冷凍睡眠を抜けると、そこはハーレムだった 作:黒川伝説・ハプスブルク
他SSも書きたかったりして色々アレなんです許してください涙。
年末のよくわからないアイテムでソワンちゃんとセラピアス・アリスちゃんが来てくれました!
つまるところヤンデレとよく分からないけどヤベエということはよく分かる痴女だ、やったぜ!
2065年
ジャージは悲鳴を挙げている。
さっきから着用者がしゃがんでゴミを拾うたびに、ミリッミリッと絶叫しているのだ。
ビリビリビリッ!という断末魔に至るまでに助け出してやりたいが、着用者は全く意に介していないので何もしてやれない。
だからさぁ、紅蓮さん。
あなたご自身のボデーの豊満さを考慮して物事やるべきだと思うんだよ、ぼかぁ。
そんなさぁ、無理くり学校指定ジャージ着て来なくてもさぁ、似たようなジャージきてくりゃあ良いじゃん?
日曜日の午前11時。
普段静かな森が、今日は少しばかり騒がしい。
地元警察は近隣住民から希望者を募って合流させ、ボランティアに汗を流している。
ゴミ拾いは最も典型的なボランティアであり、そして参加する対象を選ばない活動でもある。
紅蓮さんと俺、それに愚痴を垂らしながら参加させられたセーフティ2人も、この森でもボランティア活動に参加していた。
ポイ捨てされたゴミの数々を拾うたびに、紅蓮さんの身体を包むジャージが悲鳴を挙げる。
彼女の顔は悲しげだが、しかし、決してジャージを想ってその表情になったわけではなさそうだった。
「………ゴミがこんなに。自然に対する冒涜です…何故こんな事を…」
答えの一部を、ゴミ拾いをする紅蓮さんの3m手前にいるセーフティ②が持っていた。
奴は手に持つ紙巻きタバコを一通り吸い終えると、消火もほどほどに落ち葉の中へと投げ捨てる。
水分を失った落ち葉は正に火災の温床であり、俺は大慌てでそこへ行ってタバコの火を踏みつけた。
「おいおいおいおい!何しとんねん!?」
「…どうしたんです、若旦那?」
「どうしたんです?じゃねええよ!森林火災起こす気かお前は!?」
「どうせ火事になんかなりゃしませんyあぶべべベベベッ!!!」
セーフティ②にスタンガンの針が刺さり、彼女を存分に感電させる。
針が飛んできた方向には紅蓮さんがいて、正義感溢れる彼女は若干涙目にすらなっていた。
一通り感電させ終わると、紅蓮さんはセーフティ②に詰め寄る。
「セーフティ②!一体どうしてそんな事を!?元警察用バイオロイドとしての誉れはどうしたというのですか!?」
「………誉れは浜で死にました」
嘘をつけ。
お前そもそも誉れとか持ったことねえだろ。
現役時代はネズミ捕りに精を出し、退職してからは真昼間からビール飲んでタバコの吸殻ポイ捨てしてなっげえ屁を所構わず撒き散らしてるような奴に誉れがあるなら、俺にはこの世のすべての善性を疑う必要がある。
間違ってもこいつはTSUSHIMAを守るために立ち上がったSAMURAIではないし、そうなる可能性も資格もない。
「とにかく!元警察用バイオロイドとして自覚を持ちなさい!ポイ捨てなんて持っての他です!森の動物さん達や木々の皆さんに謝りなさい!」
紅蓮さん仕事以外だと本当に天然だよね。
見た目に反して少女っぽい可愛いらしさまである。
俺がまだ高校生である事を考えれば、純度1000%ほどに純粋なお心を持っていらっしゃるのだ。
だってさ、"森の動物さん達"だぜ?
"木々の皆さんに謝れ"だぜ?
俺がセーフティ②のポイ捨てタバコを踏み消した時頭に浮かんだのは、その結果生じる森林火災の損害賠償額が如何程に上りかねないかという、紅蓮さんの想いに比べると重油かタール並に俗っぽいリスクだった。
たぶん、今ボランティアに参加している善人達の中にさえ、彼女と同じような考えを持っている人は少ない。
そこで今ペットボトルを拾っている小さな女の子くらいだろう。
身体はオトナ、心は少女、その名はバイオロイド・紅蓮!
