ライダーがいないので、ショッカーを作りました。   作:オールF

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平成がまだ終わってなかったので初投稿です。


大首領の苦悩。

 

 

 仮面ライダーが生まれ、俺がショッカーを作り出した目的を果たそうとした矢先、重大な問題に直面していた。まさかこの世界にも本郷猛なる男が存在するとは思わず、テキトーに作っていた改造人間。いや、能力とか見た目は真面目に作ったが、彼らの来歴は無個性ならなんでもいいやとばかりにしていたツケが回ってきてしまった。

 その理由は仮面ライダー好きなら誰もがわかるだろう。蜘蛛男、蝙蝠男と来れば次の怪人は誰か。そう、お察しの通りサソリ男である。

 仮面ライダー抹殺を目的としたM1号作戦計画を実行するさそりの改造人間である。小さな人喰いさそりを操り、しっぽから放たれる赤い液体は人間を溶解してしまう。

 怪人本体ももちろん強力であり、左手のハサミを武器にしてアクロバティックな動きで戦闘員と共に仮面ライダーと戦った姿は今でも俺の記憶に残っている。しかし、ライダーシザースという技の前に倒れてしまった。

 ここまではいつも通りの改造人間だが、その正体は本郷猛の親友、早瀬五郎なのだ。本郷猛に勝つために進んで改造手術を受けたというエピソードがある。親友と共にショッカーと戦えると思った本郷の笑顔が、早瀬五郎が正体を表した時に曇るのは気の毒でたまらなかった気がする。

 しかし、ショッカーと戦う覚悟を決めていた本郷猛は、自分の能力を分析して更なるパワーアップが見込めることを示唆している。ちなみに、緑川博士の娘さんが助手となるのもこの辺りだ。まぁ、この世界の緑川博士は独身なので娘はいないのだが。

 つまるところ、さそり男が普通の改造人間なのか、本郷猛の親友なのかで彼の今後の方向性が変わるかと言われたら微妙な話なので俺がここまで悩む必要は無いのだが……せっかくここまでこだわってきたのだししっかりと守っていきたい自分の方が強い。

 だが、問題が一つ。この世界の本郷猛。ぼっちなのである。

 スペックが高い人間がいつの世も排他されるように、驚異的なIQと恵まれた身体能力を持つ本郷猛は個性社会の進んだ現代でも異端児であり、調べたところ彼の身近な人間に親友どころか同級生の友人もいなかった。

 いたのは緑川博士や立花藤兵衛のような歳上か、風見志郎という歳下くらいである。……いや、緑川博士はまだいいさ。いたっておかしくはない気がするんだ。まだ俺も許容できる気がした。でも、後の2人は流石におかしくないだろうか。

 立花藤兵衛。ヒーロー学部の大学で個性使用許可免許を取得するも、ヒーローの資格は得ずにバイクメーカーに就職。30代後半で脱サラした後に昼も夜も空いてるクラブ『アミーゴ』のオーナーになる。この世界ではオートレーサーという職業が廃れているから、彼の経歴が多少なりとも変化しているのは仕方ないが、俺の知る立花藤兵衛と概ね変わりない人生を送っているように思う。個性は最大で常人の100万倍もの力を発揮出来る『百万馬力』。だが、フル出力を使うと通常の睡眠時間に加えて6時間くらい寝込むらしい。

 風見志郎。本郷猛と同じ大学に通っており、本郷とは大学からの付き合いのようだ。本郷猛に影響されてバイク免許を取得している。個性は気分の高揚で身体能力を底上げできるという『情熱』。しかし、個性使用許可免許は取得していない。恐らくは無意識で自動発動の個性のため、使用許可があってもなくても変わらないからだと思われる。家族構成は両親に中学生の妹。

 2人とも世界観の違いから個性を持っていたり、周囲の関係性に変化が生じているが、仮面ライダーのおやっさんである立花藤兵衛、後々仮面ライダーV3になる素質がある風見志郎という人間に遜色ない。むしろ、個性を持ってる分変身しなくても戦闘員1人くらいならなんとか出来そうなのが恐ろしい。

