り落とす。「船長は冒険冒険と大はしゃぎするし、誰も助ける気はないし…」
「大げさだよ、ナミさん…あら?」
アイルは、ふと、ドアの向こうから近づく何かに気づく。そっと耳を立てて…
「…ふふ。噂をすれば。」
「は?なんの…」
「ナァァァミィィィィ!!」
「え!この声!」
「まだかぁぁぁ!!」突然女部屋に突っ込む男。麦わら帽子をかぶり、勢い良く伸ばす腕はナミの肩を掴む。
「まだか!俺はもう退屈だぞ!」
「まだだよ、もう!ちょっと困ってるから、黙ってて!」
「いや、もう待たん!さっさと不思議島へ到着しろ!船長命令だ!」
「無理!アイルだって確認したのよ!存在しない島にどうやって到着するのよ!」
「俺は知らねえ!お前航海士だろ!」
「航海士を何だと思ってるの!」
(またこの調子か…)揉め事をはじめてしまった二人を尻目に、アイルは再び地図に向ける。その地図は、とても良く描かれてるが、矛盾は確かに存在する。本当に幻なのか、それとも何か引っかけなのか…そこはどうしたものか…
「カァ~」
「ん?どうしたの、黒丸?」肩から地図の上に降りた鴉に問いかける。黒丸は黙って、幻の島の描かれた場所を爪で引っかき始めた。
「あ、コラ、黒丸、大切な地図に…え!」
相棒を叱るところだったが、引っかいた部分に変化が訪れたことに気づく。アイルはもっと良く確かめるように、顔を近づけるが…「
ガタン
「おぶ!」突然部屋全体が傾いてしまったため、顔を机にぶつけてしまった。喧嘩中のルフィとナミは、倒れてしまい、ルフィがナミの上にのっかかった状態に。
「うわ!なんだ~こりゃ!」
「あいたた…何事よ!ちょっとルフィ、どきなさい!」
「あああ、髪引っ張るな!…てゴムだから平気だった!」
ルフィを髪から引っ張りながら、ナミはデッキに駆け上がる。
カァカァ!
「んん、何よ本当に…」意識を整い、再び地図を見る。
「これは…あ、まさか、そういうことか!」
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~サウザンド・サニー号、デッキ上~
「おい、ゾロ、起きろ!一大事だぞ!」
「ん…ふあ~あ。何だ朝か?」
「もう昼過ぎだ!それより、大変なことに…」
「ちょっと、どうしたのよ!」
ちょうどウソップがゾロを起こすのに成功した頃に、ナミとルフィが到着する。ほかに、アイル以外の一味も集まってる。
「ああ、ナミ、ちょうどいいとこに!ちょっとみろよ、これ!」
ウソップが指差した方向に、とんでもない光景が描かれていた。
「げ!これって…」
「おおお!海のバームクーヘン!」
「違う!渦巻きだ!」
船は、巨大な渦巻きの波に巻き込まれ、どんどんと中心点に向かってゆく。底なしに見える海の穴は、今も船を飲み込むのかのように、大きく開く。
「まずい!すぐに脱出しないと…フランキー!」
「ん?ス~パ~だって?」
「言ってない!すぐにここから脱出よ!急いで…」
「待って!ここから離れちゃだめ!」
いつの間にかアイルも到着した。片手には、
「ちょ…!どういうこと!だってここは…」
「わかったの!幻の島の秘密!」
「ほんと!さすがアイルちゃん!美しいさに会う豊富な知識をお持ちに!」
メロメロサンジを無視し、アイルは地図を開いた。すぐに、ロビンが地図の変化に気づく。
「あら…ここに文字なんてあったかしら?」
「ちょっと地図をこすると、現れたんです。たぶん、ちり紙を上に軽く載りつけたんだと思うけど…」
「これは…「この島、海のものであらず」、ですか…なんか無責任な感じですね。ニョホホ。で、頭がカラの私に、意味がわかりませんが…」
「つまり、幻の島は、海に接してないってことよ。信じられないけど、そうなると…」
「「「「「「…空島か!」」」」」」
空島。新世界に突入した前に、ルフィたちがかつて、上を向く
「なるほど…誰も見つからなかったわけね。」
「そう。でもおそらく、
「あの、皆さん。ライオンちゃんが、揺れ止まりましたが…」
「え?」全員、海へ向く。馬鹿のようにでかかった渦巻きは、もはや姿を消し、代わりに静かな水面に成り果てている。
「なんだ…ス~パ~呆れる大事だったな。」
「ニョホホ!もう、二度目に天国に訪れるかと思いましたよ。」
だが、ほかの八人の反応はまったく異なり…
「来る!サンジ、ゾロ、帆を張って!」
「は~い、ナミさあぁ~~ん!オラマリモ、さっさと行くぞ!」
「うっせえ、エロコック!そっちこそどけ!ジャマだ!」
「まずいぞチョッパー!どっかつかまれ!…て、鼻もげる!!」
「ああああ、吹き飛ばされるぅぅぅ!!」
「ふふ…楽しみね。」
「ああ、何だ?」「皆さん、どうか…?」
「フランキーさん、ブルックさん。」空島に行った事のない二人に、アイルは説明する。「天国に行くのは…これからです。」
「え!冗談はよしてください!」
「空島は無論、空に存在する。そこへ行くには、普通に船に乗ってもたどり着きません。だけど…ちゃんと存在するんです。そこへの、道が。」
「ナミさ~ん!帆を張りましたよ!」
「オッケー!アイル、舵頼む!」
「分かった!そっちも、航海よろしく!」
「オイ待てアイル!その方法って…あ?」
突然、平面だった水面は、船を真ん中にしてボコッと噴出す。
「何だ!何が起こるんだ!」
「何って…幻の島、
「天空まで流れる、渦巻きを前触れとする、「
「行くぞ不思議島!出航だ~~~!」
ルフィが船首に立ち、拳を天空へと向け叫ぶのを合図のように…
ドッゴオオオォォォォん…
巨大の海水の柱とともに、サニー号は空の彼方へと消えてゆく…