ぜろのふたばさ   作:どっとはるか

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タバサ「つい勢いで襲った。後悔はしている。」


ルイズ「はじめての告白」

「な、ななな! だ、だめよそんなの!?」

 

 タバサというふざけた、絶対に偽名だと思われるガリア貴族の言葉に、わたしは酷く狼狽えた。今日こうして口が回らなくなるのは、いったい何度目だろう?

 

 だって、だってだって、わたしをお嫁に貰うだなんて……! 

 

 恋愛経験などわたしは無いし、恋なんてするつもりも無かった。喜ぶべきか、悲しむべきかは解らないけれど、こういうことに関しては初心なのだ。そんなわたしに、彼女のさっきの言葉は強烈すぎる。

 

「どうして?」

 

「どうしてって……ミス・タバサとわたしは、その、女の子同士じゃない!」

 

「問題ない。多分これは本物と同じ……子供も作れる」

 

「へひっ!?」 

 

確かに、さっきわたしが見たのは間違いなく、男の人のあれだ。深夜に寝ぼけて使用人も呼ばず、お手洗いを探して一人で館をうろついた時に、見たことがあるのと同じものだ。しかも、その時の父様のよりも大きい。母様とふたりでわたしの妹を作ろうとしていた現場だから、間違いなく同じ状態のはずだ。

 

 ちゃんと機能するのならば、子供も作れるのかもしれない。タバサと、わたしの子供が。うーん、わたしにも母様の血が流れてるし、きっとすごい風のメイジに……はっ!? わたしは何を考えているのよ!

 

「そ、そういうことじゃなくて……」

 

 そもそも、そういう問題ではない。わたしには約束ごとがあるのだ。

 

「あのねミス・タバサ。わたし……一応だけれど、婚約者がいるの。」

 

 別に、その人に恋をしているわけでもない。もう何年も会っていない人間への気持ちなど、残っているかと言えば、彼には悪いが何もない。しかし、これは口約束とはいえ親の決めたこと。決してわたし個人で取り消したり出来ることではなかった。

 

「子供の頃の約束だから、彼はもう覚えてないかもしれないけれど、だから――」

 

 ごめんなさいと面と向かって言おうとするものの、強く抱き締められた体を動かすことは出来なかった。それと背中に、マント越しに、何かが当たっている気もする。

 

「わたしを見捨てないと言ったのは貴女」

 

「そ、それとこれは話が違うわよ……! もう、ちょっと……は、離してってば!」

 

 確かにそう言った。でも、使い魔と添い遂げるだなんて思ってなかった。自分の言葉に嘘をつくつもりは無いけれど、他に方法はあるはずだと思っている。しかし、そんなわたしをタバサは更に強く抱き締め、離そうとしてくれない。彼女も必死なのかもしれない。その気持ちを表すように、押し当てられている固いものが、だんだん大きくなっている気がする。これ、もしかして……あれなのかしら。

 

 ……ん? ちょっと待ちなさいルイズ。

 

 もしかして彼女は、背中の大きくなっているものを、杖やナイフの代わりにわたしへ突き立ているのではないか。言うことを聞かないのなら、これでわたしをどうにかするつもりでは?

 

 ふと気がつくと、今のわたしは無防備過ぎではないだろうか。背後をとられ、場所は逃げ場の無い竜の背中。色々な意味で、危機を迎えていると悟った瞬間、顔や体からどっと汗が吹き出した。

 

「こんな体をした人間と、結婚したい人なんているはずがない」

 

 切実そうな彼女の声に、胸が痛むものの、不安と焦りは消えない。

 

 だいたい、そう思うのならば、主のわたしにその責任をとらせるのも酷いのではないか。というか、なんか背中が熱い、シャツとマントを越えて伝わる熱がすごい。

 

「そ、そんなのわかんないわ! きっと今の貴女にだって、素敵な人がいるわよ!!」

 

 なんとか彼女との結婚……それ以前に、この場で襲われることから逃げたくて、わたしは焦りながらも彼女を慰めてみる。だが、説得の効果は薄かった。淡々とした口調に戻り、私を逃がさないよう抱きしめる彼女は、より強くそれを背中に押しつけてくる。

