前回は申し訳ありませんでした。
まさか3回もエラーを引き起こしてしまうなんて、本当は全てを包み隠さず描写したかったのですが、いやー……エッチな表現って中々書くの難しいのです。しかし、これも依頼主様の為、そして読んでくださる指揮官様の為に、ムジナはもう少しだけ頑張らせて頂く所存なのです。
しかし、前回の執筆を経てムジナは(アレな描写をすることに対して)ある程度の耐性を獲得することができたのです。というわけで、今後は少しアレな展開を書いたくらいではショートしないのでご安心を!なのです!
というわけで今回は機械教廷の2人なのです。
それでは、続きをどうぞ……
ややあって黛と臙脂から解放されたショタ指揮官は、機械教廷からの連絡要員が待つ、基地内の待合室へと向かった。
事前の報告では、プライドとバモフの2名が派遣される予定になっていた。どう見ても犬……もとい人外のバモフはいいとして、プライドは正真正銘の男性である為、女性を魅了する体質となってしまった今の指揮官にとっては好都合であった。
もし、機械教廷から派遣されたのが女性だった場合、黛や朧たちと同様に薬の副効果に暴露してしまう恐れがあり、そしてショタ指揮官との間で間違いでも起きてしまえば(とくにマティルダ相手だとスロカイ様の顰蹙を買いかねないので)……最悪、それは機械教廷との外交問題になりかねなかった。
だが、相手がプライドとバモフならばその可能性は限りなくゼロに近かった。特に戦闘狂のバモフにとっては、戦いのこと以外に無頓着であるが故、指揮官がどんな姿になろうとも、気にせずいつも通りに接してくれるだろうと指揮官は信じていた。そう、例え指揮官が子どもになろうが女性になろうが……
なので、さっさと連絡要員との取引を済ませて、一刻も早く元の姿に戻る方法を探そう……そう思いながら待合室のドアを開いた指揮官だったのだが……
(な、なんで……?)
待合室にプライドとバモフの姿はなかった。
その代わりに、何故かコンスタンスとウィオラの姿があった。機械教廷出身である2人は、機械の体を持つとはいえ、性別・身体的には女性である。
「……ん?」
待合室にいた2人の姿を見て、指揮官が固まってしまっていると……そんな様子に気づいたのか、椅子に座っていたコンスタンスと目が合ってしまった。
「誰だ?」
(へ、部屋を間違えました!)
首を傾げるコンスタンスに、指揮官はそう告げ、慌てて部屋から出ようとするのだが……
「おい、待て!」
その途中でコンスタンスに呼び止められてしまった。
コンスタンス
燃えるような赤い瞳と髪の毛が特徴的な女性。機械教廷の実働部隊的な立場である戦争院出身の彼女は、己の全てを機械神に捧げるため全身に機械化手術を受けており、それ故に人の身でありながら人型機と同等のパワーを持つとされていた。
(な、なに……!?)
「何故、基地内にお前のような子供がいるのだ?」
指揮官の元へと歩み寄ったコンスタンスは、顔を近づけ、怪訝そうな目つきで小さな少年のことをまじまじと見つめた。
(いや、それはその……)
「それに、どこかで見た顔だな? いや、何となく誰かに似ているような気がする……」
(き、気のせいだよ……)
疑り深く見つめるコンスタンス。指揮官は彼女たちが薬の効果を受けないように、そして自分の正体が指揮官であると気づかれないうちに部屋を去ろうとしたのだが……逃げようとする指揮官の退路を、コンスタンスの後ろから飛び出してきたウィオラが塞いだ。
ウィオラ
全身が義体化されている女性。元々は教廷騎士・ヴィノーラのムクロだったのだが、色々あって現在ではヴィノーラの元を離れて自由行動が出来るようになっている。感情の起伏が少ないことから冷たい印象を受けるが、時折見せる温かみのある表情と言動、そして尻尾にも似た神経連結装置が何よりも魅力的なお姉さんだった。
「…………」
ウィオラはその場で膝をつくと、戸惑う指揮官の両肩を掴んで向き直らせた。それから目と鼻の先まで顔を近づけ、目線を合わせて指揮官のことをジッと見つめた。
(えっと……顔に何かついてる?)
