機動戦隊おねショタサーガ   作:野生のムジナは語彙力がない

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お帰りなさい、指揮官様!

おねショタサーガ、ここに堂々完結なのです!
やりましたよクランクニー……!
じゃなくて、依頼主様!
私……じゃない、ムジナは見事、貴方の依頼を完遂させることが出来たのです。ねぇ、返事をしてください……依頼主様……依頼主様っっっ!?(失踪してるっぽい?)

まあまあまあ……
それでは、最後の甘々なひと時?をどうぞ……


第10話:おねショタサーガ

機動戦隊おねショタサーガー

第10話:おねショタサーガ

 

 

 

21時32分

基地内アナウンス

 

 

 

おーい、指揮官ー

いつまで司令部を留守にしてる気?

そろそろ出撃していた部隊が戻ってくる頃だから、いい加減、司令部に顔出しなよ。

 

今、指揮官がどういう状況なのかは大体察しているけど、そんなのあたしには関係ないことだから。

 

それより、あたしはもう疲れたの!

感謝してよね! 指揮官がどこにもいないから、今日一日、あたしが指揮官の仕事を代わりにやってあげたんだから!

 

はぁ、だからさぁ……指揮官、これ聞いてたら……いや、もういいや聞いてても聞いていなくてもどっちでもいいや。あたしはもう部屋に戻って寝たいから、帰還してくる部隊の出迎えくらい自分でやってよね!

 

3分間だけ待つから

というわけで早く来てよね、それじゃあ

 

 

 

司令部に待機していた少女の声が、全館放送によるアナウンスを通じて基地全域に響き渡った。声色と口調からして、発信者はシェロンであると思われる。

 

それから数分後……

 

 

 

「だから……ここに指揮官はいないってば!」

 

シェロンは司令部のメインエントランスに集まったパイロットを含む、数十名の女性スタッフたちを前に、げんなりとした表情を浮かべていた。

 

彼女らは皆、アナウンスで呼び出しがかかったことにより、指揮官が司令部に顔を出すと予想したのだろう。

司令部に押しかけてきた者たちの大半が、薬の作用で小さくなってしまった指揮官をお目当てにしていた。

 

「確かに指揮官のことを呼び出したけど、結局来なかったから帰ろうとしているのが見えない? あーもうッ、だからいないものはいないの!」

 

業務を終え、自分の部屋に帰ろうとしていたシェロンだったが、メインエントランスに集まったスタッフたちに阻まれ、とても帰れる雰囲気ではなかった。

 

一刻も早く帰りたかったシェロンは、疲労と猛烈なめんどくささを感じつつ、スタッフ達に対して必死に説得を続けた。しかし、スタッフたちはまるで聞く耳を持たず、一向に解散する気配はなかった。

 

「そうだ、ここに指揮官様はいらっしゃらない! そして貴方達に神聖なる司令部への立ち入りは許可されていない、今すぐお下がりになって!」

 

シェロンの隣でブリテン出身の騎士・イーディスも集団に対して引くように促すも、まるで効果はなかった。

 

司令室へと続くゲート前には規制線が張られ、壁になるようにしてイーディスを始めとする薬の効果に暴露していないスタッフたちが立ち塞がり、ひしめき合うようにしている女性スタッフたちを押し留めている。

 

「……なんでこうなんの?」

シェロンの瞳は、死んだ魚の目のようになっていた。

 

「まじでめんどくさ……はぁ、もういいよ。あんたらが指揮官のことをどう思ってるとか、指揮官のことをどうしたいだとかあたしには全く関係ないし、興味ないね。あたしは何がなんでも寝るから」

 

開き直ったシェロンは、そう言って逆に司令室の中へと踵を返した。

 

「んじゃ、後よろしく〜」

 

「なんで私がこんなこと……」

 

エントランスからシェロンが去り、残されたイーディスとスタッフたちは、押し寄せる女性スタッフたちを前に絶望するしかなかった。

 

 

 

……数分後

司令室

 

 

 

「ふわぁ〜、眠っ……」

 

帰宅を諦め、司令室へと戻ってきたシェロンは、我が物顔で指揮官専用の多機能シートへと腰を下ろした。背もたれを倒して眠りの姿勢になると、部屋が薄暗いのをいいことに、そのまま眠りにつこうと目を閉じる……

 

「で、どうすんの?」

 

部屋の隅に人の気配を感じたシェロンは、目をつぶったままその人物へと問いかけた。

 

(……さあ?)

 

「さあって……無責任すぎない?」

 

部屋の中、すぐ近くから聞こえてきた声にため息を吐き、シェロンはうっすらと目を開けた。そして前列の席で、監視用のレーダーモニターを真っ直ぐに見つめる小さな人影へと視線を向けた。

 

(だって、この状態がいつ治るか分からないし)

 

シェロンが薬の効果を受けてしまわないよう、指揮官は彼女に背を向けたまま会話を続ける。

 

「もう、何とかしてよ。指揮官でしょ?」

 

(や、そう言われても……というか関係なくない?)

 

「大アリだっての。ほら……指揮官が持っている幅広い交友関係をフルに活用して、色々と元に戻る方法を考えてよ。全く……早く元の指揮官に戻ってよね。じゃないと、このあたしが困るから……」

 

シェロンはそう言って盛大なため息を吐いた。

そんな彼女の様子をチラリと見て、指揮官は思わず苦笑いをこぼした。

 

「言っとくけど、このままずっと指揮官の代わりを務めることなんて、あたしには出来ないしヤだかんね? ましてや尻拭いなんて絶対やらないから」

 

(そうだね。今日一日、本当にありがと)

 

そうして「今度、ご飯奢ってあげる。ついでにジュース付きで」と持ちかけた指揮官だったが、それを聞いたシェロンは微妙な表情を浮かべた。

 

「もう……そう言えばあたしが何でも言うことを聞いてくれると思って……あ、でもジュースはありがたくもらうかんね、もち1番良いやつで!」

 

(はは……了解)

 

なんだかんだ言いつつも、さり気なく条件を突きつけてくる強かな彼女に、指揮官は微笑みを送った。

 

「ねぇ、1つ聞いていい?」

 

今にも眠りかねない姿勢になっているシェロンだったが、一向に眠る気配はなく……それどころか、目をパッチリと見開いてそんな事を聞いてきた。

 

(何かな?)

