トマトになったけど、俺は遊戯王を楽しむ。   作:セフィム

3 / 4
瑠璃の想い

 遊矢に抱き着いてから数分して私はようやく落ち着き、ゆっくりと遊矢から離れる。

 

「大丈夫か、瑠璃?」

 

 心配そうに私の顔を覗き込む遊矢。私は遊矢の傷ついた顔見てまた遊矢の胸の中に顔を埋める。

 いつだってそう、私は遊矢に救ってもらってばかりだ。

 初めてあったあの時から、今日まで遊矢は私のために傷ついて行く。

 

「ごめん、なさい……私のせいで、また遊矢を傷付けちゃった……」

 

「またその話か。言ったろ別に構わないって……」

 

 そう言って笑いながら遊矢は私の頭を優しく撫でる。

 

「それで、瑠璃。この状況は何なんだ、前来た時はこんなことにはなってなかっただろ」

 

「それは……アカデミアが、融合が」

 

 アカデミアが融合召喚を使ってハートランドを、みんなを……

 融合が―――――

 

「瑠璃、融合召喚は悪いと考えてるんだったらそれは大間違いだ」

 

「え?」

 

 まるで私の心を見透かしたようなその言葉に私は遊矢の顔を覗き込む。

 

「で、でもアカデミアが融合モンスター達を使ったせいで!」

 

「これは受け売りなんだがカードに罪はない。そうだな、例えば料理に使われる包丁は料理人が使えば素晴らしい料理を作るための最高の相棒だろうが、犯罪者が使えば最悪な凶器だ。要すればその人の使い方次第だ」

 

「その人の使い方次第……」

 

「別に今すぐにでも受け入れろとは言わない、だが悪いのはアカデミアだ。融合召喚=アカデミアじゃない」

 

 遊矢の言ってるいることは正しい、遊矢だって融合召喚を使ってる。

 でも、どうしても融合召喚=アカデミアだと思ってしまう。鬱陶しくて過保護な兄と素敵な友人たちと平和に過ごしていたのに一瞬にして戦場に変わってしまった。

 

 ……? あれ、受け売りの言葉って言ってたけど遊矢も恨んでるカードがあるのかな?

 そういえば私、遊矢のことを何も知らないんだ。

 

 初めてあったときは兄さんに負けた大人の男の人に私が誘拐されそうになったところを助けてもらって、デッキで悩んでいたらいつもアドバイスを貰ったり、一緒にカードショップに行ったり……

 あとは兄さんに負けた人たちが団結して私を誘拐して、レ、レイプされそうになった時は遊矢と男の人たち数十人がリアルファイトして遊矢が大怪我しながらも私を助けてくれて……

 あれ? 私兄さんのせいで基本とんでもない目に合ってない?

 

「おいどうした、見るからに落ち込んでるが?」

 

「何でもないの、ただ兄のせいで私も遊矢も大変な目にあったなって……」

 

「瑠璃のお兄さんに? まあ、よくわからないが暗い時は何か楽しいことや嬉しいことをしよう!」

 

「楽しいこと、嬉しいこと?」

 

「そうだ。楽しいことや嬉しいことをすれば暗い気持ちなんて吹っ飛んで笑顔になれる」

 

「笑顔に……でも何をするの?」

 

「何ってデュエルだろ、そんなの」

 

「え? デュエル」

 

「デュエルは戦争の道具でもなければ戦う手段でもない、楽しいカードゲームなんだよ。勝って嬉しい、負けて悔しいで終わらない。真剣勝負のデュエルはお互いを笑顔にしてくれる」

 

 そうだ、デュエルは戦争の道具でも争いの手段でもない。

 遊矢の言う通り、平和だった頃のハートランドで私たちがしていた楽しくて、嬉しくて笑顔にしてくれるものだ。兄さんとユートがデュエルしているときはいつも楽しそうで笑顔だった。

 

「デュエルは勝負だけじゃないぞ。勝つための構築を必死に考えたり、誰も思いついたことのないコンボを見つけて披露したり、自分の好きなカードで一生懸命強く走ったり、たまにネタに走ったり色々なことができる……そう、父さんのようなエンタメデュエルなんて邪道、外道だ。カード○ングダムの動画見習えよ、有翼幻獣キマイラのデッキとか何度見ても面白いし、いい戦いだったんだぞ。他にも地獄のくじ引きとか……」

 

 あれ、段々自分に言い聞かせるっていうか呪詛に近いものになって行ってない?