 

「ちょっと、ミス・タバサ。そんなにひっつかないで……」

 

 求められている気がするのは、ちょっと、ほんのちょっとだけだけど、女性として嬉しい。けれど、さっきまでの彼女の恥じらいはどこへ消えてしまったのか。突然生えたそれへのショックで、なんだか彼女は変な気持ちになっていないか。だって、決して親しくはなかったが、こんな彼女は学院で見たことがない。それとも、まさか本当に無意識で、彼女は気づいていないのか。

 

「ほ、ほら! ひょっとしたら生えててもいいと言ってくれる人も、いるかもしれないわ!」

 

男の人同士とかが平気な人ならば、あり得る……と思う!

 

「これは大きすぎる」

 

「へ? お、男の人って、そういうの気にするの……?」

 

「胸と同じ」

 

 なるほど、逆に妬まれかねないのか。確かに、わたしの背中に当たる感触は、すごく大きい。彼女はわたしよりも小さい体なのに、思い出の中の父様のより大きいのは、アンバランスが過ぎる。え、待って、わたしを貰うつもりなら、そんな物騒な大きいのをわたしのあそこに挿れる気なの?

 

「それに、これが好きな男性との結婚なんて断る」

 

 タバサの声色に刺がある。相手云々以前に、使い魔の幸せを考慮しているのかと、そう言われている気がした。確かに、使い魔に理想のつがいを探してあげたりするメイジはいる。でも、人間相手となるとそれは難しい。ましてや生えてる子なんて、どうすればいいのかわからない。

 

「そ、それなら女の子相手にすれば良いじゃない」

 

「なら、貴女が良い」

 

 突然の告白じみた発言に、心臓が跳ねた。そんなことを言ってくれた人が居なかったからか、ちょっぴり心が揺れる。

 

「貴女()良い」

 

「はひ……っ!? だ、だから! わたしは駄目だって――」

 

「責任とって」

 

「ね、ねえ……落ち着いてちょうだい。ミス・タバサ!」

 

「タバサで良い」

 

「いや、その……」

 

 ぐいぐいと距離をつめてくるタバサは、己の考えを譲ろうとしない。今ここで彼女を呼び捨てにするのは、なんだか更に関係を深めるようで躊躇ってしまう。

 

「た、た、タバ、タバサ……あ、あのね? 貴女だって解るでしょ? 許嫁みたいなのは、わたしだけで決めたことじゃないわ。公爵家であるお父様やお母様、相手の領主様だって関わっているの。だからね、親にもまずは相談しないといけないし、ここでわたしは二つ返事なんて無理なのよ」

 

 いくら不思議な名前を持つ彼女でも、これくらいのことを知らないなんてことは無いはずだ。ひとまず、ヴァリエール家の名前と公爵家という権力を出して、わたしは彼女を落ち着かせようと再度試みた。

 

「……」

 

「ね、ねえ……」

 

 彼女の瞳は、わたしにそう言われても、何も恐れてないように思える。わたしが今したことは、ある意味で権力の脅しだ。それを気にする様子のない彼女は、公爵家の決めたことに対抗しうる力や権利が、あるとでも言うのだろうか。

 

 そういえば、コントラクト・サーヴァントの時も、後悔するからやめろと彼女は言っていた気もする。

 

 ……もしくは、そんなことを気にしないほどに、わたしを求めているの?

 

「それなら今」

 

「え……」

 

「既成事実を作る」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「待たない」

 

 わたしを傷物にすると言い、タバサが後ろから迫る。熱くなったあれがマントを潜って背中に迫り、お腹の下近くにあったその指が、スカートを手繰り寄せて捲るように動いた。

 

「や、やめ、だめっ!」

 

 流石にこれ以上は、例えふざけてでも許せない。わたしは全力でもがいて彼女から抵抗した。空から落ちるかもしれないので、慎重に力を両腕に込め、彼女の抱擁を引き剥がしにかかる。魔法の腕前ならばともかく、ひとつ歳の離れた彼女相手なら、本気の腕力なら負けないはずだ……と思ったのだが、予想以上にタバサの力が強い。普段からあんな大きな杖を持っている、鍛えられているのだろうか?

