冷凍睡眠を抜けると、そこはハーレムだった 作:黒川伝説・ハプスブルク
久々にコメディ描いたから闇鍋過ぎるのは許してください汗
2065年
対空機関砲の水平射撃が収まると、周囲は静寂に包まれた。
セーフティ①がG19自動拳銃を、セーフティ②はM37ショットガンを持って我々の場所まで来た時、外からこちらに向けて拡声器によって増幅された音声が放たれる。
「我々は『房総半島のアルカイダ』だ!諸君らは包囲されている!君らのご主人様さえ引き渡せば悪いようにはしない!」
くそったれ共め、ご丁寧に。
俺はそう思ったが、手元のバイオロイドの中にはそう思わなかった奴もいた。
「そりゃあ、ありがてえ。若旦那ぁ、申し訳ねえんですが」
「お前を県警にクーリングオフしていい?」
「ええっ!?酷くないすか若旦那!?」
「あのな、どっちかっつーと雇われといてご主人様を速攻で裏切るお前の方が酷いからな?」
セーフティとのくだらないやりとりをしつつも、俺は額に浮かべる脂汗を拭き取る。
手は汗ばんで、脚はガクガク、腕は頗る重たくて、ジャージにはママの作ったスパゲッティ…って、8mi●eの●ミネムじゃねえんだよ。
フードを被ってフリースタイルでやり合おうとしたところで、出て行った瞬間蜂の巣になるのは目に見えている。
俺は台所に転がっていた手鏡…きっとソワンさんが使ってた物…を手繰り寄せて、影からそっと連中の方を見てみた。
見ると、今や対空砲弾で吹きさらしになっているリビングの向こう側の道路には単装ZPUを載せたピックアップトラックと、黒いバンが2台止まっていて、バンの方はその荷台から複数の男達を吐き出していた。
男達は皆スーツに身を包み、ストーナー系のアサルトライフルを高く構え、髭と髪を伸ばし…
伸ばし…
伸ばして………
あれは………………
全員キ●ヌ・リーヴスじゃねえかこの野郎ッ!
揃いも揃ってジョン・●ィックで来んじゃねえよ!
●ィックは1人だけだから●ィックなんだよ、キ●ヌ以外の●ィックはもはや●ィックじゃねえんだよアクション映画会に対する冒涜だろうがっ!!
たしかに暗殺者があの映画をリスペクトしたがるのは分からないでもないが、それにしてもこうもゾロゾロとキ●ヌ・リーヴスで来られると別の意味で頭が痛くなってくる。
合計10名ほどのキ●ヌ・リーヴスはアサルトライフルを構えながらもそろりそろりとこちらの方へとやって来ていた。
やって来ていたのはいいけれどキ●ヌ・リーヴスになりきりたいなら時々躓いたりとかするな。
躓くならこんな夜更けにサングラスとかやめろお前ら。
もうちょっと自分の実力にあった事をしようよ、なあ?
どことなく中国製のM4カービンコピーな銃を構えながら、キ●ヌ・リーヴス達は尚もこちらに向かってくる。
俺は尚もシンクの裏に隠れながら、紅蓮さんに囁いた。
「…何てこった、十数人いる。警察に通報を…」
「残念ですが、電話線が切られていました。こうなった以上は家の中で撃ち合う方が良いかと。」
「相手は大人数ですよ、紅蓮さん。流石にあなたでも」
「ソワンがいます。彼女がいれば、うまくやれるかと。」
「…分かった。よろしく頼む。」
武器を構える紅蓮さんとソワンさんが構えを取った時、セーフティ②が惚けた事を抜かしやがった。
「え、若旦那?私らは勘定に入ってないんで?」
「入れるわけねえだろボケカス酒臭えんだよ自覚しろ自覚!お前が得意なのはネズミ捕りと昼間から酒飲んでデカい屁ぇブッこくぐれえだろうがよ!」
「うっわ!若旦那デリカシーなさすぎ!」
「お前がデリカシー丸出しにしてんだよ!そもそもお前本当に警察用バイオロイドかよ!」
「もうあったま来ましぜ若旦那!いくら若旦那でも言っていい事悪いことがあるでしょうがい!そんなのだから未だにバイオロイド以外のカノジョもマトモにできねえんでさあ!」
「ぬぁにをコノッ!よし決めたぞ!お前なんざ返品だ返品!県警にクーリングオフしてやるからな!」
「そんな事するってんなら…沢●のアニキを1人この場所に呼んでなぁ、ロケットランチャーをぶっ放してこの別荘木端微塵にしてしまうんじゃ」
「お前勝手に俺の漫画本読みやがったな!まだ封を開けてすらねえんだぞ!」
「あひゃひゃひゃひゃ!…若旦那は所詮…漫画も守れん敗北者じゃけえ」
「お前!お前ワ●ピース手に入れるのにどれだけ払ったと思ってんだゴラぁ!!マジでいい加減にしねえとぶち犯すぞこのクソバイオロイドォ!!」
「…男の人っていつもそうですよね!
「あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝ッ!貴様俺の春画コレクションまでええええええッ!!!」
キ●ヌ達はシンクの裏に隠れながらコントのようなやりとりをしているターゲットに近づきつつあった。
予め決めてあった手順通りに回り込み、そして…
突如として、予想だにしていなかった方向から蹴り上げられた脚がキ●ヌの内の1人の顎に命中する。
彼は空中で見事に一回転爆天を決めてから床に叩きつけられた。
その相対方向にいた別のキ●ヌの頭には、研ぎ澄まされたゾーリンゲン製の包丁が突き刺さる。
そうして初めて、シンクに迫っていたキ●ヌ達はターゲット達に注意を向けすぎていた事に気がついた。
「バド●イザー!」
「ポップコーンッ!」
「「食いモンの恨みぃぃぃ!!」」
紅蓮さんとソワンさんの不意急襲的な攻撃の後、間髪おかずにシンクの裏から2人のセーフティが立ち上がり、突然の奇襲に棒立ちしている残りのキ●ヌ達にありったけの弾丸をぶっ放す。
おかげでシンクに近づきつつあったキ●ヌ達はあっという間に壊滅し、俺は事なきを得た…と思ったが、すぐに別の方向から銃弾が飛んできた。
どうやら、俺は『房総半島のアルカイダ』に相当気に入られているらしい。
「くそったれ!まだいやがるのかよ!」
「ご主人様、ご指示を!」
「…夜更けに人の家を吹き飛ばし、その上寝首を掻こうとはいくら私でも看過できません!…グレさん、ソワさん、懲らしめてやりなさい!」
「「ははっ!」」
グレさん、ソワさん…つまるところ、紅蓮さんとソワンさんが目にも止まらぬ速さで飛び出して、仲間が全滅して尚諦めという言葉を知らないキ●ヌ達との戦闘に入っていく。
俺も俺で、そんな彼女達を尻目にシンクから飛び出して自室へと駆け出した。
え?なに?人でなし?
いやいや違うよ、助けを呼ぶんだよ。
予備の衛星電話があるんだよ。
セーフティ二人組の援護を受けながら自室へと戻ると、震えまくる手をどうにかしながら衛星電話に飛びついた。
下の階では「安心しなさい、峰撃ちです」とか何とか言いながらM416や357口径をぶっ放しまくる紅蓮さん、ソワンさんとキ●ヌ達が未だに激しい応州を繰り広げている。
セーフティ①は「●ィックがこの中にいる!●ィックがこの中にいる!」とか誰がどう見ても明らかな事を手元のトランシーバーに繰り返していたし、セーフティ②は緊張のあまり俺の勉強机にママのスパゲッティをぶちまけていた今頃になっても闇鍋ネタ続けなくてもいいんだよおっ!!寧ろもうそれどころじゃねえんだよおっ!!
あまりに動揺していたからか、衛星電話を手にした時、誰かから着信が入っている事に気づかなかった。
しばらくしてから既に電話が鳴っている事に気づいて、大慌てで電話に応答する。
『あらぁ!…随分時間がかかりましたね?今お電話大丈夫ですか?』
「エイミーさん!?…ええっと、今…」
予想外の相手に若干のパニックを起こしながらもそっと部屋から頭を出して下の階の様子を伺ってみる。
キ●ヌを鉛筆で滅多刺しにしているソワンさんと、マトリッ●ス風銃弾の避け方やろうとしたキ●ヌに容赦なく1弾倉ぶち込んでいる紅蓮さんが見えた。
…まぁ…まだ大丈夫かな?
『もしかして……襲撃を受けています?』
「ええ!ええ!そうです!どうか警察に連絡を!」
『残念ですが、おそらく彼らは本気です。警察の対応も織り込み済みでしょう。』
「クソっ!」
『…分かりました、今から向かいます。信用できないかもしれませんけれど、あなたに選択肢はないのでは?』
「…………分かった、分かった、分かりました!お願いします!早く来てください!」
そこまで言った時、突然銃撃が止んだ。
見ると下の階はキ●ヌの死体で埋め尽くされていて、返り血まみれのソワンさんと紅蓮さんがいる。
しかし同時にこの建物の正面の道路に、高射機関砲搭載型とは別のピックアップトラックが現れた。
そいつは73mm無反動砲を積んでいて、砲口を紅蓮さんに向けている。
「紅蓮さんッ!」
警告したものの、時すでに遅し。
トラックが急停止して、無反動砲は成形炸薬弾を発射する。
バシュッ!!
バイィィィンッ!!!
ところがどっこい。
私の目の前で信じられないことが起きる。
紅蓮さんに向けて放たれた成形炸薬弾は…なんと彼女の豊満な胸部にあたり、しかしノイマン効果を一切発揮できずに弾かれてしまったのだ。
弾かれた成形炸薬弾は宙を舞い、やがてはそれをぶっ放した連中の方へと飛んでいく。
そうしてやっと無反動砲弾はようやく自分の役目を思い出し、ピックアップトラックに乗った不埒な連中ごと消し飛んだ。
燃えゆくトラックを背景に、彼女が俺の方を見上げる。
そして、静かに目を瞑り、渾身のキメ顔をしてこう言った。
「…………私達、無反動砲で死ぬには頑丈過ぎるものですから。」
………あのね…頑丈とかの問題じゃないと思うんだ、紅蓮さん。