ドクンドクンドクンドクン
歓声が遠く聞こえる中自分の鼓動ばかりが耳に響いていた。
土煙が晴れ視界が開ける。
予感していたその光景に目を閉じた俺の耳に爆発する歓声と毅然とした声が届いた。
「ーー、戦闘不能!よって勝者ーー!」
パッと目を開けると映るのはスタジアムではなく見慣れた天井
「…またあの時の夢を見ちまった。」
2年前の事なんて忘れたいのに定期的にその夢を見る
まるで忘れるな、と咎められているようで癪にさわる
このまま二度寝してやろうと寝返りを打ったところで枕元のスマホロトムが騒ぎだす
「コルチ!電話が来たロト!」
「今忙しいって言っといてくれ」
ああ本当に忙しい。二度寝は一刻を争う急用だ
「もしもしルリナです。起きているんでしょう?出なさいコルチ。今日が何の日か忘れたの?」
…はて?
一体何の日だっただろうか
居留守を続けながらのんびり考えていると意識が遠くなってきた。このまま気持ちのいい睡魔に落ちて…
「…『君の瞳に溺れてしまった、どうか僕と深い愛に~』」
「お早うございます!ルリナさん!今日もいい天気っすね!!」
眠気さんは急用を思い出してどっか行ってしまった
俺は嫌な汗をだくりゅうのごとく流しながら電話に出る
「お願いなのでその件はいい加減忘れてもらっていただけないでしょうか…?」
「あなたがバラされても平気になったら忘れてあげるわ」
「平気じゃないから忘れてって言ってるんですけど!?」
10年前の俺の馬鹿!告白は計画的にしろ!
「それで、今日ってなんかあったっけ?」
「本当に覚えてなかったの?今日はジムチャレンジの開会式がある日じゃない。…まさか来ないつもりじゃないでしょうね?」
「…メジャーで大活躍中のルリナ様と違ってマイナーなわたくしめには何のお声もかかっておりませんのでね。」
さっき見た夢を思い出し心がささくれ立つ
ジムチャレンジといってもチャレンジャーが回るのは“メジャーリーグ“の8ジムのみで俺のいる”マイナーリーグ”の10ジムには無関係なのだ。そもそもマイナーリーグのジムは自分のスタジアムないし
そんな自虐を考えていると電話からため息と諭すような声が聞こえてくる
「マイナーリーグのジムリーダーも会場の警備に呼ばれているはずでしょ?騙し通せると思ってるの?サボりすぎるとジムリーダー罷免されちゃうわよ。」
…ぐうの音もでない。マイナーリーグの経験がないルリナなら会場警備の仕事を知らないと思っていたが知っていたようだ。
それに師匠から引き継いだジムリーダーをサボりすぎで辞めさせられるては合わせる顔がないのも確かだ。
俺はノロノロとソファーから降り二日酔いの頭痛に顔をしかめながら出かける準備をし始める
「あ!開会式終わったら久しぶりにバトルしない?あなたのポケモン完璧に流し去って━」
「…するわけないだろ」
電話を切り準備を整え家を出る
(勝負なんてする意味がないだろ…どうせ勝てないんだから…)