そんなこんなでその後もゴミ拾いを続けていると、警察署長っぽくて仕方のない品の良いおっさんが警笛を鳴らした。
どうやら昼飯らしい。
予定では地元警察が用意してくれた弁当を食べて解散になる。
いやぁくたびれたくたびれた。
俺は紅蓮さんと共によく見る類の仕出し弁当を受け取ってベンチを探す。
幸い、この森は県立公園のど真ん中にある。
ベンチなどどこにでもあるし、実際すぐに良さげなベンチが見つかった。
弁当の包装を外して、緑茶缶を開ける。
人類は100年経ってもプラ容器と飲料缶を捨てられないが、多少の進歩はあった。
プラスチックは植物由来の生分解性だし、缶は保温性が高まっている。
地元警察が気を利かせて弁当を温めた状態で持ってきてくれたのがありがたい。
温かい幕の内弁当と対面すると、午前中の恨みに近いようなモヤっとした気持ちが軽減されたような気がした。
箸を持って二つに割り、ノルウェーが前世紀時代から重要な輸出品として持続可能な漁業を行ってきたサバに箸を入れる。
国内の漁業はバイオロイドの導入で何とか息を吹き返したが、サバとサケに関しては未だノルウェーの牙城を崩せていない。
かの国では殆ど全ての漁船でバイオロイド従業者が9割を越しているらしく、半ば不労所得者と化している漁業関係者は多いしと聞く。
羨ましい羨ましいと思いつつも、未だ理想的な社会主義とは程遠い国家の人間たる俺は、世紀を超えて愛される魚料理を箸で摘んで一口食べた。
両親の収入だけに、1グラム数万円の松坂牛とか、大間のクロマグロの大トロだとかたけぇモンは一通り食ったけど、結局この幕の内の安っぽいサバがうめぇ。
金ってのはいってぇなんなんだろうな。
龍が●く?…喧しいわ。
そんなこんなを考えつつも、サバの旨味を噛み締めていると、隣に紅蓮さんが座って、俺と同じように弁当の蓋を開け始める。
「ご主人様、サバがお好きなのですか?もしよろしければ、ご夕食にしめ鯖をご用意させていただきます。」
「あ、いや、待って。しめ鯖はダメ。昔"アニー"に当たっちゃってさ。凄まじい蕁麻疹が出ちまって」
「そうでしたか。ではやめておきましょう。…何かご希望の献立はございますか?」
「うーん…カレーくらいしか浮かばねぇ…」
「うふふふふっ♪ご主人様は本当にカレーライスがお好きなのですね。」
ホームシックという言い方は正しくはないかもしれないが、俺もまだ高校生で、母親の手料理が恋しくなる時が割とある。
セーフティ2人と住んでいた時なんかは毎日出前が宅配かインスタントか冷凍とかいう独身の鬼みたいな生活だったから、尚のことだった。
紅蓮さんのカレーは母親のソレに似ていて、だから作ってもらう機会は自然と多くなる。
あの、ジャガイモが崩れるほどじっくりと煮込まれた、温かいカレーライスが。
「…では、帰りにスーパーに寄る所要がありますね。カレールゥはまだありますが、人参とジャガイモが足りません。」
「それじゃあ、そうしよう。」
弁当を食べ終わり、ゴミを袋に詰めて地元警察の受付に手渡した。
「本日はご参加ありがとうございました」「いえいえ、お弁当ありがとうございました」とかいうやりとりを交わしつつも、この前"三浦半島のアルカイダ"によって破壊されたセダンの代わりにやってきたSUVに乗り込んだ。
朝はいつもより少しだけ早かったし、午前中はめいいっぱい動いてた。
始める前は苦痛だったけど、案外こういう休日も悪くはないかもしれない。
そんな事を考えていると眠気が湧き起こる。
後部座席の心地よい揺れ具合がそれを助長していたようで、俺は気づかない内にウトウトしていたらしく、遂には紅蓮さんの巨大な胸に寄りかかってしまった。
「キャッ!?…もう!?ご主人様!?」
「ふぁ…ぁ…ご、ごめんなちゃzzz」
「………お疲れのようですね。セーフティ②、その先の西●に寄ってください。あと申し訳ありませんが、①はこのリストの物を買ってきてください。ご主人様がお休みになられてしまいましたので。…あ、でもプリンは買ってはいけませんよ?…ダメです。駄々を捏ねても許しません。やめなさい、やめなさい①!あなたいい歳して恥ずかしくないんですか!?」
…………………………………
惑星コンサルト
ブラックリバー本社
「……そういうわけだ。我々だけではこの作戦の遂行は難しいと見ている。何せ、日本ではブラックリバー製バイオロイドは普及・流通していない。だからあの国での行動となると、君達三安製のバイオロイドの方が行動の自由を獲得しやすいんだ。」
『あのアンヘル・リオボロス殿からご依頼とは…いやはや、我々も随分と頼られたものですな。』
「どうか可否のみを答えてくれないか、Mr.ジソク。我々は今、手を取り合うべきではないかね?」
『………よろしい、分かった。良いでしょう。こちらのバイオロイドを、あなたの言う標的の警護に就かせます。それから情報収集の為に何体か動かしましょう。…本当は我々の手を借りたくはなかったのでは?』
「私の作戦で利益を得るのはあなた方も同じはずだ。なら出費は平等にしなくては。」
『PECSの連中にも同じ事をいってくれてはどうです?』
「…正直なところ、この作戦の発端は連中からの情報だ。私も薄々予想はしていたが…連中が珍しくもタダで情報を寄越すときは」
『タダで誰かを働かせる時だけ。…フハハハハッ!貧乏クジを引きましたな!まぁ、出来る限りの協力はしますよ。』
「助かる。…それではまた。」
忌々しい三安産業トップとの通話を終えたアンヘル・リオボロスは目頭を押さえる。
次いで手鏡型プロジェクターを起動させ、例の"暗黒卿"を呼び出した。
「パルパティノス君、君の要請には応えた。私は…それなりの結果を要求できるんだろうな?」
『はっ!ありがとうございます、アンヘル様。我々の手の内の者だけでは対処が困難でしたが…援護をいただけるのであれば、対処可能です』
「一体何があった?…この前の報告では、コトは上手くいっているハズではなかったかね?」
『敵の動きが予想より早いのです。…申し上げにくいのですが………』
「何だ?」
『おそらく、敵はアンヘル様の思惑に気づいています。』
「………」
アンヘル・リオボロスは両の手を合わせ、次いでそれを開いて顔を覆う。
まさか敵に……日本政府内にそんな奴がいるとは思っていなかった。
1920年代、アメリカは日本を仮想敵国としていたが、日本の大本営はフランス相手の戦争をシュミレーションしていた。
日本人という民族にはその程度の戦略眼しかないとタカを括っていたのだ。
代償は高くついた。
この作戦の利益を三安のクソったれ共にも分け与えなければならない。
だがここまで来て手を引いてしまえば、まさに連中の思う壺だろう。
アンヘル・リオボロスは顔を挙げて、080機関長に向き直る。
「なんとしても標的を守り通せ。あの高校生にはまだ生きていてもらわねば。」