 遊矢の目に光は無くぶつぶつと念仏のように何かを呟き、手は握り締め過ぎて血が出ている。

 

「ちょっと、遊矢! 遊矢!」

 

「あのクソ親父が、絶対に半殺しにしてやる。ググるとお前無能とクズとか出てくるんだぞ」

 

「遊矢!」

 

「あ、あれ、瑠璃どうかしたのか?」

 

「どうかしたじゃないわよ! 大丈夫?」

 

「あぁ、大丈夫だ。早速デュエルをするか」

 

「えぇ、でも私のデッキは遊矢のように強くないし……」

 

 私のデッキⅬⅬ(リリカル・ルスキニア)のデッキは相手に少しずつダメージを与えて行くデッキで勝率は5割程度。

 兄さんのRR(レイド・ラプターズ)のデッキやユートの幻影騎士団(ファントムナイツ)のデッキには殆ど勝ててない。

 それなのに遊矢と戦ったら私に勝ち目なんて無いに等しい。

 

「なら一緒にデッキを造るか」

 

「え、一緒に?」

 

「あぁ、さっきも言ったろ。デュエルは勝負だけじゃない、デッキを造ることや改良することだって一つの楽しみだ」

 

「……そうね。なら早速―――」

 

 私はデッキケースから自分のデッキを取り出して広げようとする。

 

「ああ! 待て、待って! こんな所で広げるな! カードが傷つくし風で飛ばされる! せめて何処か屋内か……欲を言えばカードショップでデッキを造りたいが」

 

「カードショップなら確か近くにあるわよ」

 

「なら直ぐに案内してくれ」

 

「えぇ!」

 

 私と遊矢はアカデミアの兵士に見つからないように慎重に移動しながらカードショップのある巨大なショッピングモールに辿り着く。

 ここはレジスタンスのアジトとアカデミアが拠点としている移動基地からとっても離れていてたぶん安全だと思う……

 

「おぉ、凄いカードの数だな。お、30円コーナーもある、ショウケースは……ほとんどエクシーズだけど。じゃあ早速やるか」

 

 遊矢はそう言って何処から取り出したかカードケースを取り出す。

 あんなカードケース、遊矢今まで持ってたかしら?

 

「ほら、瑠璃。速くデッキを広げてくれ」

 

「え、えぇ」

 

 私は机の上にデッキを広げて行く。

 遊矢は私のデッキのカード1枚1枚を手にとってカード効果の確認をしていく。

 

「レベル1でランク1のデッキか」

 

「えぇ、大空を自由にさえずり飛び回る小鳥みたいに明るく楽しいデュエルをしたくて組んだでっきなの……どうかしら」

 

「勝ち負けにこだわらずに楽しくデュエルをするのならとてもいいデッキだ。だけど今の状況だとこのままは不味いな」

 

「やっぱり……」

 

「作り直したら瑠璃の思い描くコンセプトとほど遠くなるし、いっそのこと新しいデッキを作ってデッキ2個持ちでも……」

 

 遊矢は私の信条のためにこのデッキを崩さないように悩んでくれてる。

 ここは、私から一方踏み出さなきゃ!

 

「遊矢!」

 

「な、何だ?」

 

「例え私の思い描くデッキじゃなくてもいい、相手に勝てる強いデッキを作って!」

 

「いいのか?」

 

「えぇ……その代わりこの戦争が終わったら明るく楽しいデッキを作りましょう」

 

「あぁ、わかった。それと俺だけが組むんじゃないぞ瑠璃も一緒に作るんだ! 瑠璃のデッキなんだからな」

 

「えぇ、そうね」

 

「なら早速……」

 

 そう言って遊矢はカードケースからカードを取り出し始める。

 遊矢の顔は楽しそうに笑顔を浮かべている、それを見て思わず私も笑みを浮かべる。

 