「……か」
(か?)
「……可愛い」
(え?)
次の瞬間、その場にいた他の誰かが反応するよりも早く、ウィオラは指揮官のことをぎゅっと抱きしめた。彼女の体は機械教廷独自の技術によって作られたバイオニック義体であるとはいえ、その質感と柔らかさは本物と比較しても全くと言っていいほど遜色なかった。
(う、ウィオラ……!?)
まさかこんな短時間で薬の効果を受けてしまったのだろうか? 突然の出来事に戸惑いつつも、指揮官はウィオラの腕の中で冷静にそう判断した。
「ウィオラよ、一体何をしているのだ?」
それを見ていたコンスタンスが、少しだけ驚いた表情を浮かべつつそう聞くと、それに対してウィオラは指揮官を抱きしめながら首を小さく横に振った。
「分からない」
そう言いつつも、より深く抱きしめた。
「けど、この子を見ていると、ついこうしたくなった」
「よく分からんが……まあいい、それよりも君」
(な、何かな?)
「指揮官がどこにいるか知らないか? 全く、もう既に待ち合わせの時間はとっくに過ぎているのだが…………そうだ、指揮官だ!」
ふと何かに気づいたかのように視線を向けてきたコンスタンスに、指揮官は思わずギクリとなった。
「誰かに似ていると思っていたら、お前……指揮官にとても良く似ているではないか」
「え?」
コンスタンスの言葉に、ウィオラは改めて指揮官のことをじっくりと見つめた。
「ほんとうだ……顔立ちとか雰囲気とかが、よく見たら指揮官に似てる。えっと……ということは、君は指揮官の子供ということ?」
(いや、違くて……)
「驚いたな、まさか指揮官に子供がいたとは……いや、その割には婚儀や出産の報告も聞いていないのだが」
「ということは、隠し子ということ?」
「恐らくそうだろうな。それで、指揮官と子供を作った相手は一体誰だと言うのだ? このことが教皇に知れてみろ、悲しみに暮れなければ良いのだが……」
(違うからッ!)
動戦隊アイアンサーガ
非公式イベント『機動戦隊おねショタサーガ』
第5話:ショタと尻尾と鋼の乙女
その後、指揮官はコンスタンスとウィオラに事情を説明した。
当初、あまりにも現実離れした出来事に2人は指揮官の言葉を疑うも、指揮官しか知り得ないであろう機械教廷の内情や過去に交わした個人的なやりとりなどを詳細に語っていたことから、ついに指揮官の言葉を信じる形となった。
それから、指揮官は薬の副効果である『女性を魅了する』という副効果についてもしっかりと説明を行った。指揮官の丁寧な説明もあって、2人はある程度の理解を示してはくれたのだが……
数分後……
会議室
場所を変えた3人が訪れたのは、基地の中にある会議室だった。今、指揮官とコンスタンスはお互いに距離を取って椅子に座り、対面で話し合いをしている。
いくら薬の効果があるとはいえ、基地と機械教廷を繋ぐ大事な会議であるため中止する訳にはいかず、一応、影響を受けないよう最低限の措置として椅子を離して距離を取っている。
その一方で、ウィオラはというと……
「〜♪」
(あの……ウィオラ?)
