ゲームではホイホイ拘束される黒龍ですがこの小説では果たして……!?
!直接的ではありませんが死亡描写注意!
炎が止んだ。青い星が隠れていた瓦礫の山は、溶けて跡形も無くなりつつあった。頭上から高温の瓦礫が落ちてくる。それを緊急回避で避けた青い星は、声を張り上げた。
「エイデン!」
青い星は、未だ所々が燃え盛る地面を見回す。……いた! エイデンは倒れていた。装備も武器もなかった。恐らく、溶けた。急いで彼の元へ行くと、背中が焼け爛れているのが確認できた。
あともう少し黒龍のブレスが長ければ、恐らく彼は生きてはいなかっただろう。
彼の体をそっと起こしてやると、呻き声が聞こえた。
「う、うぅ……無事だった、か……?」
その声は弱々しくも、青い星を案ずる気持ちが前面に押し出されていた。
「無事だ!」
そう答えた瞬間、遠くから聞き慣れた声が聞こえてきた。受付嬢のものだ。
「お二人とも! 大丈夫ですか!?」
エイデンの弱々しい声も聞こえた。
「やっぱ、あの人みたいにはいかないか……」
──────────
〜現大陸・シュレイド地方・シュレイド城高台のキャンプ〜
一同、想像を絶する爆炎をただ眺めていた。「破滅」を目の当たりにし、その心は少なからず恐怖に塗れていた。
その炎が止むと、総司令が声を張り上げて命令した。
「確認!」
受付嬢が額のゴーグルを目に装着する。
「……一名、負傷!」
その時、遠くで何かが打ち上げられる音が聞こえた。それは、赤い煙弾であった。
希望が、ついに……!
それを見て、エイデンの編纂者が叫ぶ。
「本隊、到着!」
受付嬢がその言葉に続けて再び言う。
「応急の壁、焼失!」
それらを聞いた将軍はギルドナイトに向かって言う。
「撃龍槍、使えるか!?」
「いえ、まだ整備中……早急に済ませます! しばし、時間を!」
ギルドナイトは駆け出していった。それを確認した将軍は、編纂者らに向き直り緊迫した面持ちで言う。
「二人が時間を稼いでくれたのだ。……死なせてはならん!」
「「はい!」」
そして、編纂者の二人は翼竜を呼び、戦場へと向かった──
──────────
〜現大陸・シュレイド地方・シュレイド城〜
「エイデン……なんて酷い怪我……!」
エイデンの編纂者がエイデンを介抱している。
遠方では、黒龍が……いや恐怖が、空を飛んでいた。まるで、虫ケラは全て燃やし尽くしたとでも主張するかのように。そして、この城は我が物であると示すかのように。
受付嬢は、青い星に向かって努めて明るい声で語る。
「報告が二つあります」
「一つ! 『バリスタ』、『移動式速射バリスタ』、『拘束弾』、『防護壁』使用可能! 撃龍槍は整備中! 時が来たら、上手く利用してください」
周りを確認すると、確かに壁が燃えてなくなったことで撃龍槍の内蔵された高台に登れるようになっていた。その凹型の高台の端に、バリスタがひとつ。その付近に拘束弾がある。撃龍槍の位置は高台の中心であり、そのすぐ上の奥側には、防護壁。付近には一基の大砲。もう一つの拘束弾は、凹型の高台とは反対側にある。そこは、辛うじて「劫火」の範囲外であった。もう一台のバリスタもそこにある。
「一つ! 本隊到着! 間もなく、援軍がここにやって来ます!」
受付嬢は、エイデンの編纂者と共にエイデンを抱えると、翼竜でキャンプへと戻っていった。頑張ってください、とそう言い残して。
黒龍は生き残っていた青い星を視認すると、小さく唸った。それから、広場まで飛んで戻ってきた。首をもたげるようにして低空飛行の体勢になると、再び唸った。
青い星のハンターが、ランスを構える。戦闘が、再び始まる──その瞬間であった。
「待たせたな!」
「遅れました!」
「導きの青い星、あなたと共に戦えて光栄です!」
彼が一層の信頼を置いている人物達の声が聞こえた。黒龍と同時に声が聞こえた方向に振り返ると、そこには翼竜に掴まった三人のハンターがいた。青い星に声をかけたのは、ハンマー使いと狩猟笛使いである。もう一人は、青い星にとっては馴染みのない人物であった。ちなみに太刀使いである。
「彼はエイデンの代わりだ!」
