ライダーがいないので、ショッカーを作りました。   作:オールF

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短いけど生存報告も兼ねて投稿。


出現! サソリ男!

 蝙蝠男の事件からしばらくして、日本につかの間の平和が戻った。とは言っても、ヴィランの起こす犯罪は絶えず、ヒーローや警察が人知れずであったり、公の場で事件解決をするといういつもの日々だ。ショッカーが日本に残した爪痕は大きく、国の上層部はショッカーの次の行動に警戒心を抱き、ショッカーと戦い唯一生還したオールマイトを対ショッカー用の切り札に据えた。

 しかし、アジャーラレクスに敗れたオールマイトはその任を拒絶し、代わりに今のナンバーワンヒーローへと委ねられた。手に持った棒状の物全てが金属と同じ硬さ重さへと変わり、それを剣のように操ることから『剣士』と名付けられた男はショッカーに敗れて気を落とす次世代の後輩にナンバーワンの強さというものを見せてやろうと奮起していた。

 

 

「オールマイトくん。俺に任せてくれ。ショッカーの怪人は俺が倒してみせるよ」

 

 

「ありがとうございます、グラディエール」

 

 

 力強く言うナンバーワンヒーロー・グラディエールに、オールマイトは頭を下げつつ、彼に耳打ちをする。

 

 

「ショッカーの怪人の能力は未知数です」

 

 

 だから油断してはダメだと言おうとしたオールマイトをナンバーワンは手で制した。

 

 

「大丈夫。これでもナンバーワンなんだ。油断なんてしたことないよ」

 

 

 ヒーローという立場上、いつだって死と隣り合わせなのだ。それはヒーローという職務をこなしている時だけに限らず、プライベートの間も命を狙ってくるヴィランを見たナンバーワンヒーローがよく知っている。だから、常に伸縮する棒を両ポケットに忍ばせて、奇襲に対応できるようにしているグラディエールに油断など有り得ないと本人は自信満々に言って見せた。

 

 

 一方、その頃本郷猛は蝙蝠男の1件から警察に目をつけられることになっていた。街の至る所に監視カメラが置かれるようになった日本において、蝙蝠男事件の目撃者、あるいは関係者である本郷猛という人間を見つけるのにはそう時間はかからなかった。渡真利が本郷を見つけたのは事件から1週間後のことであり、それから3日を要して彼の詳しい情報を手に入れることとなった。そして、今日は彼とコンタクトを取り、あの日に何があったかを聞き出そうと、本郷の住むアパートへと足を踏み入れようとした時。

 

 

「んあ?」

 

 

 唐突にバランスを崩してしまった。

 

 

「いてて、くっそ、何も無いところでコケちまった」

 

 

 こんなザマでは後輩の珂神に笑われてしまうと苦笑してしまう。最近あんまり寝れてなかったからかなと誰かにする訳でもなく言い訳を作りながら立ち上がろうとした渡真利であったが、何故か右足に力が入らない。足をくじいたか? いや、それだけで感覚が無くなるなんてことは無いだろうと自身の右足を見た。

 

 

「は?」

 

 

 見れば右足の足首がなくなっていた。綺麗にハサミで切られたかのようにぱっくりと裂かれた足を見て、声をあげそうになった渡真利の首元へと赤色の手が伸びてくる。

 

 

「あ"あ"ッ!?」

 

 

 アパートの塀へと叩きつけられたショックと首を締めてくる赤い手により、普段の生活では出ないような声を漏らした渡真利は、その手の主を見るために呼吸を整えながら顔を上げた。いたのは明らかに人間という存在からはかけ離れているであろう怪物であった。明るい赤ではなく、乾いた血のような黒や茶色を混ぜたような暗い赤の体躯をしたサソリのような怪人が渡真利の首を締め続ける。締めている5本の指が生えた普通の手の逆の手は鋭利で斬れ味の高そうなハサミの形をしており、刃には血が滴っており、自分の足首を切った相手はこいつかと渡真利は歯を食いしばる。

 

 

「お、おま、えは、なん……だ!」

 

 

「俺か? 俺は復讐者だ」

 

 

「ふ、くしゅう、しゃ……?」

 

 

「そうだ。俺は本郷猛を殺す者。やつを俺は許せない」

 

 

 くぐもった声から発せられる強烈な殺意は、いくつものヴィラン事件と関わったことのある渡真利ですら恐怖を覚えるものであった。殺意を向けられた対象が自分ではないにも関わらず、膝は震えて、歯はカチカチと恐怖の音を立てている。

 

 

「じ、じゃあっ、お、おれ、おれは! 関係っ、ないだろう!?」

 

 

「あぁ、ないな」

 

 