「何かしら?」
(そろそろ離して欲しいんだけど……)
「ううん、もう少しこのままでいさせて」
コンスタンスと会議をしている一方で、ウィオラは小さな指揮官を膝の上に乗せていた。しかも、後ろから大事そうに抱きしめているものだから、その大きな双丘が背中に当たってしまい、指揮官を大いに困らせていた。
(あ、当たってるんだけど……)
「ん? 何が当たってるって?」
(それはその……いや、何でもない)
恐らく、指揮官の姿を至近距離から注視してしまったことにより薬の効果に暴露してしまったのだろう。ウィオラはいつもの冷たいものではなく、とても温かみのある顔つきになっていた。
まさか、機械の体を持つ女性にも効果があるなんて……指揮官は自分が飲んでしまった薬の持つ、その影響範囲の広さに心の中で驚いていた。
「君の体は、私の体とは違ってとても温かいんだね。そっか、これが教皇様の言っていた凡人の温もりなんだね……」
そう言いつつ、ウィオラは指揮官の匂いを嗅ぐ
「冷たい機械の体にはない君の体温、肌の質感、柔らかさ、そして匂い……どれも私にとっては初体験の感覚だ。そして、何故だろう……君とこうしていると体の内側が熱くなってくるようで、いや不快ではないよ。寧ろ、可能であればずっとこのままでいたいくらいで……なるほど、これが『心地よい』という感覚なんだね」
しみじみとした様子のウィオラに、指揮官は心理的なくすぐったさを感じていた。
「ねえ、君?」
すると、ウィオラが指揮官の耳元に囁いてきた。
「私の体、どうかな?」
(ど、どうって……何が?)
「いや、凡人たちはこのように抱きしめることで他人へ愛情を示すものだと、書籍にはそう記述されていた。また、神経伝達物質の一つであるエンドルフィンと呼ばれる脳内物質の働きにより、凡人たちはリラックスをすることができるそうなの」
本が好きだと語る彼女は、書籍から得た知識を引っ張り出して語り始めた。
「さらにオキシトシンというホルモンが分泌され、凡人は幸福感や安心感に包まれて気持ちよくなれるそうだ。君はどうかな? 気持ちよくなるための脳内物質は分泌されているだろうか」
それはどちらかと言うと、抱きしめた時の話ではなかっただろうか? 指揮官はそう思いつつも、脳内物質が出ているかどうかは分からないが、少なくとも心地よさは感じていることを彼女に伝えた。
「そっか、ならよかった」
すると、ウィオラは小さく笑った。
「実を言うと、冷たい機械の体で君のことを抱きしめても良いのか心配だったの。ほら、教皇様とは違って私は全身が義体だから……凡人たちの言う、普通ではない体に違和感や嫌悪感を覚えているんじゃないかって、ね」
(ああ、それでさっきは『私の体はどう?』なんて聞いたんだ)
「そういうこと。でも、君は私の体を拒もうとせず、心地良いって言ってくれたから……嬉しいなって思って。だから、私の体でもっと気持ちよくなって欲しい」
そう言ってウィオラは指揮官の髪に顔を埋めた。
(その言い方はちょっと……)
何気なく発せられたウィオラの問題発言に指揮官が少しだけ戸惑っていると……
「おい、指揮官。話を聞いているのか?」
指揮官の前に座っていたコンスタンスが怪訝そうな目で、ウィオラの膝の上に座る指揮官を見つめていた。
(あ、ごめんね。えっと……N3地区の採掘場の視察に関する話だっけ?)
「いや、それはもう終わった。今は紅石の輸送に関する話だ…………まったく」
コンスタンスは苛立たしげにウィオラを見つめた。
「おいウィオラ、これでは指揮官が話し合いに集中出来ないではないか。さっさと指揮官のことを離してやれ」
「いやよ」
「そうしないと話し合いがだな……そもそも先程から、お前が後ろから指揮官に話しかけているのが問題なのだ。さあ、さっさと指揮官の身柄を解放して……」
「いや、指揮官君のことは渡さない!」
指揮官との会議に集中したいコンスタンスだったが、それに対してウィオラは何を勘違いしたのか指揮官の体をさらに強く抱きしめた。
「お前、何を言って……」
「そう言って私から指揮官君を奪うつもりなんでしょう? 指揮官君がこんなに可愛いからって、そうはさせないわ!」
そう言うウィオラの体からは、指揮官への熱い感情を表すピンク色のオーラが放たれているかのようだった。
「チッ……いったい何なのだ!?」
(ご、ごめんね……)
怒り気味に舌打ちをするコンスタンスの気を少しでも紛らわせようと、指揮官はひとまず話題を変えることにした。
(そういえばバモフとプライドはどうしたの? 今日は2人が来るっていう話だった筈だけど?)
「うん? ああ、それがだな……」
指揮官が教廷騎士2人について尋ねると、コンスタンスはそこで深々とため息を吐いた。
(2人の身に何かあったの?)
