ライダーがいないので、ショッカーを作りました。   作:オールF

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ご覧の二次創作は僕のヒーローアカデミアと仮面ライダーのクロスオーバー小説で間違いありません。
ほんへがいつものに比べると1500文字くらい少ないので初投稿です


迫るショッカー

 仮面ライダー、本郷猛は改造人間である! 彼を改造したショッカーは世界征服を企む悪の秘密結社である! 仮面ライダーは人間の自由のためショッカーと戦うのだ! 

 

 

 

 

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 本郷猛が改造人間となってから自宅に帰ったのは蜘蛛男を倒してからすぐのことであった。1週間空けていた自宅のポストにはたくさんの広告チラシが突き刺さっていた。

 本郷はチラシを破らないように抜き取り、折らないようにドアノブを開いた。部屋の中は本郷が綺麗好きというのもあって、少しホコリが舞っていた程度で汚れていたり、不在の間に誰かが来たという形跡もなかった。

 チカチカと点滅する電話を見れば、バイクの整備をしてくれるおじさんやツーリング仲間の後輩から不在着信が何件か来ており、本郷はすぐに返そうかとも思ったが精神的に積もった疲労感からそれは出来なかった。

 電話を置いて換気のために窓を開けると、ベッドではなく後ろにあったソファへと倒れ込んだ。ショッカーのアジトの暗闇の知らない天井ではなく、LEDライトの点く見慣れた電灯を見て本郷は帰ってきたことを実感すると共に、来客用に置いていた鉄製の灰皿を手に取る。そして、それに少し力を込めるとみるみるうちにひしゃげていった。

 

 

「……夢、ではないみたいだな」

 

 

 蜘蛛男を蹴った時の感触と、鉄製の灰皿をいとも容易く丸めることの出来る腕力で自分が本当に改造人間になってしまったことと、これが現実であり夢でないことを改めて実感する。

 

 

「俺が何したって言うんだ……」

 

 

 改造人間となって仮面ライダーとしてショッカーと戦う覚悟はすでにできている本郷だが、やはりどうして自分が改造人間にされてしまったのかという疑念は振り払えない。自分でなくても良かったのではないかという気持ちが未だに燻っており、本郷は自分を推薦したという緑川博士の死ぬ間際の顔が思い浮かぶと恨むに恨めなかった。

 生まれながらにして驚異的な知能と、父からの仕込みで格闘術を学んでいたことが災いしてショッカーの改造人間に選ばれてしまったことを呪いつつも、皮肉にもその知能の高さから恨んだところで仕方がないという結論のみを彼の脳がはじき出していた。

 

 

「おやっさんのところに行くか」

 

 

 事情は話せないかもしれないが、立花藤兵衛という男には世話になっている。心配をかけてしまったようだから顔を見せて安心させたいという気持ちもあるが、自分が寝ていた間に世間がどのように変化したのかを聞く目的もある。本郷は外に出てバイクを走らせると、立花藤兵衛の経営するスナック『アミーゴ』へ向かう。

 

 

 カーレースや競艇などの、乗り物の速さや運転手の技術を競う文化は、人々に個性が現れたことで衰退してしまった。乗り物がなくても、個性によっては空を飛び、電車と同じスピードで走ることができるようになり、そういった者達が出場する体育大会の方が見世物としての人気が上昇した。

 しかし、全ての人が空を飛べたり、乗り物より速く動ける訳では無いので、車やバイクは今でも市民の脚となっている。しかも、乗り物は無限の可能性を秘めているという科学者の言葉から、今でも乗り物は進化を続けている。そういった背景もあってか、競技人口は衰退したものの、レース競技は未だに根強い人気を持っていた。そうは言っても、大会規模は縮小され、観戦者の少なさからチケットの売上などが振るわないため、公式的な大会は無くなりつつあるのが現状である。しかし、趣味としてバイクを楽しむものはまだまだ多くいるため、立花藤兵衛はレーシングクラブを開きたかったのだが、藤兵衛本人や本郷のようなバイク好きが多くいるわけではないので昼間から開いているスナックとしてアミーゴを開いた。