 私、遊矢のことが好き……なのね。

 いつも危ないところを助けて貰ってデッキのアドバイスを貰ったりデュエルをしたり、遊矢と一緒にいるといつも胸がドキドキして身体が熱くなる。

 遊矢と同じ顔で名前の似たユートじゃこうはならない。

 

 私は榊遊矢が好き、愛してる。

 

「ん? どうした瑠璃、急に寄りかかったりして」

 

 私は遊矢の邪魔をしないようにしな垂れかかる。

 こうしているととても安心する。そして胸の鼓動も速くなってく。

 

「ちょっとだけ、こうさせて」

 

「わかった」

 

 遊矢は次々と必要なカードを出していく、中には私の見たことないエクシーズカードや融合のⅬⅬもある。

 

「瑠璃」

 

「何?」

 

「説明しながらやるからちゃんと聞いてくれ、あとこのカードって禁止カードになってるか?」

 

「いいえ、なってないわ」

 

 遊矢から離れた私は見せてくれたカードレベル10の最上級モンスターを見て首を振る。

 

「じゃあ早速デッキを魔改造するが、このデッキの勝ちパターンは主にこの2つだ」

 

 そう言って出されたカードは全部で7枚のカード。その内の4枚は同じかカードが2枚ずつだ。

 いくらなんでも多くないかしら。

 

 そこから私は遊矢にデッキのカードの説明をしてもらいながらデッキを組んでいき、遂に私のデッキが完成した。

 完成度と殺意はかなり高いけど……

 

「じゃあ、あとは実際に試して微調整するだけだ」

 

「早速始めましょう」

 

 私たちはお互いにデッキをカット&シャッフルしてデュエルを始めて行った。

 最初は少し苦戦したけど試合を重ねる度に段々と手に馴染んでいく。

 

「ねぇ、遊矢……」

 

「何だ?」

 

「私、頑張っていようと思うの。皆デュエルを憎しみの、争いの道具にしているけど今私や遊矢がしているような楽しくて笑顔になれるデュエルをみんなに思い出せようと思うの」

 

「瑠璃ならできるよ、俺は瑠璃とのデュエルはとても楽しいから。もしそれを馬鹿にする奴がいたら俺が半殺しにする」

 

「ほどほどにね」

 

 お互いに笑いあっていると、急に遊矢のオッドアイズが光だす。

 光は段々と強くなっていき光が辺り一帯を飲みこむと、そこには遊矢の姿はなかった。

 

「遊矢……」

 

「瑠璃ぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

「瑠璃!」

 

「兄さん、それにユート!」

 

 遊矢が入れ替わるようにして兄さんとユートが私の下に駆け寄ってくる。

 

「心配したぞ瑠璃!」

 

「ごめんなさい、食料とデッキに入れらるカードが無いかなって」

 

「無事でなによりだ」

 

 私の無事に安堵するユート、兄さんは机の上に置いて私のデッキの候補カード、サイドカードを見るとそのカードたちを払い捨てた。

 

「ちょっと兄さん! 何をするの!」

 

「こんな弱いカードなど不要だ! さっさと帰るぞ瑠璃!」

 

「ちょっと、兄さん痛い」

 

「隼、すこしやり過ぎだ!」

 

「お前は黙っていろ、ユート! これは家族の問題だ!」

 

 ユートを一喝する兄さん、私は兄さんの手を振り払う。

 

「やめて! 私は子供じゃないのよ! 一人で歩けるし帰れるわ!」

 

「俺からしたらお前はまだ子供だ! 今は融合の奴らがそこら中に居るんだぞ!」

 

「……融合」

 

「そうだ! 融合は俺たちの敵だ! わかったら、さっさと行くぞ!」

 

 遊矢、私頑張るから……必ずどこかで




私は柚子シリーズで好きなのは瑠璃です。

瑠璃のデッキがわかった人はいますかね? 一つはあの禁止カードです。

次回

柚子「ようやく私の出番ね!」

遊矢「そうだな、ただデュエルをするのは俺だけど」

リーナ「いよいよ原作開始! 次回『覇王烈竜降誕』! 遊矢、頑張ってください」

遊矢「柚子、ソリットビジョンシステムを壊すなよ」

柚子「壊さないわよ!」

遊矢・リーナ「「……」」

柚子「何よ! その目は!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。