「あったというか、何と言えばいいのか分からないが、とにかく両名とも命に別状はないから安心して欲しい…………いや」
そこまで言って、コンスタンスは慌てて発言を取り消した。
「少し表現が過剰過ぎた。プライド卿は急遽別件の用事が入っていて立て込んでいるだけで、これといって特に問題はない……ただ、バモフ卿は昨日から酷い腹痛で寝込んでいるそうでな」
(腹痛? 何か変なものでも食べたの?)
「実は、そうなのだ。キジカクシ目、ヒガンバナ科、ネギ亜科、ネギ属……いわゆる、タマネギをだな……」
(食べたの!? タマネギを!?)
「……そうなのだ」
コンスタンスは気まずそうに頷いた。
健康に良いとされ、様々な料理に使われる食材であるタマネギだが、その反面、有毒成分を含んでいるという怖い一面を持っていた。
人間は食べても特に問題はないのだが、犬や猫はその有毒成分を分解できる消化酵素を持っておらず、下痢や嘔吐などを引き起こし(さらに言うと赤血球を破壊し)最悪の場合、死に至る危険性があった。
因みに、加熱や乾燥など加工されたものであっても駄目らしく、さらにタマネギだけではなくニラやネギ、ニンニクにも同様の成分が含まれているとの事だった。
(なんで食べたし!)
指揮官は思わず声を上げた。
(というか、バモフに食事は必要ないんじゃ……)
「それがだな、バモフ卿は自分は犬ではなくライオンであることを証明する為にタマネギを口にしたそうだ。それも、3つほど……その結果がこのザマだ」
(えぇ……というか、どっちにしろダメだから!)
バモフが犬にしろネコ科のライオンだったとしても、タマネギが有毒であることには変わりなかった。
「それで、バモフ卿にタマネギのことを伝えたのが他ならぬ……」
(まさか……ウィオラだったと?)
コンスタンスの視線を辿って、背後のウィオラへと行き着くことに気づいた指揮官は、心の底から脱力した。
「だって……この前、指揮官君がくれた料理本のコラムにタマネギのことについて載ってたから、どんな感じになるのか試してみたくなって……つい」
(あのね……)
「それで、今日私がここに来たのはバモフ卿にしたことの責任を取れっていうことだったのだけど……でもこうして、ちっちゃな可愛い指揮官君と出会うことができたから、今思えば正解だったなって思うぞ!」
(いや、間違ってるから!)
バモフに対して悪びれるでもなく、茶目っ気たっぷりな様子でウィオラはそう告げた。普段の彼女からは想像もつかないそんな様子に、指揮官は彼女が確実に薬の影響を受けているのだろうと判断した。
「ねえねえ! 凡人たちの言葉を使うと、これって運命なんじゃないかな?」
(何でそうなるの……?)
「この運命を祝して、指揮官君とやってみたいことがあるの」
(話を聞いて……)
「ねえ指揮官君……」
(……だから何?)
「交尾しよ?」
(うん、まあそれくらいなら……………………は?)
次の瞬間、ウィオラの口から飛び出してきた衝撃的な言葉に、指揮官は言葉を失った。あまりの唐突な申し出に、これには例の[削除済み]の展開も間に合わなかった。
(えっと……ウィオラさん?)
「何かしら?」
(自分が何を言っているのか、理解してますか?)
「ええ! 勿論よ。私は指揮官君と[なけなしの削除済み]して、指揮官君との子どもを作りたいの!」
647[ちょっと待って一回落ち着こう]
「モグラだって、オケラだって、アメンボだって。交尾くらい、みんなやってることでしょ? 」
(いや、それはそうかもしれないけど……というか、何でその3匹を例に挙げたの?)
[アメンボは成虫じゃないので無理です]
しかし、そんなツッコミをする余裕はなかった。
(ほ、本気で言ってる……!?)