 

「指揮官はさ、なんでみんなから逃げるの?」

 

(なんでって、それは……みんなが薬の影響を受けてしまわないようにって)

 

「や、それは分かるよ。でもさ、男ってこういうの嬉しいんじゃないの? あたしが読んでるラノベでもよくハーレムっていう言葉が使われてるくらいだし、沢山の女の人に迫られることって指揮官的には嬉しくないの?」

 

(…………それは)

 

「あ、もしかして指揮官って……大人の女性よりも、そっちの方に興味があったり?」

 

指揮官が答えようとする前に、シェロンは納得したような顔をしてポンと手をついた。

 

(……いや、違うよ。確かに龍馬君とかは可愛いと思ったことはあるけど、それくらいで……)

 

「違う違う、ロリの方。指揮官ってロリコン?」

 

(もっと違うから。人を何だと……ゴホン)

指揮官は小さく息を吐き、そして言葉を続けた。

 

 

(ハーレム云々はさておき、自分も1人の男だから……正直、みんなが好意を寄せてくれるのは素直に嬉しいし、いつか誰かとそういう関係になりたいとは思っているよ)

 

「じゃあ、何で逃げるのさ?」

 

(それは、みんなこうして言い寄って来てくれてはいるけど……でも、それはあくまでも薬の影響によるものであって、彼女たちの本心じゃないから。そういうのに流されて、なし崩し的に彼女たちと関係を持ってしまうのはあんまり良くないと思う……それが自分にとって大切な仲間だったら尚更のこと)

 

……それに、自分は彼女たちのことを守ってあげる『指揮官』という立場にいる。だからこそ、不用意に彼女たちのことを傷つけるような真似は出来ない……指揮官は自身の言葉にそう付け足した。

 

(ここで欲望に流されて、みんなとそういう関係になるのは簡単かもしれない……だけど、それじゃダメ。お酒で酔わせて正常な判断力を失わせた後、行為に及ぶのが犯罪になるのと同じでさ……薬なんかに頼らず、やっぱりこういうのはちゃんと合意を得た上で、筋を通してこそのことだし)

 

「ふぅん……」

黙って指揮官の言葉に耳を傾けていたシェロンだったが、そこで小さく声を漏らした。

 

(意気地なしだって思った?)

 

「いや、指揮官も指揮官なりにちゃんと考えてんだねって……ちょっと見直したかも」

 

(失礼だなぁ……ははは)

 

そこで静かに笑い合った2人だったが、ふと……指揮官の瞳に真剣そうな色が映り込んだ。そんな指揮官の気持ちを感じ取り、シェロンも笑みを引っ込めさせた。

 

(それにさ……例え添い遂げたとして、いざ家庭を持つとなると、それを温める時間と場所が必要になってくるし……でも傭兵として活動している以上、家族にその機会を十分に与えてあげられるとは到底思えないから)

 

「…………」

 

(まだ、自分にはやるべきことがある……そう思うと、恋人が欲しいだとか、家庭を持ちたいとか……まだそういう気にはなれなくて、だから逃げているのかも)

 

「…………そっか」

 

指揮官の言葉に頷きを示したシェロンだったが、そこで何やら考えるような素ぶりを見せた後……

 

「それじゃあ、今度から指揮官のことアニキって呼ばせてよ? 」

 

(え? 突然どうしたの?)

シェロンの発した突然の提案に、指揮官は疑問符を浮かべた。

 

「そのまんま、指揮官が私のアニキになるってこと。普段は色ボケして、事あるごとに仕事を怠ける人だけど、やる時にはやるあたしの自慢のアニキ……みたいな?」

 

(別にいいけど……それだとシェロンは妹ってことになるけどいいの? 普段はぐーたらで、ゲームばかりしている子だけど、やる時にはやる自慢の妹……みたいな)

 

お返しとばかりに指揮官がそう提案してみると、シェロンは「うへぇ」と、微妙そうな表情を浮かべ、シートの上に体育座りになりながら指揮官を見下ろした。

 

「妹ぉ……? 指揮官の……? えぇ、やだぁ……」

 

(そっちから言っておきながら、その反応はないでしょ……)

 

「あはっ……冗談だよ〜、冗談〜♫」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべる彼女に、指揮官は肩をすくめることしか出来なかった。

 

というか、今の縮んだ自分に対してアニキと呼ぶのはどうなのだろか? むしろ弟と呼ぶ方がしっくり来るような……指揮官がそんなことを考えていると、何やらシェロンが小さく頷いた。

 

「でも、いいかもね……それ。指揮官といると楽しいし、落ち着くし、たまにゲームで一緒に遊んでくれるし、趣味も合う。あのさぁ、本当にアニキになってあたしのこと一生養ってよ」

 

(えぇ……アニキって呼ぶのは構わないんだけど、それとこれとは話が違うような……)

 

「どうせ今のところ指揮官にとってそういう人はいないんでしょ? だったらアニキとして、あたしのこと一生養え〜」

 

(いや、そんなことは……)

 

「え? じゃあ誰かいるの? アニキの好きな人」

シェロンは意外そうな顔をして指揮官のことを見つめた。

 

(いや、みんなのことが好きだけど?)

