機動戦隊おねショタサーガ   作:野生のムジナは語彙力がない

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お帰りなさい! 指揮官様!

というわけで、某天才ちゃんの話です。
あと、ここまで色々とアレな話を書いてきたので、ムジナは吹っ切れました。エロスに耐性がついてきたので、もう[削除済み]に逃げたりはしないのです!

なので、最大級のイチャイチャをですね……

まあまあまあ、
それでは、続きをどうぞ……


第7話:ショタとキスと天才ちゃん

イザベラの元で十分な休憩を取ってから数十分後……依然として、黛やコンスタンスなどの女性たちから追われる身となっている指揮官は、たっぷりと時間をかけてセラスティアの待つ研究ラボへと足を運んでいた。

 

(ふぅ……この体にも少しは慣れてきたかな)

 

研究ラボへと通じる一本道に辿り着いたところで、指揮官は周囲を見回しつつそんな事を呟いた。幼い体となってしまった当初は視界の低さになかなか慣れず、さらに体のバランスも変わっていることから転倒を繰り返し、歩いて移動するだけでも四苦八苦していた指揮官だったが、慣れてみると驚くほど体が軽く、大人だった頃の自分以上に速く走れるような感覚を持つまでになっていた。

 

かといって、元の姿に戻りたくないというわけではないが……そんな事を考えつつ、指揮官は通路を進み、真っ直ぐセラスティアの研究ラボの前へと向かった。

 

(セラスティア、いる?)

 

扉をノックしてそう告げると、指揮官の声に対応した認証システムが作動し、扉にかけられたロックが解除される。

 

研究ラボの内部は暗闇に包まれていた。

照明の一切は電源が入っておらず、あるのは天井に取り付けられた監視カメラから発せられるセンサーの赤い光と、ラボの奥から滲み出る青い輝きだけだった。

 

(セラスティア、入るよ?)

 

静まり返ったラボの中を覗き込み、部屋の主人へと呼びかけるも、彼女からの反応はなかった。何やら怪しい気配を感じつつも、仕方なく、指揮官は部屋の中へと足を踏み出すことにした。

 

自動扉が閉まり、ラボの中の深淵がより強くなる。指揮官は光に誘われる虫のように、目の前にチラつく青い輝きを目指して室内を移動し、淵から薄い光の漏れている扉を開けた。

 

(なんだ、いるじゃないか……)

 

扉を開けた先の部屋に、彼女の姿を見とめて指揮官はホッと胸を撫で下ろした。高級そうなブラックのオフィスチェアに腰を下ろし、扉側に背を向けた状態で、青い輝きを放つ無数の空間投影型モニターを前にしている。

 

カチカチというマウスのクリック音が響き渡る度に、彼女の持つ青いツインテールの髪の毛がゆらゆらと揺れている。

 

(セラスティア)

 

「…………」

 

扉の前に立った指揮官は、そこでセラスティアへと呼びかけるも……しかし、彼女からの反応はなかった。

 

(セラスティア……?)

 

「…………」

 

(おーい)

 

「……ッ」

 

少しトーンを上げて呼びかけると、セラスティアはピクリと反応して僅かに指揮官へと振り返った。

 

「あ…………指揮官」

 

部屋の中が薄暗いこともあって、指揮官のいる部屋の入口からでは、モニターから放たれる青い輝きを受けた彼女の表情はハッキリとは見えなかった。

 

「来たんだ」

 

(うん、遅れてごめんね)

 

「いいのよ、別に……」

 

(……セラスティア、大丈夫?)

 

セラスティアの声色にいつもの覇気がない事に気づいた指揮官は、彼女の身を気遣ってそう尋ねた。

 

「大丈夫って、何が?」

 

(なんか、元気がないみたいだけど……)

 

「あー……ごめん、ちょっと寝不足なだけ」

 

(そう? ならいいけど……)

 

モニターへと向き直った彼女のことを気遣いつつも、まさかセラスティアも薬の副効果を受けてしまったんじゃ……と、指揮官は最悪の事態を想定した。

 

しかし、薬の効果に暴露してしまった他の女性スタッフたちとは違い、距離を取ってなるべく姿を見られないように立ち回っていることから、それはないと思い直すことにした。

 

