ライダーがいないので、ショッカーを作りました。   作:オールF

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お久しぶりです。バグスターウイルスよりも厄介なものが流行っていますね……。


大首領のお仕事

 

 

 サソリ男が倒されたのを皮切りに次々と怪人を送り込んだ我らがショッカー。仮面ライダー1号こと、本郷猛の周りで起きる奇怪な事件の数々。しかし、それらを経験してこそ真のヒーロー、正義の味方と呼べる存在が育っていくというもの。

 カマキリ男、サラセニアンが倒されて続いては死神カメレオンという筋書きだ。悪の秘密結社という体裁を持ちながらもショッカーの存在を知らしめようと警察官の身体を乗っ取らせたはいいが、有用な使い道が見つからずに難儀していた。

 ナチスの財宝がないために、やることが本郷猛抹殺くらいしかない。しかも、カメレオンの名に恥じず、姿を消すことが出来る他、変装の達人でもある彼をここで亡くすのは惜しいとも感じてしまう。

 けれども、仮面ライダー1号が強く成長するためには必要な過程であり、1つでも省いてしまって新1号へと至る前に死なれては困る。真のヒーローの誕生のためには致し方ないかと思いつつも俺は適当にでっち上げた宝物を用意する。こちらの歴史は俺のいた世界と似通っている部分があるため、ナチスの財宝や徳川家の残した秘宝だとか言っても問題はないのだが、専門家が見てしまうと偽物なのがバレてしまう。オマケに本郷猛は驚異的な知能指数を持つわけだし。

 本郷猛抹殺計画だけを押し進めるには、死神カメレオンはやや火力不足だ。けれども、1号のときに敵怪人が2体以上同時に現れる場面はトカゲロンとの戦いまでなかったはずだ。2号やV3以降だとよくあることなんだけどね。

 かなり雑になってしまうが、どっかの誰かさんの邪魔が入らないうちに1号の経験値を蓄積させてもらおう。他にもやることはたんまりある。2号候補の発見に、素の身体能力でキックか強力な改造人間の素体と……うーん、死神カメレオンの代わりを見つけないとなぁ。

 

 

「大首領」

 

 

 はぁとため息をついていると背中に声をかけられる。見れば変身態を解除したアジャーラがいて、彼女から今日の予定が伝えられる。頭の中にコンピューター積んでいるから、人間の秘書よりは使えるだろうと俺のスケジュール管理を任せてみたが、これが使えすぎて居なきゃ無理なレベルになってきた。加えて科学陣が何をしたのか、料理やら家事全般はこなせるし、一般的に公開されている人工知能を凌ぐほどの学習能力を持つせいで感情表現も豊かになってきた。けど、君、いずれは俺の代わりに死ぬんだよね。

 おかげさまで、家事代行サービスを雇わなくても家の中は綺麗だし、健康的かつ美味い食事にもありつけている。デメリットとしてはヒーローやヴィラン掃討に出てる時は俺の部屋は汚くなり、まともな飯にありつけないということだろうか。いや、インスタント食品も美味しいんだけどね。やはり、人から作ってもらった方が温もりがあるっていうか……あ、こいつ厳密には人じゃなかったわ。でも、人造人間だし、一応は人間なのか? とうとう心も持ち始めたし、人間と言っても差支えは無いのだろうが。これがショッカー最高戦力かぁ……たまげたなぁ。

 

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

 

「はい。死神カメレオンの宝石庫、強奪計画はこのまま進めていいでしょうか」

 

 

 あぁ、たしかナチスの財宝の代わりに、宝石から新エネルギーを抽出するために盗んで来いって計画書を渡したんだっけか。やっぱり寝ぼけながら書くのは良くないな。うん。

 

 

「任せる」

 

 

「かしこまりました」

 

 

 これなら宝石庫をめぐって2話くらい戦ってくれそうだし、その間に死神カメレオンの代わりでも作ろう。けど、姿を消せて、諜報活動に向いている怪人って他に居たっけ……? 

 

 

 ###

 

 

 もうみんなはお忘れかもしれないが、俺の本職は悪の秘密結社の大首領であると同時に医者である。知名度も腕も底辺であるにも関わらず、クソ面倒な会議に呼び出されるのは同期の医者が全て悪い。

 

 

「そう怒らないでくれ。俺も1人じゃ肩身が狭いんだ」

 

 

「知るかよそんなの」

 

 

 俺の同期にして高校時代から医大にかけての知り合い、殻木球大という俺でも知ってるような医師の下で働く男だ。若手は出る必要も無い医師会の会合が終わると馴れ馴れしく絡んできた後に、こうして近くの居酒屋へと俺を連れ込むとケラケラと笑いながら、酒を飲む。

 俺と違ってエリート街道を歩いているこいつは、若くして名の通った総合病院に勤めている。まだ研修医扱いらしいが、あと5年もすればそれなりの地位が貰えるだろうと俺は睨んでいる。

 

 

「お前は小児科医のくせに、脳の手術の方が上手いからな。病院ができたら外科医として俺が推薦しよう」

 

 

「遠慮するよ」

 

 

 変に上手くやると、面倒な仕事を頼まれるからな。腕のいいフリーランスの医者は高い手術料を渡されたら、ホイホイと出向いていくが俺はそんな事しない。脳の手術のスキルは磨きあげるのに実践が必要だったからやったにすぎない。

 

 

「しかし、お前も無個性だと苦労するよな」

 

 

 医者は個性じゃなくて腕次第で這い上がれるからヒーローやヴィランにならなくて良かったなと語る同期に俺は適当に相槌を打つ。

 

 

「そうだ。最近、先輩が新しい論文を書いててな。これなんだけど、どう思う?」

 

 

「どうって……」

 

 

 見てみればタイトルは"個性特異点"。世代を経るごとに混ざり、より複雑に、より曖昧に、より強く膨張していく”個性”。その容量の膨らむ速度に身体の進化が間に合わず、コントロールを失う現象が現れるのではないかという趣旨の内容だ。まだ公表はされていないらしいが、著者の院内では既に有名らしい。

 容量に身体を適応させなければ人は制御できなくなるため、新たな進化が望まれるか。じゃあとりあえず、宇宙に対応した新人類でも作ってみたらいいんじゃないですかねという感想しか出てこなかった。

 

 

「これ、お前のとこではどうなの?」

 

 

「どうって、そりゃ……」

 

 

 彼は言葉にせず、おどけたように首を振って全く取り合われていないと伝えると再び酒を飲み始める。確か、個性は脳と結びついていているから、個性が発現した時に脳のキャパシティを超えると人間はヒトとしての活動に支障を来すようになるって話も聞いたことがあるな。多分、同じ著者が書いたことなんだろうが。殻木先生とは会う機会はないが、この人と会うために論文を書くというのも何か違う気がする。

 いざとなったら洗脳か何かで話し合いにまで持ち込めばいいだろうし、今は話す必要も無いだろう。仮面ライダーに個性は関係ないしな。

 だが、彼の言う話が本当だとしたらデストロン怪人を作る時に2つの個性を与えると動かなくなるやつも出てくるってことか。そうなる頃には個性の研究も進んでいるかもしれないが、頭の片隅くらいに留めておいた方が良さそうだ。




早く原作開始に入りたい……!(また言ってる)
もしかすると次回はDIEジェストでトカゲロンまで行くかもです。
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