【初配信】はじめました! 安藤ロイド【♯新人Vtuber】   作:watausagi

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第八話☆ コラボコラボって、ソシャゲじゃないんだから

◇◇◇◇◇

 

『ロイドさんはコラボをする気はないですか?』

 

 マネージャーの橘さんから、そんな一言がRINEに。他の同期の方が既に何人かコラボを始めているのがきっかけでしょうか。私は誘われていません。どうやら遠慮されているようで。

 

 ちらりと同期の方の配信を見た事があるのですが、視聴者の方にコメントで私とのコラボはしないのかと聞かれていました。しかしその方は恐れ多いと戦慄していました。あれです、あだ名がもやしさんというお方。

 

 良くも悪くも私は目立っている様なので、このままいけばソロプレイまったなし。

 

『申し訳ございません。今のところ、考えておりません』

 

 ただ、どうしても乗り気になれない私は、お断りの言葉をいれてしまいました。

 

 どうして私が乗り気になれないのか、それは私自身がまだ配信者として中途半端な覚悟しか持てていないからだと思います。別にいつやめてもいい、そんな気持ちで一所懸命に取り組んでいらっしゃる同期や先輩方と一緒にコラボをするだなんて、私自身が納得できないのです。正直、引け目を感じています。

 

「結局、私個人の問題ですね……」

 

 色々な事を考えて下さっている橘さんの立場を思うと非常に心苦しかったのですが、その時の私には誰かとコラボ配信をするだなんて、到底考えられませんでした。

 

◇◇◇◇◇

 

〜コメント〜

 

コラボしないの?

 

「う……」

 

 同じような言葉がコメント欄にも出て、私は思わず口つぐみました。

 

 今日という今日に続いてコラボのお誘い。世間の意見はやはり私が誰かと絡むのを見てみたいという事なんでしょうか。

 

「コラボ……今のところお誘いもありませんし、特に考えてはいませんね」

 

〜コメント〜

アンドロイドぼっち説

コミュ障かな?

確かに他のVは遠慮してる風潮ある

じゃあ誰かから誘われたらするって事?

 

「そうですねぇ。誘われたらですね。まあ多分いっときコラボはないと思います」

 

〜コメント〜

フラグかな?

見える見える

言質はとった。鳩よ、飛べ!

鳩使いは控えろください

もやしゃとコラボしてほしいです!

即落ちくるなこれ

お、お? 早いもん勝ちかこれ

〈エクレールII世〉これはもう実質誘われたようなもん

キターww

秒で草

マジやん

トップきた

ボソッと吐いた愚痴を上司に聞かれてた感覚

 

「あー……」

 

 有名人の言葉にコメント欄がざわつく。ともすれば、誰もが予想できたありきたりな展開に。

 

 エクレールII世。私だってその名前は知っている。スクエア所属のライバーなら全員名前くらいは調べてある。その中でもエクレールII世は、バーチャル好きなら知らない者はいない。

 

 スクエア所属 第一期生 エクレールII世。王冠とマントという赤と金が基調となった出で立ちには絶対強者の威厳が表れている。王の風格。通称女王陛下。

 

 『至高の四人』の第一期生の中でも、皆を纏めるリーダー的存在。自分の動画を英訳した海外バージョンも自ら編集を手掛ける努力っぷり。彼女が積み上げてきた功績がスクエアの名を世間に広め、今の確固たる立場を築いたと言っても過言ではない。今一番、私が関わりたくなかった方でもある。

 

 コメントでは既にコラボ決定の賑わい様。再度エクレールII世さんからコメントがくる。

 

〈エクレールII世〉来週の日曜とかどうかな?

 

 日程まで絞って……! しかもその日は、私の次の配信予定日だ。まさか既に橘さんと裏で話を通しているのでは? だとすると逃げ場はない。コメント欄でも誰かが言う。

 

 知らなかったのか? 女王からは逃げられない。

 

 私も腹を括るしかなかった。

 

「……私なんかでいいんでしょうか」

 

〜コメント〜

 

良いに決まってるだろぉ〜?

