言葉が出なかった。僕の身体は蔓に縛られ、あの石を胸に抱きかかえて足は浮いていた。さっきから"あつい"と感じていたのは蔓の感覚なんだとぼんやりとわかった。
なんで
どうして
疑問が僕の中をめぐって答えは出なかった。
「リー坊!いいか!!よく聞け!お前さんはっ魔神に浸食されてんだ!!!」
違う。
なんとなくわかった。だって、この身体は僕の思い通りになっていないから。この頭だけが残っているのは魔神の気まぐれなんだってワカル。
ぼくはカムおじさんをきずつけていて、カムさんはぼくをもやして
ぼくは
ぼくはてき?
みんなのてき?
ぼくはなんでいき「リー坊!余計なことを考えてんじゃっねえ!!」
「カム!!状況は!!!」
おかあさんがカムおじさんのよこでぼくをはらう
「良くねぇ、フィールはまだか!」
「ファストが引っ張ってる!!セェイ!!!」
「よっしゃ、リーシャちぃと抑えろ!!」
「何秒っ」
「30!!」
「了っ解!!!」
ぼく がおかあさんのけんをまきこもうとするけどそれごとなぎはらわれる
おかあさんが ぼく をきりはらっていく
あたらしい つる をだそう とし た けどでない
おかあさんが ぼく をつかんで ぼく をむねからとろうとした
なおした ぼく でおかあさんをふりはらう
「リーシャ!!」
「よしきた!!」
カムおじさんが ぼく になにかをとばした ぼく はていこうできない
ぼくは僕は
僕は誰?
僕はリム・ラックガルドだ!
「おか、あさん」
「リム!!」
涙が止まらなかった。自由にならない身体に二人を傷つけてしまう身体に。
「おかあさん、おねがい…ぼくを……ぼくをころし」
言い切る前に頬を平手で叩かれた。
「あはは。僕ね、わかるんだ。もう、戻れないって。身体の奥までもう浸食してるって」
「バカ!!!なに言っているの!あんたは助かるのよ!!みんなと一緒に雷月亭に帰るの!!!!!!」
「カム!リーシャ!フィール引っ張って来たぞ!!!」
おとうさんが肩に担いだフィールさんを降ろして縛っている縄を断ち切った。
「いてて、ああ、もう、終わってから文句はいうからな!!とりあえず、固定化!!!」
僕の胸の宝珠が止まった。ううん、止まってない。外に出せなくなっただけで僕の中を巡っている。
「さすがにこんな状態はわかんねーな。これも時間稼ぎでおわるぞ」
「どうにかならないの」
「わからない。わからないとしか言えないが探って診る。リンク…………」
みんながフィールさんと僕をジッと見る。僕は僕の中にフィールさんが入って来るのがわかった。けど、石の周りや僕の奥を覗いて悟ったみたいだ。
「……切断」
「フィール。どうだ?何を用意すればいい。どれだけの金が必要だ」
「無理です」
「お前!!」
「もう、無理です。」
おとうさんがフィールさんの胸倉を掴んで引き寄せる。フィールさんは身長差から前屈みになっても事実を伝える
「今の状態がベストです!もう、これ以上は戻せないんです!僕だって、ぼくだってっ……リムくんを元に戻してあげたいですよ」
おとうさんの手が力を無くす。フィールさんがそのまま地面に崩れた。
「クソがっ」
カムおじさんが地団駄を踏む。おかあさんは僕を見て必死に何かないかと考えているみたいだ。
「ねえ、ラッキーのみんなに依頼があるんだ」
「なに?言ってみて?」
「僕を討伐してよ」
「っ!」
みんなに動揺がはしる。
何か言いたいけど何も言えない。そんな静けさが広がる。
しばらくしておかあさんが顔を上げた。
「フィール、固定はいつまでできるの?」
「リムくんの精神によりますが一年は」
「わかった」
おかあさんが決心した表情でみんなを見渡す。
「フィール、それは私でも覚えられるの?」
「ええ、まあ。まさかっ」
「わかった。帰ったら教えて」
「無謀です!第一そんな事をすれば冒険者資格は!!」
「わかってる。それまでにこの患者の治療方法を、さ。探してよ」
「そう、ですね」
おかあさんの顔を見て決心は堅いとわかったのか渋々頷いた。
「カム、あんた私に大きな借りがあったわよね」
「………そう、だな。少なくともこの一件を墓まで持っていく程度にはあったな」
「ええ、借りを返すわ」
「ハン、釣りがでけぇよ。バカめ」
「わるいわね」
「そう思ってんなら言うなっての」
カムおじさんはフィールさんを引っ張って離れていく。
「ファスト、わかってるでしょ」
「ああ、そうだな。ここでリムを失う事は大きな損失だ」
「当たり前でしょ。私たちの息子だもの」
「そういえば、雷月亭の支部長の席が近々空くのだがやらないか?」
「アハハ、いいわ。やってやる。なんだってやってあげる」
「そういう事だ。依頼主様」
「もう、みんなして、しかた、ない……んだから」
僕はうまく笑えているかな。
「じゃあ、さ。一年後、呼んでよ。僕がちゃんと来られるように」
「リム?」
「実はね、コレットさん…サラさんに通話の耳飾りを渡したんだ」
「お前、いつの間に」
「ファストは鈍いから気付けないのよ」
「だから、ね。サラさんから耳飾りを預かってさ。それで呼んでよ。サラさんには忘れてってごめんねって伝えてさ」
「わかった。コレットが良いって言ったならそうするね。でもねリム」
「なに?おかあさん」
「コレットは渡してくれないと思う」
「もう、みんなバカだなあ……」
おとうさんだけが掴めていない様子でちょっとおかしかった。おかしくて涙が出そうだ。
「わかった。じゃあ、さ、もう行くよ」
「そう、元気でね」
「なにかあれば言えよ」
「うん、わかった」
家を出る時のように僕は『行ってきます』とだけ言ってその場を飛んだ。
この身体になってわかった。魔力は自由になる。何処までも飛べる。
どこにいこう。どこかヒトのこない遠くに行こう。
それでまた戻ってくるときは『ただいま』って言うんだ。