(それで、分析の結果は……)

 

「……出来てるわよ。ちょっと待ってて」

 

そう言ってセラスティアは手元のコンソールを操作し、空間投影型モニターのいくつかに文字がびっしりタイプされた文書やら、例の瓶の映像やら、何かのグラフの映像などを表示させた。

 

「瓶の底に残ったサンプルを成分分析にかけてみたわ。結果は、成分の約90パーセントはごく普通の栄養剤に含まれているものと同じだった……」

 

モニターに映るグラフを指差し、セラスティアは続ける。

 

「でも、あとの10パーセントが分からなかった。言わば、未知の成分が検出されたってことね」

 

(じゃあ、それが……)

 

「そうそう。それが指揮官の体を縮ませたことと、女性を虜にしちゃうっていう体質にした原因物質であるという可能性は、状況的に見て極めて高いと言えるわ」

 

そこまで言って、セラスティアは深く息を吐いた。それも、ただの深呼吸ではなく、まるで体の内側から出てくる辛いものを堪えようとする時のような息遣いだった。

 

(セラスティア……)

 

「うん?」

 

(本当に大丈夫?)

 

「……何でもないわよ。それで、これを解析する事が出来れば『幼児退行』と女性を魅了するっていう『特異な体質』……その2つの効果を打ち消すことの出来る、特効薬が作れるかもしれないわね」

 

(おお! それは吉報だね)

 

セラスティアの活躍によって、元の姿に戻れるかもしれないという希望が導き出されたことに、指揮官は歓喜した。

 

「喜ぶにはまだ早いと思うわよ? あくまでも可能性があるってだけで……そもそも成分の分析はいいとして、それに対抗する薬を作るのは時間がかかるんだから」

 

(あ、そういうものなの……?)

 

「当たり前じゃないの。この世に星の数ほど存在する物質の中から、病気とかに対処可能なものを探して、それらを組み合わせる。さらにそこから人体への親和性や有効性、代謝安定性を高めるなりして最適化を行う。それらのプロセスを経て、例え薬が出来たとしても人体への悪影響も考慮しつつ、いくつもの臨床試験を重ねる必要があるし……ん、これは世間一般の創薬のやり方だから、医療機関を通さなければそんなに重く考えなくてもいっか。それに、臨床試験って言ったって、今のところ実例は指揮官1人だけだし……」

 

(なるほど……色々と、大変なんだね)

 

「そうそう。ものによりけりだけど、1つの新薬を作るのには数年単位で時間がかかることも珍しくないみたいで、ヘタをすれば開発が打ち切りになることもあるらしいわよ?」

 

(す、数年単位……!?)

 

では、特効薬が開発される数年後まで、自分はずっとこの状態なのだろうか……? 基地の運営とかどうしよう……指揮官がそう思って愕然としたものを感じていると、そんな気配を悟ったのか、セラスティアは振り返ることなく小さく笑った。

 

「別に、特効薬なんて作らなくても……」

 

その時、セラスティアの口からそんな呟きが漏れた。

 

(え? 今なんて……)

 

「な、何でもないわよ! ただ……ここじゃ、成分の分析とかは出来ても、創薬は無理って言いたかっただけ! だって必要な機材とか道具とか材料とかが無いんだから!」

 

セラスティアは少し慌てたようにしながら、言葉を続けた。

 

「それに、もし仮に指揮官の身に起きている異常が何らかの薬の作用によるものだとしたら、いずれ薬の効果は切れるかもしれないわね? ああ、これを半減期って言ってね。血中に含まれる薬の成分が尿や発汗などを通して体の外に出てしまうことで、基本的に薬っていうものはそんな感じで効力が失われるまでの期間があるものだから、そんなに焦らなくてもいいと思うわよ?」

 

(へー、そうなんだ)

 

「ただし、体の構造の変化が某少年探偵みたいに永続しなければの話だけど。とにかくオスカー製薬……正式名称なんだっけ? まあいいや、あの会社の作ったTGM(性転換薬)と症状が似てるっぽいから何とかなるでしょ」

 

TGM(トランス・ジェンダー・メディスン)その名の通り、男性を女性に、女性を男性に変化させる薬の事である。その効果は一時的で、服用後1週間以内に元の姿に戻る。

 

(アレと似てるってそんな……や、アレも確かに喉仏とか骨格とか色々変わっているから似てなくもない……のかな?)