 

「いや、そっちじゃなくて……ラブの方」

 

(ああ……さあ? どうだろ)

 

「折角だから聞かせてよ。もし……仮にだよ? 指揮官が付き合って恋人になりたいって思うとしたら、アニキは誰を選ぶの?」

 

挑発的なシェロンの問いかけ。指揮官は思わず心の中で何人かの女性の姿を思い浮かべかけるも、咄嗟に頭を振って自分を誤魔化すことにした。

 

(……だから……自分にはまだやるべきことがあって)

 

「それが終わった後の話ってこと。どうせここにはあたしたち以外には誰もいないんだし、素直に言っちゃいなよ。大丈夫……あたし、どうせいつも引きこもってるし、指揮官の好きな人のことをゲロッちゃうほど仲良い人なんて、指揮官の他にいないから」

 

(そう言われても……っていうか、眠たいんじゃなかったの?)

 

「んー、指揮官と話してたら目が冴えちゃった感じ?」

 

(気にしないで、眠ってていいよ?)

 

「もー……またそうやって誤魔化そうとする……」

 

思わず天井を仰ぎ見たシェロンだったが、

「あ……」

そこで、何かに気づいたかのように声を発した。

 

(シェロン、どうしたの?)

 

「スイッチ……切り忘れてた」

 

(え……?)

 

多機能シートの手元に設置されたタッチパネルを操作するシェロンを見て、指揮官はとてつもなく嫌な気配を感じた。次の瞬間、どこからともなくブツンという、何かが切断されるような音が響き渡った。

 

(ねぇ、シェロン……)

 

「んー? 何ー?」

 

(…………スイッチって、何の……?)

 

「え、ああ。放送のスイッチだけど?」

 

(……ッ!?)

 

シェロンの言葉に、指揮官は驚愕した。

先程、シェロンは指揮官のことを司令部へ呼び出すために全館放送を行なっていた。

そして、それが正しく切られていなかったということは、つまり2人のプライベートな会話が放送によって、基地全体に筒抜けになってしまっていたということを表していた。

 

そして、それが意味することは即ち……

 

「まー、大丈夫じゃない? マイクから離れているから指揮官の声はあんまり入ってなかったと思うよ?」

 

(いや、問題はそれだけじゃなくて……)

 

自分の発言に何か問題はなかったかと振り返りながら、指揮官が別の懸念を抱いた……ちょうどその時だった。

 

(…………ッッッ!?)

 

どこからともなく、猛烈な地響きが響き渡った瞬間……司令室の扉が勢いよく開かれ、そこから多数の女性スタッフたちが姿を現した。

 

先ほどの放送を聞いていたのだろう、指揮官を探すべく扉をぶち破って現れた彼女たちの動きには、一切の迷いがなかった。

 

「あー、やっぱり指揮官いた!」

 

そのうちの1人が、モニターの前に座る指揮官の姿を見つけると、それに連動するようにして、その場にいた全員の視線が集中した。

 

(ひっ……!?)

 

美味しそうな匂いを発する獲物を前にした肉食獣の如く、目を爛々と輝かせた彼女たちのプレッシャーに押され、指揮官は短い悲鳴を発した。

 

何とかこの場から逃れようと、指揮官は裏口の方へ目をやるも……次の瞬間、固く施錠されていた筈の扉がもの凄い力で蹴り破られ、さらに複数の女性スタッフたちが司令室に姿を現した。

 

「こ……これが指揮官? なんて可愛らしい……」

 

「ハァ……ハァ…………興奮を抑えられないわ〜」

 

「キャー、可愛いー! 抱っこしたい〜!」

 

たちまち、司令室が人の群れで埋め尽くされてしまう。戸惑う指揮官を前に、女性スタッフたちは口々に黄色い歓声を放った。

 

「うわっ……すごい熱量だねー」

 

当初驚きはしていたものの、時間が経つにつれて状況を理解したのか、シェロンはさも他人事かのように指揮官の席に寝そべり、高みの見物を決め込もうとしていた。

 

(な、なんで……こんなに沢山……?)

 

司令室を埋め尽くすかの如く集結した女性スタッフたちに、指揮官は疑問符を浮かべた。人前にはなるべく姿を現さず、薬の効果に暴露してしまうのを極力抑えていた筈の指揮官だったが……司令室に集まった彼女たちは、明らかに昼間見られてしまった人の数を大きく上回っていた。

 

(あんまり見られないようにしてたのに……)

 

「んー……ねこですみたいに、影響を受けている人から指揮官の状態を伝聞して、ある程度理解しただけでも暴露しちゃう的な? ってか、魅了の域を超えて認識災害……もといミーム汚染だよねこれ」

 

そんな話をしている間にも、スタッフたちはジリジリと指揮官めがけて前後から距離を詰め始めた。

 

(シェロン、た……助けて)

 

「やだ。疲れた。というか眠いから無理」

 

(さっきまで目が冴えたって言ってた人が何を……)

 

「あーあー聞こえなーい。アニキー、頑張って〜」

 

(う、裏切り者……)

どうやってもシェロンが何もしてくれないことを悟った指揮官は、冷や汗をかきつつ女性スタッフたちを見やった。

 

 

「指揮官ー、私たち、放送聞きましたー」

 

「まだこんなに小さいのに、先のことを考えて偉いですね〜」

 

「でも、心配はいらないですよ! 薬の効果を受けていたとしても、指揮官さんのことは好いているので!」

 

「ねえねぇ指揮官様! 指揮官様の思い人って誰なんですか!?」

 

「そうです! それを聞かないと……私、夜も眠れなくなりそうです」

 

 

シェロンとの会話は完璧に聞かれてしまっていたようで……スタッフたちは皆、息を荒くした状態でそれぞれの感想を述べ始めた。

 

(えっと……み、みんな落ち着いて……)

 

「はぁ……はぁ……もう我慢できない、抱くわ!」

 

「は? あたしが先に抱っこしてあげるんだから」

 

「いいえ、指揮官君と先に致すのは私よ!」

 

指揮官が見ている前で、スタッフたちは誰が先に小さな指揮官のことを独占できるかについて話し合いを始めた。

 

「だったら! 最初に指揮官さんを抱きしめた人が勝ちってことでどう!」

 

「へぇ……それ、いいわね」

 

「分かりやすくていいわね……それじゃあ」

 

スタッフたちの視線が、一斉に指揮官に向いた。

(ちょっ……待……)

慌ててスタッフたちに制止を呼びかけた指揮官だったが、その言葉は目を光らせたスタッフたちに届くはずも無く……次の瞬間、女性スタッフたちは指揮官へと飛びかかった。

 

(や、やめ…………うわぁ!?)