お前が良くなくて誰がいいんだよ

民には気を付けろよ狂信者もいるから

ファン<<民 壁 狂信者>>アンチ

俺らもそろそろ名前が欲しいな

 

「では、よろしくお願いしますエクレールII世さん。私も覚悟決めますね」  

 

◇◇◇◇◇

 

「困ったなぁ」

 

 配信を終えて、一息つく。まさかこうも矢継ぎ早に決まってしまうとは。

 

 心の準備が出来てない。いったい私はどんなスタンスで当日赴けばいいというのか。

 

 うーんとひとしきり悩んだ挙句、私はその道のプロを訪ねる事にした。自分の配信部屋を出て、豪邸の中の無駄にある一室をノックして中に入る。

 

 そこでは香澄ちゃんが恍惚とした表情で配信動画を見ていた。というか、画面に映っているそれはさっきまで私が配信していた枠の終わりの風景なんだけど。

 

 時々、香澄ちゃんはこうして私の家に泊まる。そして私の配信がある日は、隣の部屋で熱心に見てくれている。可愛いかよ。

 

「ねぇねぇ香澄ちゃん、ひとつ聞いていいかな?」

「ひゃい!? ろ、ロイドさん! 本物のロイドさんが目の前に!」

「いや、そりゃそうだよ」

 

 一体誰の家だと思ってるんだ。まあ確かに、さっきまで画面の中にいた人間が近くにいるって不思議な感覚になるのはわかるけど。

 

「エクレールII世さんって、具体的に言えばどんな人なのかな? 香澄ちゃんはばちゃちゅばの事詳しいよね?」

「もちろんです! ……あれ? もしかして、ロイドさんって自分以外のばーちゃるちゅーちゅーばーに興味がない感じですか?」

「興味がないっていうか、えっと、深く掘り下げてまでは知らないだけだよ」

「うーん……じゃあ、エクレールII世さんのまとめ動画が有志から挙げられているので、そっちの方を見てはどうですか? 十分程度で大体分かりますよ」

「あーなるほどね、じゃあそれを見てみようかな」

「本当ならご本人の動画を見るのが一番かもしれないですけどね。時間がないなら、切り抜きだけでも十分エクレールII世さんの頑張りは伝わってきます。私なんて初めて見たとき号泣しました」

「えーまさか、私は流石に泣きはしないかなー」

 

 感動ものの映画だって泣いた事ないし。多分。流石にまとめ動画くらいでこの私が泣くはずがないよ。

 

 でもまあ、香澄ちゃんのおすすめだからね、期待してみるけど。期待するって事は既にハードルが上がってるって事だからね? これはもう、ちょっとやそっとじゃ泣かないよ。何しろアンドロイドですし? 泣くだなんて無駄なプロセスは存在しないのですよ。

 

 ──視聴直後、私は頬を濡らしていた。

 

「頑張りが尊いですっ……」

 

 エクレールII世さんは、元々個人のバーチャルちゅーちゅーバーで活動していたらしい。それなりに有名になると、同士を募ってスクエアを立ち上げた。

 

 だが、スクエアの活動が軌道に乗るには時間がかかった。その間にメンバーから抜け落ちた人もいる。かつてはエクレールII世さんも、エクレールという名前だったのだが、そうしていなくなってしまった人の思いも引き継ぎ、彼女はエクレールII世へと名を変えた。

 

 エクレールII世さんは自分で切り抜きをしたり、その頃から英訳配信を行ったり、とにかく自分で出来る限りの事をやり遂げていた。その努力も報われて、今でこそスクエアは大手のばーちゃるちゅーちゅーばー企業として名を馳せているが、初めは名も知れぬ小さな城だったのだ。

 

 リーダー的存在っていうか、もろ創立者の一人だとは。ちなみに、これまでエクレールII世さんが毎日の配信を怠った事はない。どんなに短くても必ず一つは動画をあげている。

 

「やっぱり私なんかがコラボしてはダメでしょう……」

 

 元からあった罪悪感がマックスにまで高められた。どちらかというと怠惰の私は、エクレールII世さんとは対極ともいえるし。やはり、今からでもお断りの連絡を入れてしまうか。

 

 そう考えていた時、橘さんからRINEが来た。

 

『土曜日もし空いてるのなら、エクレールさんが一緒に食事でもしたいと仰っていますが、どうなされますか?』

 

 女王からは逃げられない。

 

 私は渋々、グッドマークのスタンプを送ったのだった。

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