 

指揮官が苦笑いを浮かべていると、

「ふぅぅぅぅ……」

またしても、セラスティアは大きく息を吐いた。

 

(セラスティア?)

 

「何よ?」

 

(疲れてる?)

 

「別にいいじゃない、溜息くらい……」

 

(いや、それはいいんだけど……)

 

「ふぁぁ……もう限界かも」

 

セラスティアはとても脱力したような様子で、デスクの上に肘をつき、何やら両手で顔を抑えた。

 

(セラスティア、色々と教えてくれてありがと)

 

「うん、どういたしまして……」

 

(それじゃあ、もう行くね)

 

「え……? どこ行くの……?」

 

セラスティアはハッとした様子で顔を上げた。

 

(いや、だってもう用は済んだでしょ? セラスティアも疲れてるみたいだし、今日はゆっくり休んで……)

 

「い、行かないで……!」

 

扉の先にいるセラスティアへ声をかけ、立ち去ろうとした指揮官だったが、背後から聞こえてきたセラスティアの叫びにも似たその声に、思わず足を止めた。

 

(ど、どうしたの……?)

 

「あ……そ、その……」

 

扉付近にいる指揮官の位置からでは、振り返ったセラスティアの表情はよく見えなかった。だが、彼女が妙にしどろもどろとした様子で言葉を探している気配は感じられた。

 

「はぁ…………ねぇ、指揮官。ちょっと確認して欲しいことがあるんだけど」

 

(えっと、何かな……?)

 

セラスティアが他の皆と同じく薬の影響を受けてしまわないよう、少し離れた扉の位置でそう聞き返した指揮官だったが、セラスティアは首を横に振った。

 

「言葉で説明するよりも、直接見てもらった方が早いから……こっちに来て」

 

(そう? いいけど、あんまり顔を見ないようにしてね)

 

モニターの前に誘われ、仕方なく、指揮官は部屋の中へと踏み出した。そして、指揮官がモニターに映し出されたそれを見ようとセラスティアの直ぐ後ろに来た時……

 

 

 

カチャリ……

 

 

 

(…………?)

 

突然、背後から聞こえてきた物音に指揮官が振り返ると……開けっ放しだったはずの部屋の扉が、ひとりでに閉じてしまっていた。しかも、立て続けに鳴り響いた小さな金属音……

 

(……セラスティア?)

 

……扉に鍵をかけられた? 突然のホラーゲームにありがちな展開に、指揮官がセラスティアへと振り返った……その瞬間

 

「…………っ!」

 

(……うわっ!?)

 

次の瞬間、なだれかかってきたセラスティアによって、指揮官は床の上に押し倒されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊おねショタサーガ

第7話:ショタとキスと天才ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

平時ならまだしも、小さな子どもの体では少女1人の力すらまともに押し返すことができず、指揮官は床の上に仰向けの状態となってしまった。

 

(せ、セラスティア……!?)

 

驚いたのも束の間、セラスティアはその上に馬乗りとなり、壁ドンならぬ床ドンをして目と鼻の先まで顔を近づけた。

 

そして指揮官は、にわかに赤く……いや、今まさに爆発しそうになっていると思われるほど、頰を紅潮させた彼女の姿を目撃することとなった。

 

(ま、まさか……)

 

セラスティアは薬の効果を受けてしまっていた。

甘々な表情で見下ろされ、指揮官は胸の高鳴りを感じつつも、平静を保つためにどうしてこうなってしまったのかを心の中で考え始めた。

 

これまでの経験則から、指揮官は薬の異常性に暴露する要因として、そのキャリアになっている自分自身と女性が直接的に接触してしまうことと、自分の顔を至近距離から直視してしまうことが条件だと考えていた。

 

しかし、セラスティアの場合ではそのどちらも当てはまらなかった。一度、薬の異常性が明らかとなった初期の段階で、朧と共に彼女の元を訪れた際に、僅か一瞬ではあるが顔を見られはしたものの、周囲が薄暗く距離も遠かったため、その段階ではセラスティアはまだ薬の異常性に暴露していないと推測できた。

 

では、いったいどこで……

指揮官がそこまで考えた時だった。

 

「ねぇ……これ、なに?」

 

そう言ってセラスティアは端末を取り出すと、その画面を指揮官へ向けた。

 

(……っ!?)