 

しかし、その時だった。

スタッフたちの手が指揮官の柔肌に触れようとした瞬間……轟音と共に、巨大な黒いマニピュレーターが壁を突き破って司令室の中に出現した。

 

あまりにも突然の出来事に、指揮官はおろか周りにいた女性スタッフたちも驚愕し、思わず動きを止めた。

その間に、巨大な手は指揮官の身柄を確保すると、壁の中へと消え……そのまま外の世界へと指揮官を連れ去った。

 

(え……え……?)

 

黒い手の中で訳も分からず指揮官が困惑していると、指揮官のことを優しく包み込んでいた指がゆっくりと開き、やがてその正体が明らかになった。

 

(あ、アガレス……?)

 

それはソロモン製の人型機アガレスだった。

黒い装甲と高機動ウィング、そして右手に保持した長射程のライフルが特徴的な機体だった。

そして……そのパイロットは

 

(もしかして、アマンダ?)

 

「正解よ〜」

 

指揮官の言葉に、アガレスのコックピットから妖艶な女性……アマンダが姿を現した。彼女は指揮官に向かって手を振ると、優しげな微笑みを浮かべた。

 

(助けてくれたの?)

 

「そうよぉ〜、あのままだったら流石の指揮官くんでも耐えられそうにないって思ったから〜」

 

(そ、そっか……ありがと)

 

「別にお礼なんていいのよ〜。お礼は、後で体で支払ってくれるだけでいいから〜」

 

(『だけ』って何!?)

 

アマンダもアリスと同類であったことを思い出し、ここまで来てもいつも通りなアマンダを前に、指揮官はため息を吐いた。

 

「それにしても、今の指揮官……とっても可愛いわぁ。流石の私でもぉ、まさかこんな風になるとは思ってなかったわ〜想像以上よ〜」

 

(そうだよね、本当に…………ん?)

 

その時、指揮官はアマンダの言葉に引っかかるものを感じた。彼女の言い方は、まるで薬の効果をあらかじめ知っていたかのようなものだった。

 

(あのさ……アマンダ、1ついい?)

 

「なぁに?」

 

(もしかして、部屋に薬を置いたのって……)

 

「おほほほほ、私よ〜」

 

(…………えぇ?)

 

アマンダの口から語られたまさかの事実に、指揮官は深く脱力するものを感じた。

 

(はぁ…………理由を聞いてもいい?)

 

「いいわよ〜。それは遡ること300年前……」

 

(あ、長くなるならいいです)

 

「もう、つれないわねぇ……短くするからぁ」

 

目からハイライトの消えた指揮官を見て、アマンダは渋々といった様子で、指揮官の机に薬を置いた理由の説明を始めた。

 

 

アマンダの説明を要約すると、こうだった。

仲間たちから『色欲の化身』と評されるほどの魔性の魅力の持ち主であるアマンダ。その淫魔的な体質のせいで不用意に男が近寄ろうものなら一瞬にして彼女の虜になってしまい、その能力を用いて彼女が骨抜きにしてきた男の数は計り知れなかった。

 

そして、それは指揮官と知り合ってからも変わらなかった。これまでと同じように、男である指揮官を魅了しようとありとあらゆる手を使って誘惑を仕掛けたアマンダだったが……しかし、何故か全くと言っていいほど指揮官が自分になびかなかったのを見て、彼女は愕然とするものを感じていた。

 

ホモのベカスや玉無しオーシンとは違い、異性に対して明らかに興味を持っているはずの男性を落とすことが出来なかったのは、指揮官が初めてだった。

 

指揮官を落とせないことは、彼女にとって『色欲の化身』の名折れでもあった。なので、アマンダは指揮官をメロメロにすることを目標にして、日々、指揮官を落とすための研究を続けてきた。

 

そして、彼女が行き着いたのが『性転換薬』で有名なオスカー製薬だった。同年代や年上の男を落とすよりも、穢れを知らない無垢な子どもを落とすことの方が得意で、何よりも趣を感じるタイプであるアマンダは、オスカー製薬で『性転換薬』の副産物として誕生したとある薬品の存在を知り、研究所から勝手に持ち出したのだと言う。

 

 

(じゃあ、その薬品っていうのが……)

 

「そうそう、指揮官の机に置いたやつよ〜」

 

全く悪びれもせずケラケラと笑ったアマンダだったが「というわけで」……そう言って彼女は、そこで何を思ったか、突然服を脱ぎ始めた。

 

(ッッッ!? な、何を……!?)

 

何の脈絡もなく脱ぎ出したアマンダに、指揮官は顔を真っ赤にして慌てた。アガレスのコックピットから上半身だけ身を乗り出した状態ではあるものの……言うまでもなく、ここは野外である。

 

指揮官は何とかしてアマンダが脱ぐのを止めようともがくも、しかし、アガレスのマニピュレーターにがっしりと掴まれてしまっていてはどうすることも出来なかった。

 

「ウフフ……指揮官のいやらしい視線、感じるわぁ」

 

やがて、アマンダは一糸纏わぬ姿になった。

暗闇の中、月光を受けて青白く輝くアマンダの肌は幻想的でとても美しく、それでいて何とも言えない魅力があった。

 

「指揮官の指揮官をいっぱい[削除済み]で[削除済み]って〜、[削除済み]して〜、それが終わったら下の[削除済み]で指揮官を[削除済み]が[削除済み]になるまで[削除済み]ってあげる〜」

 

(いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!)

