歓声と熱気に包まれながら対戦相手を観察する。
しかし金色の目線とかち合い思わず視線を反らす。普段はホテルからスタジアムまでに2時間かけてくるような間抜けなのに一度バトルとなると威圧感のある佇まいでとても同じ10歳とは思えなかった。
「バトル、スタート!」
審判の掛け声で我に返り俺は相棒の入ったボールを構えコートに投げてー
「…さん。お客さん!もうすぐ着きますんで起きてくだせえ!」
目を覚ます。窓の外を眺めるとすぐそこにエンジンシティが見える。
「あの頃はよかったなぁ…」
見た夢を思い出してしみじみ呟く。気分は完全に昔を懐かしむおじいちゃんだ。エンジンスタジアムに着きタクシーから降りる。
グッと伸びをして背骨をポキポキ鳴らしていると視線を感じる
辺りを見回すと帽子とマスクにサングラス姿の大変怪しい格好女がスタジアム前からこちらを見ている。げ、ルリナだ…
ジムリーダーだけでなくモデルとしても大人気のルリナは公衆の面前で姿を晒すと大騒ぎになってしまうため普段は顔を隠していることが多いのだ
気付いてないふりをして通りすぎようとしたところ案の定襟首をガッと捕まれ引き寄せられる。ふえぇ…誘拐されちゃうよぉ…
「ふざけないで」
「はい」
心底冷たい声で言われて心臓がキュッとなった。あれ?ルリナさん氷タイプのジムリーダーでした?
「思ったよりは早く来たわね。それよりあなた、一体何したの?」
「え?何かしたっけ?」
ここ最近はポケモンの世話以外特になにもしてないはずだ。
「ローズ委員長が個別に話がしたいって伝言を預かってるんだけど。」
「げ。」
呼ばれた理由には察しがつく。何もしていないからだ。
2年前に3度目の降格をしてから2年間リーグ戦全敗、おまけにジムトレーナーのスカウトもしていない。あの温厚なローズさんもさすがに怒っているだろう。非常に行きたくない。
「まだ開会式までに時間があるし早めに行ってきなさいよ。」
そう言ってルリナはグイグイと引っ張って連れていこうとする。
嫌だ!拙者働きたくないでこざる!俺はその手を振りほどくと大きく息を吸い込んだ。
「えっ!?もしかしてルリナさん!!!!????ですか!!!!?」
「はぁ?」
ルリナは急に態度を変えた俺に訝しげに首を傾げる。くくく、まんまと策に嵌まったなぁ!
「ルリナさん?」「ルリナ!?どこどこ?」「あ!あそこだ!」「本当だ!あの、サ、サインください!」「握手してください!?「一緒に写真お願いしていいですか!?」
「!?あ、ええと、はいサインですね。わかりました。あの、ちょっと━」
ルリナはあっという間にファンに囲まれて動けなくなってしまった。俺はその隙にサッと離れる。ルリナの性格ではファンサービスを求められてバッサリ断ることはできまい。
ククク所詮知名度とルックスと実力と性格の小娘よ!知名度もルックスも実力もなく性格も悪い俺の相手ではなかったな!あれ?雨かな?顔が濡れてるぞ?
そんなこんなでルリナから逃れた俺は時間までエンジンシティをブラブラ散策することにした。割と馴染みのレコードショップで曲を漁っているとホミカさんの曲を見つける。いい買い物をした。
「うん?」
ほくほくで店から出ると道端にキラキラと光るものを見つける拾いあげるとそれは金属製の輪っかであった。
「新人チャレンジャーが落としたのかな…?」
これはジムリーダーを倒してもらえるバッジを嵌め込む者で同時にリーグカード発行前の新人にとっては唯一の身分を証明できる物だこれがないと開会式の時に受付で弾かれてしまうかもしれない
リングに彫られた名前をなぞる
「ユ、ウ、リねぇ…。ハロンタウン出身と」
さすがにジムリーダーとして、これを放置するわけにはいかない。取り敢えずジムの受付に届けておけばいいだろう
「ん…?あの子はもしかして…」
エンジンジムに向かおうと顔をあげると一人の少女が目に入る
年は10歳前後だろうか。焦った顔をして何か探す素振りを見せ通りすがる人になにかを聞いてるようだが表情を見るに成果を得られたようには見えない。
俺はその子に近づいて声をかける。
「あの」
「!ひゃい!?」
「何かを探しているように見えましたがどうされましたか?」
「は、はい実はジムメダルを嵌め込むリングをどこかに落としてしまって…」
「なるほど、実は先程リングを拾いましt「え!?本当ですか!ありがとうございます!」え、ええ…ですが、まだ貴方の物とは断定することはできません。…名前を教えていただけますか?」
「はい!私ユウリと言います!ハロンタウンの!ユウリ!」
俺はそこでユウリと出会った