そこに流れている映像を見て、指揮官は言葉を失った。それは、密室の中で指揮官が朧の豊満な胸を揉みしだいている映像だった。

 

(な、なんで……)

 

「まだまだあるわよ?」

 

セラスティアが画面を切り替えると、次に映ったのは食堂でアリスと延々抱きしめ合っている映像だった。

 

(これも見てたの!?)

 

「まだよ!」

 

セラスティアはさらに画面を切り替える。すると、扇情的な衣装に身を包んだ臙脂と黛に両側から挟まれて、赤面する指揮官の姿が映し出された。

 

(うわぁぁぁぁぁ!!!!)

 

まさか監視カメラで見られていたとは……!

画面上に映る自身の痴態に、指揮官は絶叫した。

 

「私が部屋にこもって薬の分析で忙しくしてたっていうのに、いいご身分ねぇ……これなんか、おっきな胸に囲まれて思いっきり鼻の下伸ばしまくってるじゃないの」

 

(い、言わないで……)

 

どうやらカメラ映像越しでも、女性を魅了する効果は広がってしまうようだった。

 

不可抗力だったとはいえ、指揮官は第三者目線で見る自分の姿に情けなさを感じた。自分で見てこうなのだから、セラスティアにしてみればさぞや幻滅したことだろう……

 

しかし、薬の異常性に暴露してしまったセラスティアは指揮官に対して幻滅するどころか、むしろその逆だったようで……

 

「私だって、指揮官とイチャイチャしたいのに!」

 

(…………あ、結局こうなるのね)

 

想いの内を訴えたセラスティアに、指揮官は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「か、感謝しなさいよね! 徹夜明けですっごく眠かったんだけど、指揮官の為を思って、頑張って薬の解析をしてあげたんだからね!」

 

恥じらい気味に、セラスティアは続ける。

 

「だ、だから……お礼くらい、しなさいよ……」

 

(……お礼? えっと……どうすればいいの?)

 

「……じゃあ、他のみんなにしてたこと、私にもしなさいよ」

 

(……みんなにしてたこと?)

 

胸を揉んだり、抱きしめたり、脚を触ったり……心当たりが多過ぎたこともあり、指揮官はセラスティアが何を求めているのかイマイチよく分からなかった。

 

「もう! 察しが悪いんだから!」

 

(ご、ごめんね……)

 

「悪いと思ってるんだったら! さっさと………………し、しなさいよ……」

 

セラスティアは必死な様子でそれを伝えようとするが、しかし重要なところで恥じらいの心を抱いたのか、聞き取れないほど声のトーンが小さくなってしまう。

 

(するって、何を……)

 

「だから…………キ…………キ…………」

 

(き?)

 

「…………キス……し、しなさいよ」

 

(ああ……なんだ)

 

てっきり、アレな意味でもっと凄いことを要求されるのだと思っていた指揮官は、セラスティアの言葉に安堵の溜息を吐いた。

 

これまで、服越しどころか直接胸の谷間に顔を埋めさせられたり、濃厚な口移しをさせられたりと、ハードな展開が多かったこともあって感覚が麻痺してしまい、最早キス程度ではあまり驚かなくなってしまっていた。

 

「はあぁ!? な、『なんだ』って何よ!」

 

だが、指揮官の薄い反応がセラスティアの怒りを買った。

 

「さては、キスくらい適当に終わらせてさっさと帰ろうっていう魂胆ね!?」

 

(え……い、いやそんなことは……)

 

「逃げようったってそうはいかないわよ! 無理やり働かされて、色々と我慢させられた分、キス以外にもあんたには体でたっぷり支払ってもらうんだから! あんたに拒否権なんてないんだから!」

 

セラスティアは逃げられないよう股の間で指揮官の体を挟み込み、指揮官の上に四つん這いの姿勢になった。そして、指揮官の頬を両手でホールドし……

 

(セラスティアっ!? ちょ待…………)

 

「あんたが可愛いすぎるから、悪いんだからね」

 

指揮官の制止を聞き流し、セラスティアはそう言って指揮官の唇に狙いを定め、唇をすぼめて目を閉じ、顔を前に倒した。

 

唇と唇が触れ合……

 

 

 

カチン☆

 

 

 

「〜〜〜〜〜ッッッ!?」

 

(ッッッッ!?)