 

ぷるん……

そんな音が聞こえてきそうなほど、豊満なバストをダイナミックに震わせ、アマンダは指揮官のことを手招きした。

すると、その動きに合わせてアガレスの腕が動き、指揮官のことをコックピットへと引き寄せ始めた。

 

(た、助けて……誰か……)

 

助けを求めて下を見た指揮官だったが、いつのまにかアガレスは空中へと飛翔しており、真下の基地が小さく見えるほどだった。

最早……誰も手出し出来ない状況である。

 

「ウフフ……夢にまで見た指揮官との野外[削除済み]……しかも、夜空には満点の星々とムードは完璧…………こんなロマンチックな場所で指揮官と出来るだなんて……はぁぁぁあん、想像しただけでもイッちゃいそうよ〜」

 

(…………ッッッ)

 

今まさに、指揮官の貞操が奪われようとした……

まさに、その時だった。

 

「…………え?」

 

(うわっ!?)

 

突如、アガレスの上空から一条のビームが飛来した。

アガレスの高機動ウィングを狙ったその一撃は、機体の周囲に展開されたFSフィールドによって無力化されるも、指揮官とアマンダを引き離すことには成功した。

 

「な、なに……!?」

 

「でえええええええい!!!!」

 

困惑しつつも、アマンダは右手に保持していたライフルを上空に照準した。しかし、アマンダに捕捉されるよりも早く、美しい黄金の輝きを放つ人型機が月の光を背にアガレスへと肉薄……指揮官を拘束していたアガレスの左腕めがけてブレードの刃を叩き込んだ。

 

「ウァサゴG!? まさか……!?」

 

「指揮官を、離しなさあああああああい!!!」

 

少女の力強い叫びと共に、黄金の人型機の放った斬撃が、アガレスの左腕を切り落とした。

 

(うわぁ!?)

 

指揮官の体はアガレスの腕もろとも落下を始めた。

このままでは、地面に叩きつけられてしまう

 

「指揮官殿ッ!」

 

その時だった。

基地の格納庫から、緋色の閃光を伴って1機の黒い人型機が発進したかと思った瞬間、それは驚異的な跳躍力を発揮し、落下を続ける指揮官のことを空中で優しく受け止めた。

 

「指揮官殿! 怪我はないか……!?」

 

(うん……大丈夫)

 

「よかった……今、降ろしてやるからな」

 

無事、地上に降り立った指揮官は、助けてくれたお礼を言うべく、目の前に佇む黒い人型機……カグヤを見上げた。

 

(朧、ありがと)

 

「これくらいお安い御用だ」

 

「ちょっと! 私のことも忘れないでよね!」

 

見つめ合う2人の元へ、ウァサゴGがゆっくりと降り立った。そのコックピットからは、青い髪の毛の少女が身を乗り出していた。

 

(セラスティアも、ありがと)

 

「ふふん、それでいいのよ♫」

 

指揮官がお礼を述べると、セラスティアは満更でもなさそうな笑みを浮かべた。因みに、彼女は1年前のクリスマスでの一件以来、それまで指揮官の専用機であったウァサゴGを勝手に私物化していたりする。

 

「チッ……邪魔を……」

一方、あと一歩で指揮官を落とすという目標を達成するところで、あっさりと指揮官を奪われてしまったアマンダは、悪態を吐いて2人の敵を見下ろしていた。

 

「話は全て聞かせてもらった……指揮官を誑かそうとする雌狐め」

 

「そんなの、私たちがいる限り許さないんだから!」

 

指揮官の優しさに触れ、指揮官のことを護ると誓った朧とセラスティアは、それぞれ武器を構え、上空をホバリングするアガレスを油断なく見据えた。

 

「私と指揮官の蜜月を邪魔しないで貰えるかしらぁ?」

 

「諦めろ、たった1機で何が出来る?」

 

「それはどうかしらぁ?」

 

「何……!?」

 

その瞬間、自分に向けられる殺気を感じ取った朧は反射的に刀を振った。今まさにカグヤに直撃しようとしていたミサイルが空中で全て叩き落とされ、無力化される。

 

「あらら、惜しい……」

 

「流石は剣聖さん、一筋縄ではいきませんね」

 

朧がミサイルの弾道を辿ると、そこには2機の極東共和国製BMの姿があった。巨闕改と竜胆改、近距離と遠距離のオールマイティなコンビ

 

(その声……黛に臙脂?)

 

「ふふっ……正解よ〜」

 

「声を聞いただけで分かるなんて、流石ですね!」

 

巨闕改に搭乗する黛と、竜胆改に搭乗する臙脂は

、そう言って手を振り、遠くの方にいる指揮官へとアピールした。

 

(なんでこんなこと……)

 

「おほほほほ……妨害が入るのは予想済み。だから予め、邪魔者を排除して指揮官を独占する為に、あの姉妹とは協力関係を築いていたのよねぇ」

 

指揮官の抱いた疑問に、アマンダが答える。

 

「まあ、協力関係って言っても一時的なものだけど」

 

「はい。そこの2人を倒した後は、改めて誰が指揮官を独占するか雌雄を決するつもりです」

 

アマンダの言葉に姉妹が補足を入れると……

そこへ、新たな乱入者が現れた。

 

「まあ、敵は少ない方がいいって言うしね〜」

格納庫の方からゆっくりと姿を現した青いバルキリーが、姉妹と協力するかのように朧とセラスティアを囲むべく位置取った。

 

(バルキリー……アリスまで!?)

 

「まあ、可愛い男の子を独り占めできる機会があって言うんだったら、そりゃあ参加するよね〜。それが指揮官だったら、尚更ね」

 

エンジンドリルを轟かせ、アリスは戦闘態勢を取った。

 

「ウフフ……これで戦力は4対2、形勢逆転ね」

 

「あはっ……それはどうかしら!」

 

嘲笑を浮かべるアマンダに、セラスティアは余裕の表情で天高く指差した。すると……月の光に照らされ、ウァサゴGと同様に美しい黄金の輝きを放つその機体が徐々に降下してくるのが見えた。

 

(アルテミス……!? まさかヴァネッサ……?)