ハンマー使いがそう言うのを聞いて、青い星は疑問に思った。
「一つのクエストには四人までしか出撃出来ないんじゃなかったか!?」
それにハンマー使いが答えようとした瞬間、黒龍が炎弾ブレスを吐いてきた。青い星が呟いた。
「くっ、大人しく待ってはくれないか……!」
黒龍が地面に降りるのを待ち、青い星は自身のランスで上手く黒龍を引き付ける。別の人に狙いが向けば、太刀使いが上手く攻撃をいなして気を引き、その補助を行う。
そうしながら、改めてハンマー使いに問いかける。
「なぜ太刀使いがいるんだ!?」
「忘れたのか? 今回のクエストは国や機関の垣根を越えて行われている! つまりそんなルールなんか知ったこっちゃねえってことだ!」
ハンマー使いはそう叫びながら、黒龍の足元を攻撃する。しかし打撃武器であるハンマーでさえ、その硬い鱗に弾かれた。そこに青い星が声をかける。
「足は固い! 腹を」
「その必要は無いです! みんな行きますよ!」
その声に被せたのは、狩猟笛使いであった。いつの間にか旋律を揃えていたらしく、演奏が行われる。吹かれたのは、「攻撃・大」と「防御・大」であった。一同、身体に力が漲るのを感じる。青い星とハンマー使いが試しに足に攻撃を入れると、今度は弾かれることなく攻撃が通った。黒龍の鱗が少しずつ剥がれていく。
そうして攻防を繰り返していると、黒龍が突然両翼を地面に立てた。それから首から尾まで身体全体を地に伏せ、口を大きく開いた。狙いは、青い星。
青い星はガードの体勢に入る。そこに声が飛び込んでくる。
「まずい、絶対にガードを解かないでください!」
そう言ったのは、狩猟笛使い。なんと納刀し、粉塵を撒く体勢に入っていた。ハンマー使いも同様であった。
彼らの悪い予感は的中していた。黒龍はなんと「劫火」の縮小版である、煙状の炎のブレスを吐いた。しかもその射線は青い星を中心として扇状になっており、横に避けても当たるようになっていた。第一形態で受けた直線状のブレスとは比にならない程の炎の量が、青い星の身を焦がしていく。
青い星は辛うじて耐えていた。狩猟笛使いとハンマー使いの撒く生命の粉塵により、肌が火傷したそばから再生されていくためである。
青い星が耐えている隙に太刀使いが黒龍への攻撃を続け、錬気を完了する。力を溜め、突進する。黒龍に切っ先が当たると、太刀使いは高く飛び上がった。そして、気刃兜割りを繰り出した。一瞬のうちに、黒龍の翼にいくつもの切れ目が入った。
黒龍は怯み、ブレスを中止する。そこに青い星とハンマー使いが突進しようとする。
「待ってください! 下がって!」
それを制止したのは、狩猟笛使い。彼は、いつの間にかごつい機械に乗り込んでいた。その機械の風貌は、現代の我々の感覚で言えば、「マシンガン」のようであった。そう、「移動式速射バリスタ」である。狩猟笛使いがレバーを引き、黒龍に向けて大量の矢を発射する。それらは黒龍の体を掠め、胸に、翼に、どんどん刺さっていく。
黒龍は怯み、四足歩行の体勢になった。
バリスタの音が止んだ後、ハンター達が一斉に黒龍へと襲いかかる。それを黒龍は薙ぎ払いブレスで迎撃しようとする。
否──これでは殺しきれない。それどころか、こちらが大打撃を受けてしまう。
そう判断した黒龍は突然ブレスを吐くのをやめた。
間もなく、黒龍が這うようにして突進してきた。狙いは、青い星であった。
彼はランスを急いで納刀し、横に走る。最後は、緊急回避で難を逃れた。
壁まで到達した黒龍は突進をやめ、二足歩行の体勢になる。そして振り返り、青い星に向き直る。ブレスを溜めていた。
青い星は盾を構えた。衝撃が来る! ──と思っていた。
なんと、黒龍が狙っていたのは青い星ではなく、その他の三人であった。完全に油断していた三人はもろにチャージブレスを受け、その熱さにのたうちまわっていた。
青い星は急いで生命の粉塵を撒こうとした。しかし黒龍は生命の粉塵の面倒さを学んでいたらしく、その場で大きく羽ばたいて強風を起こした。それにより生命の粉塵はまるで意味を成さなかった。
狩猟笛使いが何とか起き上がり、呟いた。