 

「……んっ!」

 

 それでも何とかしようともがくと、突然タバサの体がびくんと跳ねた。何かと思えば、脈打つあれの感触が強くなっている。そうだ、この子はわたしに大きな弱点を今押し付けている。それなら、思いっきりそこを刺激してやれば良い。わたしは体をよじり、背中とおしりを強く押し付けた。大きくなっているが、女の子のと同じようなものならば、この程度の動きでも十分辛いはずだ。

 

 後にわたしは思った。何てことしてくれてるの、昔のわたしは! と。過去に戻れるのなら、このわたしを思いっきり張り倒したい。

 

 で、でも! わたしは襲われて必死だったの!! そんなことをすれば、男の人のがどうなるかなんて知らなかったし、弱点ってこと以外は、何も考える余裕がなかったんだもの!

 

 あ、でもこうしちゃえば、彼女に襲われることはひとまず無くなるから、結果的にはありなのかしら?

 

 ……ごめん、忘れて。言い訳というか、自分を正当化したいだけだから。

 

「や、やめ……ミス・ヴァリエール……」

 

「嫌よ! わたしだって、今ここであなたに体を許すわけには……いかないんだからっ!!」

 

 思った以上に効果があったらしい。弱点を突かれたタバサは、苦しそうな顔で激しく息をはいている。

 

「えい、えいえいっ!」

 

「はぁ……何……これ! も、もう――んんっ!!」

 

 スカートのウエスト部のフチで擦ったのは、改心の一撃だったらしい。もう一撃、そう思った直後のことだった。

 

「きゅい!? ちょっとちょっと、流石に本気で子作りはやめるのね、ダメなのね!」

 

「……へっ!? きゃあ!」

 

 竜が背中を揺らす。その時、ずりっと激しくスカートがあれを擦った。

 

「はぁうっ!」

 

 どうやらそれがトドメの一撃になったらしい。ひときわ大きく体を震わせると、力の抜けた彼女は、わたしへ体重を預けてきた。

 

「はふ……ふ……はぅ」

 

「た、タバサ!?」

 

 かくりと糸が切れた人形のようになってしまったタバサに、思わずわたしは慌てた。貞操は大事だが、使い魔に死なれるのも困る。急所を強く擦られた人間が、こんなことになるなんて思わなかった。

 

「全く、イルククゥだって、いい加減にしないと怒るのね! 人の背中で子作りを始めないで欲しいの、きゅいきゅい!!」

 

 また耳に届いた聞きなれない声に、わたしは動きを止める。辺りを見回してみたものの、ここは空の上。喋れるような口は、痙攣してい動けなくなった、真横にあるタバサの顔以外にない。

 

 時に、背中と言わなかっただろうか。子作りのできる背中? そんな広い背中なんて、今ここにひとつしかない。でも、そんなことが有り得るのだろうか。

 

「ね、ねえ? ミス・タバサ。まさかこの子って……」

 

「はぁ……はあ……。い、韻、龍」

 

「え、えええっ!? な、なんで! ぜ、絶滅したはずじゃ――もがっ!」

 

「黙っ……て」

 

「むぐぐ……むーむー!」

 

 驚くわたしの口を、タバサが震える手で塞ぐ。力が抜けてしなだれかかっていたもう片方の手を、わたしの体から離した彼女は、杖の後端を弱々しい力で持つと、韻龍の頭をぽこぽこ叩き始めた。

 

「喋ったら……危ないと、言った」

 

「いたっ、いたた! ちびすけ痛いのね!!」

 

「煩い……」

 

「痛いのね! いくらお前がご主人様でも、この崇高な韻龍であるイルククゥの上で交尾なんて、そんなことは許しちゃダメなのね、きゅい!」

 

「もうしないから、黙って。誰かに聞かれたら危険」

 

「むー、約束なのね、絶対なのね!」

 

「黙って」

 

「痛いのね、いた、痛いのね!」

 

 韻龍がしゃべる度に、杖が軽く下ろされる。そんな一人と一匹のやり取りに、緊張がとけたわたしの肩から力が抜けた。ひとつ深呼吸して落ち着きを取り戻し、ゆっくりと口を押さえるタバサの手を外すと、彼女の頭を撫でるように叩く。

