大会の予選が始まった。
「さて…アラジの野郎は…あそこか。」
クアンタはスタートに出遅れ、最後方に位置していた。逆にアラジは前の方に位置している。
「…うん?森林に入って行ったぞ?」
森林コースに入った瞬間…
「おりゃあっ!」
いきなりクアンタは襲われたがすぐに避けた。
「くそっ…」
襲った犯人はすぐに前へと行き、次から次へと襲って行った…
その結果…
「うぎゃあっ!」
「助けてくれー!」
ここで早速脱落者が出始め、次々とライバル達はいなくなってきた。
「あんの野郎…絶対にぶち殺す!」
クアンタは犯人を探すべく、走るスピードを徐々に上げた。
「喰らえや!」
そして再び犯人が襲いかかり、クアンタはその行動を見切った。
「そう何度も上手く行くと思うな!クソ野郎!」
クアンタは海王類を相手にしているが人の気配までは読めなかった。その為最初に襲われた時反応出来なかったのだ。しかし初めて人に襲われて人の殺意や気配などを覚え、海王類を狩る感覚を引き出し…捕まえたという訳だ。
「離せ!」
小物臭漂う犯人はクアンタの拘束を逃れ為に暴れるが無駄だった…クアンタの力が強過ぎるのだ。
「おらっ!」
クアンタの一撃が犯人の頭に入り、犯人は失神した。
「全く…とんでもない奴だ。」
クアンタは先頭集団よりもかなり遅れて森を抜けた…
「おいおい…相当な坂だな。」
角度40度の上り坂が目に見え、クアンタはそれを見てため息を吐くが予選突破するために駆け上がる…
「ぎゃぁっ!!」
すると謎の悲鳴が坂の向こうから聞こえた。
「また誰かが襲われたのか?」
クアンタはそう呟き、坂を上って見るととんでもない風景を目にした。
「冗談だろ…?」
クアンタの目には坂の上りと下りが何回も繰り返しておりそのコースには幾多の挑戦者達がスタミナ切れで倒れていた。
「とんでもないスタミナレースだな…こりゃ。」
クアンタは上手く走法を変えて対処していき、坂を下っては上がって…上がっては下って…その連続が続いた。
「だが俺にとってはむしろ有利な展開だ…」
クアンタがそう思ったのはまずスタミナ切れが起きていないということ…
それは何故か?クアンタは元がつくとはいえ漁師である。海に潜る以上、要求されるスタミナは陸の4倍は必要…更に海王類を専門としているため、長期戦も対応しなければならなかった。しかも素手で海王類を狩ってきたのだ…それがどういう意味かわかるだろうか?水中を得意としている魚人ですら海王類相手に長期戦となればスタミナが切れてしまうだろう。ところがクアンタは人間である…水中で呼吸が出来ない以上陸に上がる力も必要となりスタミナ切れは許されないのだ。
そんな化け物がスタミナ切れを起こす訳がない…
もう一つの理由はクアンタとアラジ達の差がどんどん縮まってきたということにある。
「くっ…なんてマラソンだ…」
そういってまた一人、一人と前の集団の参加者達が脱落していくと…坂の麓で棄権した者たちはその場で倒れ、坂の途中で止まった者は坂の急激な坂の影響で転がって行った。
「これは確かに、あの悲鳴が響く訳だな…」
そうクアンタは呟いて先頭集団に並んだ。
「ようアラジ…随分と汗だらけじゃないか?」
そういってクアンタはアラジに話しかけるが無視された…
「はぁーっ…ぜぇーっ…!」
正確にはアラジは無視しか出来なかった。何故ならアラジはすでにスタミナ切れを起こしており返事をしたら倒れてしまうほどだった。
「お、俺は…魚人だ、だから走、ること、は慣れ、ていない…」
しかしアラジは執念で返事を返した。
「そんなんじゃお前の主人は見つからない。お前がそんな言い訳をしている限りな…」
そういってクアンタはペースを上げてアラジの心を折りに行った。
「くっ…!」
アラジは負けまいと必死で追い、根性で粘る。
そして坂の上下がなくなると沼地のような地帯に入った。
「ぬおっ!?」
クアンタ達一同はそれに驚き、一気にスタミナを削られた。ちなみに先導役は水上バイクに乗って進んでいた。
「くそ…っ!」
ついに参加者はクアンタとアラジの2人だけになった。
「ぬおおおお!!」
そしてアラジが最後の執念で沼地であるという利点を利用して泳ぎ始めた。
「ぬははははは!どうだ!流石の貴様といえどもこれには敵うまい!」
魚人の泳ぐスピードはかなり速くアラジがクアンタを抜かしてそういった…
しかし、アラジの横から水しぶきがかかった
「な、なんだぁっ!?」
それを見ると悪魔の実で変化したクアンタの泳ぐ姿があった。
「な、なぜだ…!?何故悪魔の実を食べたにも関わらず泳げる!?」
アラジはそれが不思議だった。しかし悪魔の実を食べても泳げるというのは海やプール…つまり水が多い時の話しだ。それ以外は泳げる。もちろんその者に泳ぐ技術があればの話しだが…
「くそがぁぁっ!!」
アラジはとにかく泳ぐが無駄だった。それどころか逆に差をどんどんつけられてしまっている。
「(こんなに速く泳げたか…?)」
それを見てクアンタも疑問に思った。この疑問はいたって簡単でクアンタの食べた実がウマウマの実モデルベアナックルであることに由来する。ベアナックルは沼地よりも最悪の状態の馬場を泳いで10馬身以上もの差を縮めて世界を代表する他馬をごぼう抜きしたのだ。…もう一度言おう。世界を相手に10馬身も離れ、それを泳いでごぼう抜きしたのだ。これがどんなことか理解出来るだろうか?関係者、観客問わずそのレースを見た者はベアナックルを化け物と評した…
「これでゴールだ!」
そして先導役の水上バイクを差し切ってゴールした。
そしてアラジがゴールして1分が経過すると…
「予選突破した参加者はベスト・D・ニュー・クアンタ選手とアラジ選手の2名!決勝はすぐ近くにある闘技場にて5時間後に開催されます!」
司会者がそういって決勝の舞台を告げた。
「クアンタ!やるじゃねえか!」
バギーがやってきてクアンタに話しかける。
「あいつの心を折れなかったことは残念だが…決勝でも勝つ。それだけだ。」
クアンタはそれだけ言って闘技場へと向かった。