 そう言われて安堵した渡真利であったが直後にサソリ男に告げられた言葉と共に彼の視界は真っ暗になった。

 

 

「だから、死ね」

 

 

 1人の警察官の首から上が飛び、地面へと落下する。アパートの塀の向こう側へと落下した生首を踏み潰しながらサソリ男は宿敵の住むアパートへと眼を向ける。本郷猛本人だけでなく、本郷猛に関係する者、本郷猛に近づく者。それら全てはサソリ男の中の男にとっては殺すべき敵なのだ。断末魔を上げさせることなく渡真利を屠ったサソリ男は怪人態を解除すると、どこにでも居そうな普通の男になる。先程の殺害を捉えているであろう監視カメラもショッカー科学人が映像を書き換えて何も無かったことにし、渡真利の死体もどこからともなくやってきた戦闘員が回収してしまう。それを見送ったサソリ男の中身、中野は本郷の住む部屋の扉をノックする。返事はない。昼間だから、まだ帰ってきていないのかもしれない。となれば、いるのは立花藤兵衛の経営するアミーゴかと中野は踵を返した。

 

 

 

 ###

 

 

 

 ショッカーから改造手術を受けた本郷猛は自身の力に戸惑いつつも、緑川博士の死とオールマイトに誓った人間の自由のためにショッカーと戦うという自ら課した使命を果たすべく、ショッカーの情報を探っていた。しかし、公にはショッカーの情報は開示されておらず、蜘蛛のようなヴィランの情報を調べれば本郷の見た怪人とは違うヴィランが出てくる。さらに最近まで世間を騒がせていたビールス事件の首謀者である蝙蝠男に関しても、オールマイトが倒したという話だけで止まっている。

 

 

「ショッカーのシの字もないな」

 

 

 立花藤兵衛は本郷の話を聞き、本当にそんな存在がいるなら大変なことだと、共に調べているが目に付くような情報は少なく、本郷の妄想ではないかと思い始めていた。だが、実際にショッカーの怪人や戦闘員、科学人を目にした本郷は、彼らの手がかりを見つけ出し、一刻も早くショッカーを壊滅させなければと血眼になっていた。

 

 

「そうだ。俺と緑川博士が捕まっていた施設に行けば何か手がかりがあるかもしれない」

 

 

「場所は覚えているのか?」

 

 

 藤兵衛の問いに頷いた本郷はすぐに行きましょうとアミーゴを出ようとするが、そこに1人の男が入ってくる。その男に本郷は見覚えがあった。

 

 

「よう、本郷久しぶりだな」

 

 

「……中野か」

 

 

 本郷と中野の関係は小学校からであり、彼とは高校まで同じであった。しかし、大学受験の際に本郷と同じく城南大学を志望していた中野であったが、彼は受験に失敗し浪人生となった。高校を卒業してからは会っていなかった知人との再会であったが、本郷にとって今優先すべきはショッカーのアジトに行くことであり、中野を無視して外へ出ようとすると「待てよ」と肩を掴まれた。

 

 

「どこへ行こうって言うんだ?」

 

 

「すまない。俺には行くべきところがあるんだ」

 

 

「ショッカーのアジトならもう引き払った後だぜ?」

 

 

「何っ!?」

 

 

 さも普通に会話する中野に本郷は距離をとった。どうしてショッカーの事を知っているのかと問いただす前に、中野はポツポツと語り始めた。

 

 

「いたんだよ俺も。お前と……誰だっけな、名前は忘れたが城南大学の教授さんが収容されていた場所にな」

 

 

「何故だ」

 

 

 ショッカーが捕らえているのは無個性の人間か、有能な科学者だけだ。中野は個性があり、科学者ではない。どちらにも当てはまっていない中野を攫うメリットがショッカーにはないのだ。

 

 

「俺も聞いた話だから本当かは知らないが、ショッカーは個性を抜き出す男を組織に迎え入れたか、あるいは同盟を結んだって話だ」

 

 

「個性を抜き取る? どっかで聞いたような話だな」

 

 

「知っているのか、おやっさん」

 

 

「あぁ、まぁ結構前の話だけどな」

 

 

 藤兵衛曰く、個性が発現してすぐの頃、個性発現者の中に魔王と呼んでも差し支えの無い男がいるという噂が立ったらしい。その男の個性というのが他人の個性を抜き取り、自分のものにしてしまうというものであったらしい。藤兵衛が知ったのは身の回りで優秀と呼べる個性持ちが何人も行方不明になるという事件からであり、今回のショッカー事件とはかなり酷似していた。ただ、攫う相手は個性持ちからなしに変わっているので同じ犯人とは言えないというのが藤兵衛の所感であった。

 

 

「なるほど、それで個性を持っている人間も攫うようになったのか」

 

 

