蝶を焦がす燈り   作:うひよ

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初めに
作者はにわかです。色々調べ倒しながら書いていますが、原作との矛盾点が生じるかもしれません。その時は遠慮なく教えて頂ければ土下座して喜びます!
煉獄の兄貴としのぶちゃんが好き好きなんで、どうにかならないものかと書き始めました。同志は沢山居る筈!

更新は不定期です。


煉獄家の長女

「弱き人を助ける事は、強く生まれた者の責務です」

 

これは、母の言葉だ。

幼かった私と兄上に強き者とは何かを説いてくれた、大好きな母上の。

 

当時の私は、大好きな母の言葉の意味が理解出来ていなかった。そしてそれは、兄である杏寿郎も同じだった事だろう。

…いや、兄上は聡明なお方だ。もしかすれば、当時からその言葉の意味の本質を理解していたのかもしれない。

 

何故急にそんな昔の思い出が頭を過ぎったのか、なんて理由は考えるまでも無かった。今、私の身には…普通では考えられない様な事が起きたからだ。

端的に説明すれば、前世の記憶が突然頭の中へと、断片的にではあるけれど流れ込んで来たのである。

 

私ーーー煉獄 燈火(とうか)の前世は、特別語る様な事も無い程には華のない人生だったと思う。母上に似て美人だと、母上を知る人に会えば常々言われ続けるなんて事も無ければ、髪の色が今みたいに焔色をしていた訳でもない…と思う。

他人事みたいに聞こえるかもしれないが、実際他人事だった。前世の記憶が流れ込んで来ただけで、私は煉獄 燈火だからだ。

それも断片しか見えなかったので、自分がそこから転生したという様な感覚が芽生えない。

 

それでも私が母上の言葉を思い出したのは、記憶の中にあった1つの物語が起因となっている。

家族を殺され、妹を鬼に変えられた主人公が、それでも前を向いて諸悪の根源へと立ち向かっていく物語。

ついでに言えば、その物語の舞台は今、私が生きているこの世界だった。

 

主人公は沢山の人に支えられ、共に高め合い、時に挫けそうになりながらもそれでも最後には前を向く。

そうして遂にはラスボスを倒す……のは良い。完璧だ、素晴らしい。

 

だけどーーーーー。

 

 

「死にすぎでしょうが!!!…いっ…っ…ぅ!」

 

がばっ!と上半身を強く起こし、そして同時に強烈な体の痛みに襲われる。

痛い…身体中が、妙に痛い。…そうだ、そういえば、いきなり記憶が流れ込んで来て倒れたんだ。

 

「くぅ…何でこんなに体が痛いの…?私、一体何時間寝て…いや、そんな事より…!」

 

今の記憶で見た出来事は、この先本当に起こる事だ。それは何故か、そしていつ起こるのかは分からないけど確信が持てた。

ただ、内容がダメだった。絶対に許せる話ではない、哀しい未来だ…!

私が見たのは、沢山の人の死。その中には…兄上の姿だって……!

 

「…死なせない」

 

兄上はあんな所で死んで良い人じゃない。

もっと、もっともっと生きなきゃダメだ!ただの物語じゃないんだ、私にとってここは現実なんだ!死は美談にならない、死は死なんだ!会えなくなるなんて、絶対に嫌だ!!

 

私が物心ついた頃から、兄上は私の憧れだった。心優しく、誰よりも正義感溢れるその姿に私も追い付きたいと思った。

 

咄嗟に立ち上がろうとするも、何故か足腰に力が入らずその場に大きな音を立てて倒れ込んでしまった。

…あれ、変だな、全然力が入らない。それにやっぱり身体中が痛い、これは何でだろう。

 

急に倒れ込んでしまったせいで、手をつかずに脱力した状態で土下座してる様な体勢になってしまった。誇り高き煉獄家の長女として不甲斐ない…穴があったら入りたい…。

 

どうにかして体勢を正そうともぞもぞ動いていると、不意に部屋の襖が開かれた。それと同時に私へと駆け寄って来る足音と、喜色一杯の大きな声が私の耳に入ってくる。

 

「燈火!!目を覚ましたのか!!良かった…!!」

「あ、兄上…!」

 

よ、よりにもよってこの格好を見られるのが兄上とは…、恥ずかしい…、羞恥で顔を真っ赤に染めてしまうのは仕方のない事だろう…穴があったら入りたい…私の周りに沢山穴を用意していて欲しい…。

 

「この様な格好で、申し訳ありません、兄上。何故か身体が上手く動かせず…痛みも少し」

「当然だ、一月も寝たきりだったからな!!」

「…!…そんなに…」

 

それ程までに私が見た記憶の情報量は大きかったという事だろうか。いや、しかし量で言えば大した事は無かった。何せ断片的にしか見えていないし、私の直感以外でそれが現実に起こる事だという確証も無い…本当にただのバカげた夢だという可能性の方が、普通は高いんだから。

 

だけど私は確信した、あれはこの先の未来で絶対に起こる事だと。

それを防ぐ為に、私は今まで以上の覚悟を持って鍛錬に臨まなければならない。……というのに、体が全く動かないのだからほとほと困り果ててしまう。

 

