ライダーがいないので、ショッカーを作りました。   作:オールF

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首領「やべっ、蜘蛛男にショッカーマークのベルト巻くの忘れてた」
と、首領がポカその1をやらかしたので初投稿です。
あと大男とメガネの細身の男の正体が分かるから楽しみにしててくれよな!


怪奇蜘蛛男

 最近世間の話題は2つに分けることが出来る。

 1つは個性を掌握する者。悪の象徴とまで謳われた男の話だ。

 警察がひた隠しにしてきた魔王の存在も、今では表社会にも浸透し始めた。

 曰く、強い個性を持っていれば、誘拐される。しかし、金や身体の要求はない。あるのは個性のみ。

 攫われた人は翌日には帰ってくるものの、まるで抜け殻になったかのように虚ろな目になっており――個性が使えなくなっている。

 全世界では、出生時及び成長に伴う個性の発現の有無とその能力を記して提出することが求められている。

 しかし、中にはやはりそれを拒む者がいる。

 その中でも最も悪用されれば恐ろしく、悲劇の連鎖を生む可能性がある個性は「個性」を奪う個性だ。

 今のところ確認されている中では、たった1人が所有しており、その男は様々な個性を奪って、悪逆の限りを尽くすまさに魔王の名にふさわしい存在となっていた。

 彼に立ち向かうべく多くのヒーローが挑むも、結果は彼がまだ生きていることから言うまでもないだろう。

 

 

 しかし、彼の気まぐれから彼の永遠の絶頂は終わりに近づいていた。

 個性を奪えるということは、与えることも出来た魔王は、個性をストックするだけの個性を唯一の肉親である弟に譲渡したのだ。

 それは個性のない弟への哀れみなのか、単なる遊びなのか。

 いずれにしてもただの気まぐれで行った行為は、現在進行形で彼の首をじわじわと締めていた。

 

 

 おっと、少し話しすぎました。ここから先の話はまたいずれ。

 次はもうひとつ世間を湧かせているニュースとしましょう。

 

 

 ここ数ヶ月で起こっていた連続失踪事件。

 発覚したのは、これまた無個性の弟を持つ兄からの報告からであった。

 兄は警察官であり、無個性故に学校内でいじめを受けて、酷く傷つけられた弟のことを――憐れなものだと嘲笑っていた。

 兄自身は優秀とはいえないが、親から受け継いだ個性を持っていた。しかし、弟にはなく、兄にはその事が初めは不可解であったが、何の力も持たない弟を蔑んでいた。

 しかし、警察官という立場を得てしまった以上、弟も守るべき市民の1人であると判断した兄は、1年以上前閉ざされた戸を叩いた。

 だが、返事はない。寝ているのかと何度も叩いたが、反応がない。

 これには兄も訝しんで、部屋のスペアキーを持つ両親を呼んでその扉を開けた。

 すると、そこには弟はいなかった。家族も弟の事は気にかけてはいたが、不登校で卒業も叶わず、18歳となっても何もせずに家に引きこもっているだけの人間に構うことはなかった。

 それ故に、悪意ある第三者にさらわれたことに今まで気づかなかったのである。

 一体いつからいなかったのか。食事やトイレは部屋を出たがらなかったので、個人に任せていたが、簡易トイレには排泄物はなかった。

 しばらくすると、父親が弟が好物だからと勝手に自分のクレジットカードを用いて買っていたカップ焼きそばと、それを作るための水の減りが、買った日から今日まであまり減っていないことに気付いた。

 兄が通報してしばらくして、複数の警察官がやってきて調査を行うも、いつから居ないかは分からず終いであった。

 結果、兄は弟が家出したものだと両親に言って納得させた。そして、これ以上家族に心配をかけさせまいと弟に帰ってくるようにと、ネットで呼びかけを行った。

 するとどうだろうか。日本の様々な場所で無個性の人間を抱える家族から、その人間がいなくなったことが数多く報告された。

 その家のように、無個性の人間に無干渉の家族もいたが、無個性だろうが家族と大事にしてきた家族からもさらわれており、これが単なる家出ではなく、本当に誘拐されたのだと兄は理解した。

 さらに、数ヶ月後に無個性の人間が行方不明になっていないかという調査を実施すると、ホームレス達から何人かいなくなっていることが報告され、警察はこれを事件性が高いものと判断して捜査本部を設置した。

 これだけ大規模な誘拐事件となれば、相手は複数だと睨んだ捜査本部は各所轄署と協力するも、有力な情報は得られずに、捜査は早々に難航した。

 そこで警視庁は、とある人物の手を借りることにした。

 1人はこの手の事件に精通しており、警察から役職を退いた今でもニュースのコメンテーターやアドバイザーとして、ヴィランの起こす様々な事件の解説を行うメガネを掛けたやや細身の男。

 そして、もう1人はアメリカでの研鑽を終えて、堂々と日本に帰国したムキムキなナイスガイヒーロー。後に平和の象徴と謳われることになる男である。

 警視庁は、担当警察官を1人用意して、その人物に2人へと今回の事件のことを説明した。

 担当は、2人とも魔王の存在については把握しているため、新米警察官ではなくベテランを呼ぶべきとの声もあったが、辞職したアドバイザーから新米だからこそ知っておくべきだという発言があって、まだ警察官になったばかりの男が彼らの担当となった。

 そして、説明を受けた2人は警視庁本部が下した結論とほぼおなじような判断をした。

 これから狙われる可能性がある無個性の人物の保護と監視。加えて敵組織の実態把握である。これには多数の警察官と、地元ヒーローが駆り出されるほどの大捜査となった。

 このことをニュースで報道することで、意図的な抑制と挑発を行った警視庁本部は敵組織の出方を待った。

 世界的に権威を持つとされる科学者の警護には、知人の関係にあったことからアドバイザーが行ったがそこで悲劇は起こった。

 