 

次の瞬間、お互いに鈍い衝撃と痛みを前歯に感じ、2人はその場で悶え苦しんだ。

 

「痛ぁ……」

 

(ぐおおお……歯が……)

 

セラスティアはあまりこういったことに慣れていなかったのだろう。指揮官とセラスティアのキスは、セラスティアが急ぎ過ぎていたこともあり、前歯をぶつけ合ってしまうという結果に終わった。

 

(いたたた……)

口の中の痛みに呻きつつも、セラスティアが痛みで仰け反ったことにより自由の身となった指揮官は、ゆっくりと上体を起こした。

 

「もう! なんで上手くいかないのよ!」

 

(セ、セラスティア……口の中、大丈夫?)

 

「何も言わないでよ! 私だって初めてだったんだから!」

 

(え、そうなの?)

 

怪我していないかと、セラスティアの身を気遣った指揮官だったが、そこで彼女の口から飛び出してきた思いもよらぬ言葉にちょっぴり意外そうな顔をした。

 

「な、何よ……私が誰とでもキスするような尻軽な女だとでも思った!? ま、まあ確かに……普段からこんな服着てるからそういう風に見られても仕方ないとは思うけど」

 

その言葉に、指揮官は思わずセラスティアの服に視線を向けた。今更ながら胸の谷間が大胆に開き、肩出し&ヘソ出しスタイルのドレスはあまりにも露出が多すぎる上に、ミニスカートというのは無防備すぎてちょっと心配になった。

 

「あ、あんまり見ないでよ……」

 

(ご、ごめん……)

 

指揮官の視線に気づいたセラスティアが、頰を赤らめながら慌てて胸元を手で隠すのと、指揮官が視線を逸らしたのはほぼ同時だった。

 

「でも、こんな私だって……初めてのキスは大切にしたいなって思ってたんだから……って、何言わせるのよ!」

 

顔を真っ赤にして憤るセラスティア

そんな彼女に、指揮官は優しく笑いかけた。

まるで付き合って間もないカップルのような……キスの仕方で戸惑い、四苦八苦するような初々しい感じが、甘酸っぱくて、どこかおかしかった。

 

「な……何笑ってるのよ……」

 

指揮官の笑みに、自分のウブな様子を笑われているのだと思ったセラスティアはツンツンとした態度を取るも、それだけではないことに気付いて静かになった。

 

(やり直す?)

 

「え?」

 

(こんな自分でよければ、だけど……)

 

指揮官がそう提案してみると、セラスティアは驚いた表情を見せ……恥ずかしそうに俯きがちになり、それから小さく頷いた。

 

「じ……じゃあ、目を閉じてよ」

 

(ん、分かった)

 

指揮官が目を閉じると、セラスティアは高鳴る心臓を言い聞かせるように深く息を吐くと、意を決して指揮官の頬へ手を添えた。

 

(セラスティア……)

 

「うん?」

 

(ゆっくり、落ち着いてね)

 

「……うん」

 

 

 

 

 

ちゅ……

 

 

 

 

 

やがて短いリップ音と共に、指揮官は自分の唇に柔らかいものが触れる気配を感じた。

 

押し付けるだけのプレッシャーキス

セラスティアの唇は程よく潤っているにも関わらず、柔らかいものが触れたところには、まるで火が灯っているんじゃないかと思ってしまうほど発熱した、彼女の体温が感じられた。

 

「ふぁ……」

長い長い口づけが終わり、セラスティアはふやけた吐息を漏らした。

 

「えへへ……しちゃった、ね」

 

(…………)

 

セラスティアは微笑みを浮かべ、キスの余韻に浸るように唇に触れた。その一方で、彼女のそんな表情と仕草に心惹かれるものを感じ、指揮官の心臓がドクンとはねた。

 