 だったら、本郷や中野のような一般人でなくても、ヒーローや大物ヴィランのような個性持ちを攫う方がショッカーにとってはメリットが大きい気がすると思った本郷ではあったが、一般人の方が攫いやすいからかもしれないと結論を出して中野の話に戻った。

 

 

「中野が攫われた理由は分かったが、それでどうしてここに?」

 

 

「ヒーローに助けて貰ってな。逃げ出してきたんだ」

 

 

 本郷と緑川博士が脱走した後、機関部をやられたショッカーはそのアジトを放棄するか否かの選択を迫られていたという。そんな時に山岳部を中心に活動するというヒーロー達にアジトが見つかり、蜘蛛男という柱のいなくなったそのアジトはもぬけの殻で、捕まっていた人間達はヒーロー達によって解放されたという。

 

 

「それでさ、ヒーローにボコられる前に命乞いをした戦闘員が言ってたんだよ。1人改造手術を受けたにも関わらず逃げ出した化け物がいるって。俺たちを殺す前にそいつを殺してきたらどうだってな」

 

 

「……それが俺だと?」

 

 

「あぁ。ご丁寧に名前も教えてくれたんでね」

 

 

 逃げ出して、他の脱走者は警察に向かったが、中野は本郷のところの方が安全かもしれないとこちらにやってきた。警察に向かう途中にショッカーの襲撃に合う可能性の方が高いと考えたのだ。

 

 

「実際、こっちの方が気楽そうだし、警察にショッカーの事を伝えようにも下の方のやつが出てくると笑われそうだろ?」

 

 

 たしかに知り合いという間柄の人間が被害者にいれば、話は通りやすいかと納得した本郷は、他にショッカーの情報はないかと中野に尋ねた。

 

 

「いや、今言った情報と……あとはもう1つの基地の場所くらいだな」

 

 

「どこだそれは」

 

 

「ここからそう遠くない廃墟だ。真偽は分からないが」

 

 

 行ってみるかと中野が目線で問いかけると本郷は頷き、2人はバイクでその廃墟へと走り出す。

 本郷にとって小学校から高校まで苦楽を共にした知人がショッカーと戦う仲間になったことは孤独であると思い込んでいた彼に光を灯していた。同じショッカーの被害者という絆で結ばれていると感じていた本郷であったが、中野の案内した廃墟に着いた時、本郷は凄惨な状況を目にすることになった。

 

 

「これは……」

 

 

 ショッカーのアジトがあると聞いていた場所はたしかに今は使われていないであろう廃墟であった。しかし、廃墟の壁にはたくさんの生首が打ち付けられていた。打ちつけられた顔にはどれも見覚えがあり、記憶を遡れば小学校から高校まで、テストや通知表の成績が本郷や中野よりも良かった者達の顔であった。

 

 

「見ろよこいつらの顔を。綺麗な顔だろ? 死んでるんだぜぇ!?」

 

 

 ギャハハと下卑た笑い声を上げる中野に何のつもりだと本郷は睨みつけた。

 

 

「見て分からねぇのかよ! ここにいるのはな! 努力もせずに個性の恩恵を受けて、俺よりも成績トップに躍り出やがったクズたちの墓場だ! そして本郷! てめぇもこいつらの仲間にしてやろうってことよ!」

 

 

「……俺は個性などに頼っていない」

 

 

 本郷は自らの個性をIQ700と公言していたが、実際には個性とは全く関係のない、彼本人自身が持つポテンシャルによるものだった。

 

 

「あぁ知ってるよ! だから余計にムカつくんだよ!!」

 

 

 だが、中野は知っていた。本郷が誰よりも努力していたことを。両親が厳しく優しく彼を育てて文武両道、個性を使われなければ誰にも負けないであろう男であったことを。だからこそ、中野は本郷を恨んだ。個性を持ちながらも、本郷に勝てない自分を。学力も身体能力も、中野は本郷に届くことは無かった。必死に努力すれば個性持ちすらも超えることができると信じてきた中野であったが、どうしても学年順位5位以内の壁は厚く、いつも知能上昇や記憶力系統の個性持ちや本郷猛によって阻まれてきた。

 しかし、それもあいつらは俺よりもいい個性を持っているからという逃げ道があるから納得出来た。でも、本郷猛は違った。無個性でありながらも努力して個性持ち達と並ぶほどの能力を持っていたのだ。

 

 

「だから、俺はお前を許せない! お前だけは、俺が殺す! 首領は俺にそのための力をくれた!」

 

 

「……ッ! まさか!」

 

 

「そのまさかだ! 改造人間がお前だけだと思うなよ!!」

 

 

