蝶を焦がす燈り 作:うひよ
誤字報告も助かってます!キャラの名前間違えるのは致命的ですね、やらかしました、ごめんなさい冨岡さん。
参の型が劇場版で判明していた様なので修正。
劇場版で初登場はちょっと盲点でした、ご指摘感謝します。
「炎の呼吸 漆ノ型…!“
「炎の呼吸 壱ノ型、“
揺らめき軌道の読みづらい筈の私の斬撃を、払うような兄上の木刀が一閃され難なく塞がれる。
そのまま動きを止めずに二、三連続して打ち込むが防がれ、弐ノ型 “
「どうした
「絶対に行かせて頂きます…!せめて兄上から一本取って!!」
「良い心構えだ!来い!!」
何度となく技を打ち込み、その度に防がれ反撃を貰うけれどすぐに体制を立て直して木刀を振るう。
私が変な記憶を見て倒れてしまったあの日から、既に二ヶ月が経とうとしていた。
最終選別は一ヶ月後の十月初旬だというのに、未だに父上の許可が下りずにいる。
「炎の呼吸 肆ノ型 “
「踏み込みが甘い!炎の呼吸はしっかり大地を踏み締めて使わねば大した威力にはならないぞ!」
「っ…はい!!」
この二ヶ月で何とか全集中の呼吸 常中は出来る様になった。寝ている時も常にしているし、瓢箪は普通の大きさなら割れる様になった。
けれど、幾度となく素振りや打合い稽古を続けようが炎の呼吸を使いこなせるには至らなかった。
「っ…!」
煉獄家に代々伝わるのが、この炎の呼吸。歴史も深く…私は父上や兄上の様にその呼吸を使いこなせる様、今よりもっと幼い頃から剣を振るって来た。
だけれど、どれだけの月日が流れようとも私の技が昇華する事は無く…言い訳はしたくないけれど、自分には合っていないと感じてしまう。
それでも、才の有る無しを理由に剣を置くなど死んでもしたくない!挫けそうになった時はいつも、幼き日に聞いた母の言葉を思い出す。
「心を…燃やせ!」
「そうだ!胸に宿る炎を全身に巡らせろ!」
迫りくる上段の刀を間一髪の所で避け、木刀を握る手に強く力を込めた。
「炎の呼吸 伍ノ型!!“
正真正銘、今私が出せるモノの中で一番の技!
持てる力を全て出し切るつもりで、胸に宿った炎を指先一つにまで張り巡らせて放ったそれは、虎の形を模した炎となり兄上へと襲いかかる。
「良い技だ!ならば俺も、兄として全力を持って応えよう!!」
「うぐ…!」
全身全霊の技だったにも関わらず、兄上はいつも通りの顔で涼しげに受け止め、炎虎の勢いを利用してするりと刀を滑らせ私のバランスを崩してみせた。
前のめりに倒れそうになる私の上から、兄上の激声が降りかかる。
「炎の呼吸 参ノ型!!“
上段から一気に振り下ろされた炎を纏う刀が、私の首を斬るかの如く迫ってきて、当たる直前でピタリと止まり「今日はここまでだな!」と元気一杯に兄上が告げる。
「ありがとう、ございました…」
「うむ!燈火はもっと強くなれる、そう落ち込むな!」
「はい…。ですけど、何度も実戦稽古をしているのに兄上から一本も取れないのは悔しいです…!やっぱり兄上は強い!」
「まだまだ兄として、妹に不甲斐ない姿を見せる訳には行かないからな!一つ助言をするなら、燈火は思い切りが足らない所がある!斬るなら斬る!避けるなら避ける!一瞬の判断の迷いが、鬼狩りにおいては致命傷になりかねん!」
「なるほど…分かりました、次は意識してやってみます!」
思い切り…か。
最後の技は、確かに攻撃だけに集中した事で今まで以上に良い動きが出来ていた。
だけどやっぱり…兄上の言葉を否定する訳では無いが、それ以外の要因があるような気がしてならないのだ。何かが引っかかっている様な…歯車が一つ欠けている様な、奇妙な違和感。それさえ綺麗に噛み合えば、私の技は全てにおいて上達する…と思ってはいるけれど、単なる現実逃避である可能性も否定できないのが現状の私だった。
……なんて、考えるだけじゃダメだ!素振りでもしながら考えた方が余程有意義の筈だし、兄上はこの後に赴く任務で更に前へと進んでいくのだろう。
なら私が休む訳にはいかない。既に一月も遅れているのだから、多少無茶をするくらいが丁度良い!
「むう…無茶はいかんな!また倒れられたりでもしてみろ、今度こそ父上が心労で倒れられてしまう!はっは!」
「あっ、か、返して下さい!兄上ー!」
素振りを続けようとしていた私の木刀をヒョイ、と取り上げた兄上が、高く持ち上げて家の中へと戻っていく。
それを追いかけて私も中へと戻るけれど、兄上が入った場所は父上の部屋の筈では…?