朧や黛などの時と同じように、満足すればいつかは解放されると思い、キスを受け入れた指揮官だったが……まるでセラスティアの受けている薬の効果がキスを介して伝染してしまったかのように、ここに来て自分でも抑えが効かなくなっていることに気づいた。

 

抑えが効かなくなっているのはセラスティアも同じだったようで、2人はうっとりと熱っぽい視線を交わし……

 

「ん…………ちゅ…………」

 

それから、どちらともなく……まるで想いが通じあっているかのように身を寄せ合い、2人は再び唇を重ねた。

 

「はむ……んちゅ、ちゅ……ちゅぅ……んんぅ」

 

触れるだけだった先ほどとは違い、今度は舌を絡めてより深く繋がる。

 

セラスティアは指揮官と限界まで繋がろうと、首の後ろに両腕を回した。舌の粘膜が擦れ合う度に、脳に電気が流れるような感覚……

 

2人は波のように押し寄せてくる快感に打ち震えながらも、キスを止めようとしない。

 

「ぷはっ……はぁー……はぁー……」

 

やがて息も絶え絶えになったところで口を離すと、2人の結合部から混じり合った唾液が糸を引いて垂れた。そんな光景が、さらに指揮官の情欲を掻き立てる……

 

「はぁ、はぁ……キスって、こんなに気持ちいいんだ」

 

セラスティアは指揮官を抱きしめ、大きく開いた胸の谷間に顔を埋めさせた。その規格外のサイズもさながら、指揮官が小さくなったしまったことにより、顔どころか頭全体が双丘に優しく包み込まれてしまった。

 

大きくて、暖かくて、いい匂いがして、ふわふわで、この世のものとは思えないほど柔らかな胸に包まれ、指揮官は何も考えられなくなってしまう。

 

「それとも、相手が指揮官だから?」

 

そんな指揮官の頭に口を寄せ、セラスティアはいたずらっぽくそう囁いてきた。

 

 

 

「もしかしたら私たち、体の相性……いいのかもね」

 

 

 

……なんてね

と、冗談めかしてそう告げたセラスティアだったが、それが冗談ではないことは誰の目に見ても明らかだった。指揮官の目の前で早鐘を打つ、彼女の心音がいい証拠だった。

 

(…………)

セラスティアが薬の効果を受けていることは、指揮官も重々承知していた。薬で操られているだけであって、これが彼女の本心ではないことを知っていた指揮官は、最後の理性を振り絞って、抗い難い誘惑に耐えようとするのだが……

 

「ねぇ、指揮官」

猫撫で声で、セラスティアは続ける。

 

 

 

「ベッド……行こ?」

 

 

 

(…………)

 

いっか、欲望に流されても……

その一言で、指揮官の理性は完全に溶けてしまった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

セラスティアに連れられ、指揮官は彼女の寝室へと移動した。

 

勝手の分からない薄暗い部屋の中、ヨロヨロとした足取りだったこともあり、指揮官は床に転がっていた何かに足を取られ、あわや転倒しかけるも……それをセラスティアが抱きとめた。

 

それにより彼女の体から発せられる、ふんわりとした甘い香りが指揮官の鼻孔を刺激した。最早、ベッドに辿り着くまで我慢しきれず、2人は熱い抱擁を交わし……そのままベッドの上に倒れ込んだ。

 

最早、薬の効果を受けているだとか、そんなことはどうでもよかった。恋愛感情の有無に関係なく……ただ、目の前にいるセラスティアが欲しくて欲しくて堪らない

 

……そんな情欲に動かされるまま、指揮官は彼女の体を優しく撫でた。すると、セラスティアは目を細め気持ち良さそうな吐息を漏らした。

 

「ちゅ……れる……あむっ…………んちゅぅ」

 

その状態で、何度も何度も貪るようにキスを繰り返し、舌を激しく絡め、お互いに口の中の唾液を交換し合い、己の体内へと流し込んだ。

 

「はぁ、はぁ……きしゅ、きもちぃ」

 

目にハートマークを浮かべ、呂律の回らなくなった口調になりながらも、セラスティアは尚もキスをねだって指揮官の唇を甘噛みした。

 

「もっと、さわってぇ……ちゅー、してぇ………ふむぅ」

 

指揮官は、そんなセラスティアの唇を唇で塞ぎ、さらに求められるがまま、彼女の豊満な胸を遠慮なく揉みしだいた。

 