「私は至って真面目よ。とはいえ、私のこの身体に子作りをする機能はないから……その代わりに」
そう言ってウィオラは、彼女が神経連結装置と呼んでいる尻臀の付け根部分から伸びる黒い尻尾を動かして自分の前に持ってくると、その先端を指揮官の身体に這わせ始めた。
「えっと、どこにしようかな……」
巻きついた尻尾が指揮官の体を進み、徐々に上へ上へと上り詰めていく。たまに鋭く尖った尻尾の先端が指揮官の皮膚に触れ、その場所にチクチクとした痛みが生じる。
(な、何してるの?)
「やっぱりここかな」
やがて胸元を伝い、身体に巻きついた尻尾が指揮官の顔の位置まで来ると、ウィオラは尻尾を操って先端のチクチクを指揮官の口元に触れさせた。
「指揮官君、お口を開けて」
(えっと……)
「早く」
(はい……)
言われるがまま指揮官が口を開くと、ウィオラは指揮官の口腔内にゆっくり尻尾を押し込み始めた。
「あ、あんまり動かないでね。私、こういう事するの初めてだから……それに、先端が尖っているから指揮官君の口に傷をつけてしまうかもしれないし……」
……本当に何がしたいの?
声の出せない中、ウィオラの震える声と共に、徐々に口腔内へと侵入してくる尻尾に指揮官が戸惑っていると、指揮官の舌と尻尾の先端が艶めかしく触れ合った。
「んんっ……!」///
次の瞬間、ウィオラの口から官能的な悲鳴が発せられた。
(……っ!?)
そんなウィオラの様子を指揮官が不審に思っていると、彼女は指揮官の頭を優しく撫で、耳元にか細い吐息を吹きかけていた。
「驚かせてごめんね……少し、くすぐったくって」
ウィオラは赤く染まった頰を指揮官の耳元に触れさせ、そう囁きかけた。
「私の身体はバイオニック義体……外の世界、凡人の情報を収集するためのものだから、出来る限り人間の身体に似せて作られてはいるけど……しっぽの部分だけはちょっと違っていてね。神経連結装置になっているから敏感で、触れたものの感触が私の感覚器官に直接フィードバックされるの……」
彼女の熱い吐息が指揮官の耳に届く度に、指揮官は胸の高鳴りが大きくなっていくのを感じた。
「だけど、それだけじゃなくてね……しっぽで指揮官君の唾液から遺伝子情報を読み取って、私の身体の中に記録することができるの……」
(そ、それって……)
「そう。あとは読み取った遺伝子情報を他の義体に移動させて反映することが出来れば、それは私と指揮官君の子どもになれる。これが私なりの……交尾」
そう語るウィオラは、どこか寂しそうだった。
「この身体では大好きな指揮官君の子どもは産んであげられないけど、一時的な依り代になることは出来る……だから、指揮官君の唾液を……指揮官君の遺伝子を私の中に、もっと頂戴……っ!」
(…………)
かつてムクロになる以前のウィオラがどのような人物であったのかを指揮官は知らない。しかし、健気ささえ感じられる彼女の言葉は指揮官の心を強く揺さぶった。
「あぁ……指揮官君が私の尻尾をたくさん舐めてくれている……今、そなたの情報が私の神経と直接繋がって、まるで身も心も1つになっているみたい……」
(…………)
「そっか……これが交尾なんだね。愛する者の子どもを作るという神聖な行為……でも、まだ足りない……指揮官君、私のしっぽをもっと舐めて?」
(…………)
その場の空気に流され、ついウィオラの尻尾を舐めることに夢中になっていた指揮官だったが……
「おい、いい加減にしろ!」
(……っ!!)