 2人が概ね変わりないのに対して、本郷猛に親友がいないというのは些か疑問であるが、そこはこの世界が俺の知る仮面ライダーの世界とは異なる部分なのだろうと1人納得する。個性とかヒーロー、ヴィランの存在の時点で分かっていたことだし。

 それで、問題はさそり男をどうするかだ。洗脳して本郷猛の親友を名乗る不審者に仕立て上げることは簡単だ。でも、そんな奴が本郷猛の前に現れても、知らない人間に親友だと言われて、ショッカーを倒すことに協力してくるわけだし困惑の極みだろう。更にはショッカーの改造人間でした! ってオチは俺にもよく分からない。

 今からエヴァのカヲルくんよろしく、友情を育んでから殺しあってもらうのも一興ではある。ロンリーヒーローとしての、明確でブレない姿勢を植え付けつつ、ショッカーの非道性を本郷により知らしめることが出来る。

 

 

「というか、まずは伊藤老人も必要なんだよな……」

 

 

 ショッカーの目論見は、ショッカーから逃げ出した死刑囚である伊藤老人を本郷猛に匿わせてから殺し、さらに追跡させて自らの正体を明かすことで本郷猛の戦意を喪失させることである。嬉しいことに今のショッカーに不要な人間は1人もおらず、逃げ出させて殺すというもったいないことは出来ない。

 

 

「今回は普通に戦わせるか」

 

 

 一応、本郷猛を殺すという目的とは一致しているし、過程や方法は一旦無視していいだろう。まぁ、そもそも俺の目的は仮面ライダーの良さを世の中に知らしめることで、この世界の本郷猛を苦しめることじゃないし……既にかなり苦しめてるけど。

 物語の結末を決めるのは俺ではなく、この世界の人々に委ねる。彼らが仮面ライダーの素晴らしさを受け入れるのであれば、俺は素直に華々しく仮面ライダーに倒されよう。しかし、仮面ライダーという真のヒーローを拒むのであれば、容赦はしない。

 

 

「そのためには、そろそろ政府には俺たちのことを公表して貰わないとな」

 

 

 片肘をつきながら呟いた俺は、国会中継を見ながら昼飯の弁当を食べ終えた。美味かった。

 

 

 

 ###

 

 

 

 謎のビールス事件は、感染者を収容する病院に匿名で届けられた血清により無事終息した。突如として発生したという新規の感染者も、警察やヒーローが駆けつけたときにはマンションで倒れ伏しており、全員気を失ってはいたが命に別状はなく、病院に運び込まれた後に送られてきた血清によって呪縛から解かれた。

 このニュースは瞬く間に日本中に広がり、人々を湧かせた。マンションでの感染者は意識が朧気であったが、断片的に記憶があった。それらを繋ぎ合わせていくと、コウモリと人間を足したようなヴィランに噛みつかれ、さらに噛み付かれた者が他の人間へと噛み付いてビールスを広げていったことも判明した。中にはオールマイトが助けてくれたことを覚えており、助けてくれたことの感謝に涙を流しながら供述する者もいた。この発言もあり、ヴィランを倒して血清を手に入れたのはオールマイトでは無いかという話が広がるも、オールマイト本人は否定。

 ヴィランとの決戦が繰り広げられていたという屋上も、オールマイトの一撃で監視カメラが破壊されており、絶命する姿は映っていない。

 ───────ただ、マンション側の道路には何かが落下して爆発したような痕跡が残されていた。

 この痕跡と証言の中に『腰にワシかタカのようなマークのついたベルトをつけていた』というものから、警察は今回の事件に繋がるヴィランをショッカーの改造人間だと断定した。

 

 

「にしても、倒したのがオールマイトじゃないなら誰なんだ?」

 

 

「それを調べるのが今回の俺たちの仕事だ」

 

 

 特殊犯罪対策チームでは、上司からの命令とオールマイトからの要請でマンション周囲の監視カメラからビールス感染者となっておらず、単身でマンションに乗り込んだ男を探していた。

 男と分かっているのはオールマイトが言ったためである。自分が駆けつけた時に明らかにビールスに感染しておらず、怪人と敵対していた青年、それが特殊犯罪対策チームの捜索対象である。

 

 

「オールマイトが倒してないなら、その場に居たっていう男が倒したんだよな?」

 

 