 本郷が約1週間ぶりにアミーゴを訪れると、何人かの客が雑談をしているのが店の外からでも分かった。

 本郷はバイクを停めて、店の中へと入るとドアにつけられた鈴が鳴り、藤兵衛や店の中の人間の視線が彼へと集まる。

 

 

「おおっ、本郷!」

 

 

「お久しぶりです、おやっさん」

 

 

 1週間音信不通だった知り合いが顔を出したこともあって、藤兵衛はカウンターを離れて本郷の方へと駆け寄る。

 

 

「お前、1週間も連絡しないでどこに行ってんだ!」

 

 

「いや、ちょっと、大学の研究室も休みで暇だったんで少し旅行に」

 

 

「それはいいが、ケータイに連絡しても出ないってのはどういうことだ? 電池切れか?」

 

 

「いえ、どこかで落としてしまったようで」

 

 

「まぁ、お前が無事ならいいんだ。そうだ、お前の後輩も心配してたぞ」

 

 

 藤兵衛は安堵の息を吐くと、話を切り替える。一方、本郷はというと自分を本気で心配してくれた藤兵衛に感謝の気持ちでいっぱいになり、改造人間となり緑川博士を失って以来、初めて笑顔を見せた。

 

 

「はい、あとで連絡を入れておきます」

 

 

 本郷はそう返事すると自分が眠っている間に、社会にどのような変化があったのかを見るべく、室内に置かれている新聞を開く。

 

 

「ん、どうしたんだ新聞なんて開いて」

 

 

「えぇ、携帯をなくしてしまったので」

 

 

「パソコンで見ればいいだろ」

 

 

「自分はこっちの方が見やすいので」

 

 

 藤兵衛と会話しながら新聞を読んでいくも、目立った変化は起こっておらず本郷は新聞を閉じようとする。しかし、そこで藤兵衛が思い出したようにふと呟いた。

 

 

「あぁ、そういえば、まだ新聞には載ってないんだが、さっきテレビで変なニュースがやってたぞ」

 

 

「変なニュース?」

 

 

「あぁ、1つは……あぁ、これだ」

 

 

 夕刊には載るんじゃないかと言いながら藤兵衛が出してきたのはタブレットで、そこには九州を中心にヒーローの行方不明者が続出しているという記事が出ていた。それと同時に、人気のないコンビナートや廃工場で身元の分からない死体がたくさん発見されているという記述もあり本郷は訝しんだ。

 

 

「これは……」

 

 

「おそらく、殺されたんだろうな」

 

 

 パイプタバコを咥えながら藤兵衛が淡々と言うと、本郷はさらに記事を読んだ。犯人の意図は全く不明で、死体のあった場所には争った痕跡が多く残されているが、犯人に繋がるようなものはない。本郷はまさかと思った。世界征服を目標にしているという彼らなら、ヒーローの惨殺くらい息を吐くようにするだろうと。

 だが、ヒーローを殺すというのなら彼らの最優先目標はオールマイトであったはずだ。それなのにどうして、主な活動拠点を関東にしているオールマイトから離れた九州でヒーロー殺しを?

 

 

「まぁ、力を持て余している連中のすることは分からんからな。警察の捜査が進めば何かわかるだろ」

 

 

「そうですね」

 

 

 日本の警察は優秀だと思う藤兵衛の言葉に本郷は頷きながらも、未解決の事件を思い返してしまう。しかし、ショッカーという存在を知り、その被害を目の前にした本郷には確信があった。世間を騒がせた誘拐事件とビールス事件はショッカーが起こしたものだと。

 緑川博士によると改造人間を作るには無個性の人間が最良なのだと言っていた。そのために無個性の人間を多く攫い、さらに改造手術を施すための研究員が必要になったから誘拐したのだと断定した。

 

 

「あ、いらっしゃい」

 

 

 本郷がショッカーについて分かっていることを整理していると、アミーゴの扉が開かれる。外から中に入ってきた人物を見て、各々で談笑を楽しんでいた男達が口を開いた。

 

 

「おっ、珍しいなー女の子か」

 

 