 

「たまには私にも、ダーリンのこと護らせてよね〜?」

 

金色の光を放つその機体、アルテミスに搭乗したブロンドの女性……ヴァネッサは、地上に降り立つと同時に指揮官へと振り返り、優しく微笑みかけた。

 

 

 

セラスティア「協力関係を築いていたのは、そっちだけじゃないのよ!」

 

アマンダ「それでも、戦力はこっちの方が上よ」

 

朧「ならば教えてやろう……戦いは数ではないということを」

 

黛「ふぅん、その余裕……いつまで保つかしら?」

 

臙脂「ふふふ……現役を退いた身ではあるけど、まだまだ若い子には負けないってことを証明してみせるわね?」

 

アリス「他の奴らをぶっ倒して、指揮官とイチャイチャするのはこのあたしだよ〜!」

 

ヴァネッサ「ふふっ……そう上手くいくかしら〜?」

 

そして、戦いの火蓋が切って落とされた。

小さな指揮官を巡って、7人の美女たちは一斉に動き、砲火を交え、剣と拳を交錯させた。

 

 

ーーー

 

 

「アンタみたいなオバさん、指揮官に似合わないわ!」

 

「誰がオバさんですって!? この生娘が……!」

 

上空ではセラスティアの乗るウァサゴGとアマンダの乗るアガレスが激しいドッグファイト……いや、キャットファイトを繰り広げている。

 

しばらくの空中で間撃ち合っていた2人だったが、双方ともFSフィールドを展開していたことで、砲撃戦が無意味だと判断すると、お互いにブレードを装備して接近戦へと移行した。

 

「き、生娘で悪かったわね! 年増のくせに……!」

 

「言ったわね! 大人しく死になさい!」

 

 

ーーー

 

 

「面倒だ、2人まとめてかかって来い!」

 

「へぇ……舐められたものね。それじゃあ、姉さん!」

 

「うふふ……姉妹の力を、見せてあげるわ!」

 

カグヤに搭乗した朧が挑発を仕掛けると、姉妹は息の合った連携攻撃を繰り出し始めた。巨闕改に乗る黛は、極東武帝顔負けの鮮やかで激しい打撃を繰り出し、竜胆改に乗った臙脂の的確な援護射撃は、朧から反撃の機会を奪った。

 

「やるな……!」

 

「そっちこそ!」

 

「ですね!」

 

数的に不利ではあるものの、機体性能やパイロットの技量的に言えば朧の圧勝で終わるかと思われた3人の戦いは、意外なことに硬直状態が続いていた。

 

 

ーーー

 

 

「くっ……」

 

「うふふっ……遅い遅い〜」

 

意外な戦闘が繰り広げられているのはアリスとヴァネッサの方でも同じだった。世界最大級の傭兵社G.O.E.の看板娘であり、エリートでもあるアリスだったが、ヴァネッサの操るアルテミスを前に押され気味になっていた。

 

「なんなんだお前、正規パイロットでもないくせに……ただの喫茶店のマダムなのに、なんでこんなにBMの操縦が上手いんだ……?」

 

「それは……ひ・み・つ〜♫」

 

ヴァネッサはふわっとした笑みを浮かべ、アルテミスの両腕に装備されたブレードを振り下ろした。絶え間ないヴァネッサの斬撃に、アリスはエンジンドリルで耐え凌ぐことしか出来なかった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

(い、一体どうすれば……)

 

目の前で繰り広げられる3つの攻防戦を前に、指揮官がどうしていいか分からずオロオロしていると、そこへ数名のスタッフたちが駆けつけてきた。

 

「指揮官様、こっちです……!」

 

(あ、みんな……!)

 

そこにはべサニーを筆頭に、イザベラ、エレナ、リンダ、ウィオラ、コンスタンス、そしてイーディス……と、少し前に色々とお世話になった人たちが集結していた。

 

ウィオラ「早く来て、戦闘に巻き込まれるよ」

 

(うん、分かった)

 

ウィオラの言葉に従い、指揮官が彼女たちの元へたどり着くと、すかさずイーディスは反射フィールドを展開し、指揮官が戦闘の余波に巻き込まれないようにした。

べサニーは彼女の後ろに立ち、バックアップの為の小型反射シールドを準備している。

 

エレナ「指揮官殿は……!」

 

リンダ「私たちが、護る……!」

 

さらに、エレナはブラックチェーンを、リンダは魔剣を構え、流れ弾が来ないかを警戒し始めた。

 

コンスタンス「指揮官殿、お手を!」

 

ウィオラ「離さないでね」

 

イザベラ「指揮官様、お怪我は……」

 

コンスタンスとウィオラは指揮官を安全圏まで避難させる為に左右から両手を引き、さらにイザベラが指揮官を治癒する為に、ナノマシンの蝶々を飛ばした。

 

(か、過保護……)

 

まるで大統領を警護するSP達のようだった。

自身の周囲を取り巻く7人の女性たちの行動に、指揮官はありがたいものを感じつつも、どこか複雑な気分になるのだった。

 

コンスタンスとウィオラに連れられるまま、指揮官は安全圏へと避難した。そこから戦場と化した司令部付近へと振り返ると、未だ戦闘は続いていた。

 

(この後どうしよう……)

指揮官がそんなことを考えている時だった。

基地の上空に、3機のプトレマイオスタイプの大型輸送機が飛来してきた。

 

それは戦地に出撃していた部隊だった。

『スカーレット隊(仮)』の異名を持つ精鋭部隊で、ベカス・シャーナムを始めとする複数の名パイロットと、異世界の機体で構成された、まさしく最強の部隊……

 

基地へと帰還した彼らは……早速、基地の異常に気づいたのだろう。無意味な戦闘を繰り広げる女性パイロットたちを鎮圧すべく、プトレマイオス輸送機から、スカーレット隊の面々が次々とBMが降下を始めた。