「うむ、鍛錬をしたいその心意気は感心するが、丸一月も寝ていた身体で無茶をするものではない!少しずつ身体を鳴らして行けば良い、俺も手伝おう!」

「い、いえ!兄上のお手を煩わせるなど…」

「妹の為に動く事を煩わしいなどと思った事は無い!!…そうだ、父上と千寿郎を呼んでこよう!ずっと心配していたぞ!」

 

倒れ込む私を抱き起こして、再び布団の上に寝かせてくれた兄上は、居ても立っても居られないという様子で襖の向こうへと歩いて行った。

 

…兄上や千寿郎、そして…父上には、私の見た記憶の話はした方が良いのだろうか。

いや…証拠も無く、不確かで根拠も無い私の想いだけで余計な心配をかけるのは忍びない。それに、兄上が死ぬかもしれないなど…口に出したくは無かった。

 

その後、私の元へ駆けつけてくれた千寿郎と父上に思い切り抱き締められて心が暖かくなったのはまた別の話。

 

 

 

 –––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

 

 

 

「…う」

「痛むか?少し休憩を取っても…」

「大丈夫…です。兄上ばかりちゃんとした鍛錬をするのはズルいですよ、私もすぐに体を元に戻します」

「はは!そうか、ならまずは全集中の呼吸を極めねばな!ほら、途切れている!」

「あ…」

 

翌日、私は早速兄上に頼み込んで訓練に付き合って貰っていた。訓練と言っても、全集中の呼吸をしつつ、兄上の身体にしがみ付きながら歩くというだけのものではある…が、今の私は歩くだけで精一杯だ。

既に鬼殺隊に入隊している兄上は、まだ12歳と言う若さで全集中の呼吸の常中をけろりと使用しておられる。私は兄上とは3歳差なので、今私が全集中の呼吸を極めれば兄上より早く使いこなしたという事になるからやる気は出ているのだけれど、そう簡単に使用できる様になれば苦労はしない。

集中して、最長で半日続けば良い方だ。これでも私の歳では天才だって胸を張れると父上は仰ってくれた。天才という言葉に一瞬だけ胸を踊らせたけど、私は強くなり、弱き人を助ける事の出来る人間になりたいのだ。そしてゆくゆくは…兄上を死から救ってみせると決意した。天才だと言って貰っただけで満足していられない。

 

「そういえば、兄上と同時期に最終選別を突破されたという例の3人組はどうされたんですか?最近あまり話も聞かなくなりましたが…」

「冨岡達の事か?なら心配はいらない!お互い別の任務に赴く事も多くなって、単に話す機会が減っただけだ」

「そうでしたか…お元気そうで何よりです」

 

冨岡達、とは兄上と同じ年の最終選別を受けて突破した者達の事だ。

本来なら後二年後になる予定だったのだが、父上や私との鍛錬で充分に力を付けたと父上が判断し、一年前の最終選別に臨んだ。

結果は勿論合格で、その年の最終選別では死者が0という快挙まで成し遂げ、その上試験の途中、明らかに他の鬼達とは雰囲気が違う鬼が現れた時、話に出た冨岡達…冨岡義勇、錆兎、真菰と共にその手が多い鬼を倒したとか。

今でも同じ任務に派遣された時などは好んで話をする程仲が良いらしい。兄上と同期…少し羨ましいわ。

 

「私も、もっと鍛錬を積んで最終選別へと参りたいです」

「燈火ならば何も心配はいらない!母上に似て優しく、何より心が強い!母上も良く仰っていただろう、心を燃やせと!その気持ちが燈火にはある!今年の最終選別にも頑張れば出られると俺は信じている!」

「兄上にそう言って貰えて、俄然、やる気が出てきました!必ず今年の最終選別を受ける為の許可を父上から貰ってみせます!」

 

最終選別まで残り三ヶ月程…時間はあまり残されてはいない。だけど諦める訳にはいかない!

鬼殺隊に入隊するのが遅れれば遅れる程に、兄上との距離はみるみる離れていく。その背中に追いつけなくなってしまう!それはダメだ、私はいつか…尊敬する兄上の隣に立って戦いたいんだ!そして…死ぬかもしれない人達の命を救いたい!!

心を燃やせ…!私の名前は煉獄燈火!煉獄槇寿郎と煉獄瑠火を両親に。兄に杏寿郎、弟に千寿郎を持って生きている幸せ者なんだ!

今は変な記憶も頭の中に混ざっているし、知識も増えた!出来ない事なんて、何にも無い!!わっしょい!!!

 

 




母上が亡くなっているのに父上が普通に接しているのは主人公が居るからです。
荒れていた時期もありますが、色々あって落ち着きました。亡くなった妻にそっくりな娘には逆らえないパパ上…。いつかその時の話も書くと思います。

柱達が最終選別を受けた年が分からなくて困りました。はい。少し捏造も入ります。

評価、感想の方もお願いします!心を燃やせ!
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