「『防御・大』がかかってるはずなのにまるっきり効果がない……!」
そこに青い星の心配する声。
「みんな、大丈夫か!?」
三人とも、チャージブレスによって防具につけられた火が消えないらしく、焦っていた。ハンマー使いが叫ぶ。
「こんなことなら漢方の粉塵 ── 仲間の状態異常が治せる吸い薬 ── 持ってくるんだったぜ!」
そう言いながら真っ先に火を消したハンマー使いは、広場の端へと向かった。そこに置かれていたのは、先が細長い槍のような形状をした「拘束弾」であった。その意図を理解した青い星は、自分も広場の端へと向かう。
羽ばたき終わった黒龍は、その二人目掛けて炎弾ブレスを幾つも放った。
それらを上手く躱しながら、とうとう二人とも拘束弾を手に入れた。早速、近くのバリスタに装填する。
黒龍がそれを狙おうとした瞬間、一人のハンターが黒龍に攻撃を仕掛けた。太刀使いである。身体についた火を消し終えたらしい。
黒龍は、そいつをまるでまとわりつくうざいハエでも見るかのように一瞥した。それから、標的をそのハンターに変更した。
「今だ!」
ハンマー使いの声が響く。それと同時に、バリスタから拘束弾が発射される。それは黒龍に当たると、弾の先端が弾けた。なんと槍のような形状をしていたものの中には、大量の縄が詰まっていたのだ。しかも、対古龍用に強化されたもの。並のモンスターでは、簡単にはちぎれない。だが──
黒龍は、「並の」古龍などではなかった。なんと、かの龍は吐き出そうとしていた炎弾を飲み込んだ。ハンター達の目には見えないが、黒龍の体温はみるみるうちに上がっていった。そして、黒龍は口から黒煙を吹き出した。それは黒龍の身体を包み、弾けて宙に舞っている縄と太刀使いは、その煙に飲み込まれた。
煙が晴れると、縄は全て溶けてしまっていた。そして、太刀使いの姿はどこにもなかった。地面には、炭の粉の山と、血溜まりが出来ていた。
そう、彼は叫び声もあげられずに──
事実を直視出来ないハンマー使いの声が漏れる。
「は……!?」
そこに狩猟笛使いの声が響く。
「こっち向けええええええ!!!」
身体についていた火を消した狩猟笛使いは、いつの間にか撃龍槍近くの大砲の装填を終えていた。大砲は放たれ、幾つもの弾が黒龍に直撃する。その場所、黒龍にとっては生命線である、頭の部分。
全弾がそこに命中したことにより、黒龍はまたしても目眩を起こした。
「お二人共、大丈夫ですか!?」
狩猟笛使いがそう叫んだ瞬間、黒龍が一際大きな咆哮を放った。今の大砲が、怒りの引き金になったのだ。なんと、角が一部欠けていた。
一同がその地を揺らす大きな音に耳を塞ぐ。それを聞きながら、青い星は瞬間的に悟った。あの炎──いや、焔が再び放たれる、と。
黒龍は大きく羽ばたき、宙に飛んだ。
「まずい! 避難場所……!」
青い星は周りを見回し──防護壁の存在を思い出した。
「防護壁に待避だ!!」
一同が、防護壁へ向かう。
黒龍は定位置につき、口に炎を溜めた。それが放たれ、シュレイド城全域がたちまち燃え上がってゆく。
狩猟笛使いは防護壁内に退避することに成功。ハンマー使いと青い星は防護壁から離れており、未だ走っている。
青い星は、防護壁を目前にして、黒龍のブレスが強まる音を聞いた。地獄のような景色の中で、彼は命の終わりを悟った。
次の瞬間、ハンマー使いの声が聞こえた。
「盾を背に構えろ!」
わけも分からずその通りにすると、かなりの衝撃を感じた。気がついた時には、前方にぶっ飛ばされていた。そのまま、防護壁内に着地する。
「……んだ! 早く!」
「分かりました、ごめんなさい!」
二人の会話が聞こえた。
まさか……!
青い星が振り返ると、防護壁が上がろうとしていた。狩猟笛使いが起動レバーを引いたのだ。
「あとは頼んだ……! お前が希望だ、青い星!」
ハンマー使いの姿は壁の向こうに消えた──
エイデンは第一形態補正とクシャナ装備のおかげで生きてたということにしてますが……第二形態以降の劫火はそんな温い炎じゃないんやで?(愉悦)
エイデン死なせたらストーリー崩れそうだし(小声)