 

「やれやれ、何やってんだか……」

 

それは儲けにならない事でもいちいち首を突っ込みたがる性格のベカスも同様だった。長大なビームソードを装備したウァサゴAWAKEに搭乗し、輸送機から降下を始め……空中で激しく斬り結んでいたアガレスとウァサゴGを見やった。

 

「オイお前ら、今すぐ戦闘をやめ……」

 

 

 

「「うっさい!!!」」

 

 

 

しかし、ベカスのその性格が今回ばかりは仇となった。

指揮官をめぐる戦いに水を差してしまったことにより、アマンダとセラスティアの顰蹙を買ってしまい……2人の放った砲撃が、ベカスを襲った。

 

ウァサゴGとアガレスが同時に放った高出力のビームは空中で一体化し、より高出力のエネルギー波となった。

 

「なっ!?」

 

ベカスはそれをFSフィールドで無力化しようとするも、合体ビームは予想以上の威力で、FSフィールドをあっさりと貫通……回避する間も無く、そのままウァサゴの装甲を引き裂いた。

 

「……や、やられ千葉ァ!!!」

 

ドカーン

ウァサゴAWAKEは爆発四散した。

 

 

 

(ええ……っ!?)

 

ベカスの乗るウァサゴAWAKEがあっさりと撃墜されてしまったのを目の当たりにして、指揮官は驚きを隠せなかった。

 

(べ、ベカス……どうしてこんな……)

 

「あー……主人公補正がなくなっちゃったんだねぇ」

 

(あ、シェロンいたの?)

 

「うん、ついさっき来たばかり」

 

指揮官が横を見ると、いつのまにか隣にシェロンが立っていた。状況確認を行っているのか、何やらPDA(個人用端末)を操作している。

 

(ベカス、大丈夫かな……)

 

「や、ちゃんと生きてるっぽいよ。端末に表示されてるバイタルは正常みたいだし……上の2人が手加減してたのかも?」

 

(あれで手加減……!?)

指揮官は再び、戦場へと視線を向けた。

 

黛「邪魔よ!」

 

臙脂「うふふ……(指揮官は)あげません!」

 

ベカスに続いて、戦いを止めるべく地上へと降下を始めたスカーレット隊の面々だったが、無防備な降下中を極東出身の姉妹によって狙撃され、次々と撃ち落とされていった。

 

朧「邪魔をするなァ!!!」

 

アリス「ちょっと〜、射線上に出しゃばるから〜」

 

運良く、2人の放った対空砲火をすり抜けて地上へと辿り着いた機体もいたが、それらは朧の作り出した戦闘の余波と、アリスの放った流れ弾に当たって、呆気なく撃墜されてしまった。

 

輸送機オペレーター『スカーレット隊、全滅!』

 

(……嘘ぉ!?)

こうして、複数の名パイロットと異世界の機体を擁する最強のスカーレット隊(仮)は、僅か1分にも満たない時間の間に全滅してしまうのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

しかし、スカーレット隊の面々が次々と撃墜されていく中、実は1人だけ生き残っていた者がいた。

 

「…………」

 

それはテレサだった。

ディアストーカー(略)に搭乗した彼女は、輸送機の下部ハッチから半分だけ身を乗り出し、下方向へ狙撃を仕掛けようとしていたのだが……基地の中を猛スピードで動き回る機体の動きについてこれず、さらに誤射の危険性もあったことから早々に狙撃を諦めていた。

 

代わりに、テレサの興味は別のものに向いていた。

 

テレサはEMPキャノンの照準をずらし、基地司令部から少し離れたところをライフルスコープで覗き込むと……そこには、何故か小さくなってしまった指揮官の姿があり……

 

「…………」

カシャ……シャシャシャシャシャシャ……

 

コックピット内のモニター上に表示された指揮官の姿を、テレサは無言でスクリーンショットした。しかも、連写である。

 

「…………可愛い」

 

ライフルスコープから顔を離したテレサの表情は、非常に蕩けたものになっていた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

(えっと……じゃあ、みんな無事なんだね?)

 

「うん。今、スカーレット隊全員分のバイタルを確認してるけど……うんうん、みんな余裕で生きてる。凄い生命力だねー」

 

(そっか……ならよかった)

 

撃墜されてしまった全員の無事を確認したところで、指揮官は安堵のため息を吐いた。しかし、問題はこれからだった……

 

指揮官はシェロンからPDAを借りると、撃墜されてしまったパイロットたちの救出を指揮しつつ、輸送機へ着陸を待つよう指示を送り、さらにはケガ人のための病床確保、そして被害の拡大を抑える為に防衛用のBM小隊を司令部周辺に展開させ、非戦闘員を地下シェルターへ退避させるなど、同時並行で基地のスタッフたちに向かって次々と指令を送り始めた。

 

それが一通り終わったところで、今度は未だ激戦を続けるアマンダや朧たちを止めるべく、指揮官が呼びかけを行おうとした時だった……

 

(うっ…………!?)