「良かったッスね立花さん」

 

 

 常連たちはこの店に女性が来ることが少ないどころか、全くないのを知っているため、入ってきた麗しい女性の姿を見て鼻の下を伸ばしながら藤兵衛の方を向く。

 

 

「まぁ、年に2回来ればいい方だからな……」

 

 

 アミーゴに女性客がやってくるというのは藤兵衛の言う通り年に数えられるほどである。反論できない常連客の言葉に藤兵衛は苦笑すると、件の女性客へと近づく。

 

 

「お嬢さん、飲み物は何にする?」

 

 

 ニコニコと来た客は逃さないという笑みを貼り付けながら藤兵衛は女性に声をかける。すると、女性は「そうね」とぎらりと光る牙をさらけ出した。

 

 

「あの方への献上品でも貰おうかしら」

 

 

「危ないおやっさん!」

 

 

 それを見てからの本郷の動きは速く、藤兵衛と女性の間に割って入ると、藤兵衛を押し退けて女性から距離を取らせた。

 

 

「な、何をするんだ本郷!」

 

 

「おやっさん、見てください! あの人の口元を!」

 

 

「何?」

 

 

 本郷に言われて藤兵衛以外にも、店の中にいた客たちがその女性の口元に注目する。女性の容姿に合った桃のような可愛らしい唇に男たちは何も無いじゃないかと本郷を睨もうとした矢先、徐々に女性の顔色が変わっていることに気づく。

 健康的だった小麦色の肌には青紫の模様が浮かび上がり、彼らが綺麗だと評した唇からは普通の人間とは比較にならないほどに鋭く伸びた牙が見えていた。

 

 

「貴様! 何者だ!」

 

 

 変わり果てた女性の姿に本郷が怒鳴りをあげる。すると、女性は言葉を発することなく微笑みながら、その牙を曝して本郷達へと襲いかかる。

 

 

「えぇぃっ! おやっさん! 店の人を外に!」

 

 

「お、おう! お前ら! 写真なんか撮ってないで、早く外に出るんだ! 早くしろ!」

 

 

 藤兵衛はそう言いながら店の裏手の扉を解錠すると、店内にいた男性客たちを放り出す。彼の個性「百万馬力」がなせる技である。そして、藤兵衛は男性客たちを締め出すと、本郷を心配して店の中へと戻る。

 

 

「大丈夫か、本郷!」

 

 

「えぇ、なんとか」

 

 

 藤兵衛が戻ると女性客は瞼を閉じてソファに座り込んでおり、完全に脱力していることから本郷によって気絶させられたのがわかった。

 

 

「一体全体どうしたって言うんだ……?」

 

 

「おそらく、数年前にニュースになっていたビールスでしょう」

 

 

「ああ! あのマンションの住人たちが一斉に行方不明になって、子供だけが残ったやつか!」

 

 

「はい。そして、その子供たちが出処が分からないビールスを持っていて、現場検証に来ていた警察官たちに集団感染させて……」

 

 

「未だに病院に縛り付けられたままだったな……それがどうしてこの子にも?」

 

 

 2年前に確認された感染者たちは未だに警察が管理している病院内に閉じ込められているはずである。逃げ出したり、院内での感染が認められれば、直ぐにネットニュースになっているに違いない。だが、先程までニュースサイトを見ていたが、そのようか記事は欠片もなかった。どういうことだと首を傾げる藤兵衛に、本郷は女性のポケットを漁る。そして、財布から抜き出したカードを見ながら、藤兵衛のタブレットに文字を打ち込む。

 

 

「やっぱりこの子。マンション暮らしですね。しかもここからかなり近い」

 

 

「なんだって?」

 

 

 本郷が彼女のポケットから抜き取った財布に入っていた保険証から住所を特定する。一人暮らしをしていて、住居が変わっている可能性もあるが、もし今の住所のままだとしたら……そう考えると本郷と藤兵衛の背中に悪寒が走る。

 

 

「こうしちゃおれん! 早く警察に!」

 

 

「それは待ってください。まだ確証がありません」

 

 