「……あ…………」
会議室の中に響き渡ったコンスタンスの声に、2人はびくりと体を震わせた。その声は激しい怒りで満ちていた。
「今は指揮官と教廷を繋ぐ大事な話し合いの最中だというのに、2人して何をやっているか!」
コンスタンスの言葉に指揮官はハッとなった。
そして、ついその場の空気に流されてしまったことを反省し、素直に謝罪しようとするも、尻尾で口を塞がれてしまっているので声を出すことが出来ず……
「ぁあん、そんなに怒らないでよ」
しかし、ウィオラは全く悪びれもせずにそう告げた。
「今は指揮官君との大事な子作りの最中だから……」
「それはこの会議よりも重要なのことなのか!?」
「ええ。だってそうじゃないの!」
「ふざけるのも大概にしろ!」
コンスタンスは額に大きな青筋を浮かべ……そしてついに我慢出来なくなったのか、椅子から立ち上がって両肩部の武装を装着すると、臨戦態勢に入った。
「いい加減、指揮官を離さないか!」
そう言ってコンスタンスはウィオラから指揮官を引き剥がすべく、漆黒のアームを用いてウィオラへと掴みかかった。
(い、痛い痛い……!?)
「そ、それはダメっ!」
戦闘兵器であるコンスタンスのパワーは圧倒的で、深く絡み合ったはずの指揮官とウィオラの体が徐々に引き剥がされてゆく……しかし、それでもウィオラは大好きな指揮官のことを離すまいと、必死な抵抗をみせた。
「コンスタンス、あなたに指揮官君を渡すわけにはいかないわ! あなたは常日頃から紙巻き煙草を吸っている。指揮官君がくれた書籍によると、受動喫煙が子どもに与える悪影響は……」
「知るかッッッ!」
そして、ついにその時が訪れた。
「ああっ!?」
コンスタンスはウィオラの体から指揮官を引き剥がすことに成功した。しかし、指揮官の身体に巻きついていた尻尾はそのままだったため、ウィオラは前に引き倒される形となり……
「な!?」
(うわぁ!)
指揮官のことを奪還したコンスタンスだったが、そこへウィオラが倒れ込むことにより予想していた以上の重量が加わって、急な出来事にコンスタンスはバランスを保つことができず……結果、3人はもつれ込むような形で転倒した。
「痛たた……2人とも、大丈夫?」
先に起き上がったのはウィオラだった。
(な、何とか……)
コンスタンスに引っ張られ、顔から床に転倒しかけた指揮官だったが、何か柔らかいものがクッションになってくれたため、怪我をすることだけは免れていた。
だが、この時……怪我をするよりももっと恐ろしい事態が起きていた。
(え……?)
指揮官は自分の顔を包み込む、クッションになってくれたものを見つめた。黒い布地のそれは、指揮官の顔がすっぽりと収まってしまうほどの大きな凹凸になっており、しかも俄かに暖かく、そして居心地の良い弾力があった。
そして、指揮官はその感触に見覚えがあった。
「指揮官……?」
自分のすぐ上の方からコンスタンスの声が聞こえてくることに気づいた指揮官は、すぐさま黒い布地から顔を上げた。
そして、全てを理解した。
指揮官は今、仰向けに転倒したコンスタンスの胸の谷間に顔を埋めている状態となっており、しかも、その両手は彼女の大きな双丘を鷲掴みしてしまっていた。
[伝説のラッキースカブなのです!]
コンスタンスは機械の体を持つとはいえ、そこは機械教廷のこだわりなのだろう……彼女の持つ女性の象徴とも呼べる部分は、とても柔らかかった。
「何を、している……」
次の瞬間、コンスタンスと目が合った。
慌ててコンスタンスの体から手を離そうとした指揮官だったが、それよりも早くコンスタンスの漆黒のアームが指揮官の体を掴んだ。
あ、これ終わった……
コンスタンスの持つスキル・瞬殺により、自分の命が失われてしまうことを想像した指揮官は、次に来る衝撃に備えて目を瞑った。
(…………?)
しかし、いくら時間が経過しても自分を襲う衝撃も痛みも何もないことに気づいた指揮官は、恐る恐る目を開けた。
「怪我はないか、指揮官よ」
(え……)
「そうか、ならば良かった」
先ほどまでの怒りに満ちた表情は何処へやら、そこにはウィオラと同じく温かみのある表情を浮かべたコンスタンスの姿があった。
しかも、いつのまにか漆黒のアームはパージされ、コンスタンスは人間らしい細い腕を使って指揮官の体を優しく抱きしめていた。
(コンスタンス、その……ごめんね)
「指揮官よ、何を謝る? むしろ悪いのはこちらの方だ……何も考えずに無理矢理あなたのことを引き剥がしてしまい、すまなかったと思っている」
(いや、そんなことは……)
「それで、1つ聞きたいのだが……」
(な、何かな?)
