冷凍睡眠を抜けると、そこはハーレムだった   作:黒川伝説・ハプスブルク

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香水で思い出す前:2065年

 

 

 

 

 

 

 2065年

 

 

 

 タネガシマ・スペースセンター

 

 

 

 

 

 

 

 いつの時代もそうだが、人は大事故を起こしかねない危険なものを身近に置いておきたくはない。

 そういった危険なものは出来うる限り使わないでおくのが一番だが、どうしても必要に迫られた場合は、それを自身から遠い場所に置いておきたいはずだ。

 何百トンもの液体酸素と液体窒素を充満させた巨大なロケットを、自分の家の庭に置いておきたい人間など存在しないだろう。

 

 よって、タネガシマ・スペースセンターは周りを海水で囲まれた立地に設けられた。

 ここが選ばれたのには、勿論他にも利点があるからだが、どのみち四方を海に囲まれていることは好都合に違いない。

 警備上の観点から見ても利点はあり、それは敵対勢力の侵入経路を限りなく絞り込めるというものだった。

 

 タネガシマ・スペースセンターの警備施設を設計した人間は、この施設に侵入するための数少ない方法であるフロッグマンを予防するために、実に巧妙な障害物を配置していた。

 例えよく訓練され、装備を整えたフロッグマンであっても、タネガシマ・スペースセンターの施設に到達するまでの時間は、彼を低酸素症に追い込むのに充分な期間となることだろう。

 設計者は万全を期し、ただでさえ水中での活動時間が限られるフロッグマンに、低酸素症の脅威が迫りうる時間の3倍の時間をかけなければ突破できない配置を行った。

 

 

 しかしながらこの日、設計者の思惑は侵入者に対して効果的な機能を発揮できなかった。

 ある2人の人物はタネガシマ・スペースセンター外部の海中に設けられた障害物の数々をものの見事に突破し、そして低酸素症に苦しむ事もなかったのだ。

 ただし、設計者を責めるのも酷な話かもしれない。

 この障害配置を行った人物が現役の設計者だった時代、フロッグマンといえば"人間の"特殊部隊員の事を指した。

 ところが現代では設計者の思いもよらないような存在がいるのである。

 

 

 

 そう、バイオロイドだ。

 

 

 

 シラユリとトモは水面から静かに顔を出すと、周囲300m以内に警備や監視カメラ、或いはセンサーの類がない事を確認する。

 エイミー・レイザーによる情報が正しいことを確かめると、彼女達は水面から顔を出した時と同じように静かに岸辺に寄って行き、そして上陸を果たした。

 不快な磯臭さに包まれたダイバースーツを脱ぎ捨て、重いボンベを肩から外して酸素マスクを頭から剥ぎ取ると、それらをまとめて海の底へと沈めていく。

 彼女達はダイバースーツの下に別の衣類を着ていて、それはタネガシマ・スペースセンター技術部の制服だった。

 

 

「…"ベーダー"、"ベーダー"、こちら"モーロ"。目標への上陸へ成功しました。」

 

 

 シラユリは携帯していた手鏡型プロジェクターを取り出してエイミーとの連絡を取る。

 

 

『"モーロ"、こちら"ベーダー"。了解、そのまま施設内に侵入してください。』

 

「ドクターの装備に疑問符をつけたくはありませんが…本当に大丈夫なのでしょうか?」

 

『気持ちはわかります。でも…あなたもよくご存知でしょうが、彼女は私達の期待を裏切らない。』

 

「今回もそうである事を祈ります。」

 

「もぉ!どうしてトモに隠れて内緒話するの!?」

 

「お静かに、"ティラルス"。潜入が察知されてしまいます。」

 

 

 シラユリが頭に手を当てながらトモに苦言を呈する。

 その様子を見たエイミーは申し訳なさそうな顔をシラユリに向けた。

 

 

『その…ごめんなさい、あなたに()()()()()形になってしまって。』

 

「エイミーさん酷い!トモの事をお荷物みたいに」

 

「大丈夫です、"ベーダー"。そちらはそちらの任務に集中してください。」

 

「だから!どうしてトモの事無視するの!?」

 

『助かります、"モーロ"。相手は素人ではありません。どうかご用心を。』

 

 

