凶個性持ちの転生者は平穏に生きたい   作:アリアンロッド=アバター

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ヒロアカ転生ってクソじゃねぇか?

 この世界はクソだ。

 そんなことを、何度思ったことか。

 

 俺は、俗に言うところの『転生者』だ。

 前世の記憶を持つ、生まれながらの異物。この世界に置けるイレギュラー。

 とはいえ、前世の記憶でチートだイエイだの。転生特典でニコポナデポ銀髪オッドアイイエイだの。そう言うのは特にない。

 普通にして暮らしていれば、きっとちょっと頭のいい子供として生きていけた…………はずだった。

 

 ……この世界が、【僕のヒーローアカデミア】の世界でなければな。

 

 ヒロアカ、と略されるこの作品では、人類の八割くらいが『個性』と呼ばれる異能力を持っている。

 マジック以下のしょぼい個性から、学園都市であればレベル5に数えられるだろう強力なモノまで、実に様々。

 確か中国あたりで光る赤ん坊が見つかったんだったか? まぁ、それがきっかけで人間によく分からんモノが宿っちまったわけだ。

 

 そんな世界に転生した、異能とも魔法ともオカルトとも無縁だった世界の俺。

 

 ……正直、最初は恐怖でしかなかった。だってそうだろ? 何もないところから火とか雷とか出せたり、前の世界じゃUMA扱いされるような見た目のヤツが、平然と人間と同じ生活をしているんだぜ? 

 しかもその『個性』を悪用して人を襲うヴィランとかいう連中がわんさかいて、それを倒すヒーローなる連中がこれまたわんさかいる。

 

 もうね、恐ろしくてたまらない。街ゆく人間どもが、かなりの高確率で人を殺せる凶器を日常的に隠し持っている世界とか、前世の記憶だけじゃ対応できませんわ。

 しかもだぜ? ヴィランとかいう人を襲うクソどもは個性を使って襲ってくるのに、こっちはヒーローの資格がないと個性を使った反撃は出来ない……というか、したら犯罪者になってしまう。

 

 なんだそれ、理不尽極まりないにもほどがある。ヒーローが完璧にヴィランを抑えてくれていれば話は別だが、アイツらがいようとヴィランは虫のように湧いてくるし、ヒーローは基本的に事件が起こった後……つまり、被害が出た後にしかやってこない。

 つまり、ヴィランが現れると同時に、何かしらの被害が出ることが確定しているということだ。

 

 俺は原作をそこまで詳しく知っているわけじゃないのだが、確実に【モブ厳界】……つまり、モブキャラに厳しい世界であることは間違いないだろう。

 

 転生して早々、ここがヒロアカの世界だと知った時は、それはもう驚いて、絶望したね。

 

 だって、事件に巻き込まれて死ぬ確率が前世よりも圧倒的に高い。比較的治安が良いとされている日本でも、毎日のようにヴィランが現れてはヒーローとドンパチをしているのだ。

 いつそれに巻き込まれてもおかしくない状況で、絶望するなという方が無理がある。

 

 どうせなら、ごちうさとか平和な世界に転生したかったよ……。

 

 けど、生まれてしまったもんはしょうがない。郷に入っては郷に従え。ある程度はこの世界に順応するしかないのだ。

 

 そんなわけで、おぎゃあと生まれて四年もたつころにゃ、ある程度ヒロアカ世界に馴染めていたと思う。

 

 賢しい上に成長が嫌に早く、無駄に達観した可愛くない糞餓鬼だった俺を、普通に愛して育ててくれた両親には感謝感激雨あられ。

 父親も母親も一般人だったが、子に対する愛情は人一倍大きい。前世のニュースでよく見た子どもに暴力を振るうクソ親どもに爪の垢を配布したいほどにいい親だった。

 

 この二人の元に生まれることが出来て幸せだ――素直にそう思える二人だった。

 

 共働きで忙しそうにしているのを見て、将来は絶対に金持ちになって、二人に悠々とした老後を送ってもらうと固く決意したりもした。

 

 だが。

 

 

「お子さんの個性ですが……非常に危険なモノです。目覚めたばかりの段階で、これほど強力な個性は見たことがない……。制御が出来なければ、簡単に人を殺せてしまう。早急に、個性制御の訓練施設に入った方が良いでしょう」

 

「そんな……!」

 

「……なんとか、ならないんですか!?」

 

「残念ですが……どうしようもありません。被害が出る前に行動しなければ、この子だけではなく、貴方たちや周りの人たちまで不幸にしてしまう……。それは、避けたいでしょう?」

 

「「…………」」

 

 

 ――――俺は、『個性』の出現と同時に、親元を離されることとなった。

 

 なんでも、俺に目覚めた個性は強力無比かつヤバいモノだったらしい。それこそ、発現後、即人里離れた『個性訓練施設』に送られることが決定するほど。

 

 正直、最初は何が何だか分からなかった。個性が目覚めたことに喜ぶでもほっとするでもなく、ただただ唖然とするしかできなかった。

 

 でも、病院から帰った途端、泣きじゃくりながら俺に謝り続ける両親を見て、全てを理解した。

 

 ああ、俺はここにいてはいけない存在なのだと。

 

 俺の存在は、両親を不幸にするモノなのだと。

 

 『ごめんねぇ……! ごめんねぇ……! 普通に産んであげられなくてごめんねぇ……!』とボロボロと涙を流して叫ぶ両親。

 

 転生者(いぶつ)である俺を育て、愛してくれた両親。

 

 そんな彼らを悲しませ、苦しませる自分が、酷く残酷な生き物に思えて仕方がなかった。

 

 

 

 なんでこんなことになった? ――俺のせいだ。

 

 

 どうして二人は泣いている? ――俺が個性なんぞに目覚めてしまったからだ。

 

 

 どうすればよかった? ――俺が二人の子供じゃなければ良かったんだ。

 

 

 

 こんな親不孝な子供なんて、存在する価値すらない。

 

 泣きながら俺を抱きしめる二人を見て、そんなことを思った。

 

 それと同時に、この出来事の原因となった『個性』……そんなモノが存在するこの世界のことが、嫌いになった。

 

 

 それが、俺――刻方次元(こくほう じげん)始まり(オリジン)だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『刻方次元 男 四歳 

 個性:時空支配

 【時間】と【空間】を意のままに操る個性。

 現時点ですでに『転移』『転送』『加速』『停止』を扱える。

 空間と時間という現代科学でも理解されていないそれに干渉出来ることから、個性が暴走した時の被害が予想できない。最悪の場合、世界滅亡すらあり得る。

 

 

 また、両親の個性と関連性がなく、個性使用の身体的な負担が存在していないことから『始原種(オリジン)』である可能性が高い』

 

 

 

 

 

 

「ほう、この個性は……ふふっ、この子なら僕を…………

 

 

 これは一度、会ってみる必要があるかな?」

 

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