ライダーがいないので、ショッカーを作りました。 作:オールF
仮面ライダーは……やっぱり……最高やな!
「では、お話を聞いてもよろしいでしょうか」
「はい。私は今回、世間を騒がせていた"サボテン爆弾事件"の調査のため、部下と共にサボテンが咲き乱れているという地点に向かいました」
警察官の巡査部長という立場にして、異例の記者会見を開いたのは"サボテン爆弾事件"の顛末を見届けることになった竹山という男で、彼の前にはカメラやボイスレコーダーを持った多くの記者たちがパイプ椅子に腰掛けていた。
事の始まりは、遡っていくと山岳地帯を中心に見られたサボテンで、それらは花屋やホームセンターに持ち込まれ販売されていた。緑の丸みのあるボディに針の生えたその植物の魅力に惹かれた人々は、購入して持ち帰って、観葉植物としての役割を果たすはずであった。
買った人間の9割が行方不明になるという怪奇な事件が判明したのはつい最近のことである。原因を調べると、サボテンに触れれば爆死するという恐ろしいものであり、彼らは行方不明になったのではなく、骨も塵も残さずにこの世から去ってしまったのだ。
警察が事件を知ることになったのは、「関東平野にサボテンあんだけどw」という呟きであった。これは投稿者がSNSでの地位確立やフォロワー稼ぎを狙ったプチバズのために、わざとサボテンを置いたもの……というのが当初の見立てであった。この呟きには「嘘乙」「あほくさ」「サボテンが花をつけている……w」といった懐疑的なコメントが多く寄せられており、メキシコで起きていた"メキシコの花"と呼ばれるサボテンに触れると、死に至るという怪奇現象を真似たタチの悪い冗談だと思われていた。しかし、最初の発信者である日下部という男は数日、自宅にも勤め先にも顔を見せておらず、連絡が取れなくなっていた。それを不審に思った彼の上司が家族へと連絡し、被害届が出されたことで、模倣犯に巻き込まれた可能性を考慮して調査を行った。
環境省は地元の調査員に命じて、サボテンの伐採と入手ルートの調査をさせた。しかし、いくら待ってもその結果は知らされることはなく、警察が現場調査を行おうとしたところ、ソレは現れた。
「同行していたヒーロー、スレンダー氏は私と部下の飯田の目の前でサボテンに触れて殉職。その後、飯田もまた、サボテグロンと名乗るヴィランに殺されました」
「どんな風貌をしていたのでしょうか?」
「……サボテンのような深い緑色の皮膚に、言葉では表しにくいのですが、不気味な感じでした。人間に近いようで少し違うような……あ、あと、長いサボテンを手に持っていました」
「それで飯田さんは撲殺されたと事前調査ではおっしゃっていましたが、事実ですか?」
「はい……」
突然地面から現れたサボテグロンに、飯田は震えながら警棒を構えるも、押し寄せてきた恐怖に体を動かせなかった。部下のピンチに竹山は持っていた45口径の弾丸を乱射するもサボテグロンにダメージを与えることができず、棍棒によって骨と肉が裂かれ、飯田は上半身が真っ二つに分かれて、血を垂れ流しながら悲鳴をあげる暇もなく絶命した。
そして、次はお前だと宣告された所であの男は現れた。
「わたしが、殺されそうになった時、青年が助けてくれて……」
「青年?」
初耳だと記者たちが首を傾げると、そこからはと隣に座っていた警視総監がマイクに向けて口を開いた。
「その青年については素性が不明であり、現在調査中です」
「竹山さんはその青年に助けてもらったんですよね? お礼を言う際に名前は聞かなかったのですか?」
「いえ、そんな暇はありませんでした。私は彼が怪物を引き付けてくれている間に、乗ってきたパトカーで署まで戻りました」
怪物についても行方を眩ませてると同時に、サボテンを売買していた販売店も忽然と姿を消して事件は闇の中。しかし、サボテンによる行方不明事件はパタリと止んで、警察は解決という方向で話を片付けた。
こうして記者会見を開いたのは有り得ないと思えるような事が起きても無闇矢鱈に近づかずに、専門家やヒーロー、警察の指示を仰ぐようにして欲しいという呼び掛けのためだった。
だが、記者たち、いや世間はそのサボテン怪人のことが気がかりであった。1年前も謎のビールスによって、マンション内の住人たちが操られる事件や、東洋原子力研究所を破壊して、東京を放射能まみれにしようとしていたトカゲ怪人と似た思考ルーチンを持つ犯罪を起こしたのは誰なのかと。
「犯人の目星はついているんですか?」
「現在調査中です」
「個性殉教者グループや異能解放軍のような、どこかの組織的犯罪でしょうか?」