 ホログラムは消え去り、シラユリはスペースセンター技術部の野球帽を目深に被って準備を始める。

 まだ海中に沈めていなかった防水バックのチャックを開くと、中から由緒正しい弓矢を取り出した。

 対してトモは少しばかりふて腐りながらも、同じようにバックからサブマシンガンを取り出す。

 彼女がいつも使っている銃よりはかなり古い代物だったが、まだ使えるし、"足"もつかない。

 

 

「MP5トモちゃんスペシャル〜!ねえねえ、みてみて!カッコイイでしょう!?」

 

「…はぁ……調整が終わったら、また武器は隠し持ちましょう。ターゲットに近づく前に感づかれるわけにはいきません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヨコハマ市

 主人公邸宅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉぅし、そこだ!そこでパス!」

 

「相手ディフェンス抜け!抜け抜け抜けえ!」

 

「おっ、抜いた!そのまま行けええええ!」

 

「イケるぞ!キーパーの動きをよく見て…」

 

「「ゴオオオオオオオオオオッ!!」」

 

「喧しいわお前らここは交番の詰所じゃねえんだよッ!!!」

 

 

 サッカー中継を見ながら盛り上がっていた2人のセーフティに怒声を浴びせる。

 こちとら学生であるが故に本日の課題を終わらせんとしていたところ。

 ところがこの馬鹿共は二階にある俺の自室に聞こえる程の大音量を奏でながらサッカー中継に興じていやがったのだ。

 アル中疑惑のあるセーフティ②はバドワイ●ーの瓶を片手に持っているし、セーフティ①は…なんだそれ、ブブゼラ?

 ここは南アフリカじゃない、しまっとけそんなモン。

 

 ともかく、この2人のバカどものせいで俺の集中力は完全に折られてしまった。

 こうなると何か気分転換でもした方がいいだろう。

 まだ風呂に入ってはいなかったから、俺はひとっ風呂浴びてから紅茶でも飲んで、それからあと1時間だけ机に向かう事にした。

 どうにか課題はあと1時間くらいで終わらせられそうだし、その後はゲームか何かして寝ればいい。

 俺は着替えを持って一階へと降りて行き、キッチンでココアを飲んでいたソワンさんに話しかける。

 

 

「ソワンさん、15分か20分後に風呂を出るだろうから、ルイボスティーを淹れておいてくれないかな?」

 

「かしこまりました。ハチミツかお砂糖、どちらに致します?」

 

「ハチミツを」

 

「イタリア産のレモンと、ハンガリー産のアカシアがございますが。」

 

「レモンで頼むよ」

 

「かしこまりました。」

 

 

 流石はソワンさん。

 正にデキるメイドさんといったところか。

 紅蓮さんも流石にハチミツの種類までは聞いてこなかった。

 ぶっちゃけ言うと俺も分からん。

 ハチミツはハチミツだろう。

 レモンとアカシアの違いなぞ分かりはしない。

 今のはただ気分で言っただけ。

 

 

 ソワンさんにいい加減極まりない注文をしてから、俺は風呂へと向かう。

 いつも通りにドアに手をかけ、脱衣所のドアを

 

 

「きゃあ!…ご、ご主人様!?…ご主人様のエッチ!

 

「………ベタだなぁ。」

 

 

 ベタもベタ。

 ベタベタである。

 脱衣所には先客がいて、それはあろうことかバスタオル1枚でその豊満な身体を包むというあまりにも無謀な行為に走った紅蓮さんだった。

 

 正直、一ヶ月前の俺なら鼻血の一つでも垂らしたに違いないが…人間とは慣れる生き物である。

 今や彼女の豊満ボデーに乗っかって寝ている俺としては見慣れたモン。

 いくらなんでも信号機や道路標識に興奮する人はいないでしょう?

 それと一緒。

 

 

「ごめんね、紅蓮さん。先に入ってるとは思わなくて。」

 

「…こ、こちらこそ申し訳ありません。ご主人様に一言申し上げておくべきでした。…それで、その…着替えますので、お手数ですが…」

 

「ああ、申し訳ない。…急がなくていいからね?」

 

 

 紳士たる俺はドアを閉じて彼女の着替えを待つ。

 ドライヤーの作動音がして、布が擦れるような音がすると、やがてドアが開いた。

 さてと、紅蓮さんも着替え終わった事だし気を取り直して風呂にいやなんで下着姿やねんっ!!