 強風が吹き、砂が舞うとと共に中野の身体が変わっていく。ただの人間から異形の右手とサソリのようなシルエットを帯びた怪物へと変貌していく。憎悪を身に表したような体色をした怪人サソリ男は本郷猛へと襲いかかった。

 

 

「ぐっ!」

 

 

「死ねっ! 本郷!」

 

 

 ひと振りで人の首を切断できる右手を振るい、左手で本郷を掴もうとする。

 

 

「くそ!」

 

 

 一方的に追い詰められる本郷は、廃墟の中へと逃げ込んでいき、それをサソリ男は嘲笑った。

 

 

「そうかそうか。そんなにそいつらと死にたいか。だったら望み通りに……ッ!?」

 

 

 してやろうとした時、廃墟の中へと足を踏み入れたサソリ男が目にしたのは本郷猛の姿ではなく、緑色のマスクと赤いマフラーが特徴的な戦士であった。

 

 

「来い! サソリ男! 仮面ライダーが相手だ!」

 

 

「何が仮面ライダーだ! 死ねぇッ!」

 

 

 廃墟に来る前とサソリ男が変身する際に風エネルギーを溜め込んでいた本郷はすぐさま変身することができ、自分と同じく改造人間に成り果てた中野とあいまみえた。しかし、首領だけでなくオールフォーワンからも認められる程の改造素体であった本郷猛と、ただ本郷猛に対して恨みを持っているからという理由だけでサソリ男に選ばれただけの中野には明らかな力の差があり、生身の人間ならスパスパ切れるハサミも弾丸すら弾く胴体を持つ仮面ライダーには無力であり、そもそも当たりさえしなかった。

 

 

「くそっ! くそがぁッ! なんで当たらねぇんだよ!」

 

 

 柔道や空手を学んだ本郷にとって、ナイフを持って振り回す素人のような動きをするような中野は敵ではなく、知人という温情から一切手を出すことは無かった。だが、逆にそれが中野の怒りに油を注いだ。

 

 

「ちきしょうっ! 舐めやがって! こうなったら……!」

 

 

 自分の力では本郷を倒せないと悟ったサソリ男は逃げるようにして、マンホールの下へと逃げ込むと、仮面ライダーは逃がすまいと追いかける。

 

 

「待て!」

 

 

「待つのはてめえだ! 少しでも動いてみろ! 俺の体内に駆け巡る猛毒をこの放流水に流し込んでやる! そうなればどうなるかな!」

 

 

 放流された水は浄水施設で綺麗な水となり、再び生活水として使われる。だが、放水された水の中に通常の手段では浄化できない猛毒が入っていれば。

 

 

「やめろ中野! これ以上罪を重ねるな!」

 

 

「黙りやがれ!! 正論はもううんざりなんだよ!」

 

 

 もうダメだ。自分の言葉はもう届かないと踏ん切りを付けた本郷は怒りで我を忘れかけているサソリ男が猛毒が流そうと意識を集中した瞬間に攻め込んだ。一瞬でも心を許し、共に戦おうと決意した知人を殴り、蹴り、改造人間となってかつてのクラスメイト達を血祭りに上げた男に温情もなく、地下道から地上へとかち上げる。

 

 

「お、お前は俺をどれだけコケにすれば、気が済むんだよクソが!!」

 

 

 前のめりに突っ込んできたサソリ男へとライダーキックを決め込もうとした仮面ライダーであったが、仮面ライダーを倒す攻撃力はなくとも、彼自身を守る防御力がありそうな右腕先の大きな鋏が邪魔になると判断した仮面ライダーは自身の最大の特徴である脚部の力を最大限に使う。鋏まるごとさそり男の首を開いた両脚で挟み込み、捻り上げるようにしてさそり男の自由を奪いとると、彼は大きく叫んだ。

 

「ライダーシザース!」

 

 

 結果として、断末魔も上げさせることなく自身の復讐心を満たすためだけに人殺しを行ってきたサソリ男は皮肉にも、自分も声をあげることなく体内の爆破装置が起動し、その体を四散させた。

 知人ですらも敵として送り込んでくるショッカーの恐ろしさを改めて実感した仮面ライダーは赤いマフラーを靡かせながら、サソリ男が散った場所を見下ろしていた。

 

 




急いで書きあげたので中身がペラッペラですまない……。一応続けるよという意思の表れだったんだ……。
嘘をつく時は本当の話も混ぜると嘘っぽくなくなりますよね。中野くんの嘘はほぼ嘘ですが少しだけ本当の話があります。いやー、ドレガホントウナンデスカネ
なお、旧一号編を終わらせて原作に入りたかったんですが、死神カメレオン、蜂女はきっちり倒したいと思いつつ、こいつらは回想で殺してもいいかな。なんて考えてたら前話で警察官の体に乗り移らせてたの忘れてたっていうね! ではまた
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