相変わらず短いです。
皆さんは輪廻転生というものをご存知だろうか?
生き物が死んだとき、その魂が新しい命としてこの世界に生まれ変わってくることを言う。
まあ創作の界隈では有名な話で昨今様々な作品にこの輪廻転生が題材に使われている。
輪廻転生、少なくともこの世界では実在するものであるらしい。
怪獣娘。嘗てこの星に出現した怪獣達の魂を受け継ぐ人間…というのが聞いた話だ。
さて、その怪獣娘たちには生まれ変わる前の記憶は残っているのだろうか?
大部分の人間がそうだが、新しい命へと変わる前の記憶なんて普通存在するはずなんかない。しかし、自分はどういうわけかその生まれ変わる前、つまり前世の記憶が残っていた。
自分の前世は地球を内外の外敵、つまるところ怪獣や異星人から守る防衛軍の一員だった。
自分はある小隊の隊長として様々な相手と戦っていた。そんな時、自分はある一体の怪獣と遭遇した。その怪獣は口の中に眼を持つ蛇のような怪獣で、そこから発する光線であらゆる物を石に変えるという恐るべき能力をもっていた。
その能力によって自分の属する防衛軍は劣勢を強いられた。こちらの兵器はどんどん石化させられた上に人類の味方である光の巨人すら石にされてしまった。
そんな中、自分はある作戦に志願した。怪獣に気づかれないようにギリギリまで接近して怪獣の弱点である口中の目玉を攻撃する作戦である。かなり危険な作戦だったがこのままこの星ごと石に変えられるよりはと自分達はその作戦を実行した。
その結果自分達は賭けに勝った。見事怪獣の弱点を射抜いたことにより石化が解除され怪獣は光の巨人に撃破されたのだ。
しかし、その際自分は怪獣の苦し紛れの攻撃に巻き込まれ、その時の傷が元で前世での生を終えることとなった。
それが自分の持つ前世の記憶だ。しかし、前世の記憶を持つからと言って何だというのだ。
今は前世と違い怪獣が出現することは無くなった平和な時代。この記憶もいずれ忘れ去られる…そう思っていたのだ。
◇ ◇ ◇
今日は休日。ブラブラと町を散策していた。と、そんな時ふと目の前に女の人が近づいてきた。紫色の長い髪が特徴的で異質な雰囲気を纏っていた。周りの人間はその雰囲気に当てられたのか、呆然とその場に立ち尽くしている。自身もその時つい亜然としたが、その女が俺の横を通った瞬間、鳥肌が立ち戦慄を覚えた。そして何より、耳に囁かれた言葉が自分に恐怖を覚えさせた。
――見ぃーつけたぁ……――
その瞬間自分は確信した。やつだ、前世で自分の死因となったあの怪獣だ!!
と、その時、町の遠くの方から悲鳴が上がり、こちらへと逃げてくる人の姿が見える。なにかがあったようだが…
チッ…という音がしたと思うと
「…ソウルライド、ガーゴルゴン」
その声と共に彼女の姿は角と二股の尻尾が生えた、ますますあの怪獣を彷彿する姿になっていた。
そして彼女はこちらを見て微笑むと、
「それではまた後で」
と言い騒ぎの方へ向かって行った。
自分はその場から走って逃れた。
家に帰ると窓やドアを施錠し、布団に包まった。前世ならまだしも今の自分にはこれしかできない。
布団を被りながら怯え震えていると、突然ドアをノックする音が聞こえる。自分は驚きながらも無視を決め込むと、ドンッ!!!と扉を破壊したのではないかと思うほど大きな音が響き、自分はついひっと悲鳴を漏らした。すると扉の方からふふふと笑い声が聞こえた。
「やはりここですか。貴方の匂いはここまで続いていたからすぐに分かりましたよ…さあ、
このドアを開けてください」
っ!!自分は歯をガチガチと鳴らしながらその言葉を無視する。
「どうしました?怖がることはないのですよ。私も貴方と再会できてどんなに嬉しいか…早くここを開けてください。……いないのですか?仕方ありません。…出直しましょう」
……自分はその言葉を聞こえて数分が経った後、ゆっくりと布団から這い出て扉へと歩く。そして、のぞき穴へと目を合わせ、外を見るとそこには誰も存在しなかった。姿どころか気配だってない。
「い…行ったのか……」
自分は安堵のため息をつい――
「あらあら、やっぱり居るではありませんか。」
自分の腰に鱗のついた尻尾が巻き付いた
「えっ?」
「この時を待っていましたよ」
耳元で囁かれた甘い声、強制的に振り向かされ、自分の叫びは放たれる前に柔らかい唇によって塞がれた。
数秒ほどして自分の口は自由になった。
「な…なぜ、何故俺なんだ…?」
「ふふふっ何故と言われましても、あの時私に傷を与えた貴方が気になってしょうがなかったのです。こうして輪廻して思い返せば、その時貴方に惚れてしまったのですよ」
その怪獣娘は自分の頬へゆっくりと手を添える。
「ああ…貴方が愛おしくてたまらない。たとえ貴方がまた輪廻しようとも追いかけますよ」
そして怪獣娘は自分の服に手を掛け――
◇ ◇ ◇
後日、GIRLS本部に怪獣娘ガーゴルゴンから長期休暇の申請が届いた。
もっとがっつりヤンデレやりたかったけど自分の文才だとこれが精一杯だった…