 もし本当に彼女が保険証通りの住所に住んでいるのならば、外には多くの感染者がいるだろう。けれども、本郷が来た時も、先程藤兵衛が1度外に出た時も人の首元に噛み付いているビールス感染者はいなかった。

 本郷の考えでは、この女性は自分を誘い出すために差し向けた雑兵の1人で、マンションには自分の命を狙う悪の手先がいるはずなのだ。それは間違いなくショッカーであり、そんな危ない場所に藤兵衛を巻き込む訳にはいかない。さらには警察が来たところで、ミイラ取りがミイラになる可能性もある。

 ならば、ヒーローとなるのだが、ヒーローは市民を傷つけることは許されない。しかも、ヒーローが個性を使用していい相手は、同じ個性持ちであり、犯罪者のヴィランのみ。ショッカーの改造人間はヴィランに分類できるだろうが、個性を使っているわけではない。なので、手は出しにくいはずであり、こちらも来たところで邪魔になる可能性がある。

 そう考えて、1人で最短最速で事態の収束を図るべきだと判断した本郷は藤兵衛の目を見た。

 

 

「おやっさん、今から俺はそのマンションに行って、中を見てきます。ニュース通りなら、感染者は無感染者にビールスを付与しようと歩き回ってるはずなので、近くまで行けば分かるはずです」

 

 

「でも、感染者が至る所にいたらどうする?」

 

 

「その時はおやっさんに整備してもらってるバイクで逃げてきますよ」

 

 

 ビールスに感染しても、腕力や脚力が変わらないことは眠っている女性で確認済みである。一応、起きた時のために口には本郷のネクタイを紐替わりにして、動けないように足を縛り付けているので藤兵衛1人でも問題ない状態してから本郷はバイクに跨った。

 

 

「無理するなよ、本当に警察も救急車呼ばなくていいのか?」

 

 

 

「ええ、大丈夫ですよ」

 

 

 心配する藤兵衛の心を落ち着かせるべく、本郷は爽やかな笑みでヘルメットを被り、バイクのエンジンを吹かせる。だが、その笑みもミラーに藤兵衛の姿が映らなくなると、引き締まったものへと変わっていく。

 それはこれから訪れる先でショッカーとの戦いがあることを告げていたのであった。

 

 

 

 

 




年内最後の更新なのにヒロアカ要素が個性しかない件について
怪人たちのDieジェストになっていいなら早回しでオールマイトや炎司と絡ませることもできるんですがね。難しい……。
新年度の更新頻度に関してはまた活動報告や小説タグにて記載させていただきます。


あと客が写真撮ってたから、SNSに上げてヒーローとか警察来るんじゃね? と察しのいい貴方! 感想欄ではお静かにね!!!


昭和ライダーコラムムムムムムムムッコロ
立花藤兵衛
仮面ライダー達の保護者。1号からストロンガー(7号)まで面倒を見てきた。出る度に職業(お店)が変わっている。レーシングクラブのオーナーだったり、スポーツ用品店の店長だったりと多種多様な職を持つが、一貫してライダー達のバイクの整備を行っている。
平成になって孫がいることが分かったので、結婚している模様。
仮面ライダー達の保護者とあって、その能力は改造手術を受けたわけでもなく、FBIの訓練を受けたわけでもないのに常人のはるか数倍のパワーを持つ戦闘員を1体1なら倒してしまえる力を持つ。さらには仮面ライダーが苦戦していた怪人の(不意打ちだが)武器を破壊したり、弱点を告げたりとサポートも行える万能さを持つ。
情報収集や伝播を目的とした少年仮面ライダー隊を率いていたこともあり、立花会長として全面的に仮面ライダーのサポートを行っていた。加えて、強力な怪人にライダーがやられた際は「そんなことでどうするんだ!」と仮面ライダー達に怪人を倒すための必殺技を身につける特訓をつけてやったりと……以上のことから仮面ライダー達のおやっさんを名乗るに相応しい活躍を見せていた。
だが、その点が災いして敵組織に人質に取られることもしばしばあったが、1度も致命傷を負ったことはなく、気絶程度で済んでいる。

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