「さっきからずっと触っているのだが……もしや、指揮官は私の胸に興味があるのか?」
(あ……ご、ごめん!)
指揮官はそこで、まだ自分がコンスタンスの胸を掴み続けていることに気づき、慌てて手を離そうとするも……そこで、コンスタンスに両腕を掴まれて止められた。
「いや、いいのだ。決してあなたに触られるのが嫌だとか、そういう意味で言ったのではないのだ!」
そう告げたコンスタンスの表情は……驚くべきことに、頰を赤く染めていた。それも、まるで恋する乙女のように
「ただ、指揮官がこうしてくれていると……あなたに求められているような気がして、何故だろうな、それが私にはとても嬉しく感じられてしまって……」
これは……?
未だ嘗て誰も見たことのないであろうコンスタンスの様子に、指揮官は最悪の事態を想定して震えた。
そう。指揮官と間近で触れ合ってしまった事により、コンスタンスは『女性を魅了する』という薬の効果にあえなく暴露してしまっていた。
その結果、冷徹な機械兵器だったコンスタンスは、今や……指揮官に恋する鋼の乙女になってしまっていた。
「こんな気持ちは初めてだ。身も心も、全てを機械神に捧げた筈の私に、まだこのような心があったとは……」
(お、落ち着いて……さっき説明した通り、それはあくまでも薬の効果によるものだと思うから……)
「そうか。私がずっと人間の姿をしていたのは、いつかあなたと出会うためだけではなく……あなたにこの身を捧げ、添い遂げるためだったのかもしれないな」
(早まらないで!)
「指揮官、どうかこの私と1つになり、いずれは子を成すことで機械神への信仰を形作り、そして親子共々、機械教廷を支え続けて行こうではないか!」
(な、何でそうなる……っ!?)
あっけなく堕ちてしまったコンスタンスに求婚され、指揮官が戸惑っていると……
「ダメ! 指揮官との子どもを作るのは私!」
指揮官を引き剥がすべく、今度はウィオラがコンスタンスへと掴みかかった。
「む? ああ、ならば2人で指揮官の子どもを作れば問題はあるまい。むしろ、教廷の行く末を担うための繁殖活動であるならば、きっと機械神もお喜びになられる筈だ!」
「成る程、それはいい考えね!」
そうして、意気投合した2人は1人の少年を取り合うのをやめて、何かを期待するような熱い視線を指揮官に向けた。
(せ、戦略的撤退ッッッ!!!)
全てを察した指揮官は己にブーストをかけ、トランザム並みの素早い動きで立ち上がると、そのまま部屋の出入り口めがけて脱兎の如く駆け出し……そのまま会議室から飛び出して行った。
「あっ! 逃げた!」
「待たれよ! 指揮官!」
背後に2人の声を聞きつつも、指揮官は一度も振り返ることなく廊下を駆け抜けた。その途中、何名かの職員とすれ違ったのだが、いちいち気にしてはいられなかった。
(もうダメだ、本当に……!)
このままでは全ての女性スタッフが薬の影響を受けておかしくなってしまう。一刻も早く、薬の効果を取り除かねば……そう考えた指揮官は、薬の分析を依頼したセラスティアの元へと急ぐのだった。
しかし、この基地が誇る天才・セラスティアなら何とかしてくれるだろう……1人の少女に一縷の望みをかけ、指揮官は基地の中を駆け抜けた。
果たして、指揮官の願いは叶うのだろうか?
指揮官の受難はまだまだ続く……
プライドの用事→に◯さんじのオーディション
文中で前半で「子供」と書いていたのが、後半で「子ども」へとシフトしてますが、これは仕様です。統一していないことに特に深い意味はありませんが……ないわけじゃないです。
ここまで書いて、怒られないか心配ではありますが……
まあまあまあ
というわけで、次回は青い髪の毛のあの子との物語です。
ただし、天才ちゃんの方ではありませんが
それでは、また……