【初配信】はじめました! 安藤ロイド【♯新人Vtuber】   作:watausagi

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第二七話 天使とさとり妖怪

◇◇◇◇◇

 

『この流れで一度他の三期生の方々とも配信をお願い出来ますか? 同期で夜叉金さんだけというのも変な噂を立てかねないので。まあロイドさんは何故かそういう裏の噂が立たないので大丈夫かとは思いますが』

 

 我が家で香澄ちゃんと小葉と一緒にトランプをして遊んでいる時、橘さんからそんな連絡をもらい頭が仕事モードに入る。嘘だ。そんなモードはない。私はトランプを続行した。丁度ばーちゃるちゅーちゅーばーに詳しいばちゃちゅば博士がここにはいるからね。

 

「私と同期の人って、夜叉金さん以外にどんな方がいるんだっけ?」

「天使のマジョさんと、サトリ妖怪のミトちゃんです。マジョさんは笑い方がとても特徴的で、ミトちゃんはお話が面白いんです……少し怖いところもあるんですけどね」

「何それ。ばーちゃる? って、人間いないの」

「うーん最近は人外が流行りではあるかも。面白いからノコノコも見なよ! すっごく温かい気持ちになるんだよ! 切り抜き! 切り抜きだけでも!」

「どハマりしたら困るからパス」

 

 ばーちゃるの切り抜きを見るという事は即ち、推しが一人増える事を意味する。切り抜きからファンになる事は最早ありふれた一般常識。これを切り抜きの法則と呼ぶ。

 

「どちらも女性の方なんだね。それなら今度、その二人と一緒にどこかファミレスでも行って打ち合わせをしようかな……はい、あがり」

「わー! またロイドさんの一人勝ちだ!」

「やっぱり無理だって香澄。神経衰弱は論外として、カードゲーム全般勝ち目ないよ」

「でもでも! 勝ったら安藤ロイド初回限定アルバム『デウス・エクス(機械仕掛けの)・アテナ(戦乙女)』を特別に聞かせてくれるって!」

「いやよく分かんないけど。とりあえず英語習ってラテン語も大好きの私に二度とその謎言語を聞かせないで。機械仕掛けどこいったの」

「ごめんよ香澄ちゃん。公式発表までしばらく待ってておくれ」

 

 期待爆上げでも困るけどね。私の歌ってどこか機械的というか、オリジナリティーが無いんだよ。頑張った末がこれまで大ブレイクした歌手さんの歌い方をいい感じに繋ぎ合わせるってやつで。自分で聞いててなんだけど加工編集したみたいだった。私自身の歌声で誰かを感動させるには、まだまだ練習が必要だ。

 

 その点、他のライバーさんとかって凄いなぁ。なんだかんだ聞いてて感動するんだもん。

 

 今度会う二人に歌の練習をお願いするのもいいかもしれない。なんならカラオケとか一緒に!

 

 あー人生充実してる! 今の私は世界で一番幸せな人間だ。そうに違いない。

 

◇◇◇◇◇

 

 とあるファミレスで、マジョさんとミトさんと対面した私。これまで先輩方の姿を見てきた私にとって、マジョさんは初めてのタイプだった。

 

「ど、どどどうもっ、です……あぁ違った初めましてだ。あ、あのあの、天気、いいですね……嘘ですごめんなさい」

「いや天気は良いと思いますけど?」

「あぁ、ごめんなさいごめんなさい」

 

 マジョさんは自称インキャらしい。髪も両眼が隠れるくらいに伸びて、声もすごく小さい。

 

 前回の夜叉金さんの態度は緊張していたが故であって、最後の方は普通に話しかけてきていたのだが、マジョさんの素はいつもこの感じなんだろう。配信の時とは様子が違っているので軽く驚きだ。

 

「安心して。この子、そんなに心の中ではごめんなさいとか思ってないから。怒られたくないからとりあえず謝っておくあの感じだから」

「やめてよぉミトちゃん……」

「安心して。私貴女のそういうウザいところ、別に嫌いじゃないわ」

「帰りたぃ」

 

 人の心にダイレクトアタックを決めるミトさんは、身長だけでいうならエガヲさんと張り合える。でも全く違うタイプだ。エガヲさんの笑顔と違って、ミトちゃんは……

 

「この無表情は生まれつきだから。不機嫌とかじゃないから。本当よ?」

 

 まるで私の心の内を読んだように、私の事を澄んだ目で見てくるミトさん。

 

「そういえばミトさんは、さとり妖怪でしたっけ。やっぱり心の内が読めるんですね」

「信じてるの? ただの設定を」

「別に疑う理由もありませんよ」

「……っ」

 

 この世に神様がいるのなら、そこらへんに妖怪だっているだろう。私は幽霊を見た事がないし今後見る事もないだろうけど、それが見える人まで疑おうとは思わない。

 

 それに、本当にミトさんがさとり妖怪だったら面白いよね! 喋らなくても意思が通じるってすごく便利。将来の伴侶に持ってて欲しい能力ベストワンかもしれない。いや、家の中からGを消す能力も捨てがたい。

 

「……変わった人なのね」

 

 結局、本当にミトさんが人の心を読めるかは分からないし、そんなのは些細な事だ。どっちでもいい。

 

 それよりもざっくばらんとしたミトさんの性格のおかげで、マジョさんと辛うじて会話が繋がったのがありがたかった。

 

 事あるごとに私の事を崇め奉ろうとするマジョさんとのやり取りには中々苦労するものがあったのだ。

 

「この前の3D配信を見た時……恐れ多くて自らの両目を戒めとして両指で突き刺そうかと」

「ダメだよ!?」

「安心して。むしろ貴女の大ファンで配信を目に焼き付けていたみたいだから」

「マジョさん怖いウソはつかないでね?」

「そこは許してあげて彼女の性分だから。ネットで『口に含んだお茶噴き出した』とかあるでしょ。あれなの」

「うぅ、そうなんです。そのレス半分以上は私なんです」

「あれってほとんどマジョさんだったんだ。大変なんだね……」

「あぅ、そんなに私を信じないで」

「貴女も騙されないで。この人もう既に貴女の誇張表現面白がってるだけだから」

「えぇ……さすがすぎるぅ……もうだめ。やっぱり、私みたいな人とじゃ、ロイドさんとコラボだなんて恐れ多ぃ。死ねる」

「コラボ配信楽しみですって」

「これミトさんいないとグダグダだったね」

 

 既にミトさんとマジョさんは二人で配信をした事もあるらしくて、息がぴったりだ。巷ではミトさんはマジョさんの保護者だという構図が出来上がっているらしい。その通りだった。

 

 でも私との配信はミトさんとマジョさん一人ずつだ。私は果たしてマジョさんとのコラボ配信中、今にもリスカをしそうな彼女の手綱を握る事は出来るのか。

 

 乞うご期待。




噂では、嘘松にならぶ新たな言葉
『嘘柱 誇張』なるものが出来たらしい。
嘘柱のみだと単なる足し算なのに、誇張が入る事によって面白さが霹靂一閃
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