「それも現在調査中です」
「……仮面ライダーが事件を解決したという話を聞きましたが事実ですか?」
淡々と答える警視総監の眉根がぴくりと動く。質問した記者の方に目を向ける。かれこれ数年今の役職に就いて、記者会見をしてきたが、その女性は見慣れない顔であった。
「……あなたは?」
「申し遅れました。最近出来たばかりの出版社、ビブリオユートピア出版の新堂です。以後、お見知りおきを」
「……はぁ、仮面ライダー……ですか。聞いたことありませんし、その何者かが事件を解決したという記録はありません」
「……そうですか」
分かりましたと潔く引いた新堂は席に着くと思いきや、会見場をあとにした。仮面ライダー、オールマイトが口にした"ヒーロー資格を持たない人類の味方"。複眼のような目が特徴のマスクと赤いマフラーを巻き付けた謎の存在に助けられたというオールマイトの発言を受けて、警察は調査を進めていたが、ショッカーにより特別捜査班は壊滅させられ、ショッカーが関わっている事件にしか姿を現さないため捜索は難航しており、本当に人類の味方なのかと疑問視する者もいることから、世間への発表は控えていた。
しかし、ショッカーの被害者となった人物は多く、そのうちの何名かは仮面ライダーに助けられたと話しており、マスクを被ってバイクで去っていくのを見たと証言している。
竹山はその名前を聞いて「そうです」と言いたかった。自分は仮面ライダーに助けられたのだと。
あの時の青年の発した言葉を竹山は今も覚えている。
「ショッカーの敵、そして人類の味方」
青年が着ていたジャケットのファスナーを引き下ろす。腰に巻き付けられたのは見たことも無いベルト。青年はそれを見せつけながら、サボテグロンへと言い放った。
「お見せしよう! 仮面ライダー!」
瞬間、青年の姿は消え去り、代わりに空から現れたのは黒いマスクに、赤い目とマフラー、そして先程の青年が巻き付けていたベルトと全く同じものを巻いた戦士。
「出たな! 仮面ライダー!」
サボテグロンが声を張り上げると、仮面ライダーは地を蹴る。10メートルの距離を瞬く間に詰めると、サボテグロンへと殴り掛かる。だが、そのパンチは躱され、サボテグロンは怪しく嗤う。
「ケケケッ! 貴様の相手をしているほど私は暇ではない!」
言うと、どこからともなく黒い衣服に身を包んだ戦闘員たちが現れる。囲まれた竹山はゴクリと喉を鳴らした。そこに仮面ライダーが背中を合わせる。
「その銃、残りは何発だ?」
「え、えぇ? え、えぇっと……た、たぶん、3発、です」
「よし、じゃあ、1発くらいは当ててくれよ」
「えっ!? えぇっ!?」
竹山の返事を聞かずに仮面ライダーは駆け出すと、戦闘員へと向かっていく。いる戦闘員は6名、そのうちの4名を仮面ライダーが相手取っているが、残った戦闘員は目撃者である竹山を消そうと近づいてくる。
「く、くそ! やってやる! やってやるんだ!」
このまま死んでたまるかと、拳銃を向ける。サボテグロンと違って、戦闘員たちは怪人という気配はなく、人間に近い。身体にダメージはなくとも、目のような網膜やレンズといった割れやすいものでしか覆われてない部位ならと弾丸は通るはずだと、竹山は自身が有する個性"超集中"を用いてよく狙い───────
「イイーッ!?」
「よしっ!」
左目を潰されて悲鳴を上げている戦闘員に、仲間意識があるのか意識が逸れたもう1人の戦闘員の足首裏を狙う。
「イイーッ!!?」
「ハハッ! ざまぁないぜ!」
「やるな、アンタ!」
ほんの僅かな時間稼ぎを任せたつもりだったが、竹山のあげた功績は大きく、動きを封じられた戦闘員は他の4人を鎮めた仮面ライダーによって同じように倒される。
あっという間に敵が倒れ、死の恐怖から逃げ果せた竹山の身体から緊張がほどける。その場にへたり込んで、自分を助けてくれた仮面ライダーへお礼を言おうと顔上げた時、既に仮面ライダーの姿はなく、耳に届いたのは遠のいていくバイクのエンジン音だけだった。
「あ、あれが、仮面ライダー……か」
あの後、サボテグロンがどうなったのかは定かではない。しかし、サボテン爆弾が機能しなくなったということを鑑みれば、きっと仮面ライダーがあの怪物を倒したに違いないと竹山は感じていた。
飯田は天哉と関係ないし、竹山は昨日見た有〇の部屋に出ていたお笑い芸人さんから、日下部はマンガのメジャーの登場人物から取っただけで深い意味はありません。
次回はわっしょいわっしょいと自室で昂っている首領と煽りに行くアフォの話だと思います。