 

「はあ……そんなに叩いたら可愛そうじゃない。やめなさいよ、タバサ。」

 

 彼女の杖を持つ手に、撫でた自分の手を重ねて止めさせる。タバサにトドメをさし、わたしの貞操の危機を救ってくれた英雄であるこの子が、これ以上頭を叩かれるのも忍びない。

 

 使用人など、大人なら彼女のやり方でもいい。でも、相手は高い知能があるけれど、話し方からして精神は子供の、しかも龍だ。理不尽に締め付けても、いつかまた今回のように咄嗟に声を漏らすだろう。

 

「ん……」

 

 気のせいか、隣にある頭がふくれているような気がした。

 

「あなたの言いたいことは何となく解るけれど、ちゃんと細かく教えないとダメよ。それに、今のはわたしたち……っていうか、この子の上でわたしを襲おうとした、貴女が悪いわ」

 

 誰だって自分の上でおっぱじめられたら嫌だろう。寝そべっているわたしの上で、ちい姉様の飼ってる兎のつがいが突然交尾を始めれば、わたしだって怒ると思う。

 

「ピンクのおちびは解ってるのね! おちびとそう変わらない胸だけど、懐はおっきいのね」

 

「ふんぬ!」

 

「きゅいぃっ!?」

 

 掴んでいた杖を持つタバサの手を、わたしは力強く振り下ろした。

 

「痛いのね! な、なにするのね?」

 

「ごめんなさい、タバサ。わたしが間違ってたみたい」

 

 彼女の手を強く振り回し、ぽかぽかと韻龍の頭を叩く。

 

「だから、ひとまずさっきの事は後にして……まずは、この韻龍のしつけから始めない?」

 

「きゅ、きゅい!? 小鬼が増えたのね!」

 

 やかましい。やはりこの韻龍は子供だ。可憐な乙女に対しては、決して言ってはならないことがある。子供のしつけの前に、まずは乙女への常識からだ。逆な気もするが、わたしの中ではそっちの方が大切だ。

 

「悪く、ない」

 

 高速で手のひらを返したわたしの思いは、タバサにも伝わったらしい。そうだ、ただでさえ彼女は今、あれのせいで女の子という存在から遠ざかっている。胸の事はきっと、わたし以上にタブーだろう。

 

「きゅい、きゅいぃ……きゅいいぃ―――!!」

 

 がすがすと、ふたりの力で部屋に戻るまでの間、ずっと韻龍の頭を杖で叩き続けた。

 

 

 

「ひどいのね、そんなに叩かれたらバカになっちゃうのね」

 

「それなら、もう少し女の子には気を使うことね。あんたは言ってはいけないことを、わたしたちに言ったのよ。」

 

「ふんだ、ピンクのおちびはわたしの見込み違いで胸も懐も小さかっ――」

 

「あぁん?」

 

「ひぎゅい!?」

 

 タバサの部屋へと戻ると、窓から頭だけ部屋へ入れた韻龍は、まだわたしたちに何か言いたいらしい。あれだけ叩いてもまた余計なことを言いそうだったので、わたしとタバサは全力で睨み付けた。すごい、わたしとこの子は今、目だけで韻龍を圧倒している。

 

「きゅい……でもでも、わたしはお喋りしたいのね。人間が知りたいから、お友だちが欲しいから召喚に応えたのに、こんなのあんまりなのね。」

 

「別に喋るなとは言っていない。ただ、誰かに聞かれたら面倒」

 

 タバサの意見にわたしも頷く。

 

「そうね、お姉さまになんかに知られたら、あんた……きっとバラバラにされちゃうわよ」

 

「きゅ、きゅい!?」

 

「わたしの姉妹の一番上、エレオノール姉さまはアカデミー……ええと、あんたみたいな珍しい生き物とかを調べる人が、たくさん住む所に居るのよ。あんたが韻龍だってバレたら、そこに住むみんなで捕まえに来るわ」

 