 

「うえ?! 指揮官どうしたの……?」

 

突然、地面に膝をついた指揮官を見て、シェロンが焦ったような声を上げた。その場にいたべサニーやウィオラたちも慌てて指揮官へと駆け寄った。

 

(か……体が熱い……)

 

「ちょっ……あ、アニキ大丈夫!?」

 

(い、いや……これはもしかして……)

 

体の内側から、血液の流れを通じて焼けるような熱さが全身を駆け巡った。痛みこそないものの、心臓が高鳴る度に、体が何かに対して拒否反応を起こしている時のように、強烈な不快感が押し寄せてくる。

 

指揮官は、この感覚に覚えがあった。

そして、指揮官はそこで意識を失った。

 

(うぅ……)

 

意識が混濁する中で、自分を心配する複数の声を耳にして、指揮官が目を覚ましたのは倒れてから数十秒後のことだった。

 

「あ、指揮官起きた……」

 

(…………ここは)

 

「あ、まだ起きない方が……」

 

(いや、大丈夫)

 

シェロンの言葉を受け流しつつ、指揮官はみんなが見ている前でゆっくりと立ち上がった。そして、いつも通りの視線の高さを感じ取り、ついに確信した。

 

(ふぅ……やっと元の姿に戻れた……)

 

薬の影響で、いつ直るとも知れなかった体の縮小が終わり、無事元の姿に戻ることが出来た指揮官は、そこで安堵のため息を吐いた。

 

(みんな、ありがとう。お陰で元の姿に戻れたよ)

 

みんな「…………」

 

指揮官は笑みを浮かべてそう告げた。

元の姿に戻ったことで、てっきりその場にいた全員が祝ってくれると思っていた指揮官だったが、すぐさまみんなの様子がどこかおかしいことに気づいた。

そのうちの数名は、どことなく視線を逸らしている。

 

「ねぇ、アニキ……」

 

(ん、どうしたのシェロン……そんなに顔を赤くして)

 

「か、隠さないの…………それ」

 

(え? 隠すって何を…………あ)

 

気まずそうな表情で、シェロンは指揮官の体の一部分を指をさした。指揮官がそれを辿ると、そこには……一糸纏わぬ姿となった自分自身がいた。

 

ふと、地面に目をやると……そこには、今まで指揮官が身につけていた洋服の破片が散乱していた。なるほど、突然体が大きくなってしまったことで洋服がはち切れてしまったのか……指揮官がそれに気づいた時には、すでに遅く……

 

(…………ッッッ!!!!)

指揮官は、露わになったそれを慌てて隠した。

 

「指揮官の、お風呂で見た時よりも……立」

 

(言わないで!!!)

 

指揮官のアレを間近で目の当たりにして、思ったことを口にしようとしたリンダを、指揮官は慌てて止めた。

 

イザベラ「…………指揮官様、最低です」

 

イーディス「は……破廉恥な!」

 

イザベラとイーディスはじっとりとした瞳で指揮官のことを見つめた。淑女らしく平静を装ってはいたものの、2人の顔はどこか赤みが増していた。

 

「指揮官にも、私と同じく尻尾が……?」

 

指揮官のそれを尻尾と勘違いしたのだろう、ウィオラは興味深そうな瞳で指揮官が隠したそれをジッと見つめていた。

 

「…………ッッッ!!!」

 

その一方で、べサニーはというと……顔を真っ赤にして瞳の奥にグルグルとしたものを浮かべ、明らかに動揺を隠しきれていない様子だった。

 

(みんな、ごめんね……ほんとに、うわああぁ……)

 

基地の片隅で、指揮官は絶叫した。

また、その様子を上空から見つめていたスカーレット隊の生き残りの1人が、コックピットの中を自らが流した鼻血で汚してしまっていた……というのは、完全に余談である。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

この後……無事に元の姿に戻った指揮官の説得と、基地に帰投した機動部隊アルファ『薔薇騎士団』及び機動部隊ベータ『十字騎士団』の活躍により、基地内で発生した指揮官を巡る暴動は鎮圧され、事態は終息した。

 

被害報告

司令部に甚大な損傷、滑走路上に大穴が開く、帰投したスカーレット隊が全滅するなど、本事案によって基地は甚大な被害を受け、また負傷者多数となった。(なれど死者は0名だった)

 

翌日、基地臨時司令・シェロン立ち会いの下で『風紀・倫理委員会』代表である五十嵐命美によって事態の把握が行われた。その結果、事案発生の張本人であるアマンダと、事態を悪化させた黛以下2名には数週間の営倉行きが言い渡されたものの、指揮官が(自分が迂闊だったのも責任があるから)と、庇い立てを行い、黛、臙脂、アリスの3名は無罪放免という形になった。

 

また、指揮官は本事案の責任を取って3名の代わりに数週間の営倉入りを希望。しかし、基地司令という立場を鑑みて、最終的に2週間の自室謹慎[テレワーク]という形に落ち着いた。

なお、指揮官が謹慎中の間は司令代理としてシェロンが選出されることとなった。

 

「なんでそうなるのさ! もうやだぁ!」

ーーーシェロン司令代理

 

最後に、結果はどうであれアマンダの魔の手から指揮官のことを護り抜くことに尽力した朧、セラスティア、ヴァネッサ、他7名はその功績を称え、後日表彰されることとなった。

 

「司令代理! いくらめんどくさいからと言って、表彰式くらいちゃんとしてください!」

ーーービアンカ(機動部隊アルファ隊員)

 

 

 

最終決定

ソロモンとの関係性を考慮して、事案発生の張本人であるアマンダには2週間の営倉行きを言い渡す。

 

また、SCP-647-ISは女性スタッフたちをそそのかして指揮官の元へ誘導し、事態を悪化させたとしてアマンダと同様に2週間の営倉行きを言い渡す。これは決定事項である。

 

「な、なんでムジナまで……」

ーーーSCP-647-IS

 

なお、本事案に使用された薬品を『SCP-053-IS』として、オスカー製薬立ち会いのもと各種実験を行うことを提案する。

ーーーSCP委員会代表

 

「いいよー」

ーーーシェロン基地司令代理




ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。
感想等ありましたらお気軽にコメントをお願いします。(どんな形であれコメントしてくれるとムジナがとっても喜びます……多分、お手柔らかにお願いします)

お話はこれで終わりですが、後日談があります。
そこでは、短めにSCP-053-ISについてのインタビュー記録と補遺が語られることとなりますので、もう少々お待ちくださいませ。

それでは、次の話ですが……
最近暑いですよね。そんなわけで、指揮官がみんなと無人島?に行ってバカンスする話を書きたいと思っています。ですが、そこでまた一悶着ありまして……って感じなのです。

乞うご期待を!
それでは、また……
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