「でしょうね。でも、ショッカーの怪人って相当強いのによく倒せましたよねその人」

 

 

 見てみたいかもと呟きながら、手を忙しなく動かしているとSNSに投稿された1枚の写真が目に入る。そこには都内にある小さなスナック『アミーゴ』にやべー女が来たという本文に、顔に青紫の模様と鋭利な牙を生やしたやべー女が1人の男性と交戦しているところであった。

 

 

「先輩! それみてください!」

 

 

「なんだ?」

 

 

「どしたどした」

 

 

 珂神が騒ぐとそれに群がるようにして後藤や渡真利が集まってくる。

 

 

「珂神、場所わかるか?」

 

 

「調べました。事件のあったマンションからかなり近い場所にあります」

 

 

「よし、俺はアミーゴに行く。珂神は写真の投稿者にコンタクトを取ってくれ」

 

 

「はい」

 

 

 渡真利の言葉に頷いた珂神はすぐさま、投稿者にDMを送る。渡真利はジャケットに腕を通すと、足早に部屋を出ていく。特に何も告げられなかった後藤は、所用で出ている福井とオールマイトへとこの事を告げようとケータイを取り出す。

 しかし、そのケータイが何者かに取り上げられて「なにすんだよっ」怒気を含みながら顔を上げた。

 

 

 

「アァッアッアッアッ」

 

 

 緑色の体躯にカメレオンのような独特な目をした怪人が、不気味で高い声を出しながら後藤の首を掴む。

 

 

「あがぁっ」

 

 

「ご、後藤さん!?」

 

 

 一瞬。バキリと首が折れる音を立てた後、後藤はピクリとも動かなくなり、カメレオン男の手から逃れると床へと倒れ伏す。驚き立ち上がった珂神はあまりの唐突さに混乱し、パソコンの画面から目を離してしまう。

 

 

「な、な、なんなの、アンタ……」

 

 

 恐怖からちびりそうな下腹部を堪えて、口を開いた珂神にカメレオンは嘲笑い、こう告げた。

 

 

「お前たちにはショッカーの悪名をより轟かせ、世間に知らしめるために利用されてもらう」

 

 

「なにを……っ!?」

 

 

 カメレオン男がそう言うと、珂神の肩から何かが突き出ている。鉄を非常に鋭利になるまで研いだサーベルの先が背中から貫通しており、その事実に珂神は身体を震わせ、瞳は見開かれカチカチと歯と歯がぶつかる音がする。恐る恐る後ろを振り向けばそこに居たのは女性。けれども、見た目が普通ではない。緑色の大きな目に、髪は紫で肌の色も青い。背中にはスズメバチのような羽が生えており、人間と昆虫の特徴を併せ持つという外見はまさに自分たちが追っている組織の率いる改造人間の典型例そのものであった。

 

 

「お前はここで終わり。でも、大丈夫。その身体は私たちが使うから」

 

 

「っ……」

 

 

 耳元で囁き、サーベルを引き抜いて今度は心臓を一突きすると珂神も絶命し、頭から地面へと倒れる。それを見下ろすのは2人の改造人間で、2人は互いの姿を元の生物─────カメレオンと蜂へと変えると死んだ2人の体内へと入り込む。

 すると、どうだろう。首が折れて死んだはずの後藤と心臓の活動を停止させられたはずの珂神は起き上がる。折れた首も、刺された傷口も塞がった。警察内部に潜ませていた戦闘員から着替えを受け取り、代わりに血の着いた衣服を渡して捨てさせた。

 そして、2人は何事もなかったかのように自分達の席に座る。珂神はDMを送った相手とコンタクトが取れると直接話がしたいとメッセージを送る。後藤は窓から、アミーゴへと車を走らせる渡真利を見下ろしながら薄く微笑んでいた。




物語があまり進まない……けど、これから進むでしょ(適当)


帰ってきた昭和ライダーコラム
戦闘員及び怪人がする一般人の身体の乗っ取り
原理は不明だが、殺した人間で身体に欠損がなければ乗っ取ることが出来る。ナメック星人の同化と違って、身体能力に変化は無いもの、乗っ取った身体を本人のように振る舞うことができる他、怪人態との使い分けができる。
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