 次女のちい姉さまならば、きっとこの韻龍のお友だちになってくれるだろう。でも長女のエレオノール姉さまは、友達になるどころか、嬉々として様々な実験をして、最後は解剖してしまうと思う。わたしの使い魔の使い魔だから、わたしから取り上げる感覚で気軽にやるんしゃないかな、うん。

 

「うー。おとうさまと、おかあさまが言っていたのね。人間に数でこられると、韻龍でも危ないって」

 

「そうよ。だからあんたはもう少し静かにしなさい。人のいないところでなら、わたしもタバサも、相手になってあげるから」

 

そういうわたしの意見に、今度はタバサが頷いた。

 

「空の高いところなら許す」

 

「わかったのね! 約束なの、きゅいきゅい。それなら早く、お空にいくのね!!」

 

「まだ、彼女と話がある。少し適当に散歩してきて。」

 

「子作りの続きするのね?」

 

 その発言に、わたしは固まった。まずい。韻龍の見てる前でなら、彼女も変なことはしないだろうと思っていたのに。今、この龍を遠ざけられるのは不味いわ!

 

「ちょっと、待って!」

 

「行って」

 

 使い魔は主の命令を優先した。主の主のわたしの思いは届かなかった。ずるい、わたしの使い魔は言うことを聞くどころか、股下から伸びてしまった下着からこぼれる、第二の杖で襲いかかろうとしているのに。この差はなんなのか。

 

「早く済ませるのねー!」

 

「あ……」

 

 韻龍が空へと飛び立っていく。これはまずい。わたしは一目散にドアへと逃げたが、彼女が今日、部屋を出る前にロックの魔法で閉ざした扉は、力では開かなかった。なんてことだ、これでは部屋の内側に鍵穴があるようなものである。しかもその鍵は、わたしを襲った本人だ。

 

「……」

 

 床板を軋ませて、ゆっくりと彼女が歩いてくる。今度は急所にわたしの手が届くよりも早く、彼女の杖が振るわれるだろう。

 

 ごくりとわたしが息を飲むと同時に、彼女は頭を下げた。

 

「ごめんなさい」

 

「……へ?」

 

「あんなことをするつもりは、無かった」

 

 タバサの意外な反応に、わたしが目を瞬かせていると、彼女は先程の心境を語り始めた。

 

「あなたのおしりを見ていたら、突然、その……」

 

「お、おしりを見てって……タバサ、あなたってそんな、えっちな人だったの?」

 

 わたしの使い魔は、女の人のお尻を見ただけで発情するのだろうか。流石はキュルケの友達……などとわたしが思った瞬間、彼女は顔を赤らめながら睨みつけてきた。

 

「そんなこと、ない」

 

「で、でも……」

 

「たぶん、これのせい」

 

 わたしとタバサの二人の視線が下がる。

 

「……あれ?」

 

 良く見ると、なんだか小さくないだろうか。相変わらず少しスカートから飛び出しているものの、それは今まで見たなかで一番小さく思える。父様のを見たときよりも小さくなっていると思う。

 

「……治まったら、そんな気もなくなった」

 

「そ、そう」

 

「多分、男の人の気持ちになるのが初めてだったから、止められなかった」

 

 恥ずかしがりながら、自分が欲情したことを懺悔するように話すタバサに、なんとも言えない気持ちにさせられる。何て彼女に言えばいいのだろう。良かったわね、で良いのだろうか。

 

「でも、あなたを襲ってしまったのは事実」

 

 わたしが悩んでいるうちに、もう一度頭を彼女は下げてきた。

 

「……もういいわよ。」

 

 わたしに欲情したと言われたのも恥ずかしいが、過ぎたことを、いつまでも謝られ続けるのも気分がいたたまれない。使い魔である彼女との関係が、気まずいままなのも嫌だ。わたしは彼女を許すことにした。

 

「それに、あなたがそれを生やしてしまったのは、わたしにも原因があるもの。ねえ、お互い水に流しましょう?」

 

「……ありがとう」

 

 ほんの少しだけ、タバサの口角が上がった気がした。少年のような短い髪と、わたし以上に無い胸のせいか、少しドキッとさせられる。

 

 ……いや、だから彼女にときめいたら駄目だってば。




賢者タバサ

つまり、ルイズの背中は大変なことになっているのだがそれは次回
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