「燈火、良く頑張っているな。そこに座りなさい」
「!は、はい、父上!」
案の定部屋の中には父上が居て、兄上は父上に木刀を手渡してすぐに出て行った。恐らく任務に行ったのだろう、去り際に「行ってきます」と言葉を残していた。
私は父上に促された通り、向かい合う様に姿勢を正して座る。
「あの、父上は今日、任務等は無いのですか?」
「昨晩に下弦を含めた鬼の頸を五つ程斬った、今夜も見廻りだ。全く、可愛い子供達に添い寝もしてやれん」
さらっとそういう事を言える辺りが、鬼殺隊を支える「柱」の一角…“炎柱”である父の素晴らしい所だ。
兄上との打ち合い稽古を何度も見させて頂いているが、まるで次元が違う。私が何度やっても勝てない兄上が、父上との稽古ではまるで赤子扱いなのだから否が応にも進むべき道は遠いのだと実感させられる。だからといって挫けたりは絶対にしないけれど。
「杏寿郎から聞いたぞ、最近あまり休んでいないそうだな」
「う…、申し訳ありません…どうしてもジッとして居られなくて…」
「最終選別まで後一月、その事で気持ちが逸るのは理解出来る。だがお前はまだ10歳にもならない幼子だ、母に似て聡いお前なら、あまり身体に無理を強いるのが良くない事は分かるだろう?」
「はい…」
最終選別が近付けば近付く程、居ても立っても居られなくなって体を動かしてしまう。無茶をするのは良くないと分かってはいるのだけれど、動いていた方が何かと落ち着くのだ。
だけど、父上が仰った様に最終選別までは後一月……、…?
「…あれ、父上…今、最終選別まで後一月って…」
「ああ、言った」
「それは、そのぅ…つまり…」
「珍しく言葉を濁しているな、はっきり言ってみなさい」
「…わ、私が、最終選別に行く許可を下さるという事でしょうか!!」
「そうだ」
私は勇気を出して聞いたのだけれど、父上は何ともない様ないつも通りの声色で頷く。
嬉しい…!嬉しいけれども…一体何故…?兄上との稽古では一度も勝てた事のない私が最終選別に行くのはまだ早いとばかり…。
「不思議そうだな、もう少し喜んでくれても良いだろう」
「あ…そう、ですね…。私は未だ、炎の呼吸を使いこなせていません。全集中の呼吸 常中を辛うじてこなせる、その程度のレベルだと自己分析しております。…許可を出して頂いた事、本当に感謝しておりますが、果たして本当に今の私にその様な資格があるのか、と…」
「炎の呼吸を使いこなせていないのは杏寿郎も同じ事だ。俺も極めたとは言い難い」
「…!!」
父上程の達人でも、まだ極めるには至らない…?
「俺より強い人など探せば幾らでも居る。探さずとも柱には何人も居る。そして、上弦の鬼共はもっと強い。…どうだ?」
「…えっと…どう、とは?」
「道のりは果てしなく長いだろう?先は見えず、自分の限界は道半ばで止まっているかもしれない。何かを極めると言うことは、常に己との戦いだ。諦めずに前へ進んでいけると言えるか?燈火」
兄上より強い人は沢山居て、父上より強い人も居て…そして、そんな強い人達よりももっと強い『鬼』も居る。
父上が言いたい事、伝えたい事を私は全部理解出来ていないかもしれないけれど…答えは簡単だった。
「私は、これから先…例えどれだけの壁が目の前の道に立ち塞がろうとも、絶対に諦めません。目指す道は遠く先が見えなくとも、数多の障害が四方八方から打ち寄せられようとも、何があろうと…心を燃やして立ち向かいます。鬼を…滅し尽くすまでは」
諦めるなんてあり得ない、死ぬかもしれない人達を見捨てる事は絶対にしたくない。それが兄上なら、尚の事。
父上がどうしてその様な事を私にお尋ねになられたのかは分からないけれど、これが私の答えだから。
「それが理由だ」
「え?」
「最終選別を受ける許可を出した理由が分からなかったのだろう?絶対に諦めないという強い意志の下、幼き頃から厳しい鍛錬を耐え抜いて来た。その事実を裏付けするかの様に実力も充分についてきている。燈火は少し勘違いをしている様だが、最終選別を受ける者の大半は全集中の呼吸の常中は出来ない。技が可視化する程、呼吸の型を使いこなしている者も同じ事だ」
…私にとっては、にわかに信じ難い内容だった。父上が私の実力を認めて下さったのは、かなり、とても…すっごく嬉しい!わっしょい!って気分になる…けど、全集中の呼吸 常中が使えなかったり、技が「薄い」状態で最終選別を受ける人が居るという事実に驚きを隠せない。
「最終選別は冗談でも何でもなく、沢山の命が失われる試験だ。俺はお前達を死に向かわせたくはない」
「では、私は既に最終選別を確実に突破出来る程の腕がある…という事ですか?」
「その通りだが、油断は絶対にするんじゃない。鬼は夜に活動するが、人は夜になれば当然視界が悪くなる。更に、鬼との戦闘は対人稽古とは違う、本物の命の奪い合いだ。臆すれば死ぬぞ、この事を忘れるな」
「はい…!」
父上が言う事なんだ、信じられない事でも本当の事なんだろう。…なら、死なない様に私が守れば良いだけの事。
これ程までに私の身を案じてくれた父上の為にも、私自身も必ず絶対に生きて最終選別を突破すると改めて心に誓う。
その日まで残り一ヶ月…もっと強くなって、今年の最終選別も死者ゼロを目指そう!
呼吸の型を発動する時、水やら雷やらのエフェクトが出るのは気迫でそう見せてるらしいですね!
そしてそのエフェクトが出せない人たちは「技が薄い」だかなんだかでキチンと使えてないのだとか!
炎の呼吸の参と漆の型は原作に描写が無かったので都合の良い様に考えました。と思ってた時期が私にもありました。
参ノ型は、昇り炎天から繋げるのが一般的だそうです!
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