今まで、指揮官は会うたびに激しく存在を主張してくる彼女の大きな胸に対して、邪な気持ちを抱いたことはなかった……というわけでもなく、それなりに意識することも少なくはなかった。

 

しかし、いざそれを目の前にして……理性を失った指揮官は、今までに募らせてきた彼女への邪な想いをぶつけるかのように、胸を触る手つきを荒々しいものへと変化させた。

 

「んぅ!? ぢゅ……ちゅ……んぅぅぅぅぅ!!!」

 

それまで穏やかだった胸への快感がより一層強くなったことに戸惑い、悲鳴を上げかけたセラスティアだったが、唇を塞がれていることでくぐもった嬌声が部屋に響くだけに終わった。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

そのうち、指揮官は指でセラスティアの敏感な部分を刺激すると、彼女はビクンと体を大きく震わせ……それから脱力したように、力なくベッドの上に倒れ込んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

息を切らしながら、しばらくの間、仰向けの状態でぼーっと部屋の天井を見上げていたセラスティアだったが……

 

「ひっく……」

 

(……え!?)

 

突然、セラスティアが大粒の涙を流し始めた。

あまりにも唐突な出来事に、流石の指揮官も正気を取り戻す。

 

(セラスティア……もしかして、正気に戻ったの?)

 

「……もう、嫌ぁ…………」

 

(……っ!)

 

セラスティアが涙ながらに発した言葉に、指揮官は心の底からショックを受けた。それと同時にセラスティアに対して自分がやってしまったことを思い出し、酷い罪悪感に苛まれる。

 

(ごめん……嫌だったよね)

 

「ち、違うの!」

 

セラスティアは涙を振り払い、上体を起こした。

 

「私が嫌なのは……指揮官の役に立とうって頑張ろうとしたのに、結局、指揮官に迷惑をかけちゃった私自身のことを言ってるの!」

 

驚いた表情を浮かべる指揮官のことを、申し訳なさそうな表情で見据え、セラスティアは続ける。

 

「指揮官の迷惑になっちゃうことは、自分でもよく分かっていたはずなのに……でも止められなくて、指揮官のお願い1つすら聞けない私でごめんね……ごめんね、役立たずで…………こんな役立たず、生まれて来ない方がよか…………んっ!?」

 

いつになく弱気なセラスティア

負の言葉が漏れ出る彼女の唇を、指揮官は唇で塞いだ。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

やがて彼女が落ち着くのを見計らってキスを終えると、優しく手を取り、そこからたっぷり時間をかけてセラスティアを慰め、泣き止むのを待った。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

(今回は、部が悪かった……だから仕方ないよ)

 

「……うん」

 

セラスティアの顔から泣き腫らした目が消えた後も、指揮官はずっと彼女の手を握り続けた。

 

「ねぇ、指揮官」

 

(うん?)

 

「何か、私にして欲しいことはある?」

 

(いや、今は特にないかな……ありがと)

 

「そう? 無理してない? 指揮官がしたいなら……遠慮なくしてもいいよ。えっと……私の体を使って、保健体育とか」

 

(魅力的な提案だけど、やめとく……今は、そういう時じゃないから。それに徹夜明けなんでしょ? 今は、ゆっくり体を休めてくれると嬉しいかなって……)

 

「……意気地なし」

 

(いいよ、そう思ってくれても)

 

「でも、最後まで私のことを気遣ってくれるんだ……指揮官は、やさしいね」

 

(これくらい、普通だよ)

 

「じゃあ、私が眠るまで……一緒にいて?」

 

(…………いいよ)

 

そうして、2人は抱き合いながらゆっくりと……

まどろみの中へ落ちていった。

 

 

 

続く……




前半の薬云々のやり取りについては適当に検索したもの自分の言葉でまとめただけなので、何か間違っているなどご指摘があればすぐ直させていただきます。

今回はムジナ的にもかなり際どいラインを攻めてみましたが、まあ大丈夫ですよね? 某なろうには、これよりも酷いR18クソ汚物作品を堂々と一般向けで出版しているのですから……それに比べれば多少はね?

次回、白髪美女2人と熱々になります。
それでは、また……

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