 

「南雲は今回の事件どう思う?」

 

 

「北原や西村も被害に遭っているからな。……他人事には出来ないな」

 

 

 学部は違えど、大学時代の同期であった2人は入口と出口を警備する警察官がいるという安全な状況から、温かいコーヒーを飲みながら、今回の事件での、敵の目的を推察していく。

 

 

「研究者を誘拐してるということは、おそらく無個性の人を使って何かするんだろうな」

 

 

「無個性の人間を使った改造人間とかありそうだな。攫われた奴らの専攻は人体に精通してる奴らばかりだ」

 

 

「攫われてない東山は人体ではなく、機械工学だったか。お前は……人体ではなく、生物だよな」

 

 

 そう言ったアドバイザーの隣には、南雲博士の行う絶滅動物を復活させるための実験報告書がずらりと並んでいる。

 これは多くのニュース番組に呼ばれたアドバイザーもよく知っており、最近では狼のDNAを復活させることに成功したとアナウンサーが言っていたのを思い出す。

 

 

「あぁ。でもDNAだけではまだ復活とは言えないよ」

 

 

 本物の狼は、犬のような身体に多くの毛を生やして、大地を駆け抜けるのだ。

 DNAだけでは、狼復活の足がかりのみで、実現にはまだ程遠い。そう語りながら、コップを置いた瞬間、部屋の電気が全て消えて部屋は暗闇に包まれる。

 

 

「ん? なんだ? 停電か?」

 

 

「ブレーカーでも落ちたか。見てくるよ」

 

 

 そう言って立ち上がった博士に、アドバイザーは手で制すると、警護に向かわせるようと入口に待機している警察官達の方を見る。

 しかし、そこには警察官の姿はなく、あったのはドアの前にある警察官が着ていたのであろう衣服だけだ。

 

 

「な、なんだこれは!? あいつら、どこに行った!?」

 

 

 動揺するアドバイザーはそのまま怒り任せにドアを開けようとドアノブを掴む。しかし、何度ガチャガチャと音を立ててもドアは開く様子はない。

 ドアを何度も、何度も叩いて外の警護に開けるように叫ぶも、反応はない。

 そして、そこでアドバイザーは今回の事件の始まりと似ていると気付くと、恐る恐るといった様子で、やけに静かな同期が座る椅子を見た。

 

 

「な、なんだ……お前は……?」

 

 

 そこに居たのは文字通りの化け物であった。

 赤い「く」の字に曲がった2本の角。

 3つの六角形が目のように並び、口は言葉で形容できないような不気味さを秘めており、顔から下は人間のように手足がそれぞれ2本生えているものの、緑の身体に浮かび上がる赤い模様が非人間さを醸し出している。

 

 

 変異型のヴィラン……? いや、自分が見たものでもここまで別の生物に迫った変異型の個性はいなかったとアドバイザーは身震いする。

 不気味で不快な蜘蛛のような姿をした人間と目が合い、その後ろでは守ると約束した同期が気を失って横たわっている。

 

 

 警備の人間は殺された。ならば、彼を助けられるのは自分だけと、かつて警察官だった自分の心を奮い立たせたアドバイザーはすぐさま近くにあった灰皿を手にする。

 過去のドラマなどではよく殺害道具として扱われてきた灰皿であるが、個性が当たり前の現在では相手の個性によってその殺傷能力の高さが異なるため、やや心許ないものの無いよりはマシだと自分に言い聞かせる。

 

 

「やぁ────っ!!!!」

 

 

 恐怖心を捨て去るためにわざと大きな声を出しながら男が突進していくと、化け物は口から蜘蛛が吐くような糸を吐き出すかと思えば、外来種などがよく持つとされる毒針をその男に向かって発射した。

 

 

 ブスッと。針は男に痛みを与えることなく刺さる。

 この程度で俺を止められるものかとさらに自分を奮い立たせようと男は声を上げようとするも、すぐさま自分の身体の異変に気づいた。

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!? あっ……あああっ!! ァァァ……」

 

 

 針が刺さった場所から徐々に身体がどんどん泡になっていくという未知の経験と、痛みもなく自分の身体が溶けていく恐怖から男は苦闘の叫びをあげるもそれはどんどん小さくなり、結局は彼の着ていた衣服だけを残して亡くなってしまう。

 

 

「来い」

 

 

 蜘蛛男は邪魔者を全て排除すると、廊下で待機させていた戦闘員達を呼びつける。

 

 

「運べ」

 

 

「イーッ!!」

 

 

 上司の命令に従うように、眠った博士を担いだ戦闘員達は大学の裏口を通って外に出ると、移動用に用意していた車のトランクへ博士を放り込むと蓋を閉める。

 予め、不要な人間達を先程のように身体を泡に変えるという毒針で刺すことで、目撃者や邪魔者を排除していた蜘蛛男は満足そうに今回の結果を首領へと伝えるべく車に乗り込む。

 

 

「往くぞ」

 

 

 誰もいなくなった大学の1棟から走り出した車は、いつしか闇へと消えてしまう。

 それからしばらくして、アドバイザーや南雲博士との連絡が途絶えたことを不思議に思った警視庁が気付いて現場に警察官を向かわせた頃には、蜘蛛男は彼らのアジトへと辿り着いていた。

 

 

 

 

 

 

 




首領「目撃者がいないとショッカーの名は広まらないのでは……?(名推理)」

アドバイザーと4方向博士たちはオリキャラ。多分もう出ないよ。
警察官とムキムキなナイスガイヒーローはまだ出ると思います。

コラム続けた方がいいですか?(V3まではできてる)

  • 続けて! 答えは聞いてないっ!
  • 絶版✩

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