 

 なんで下着姿?

 なんで黒下着上下にガーターベルト履いたところで諦めた?

 なんでそんな際どすぎる扇情的な、ハッキリ言って全裸よりも余計にエロいようなお姿で着替えを終えたという認識に至れたんだお前は?

 

 

「ご主人様により良い睡眠を取っていた抱くためには、この服装がマストですので。」

 

「………湯冷めするよ?」

 

 

 紅蓮さんは言っても聞いてくれなかったので、俺はもう諦めて1人脱衣所へと入っていく。

 そういや寝るときは彼女はいつも下着姿だったなぁ。

 そんな事を考えながらも、俺は脱衣所と浴場に残る紅蓮さんのアメリカーナーな匂いをクンカクンカしながら風呂を浴びる。

 なぁに、俺がピョンテだなんて、今更な話じゃないか。

 少なくとも俺は悪くないと思う。

 そもそもこうなったのは、俺が紅蓮さんの匂いクンカクンカするとか以前に、ご自身のお身体の上で寝ろとか言ってきた紅蓮さんのドルチェ&●ッバーナの香水のせいだよ?

 

 

 そんなこんなを考えながら頭を洗い、身体を洗って、湯船に浸かる。

 このお湯に紅蓮さんも浸かってたのかグフフとか一瞬思ったピョンテな自分に嫌悪感を覚えたが、すべてをドルチェ&●ッバーナのせいにしてお湯から上がった。

 身体をよく拭き、手早く着替えて、脱衣所を後にしてキッチンに向かう。

 冷蔵庫から牛乳を取り出して一口飲み(紅蓮さんがこちらを見て赤面したように見えたがきっとドルチェ&●ッバーナのせい)、ついでソワンさんがちょうどティーパックを引き揚げたと思わしきマグカップに向かう。

 ソワンさんはシチリア産のハチミツの瓶を取り出していたところで、それを机の上に置いた。

 そしてこちらに少し微笑みかけてから、今度はスプーンを………

 

 

 その時、ハチミツの大瓶が弾け飛んだ。

 琥珀色の液体が机の上にぶち撒けられ、甘い香りがキッチン中に広がる。

 次いで冷蔵庫に大穴が空き、後を追うようにとんでも無く馬鹿でかい音が響き渡った。

 そして次の瞬間には、俺は下着姿の紅蓮さんに覆いかぶせられ、濃厚なドルチェ&●ッバーナの香水を味わう事になる。

 

 

 ドッドッドッドッドッ!!

 

 

 とんでもない砲声はなおも鳴り止まず、相変わらずキッチンを吹き飛ばし続けていた。

 

 

「畜生ッ!!一体何事だってんだ!?これもドルチェ&●ッバーナの香水のせいか!?」

 

「ご主人様!襲撃です!…砲声と威力からして、対空機関砲の類かと!」

 

 

 イカれてんなぁ!?

 人ん家に対空機関砲ぶっ放すって、いったい何を考えてやがるのか。

 誰による攻撃か、相手は何人いるのかも分からないが、ただ確実にわかるのは連中が俺を殺そうとしていると言う事だろう。

 少なくとも友達になりたくて対空機関砲ぶっ放すヤツなんて聞いたことがない。

 

 対空機関砲の射撃はその後も続いたが、幸いな事に砲弾が俺と紅蓮とソワンさんを捕らえることはなかった。

 砲声が止んで辺りを静寂が覆うと、俺は別の部屋にいる2人のセーフティに向かって声を張り上げる。

 

 

「①!②!無事か!?」

 

「ええ、若旦那!ピンピンしてますよ!バドワイ●ーは粉々になっちまいましたが!」

 

「お坊ちゃんはお怪我ありませんか!?」

 

「大丈夫だ!…どうにかな!」

 

 

 俺に覆いかぶさる紅蓮さんが、いつの間にか取り出していたM416自動小銃の交換を引く。

 ソワンさんはソワンさんでいつの間にか357口型リボルバーを準備していた。

 

 

「ご主人様、次はきっと徒歩兵が来ます。私から離れないでください。」

 

 

 紅蓮さんがそう言ったが、俺は到底彼女から離れることはできないだろう。

 なんでって?

 彼女のボデーの豊満具合を、ドルチェ&●ッバーナの香水が思い出させるから。

 

 

 

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