ライダーがいないので、ショッカーを作りました。 作:オールF
オールマイトとオールライダーの語感が似てますが、劇場版とかではなく幕間的な話なので初投稿です。
事の始まりは中国 軽慶市で「発光する赤ん坊」が生まれたというニュースであった。以降、各地で「超常」は発見され、原因も判然としないまま時は流れる。
いつしか「超常」は「日常」に、「架空」は「現実」になった。
世界総人口の約8割が何らかの特異体質である超人社会となりつつある現在で、混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想して憧れた1つの職業が脚光を浴びていた。
混乱渦巻く現代社会において、超常を得たものは大きく3つに分けられた。
超常を振るうことはせず、旧世代の人間のようにごく普通に暮らす一般市民。
逆に自らの超常を悪用し、悪を成す行為を行うヴィランと呼ばれる存在。
そして、悪逆非道を尽くすヴィランから一般市民を守るために自らの超常を使うヒーロー。
広義的には勇姿、英雄を意味する言葉である「ヒーロー」は、ただの超常持ちを超えた超常、知識、技術を持ち合わせており、それらを用いて一般社会にとって悪とされる行為を働く者、ヴィランを倒すために敢然と立ち上がった。
虚構が現実となったこの世界では、ヒーローこそが全国の子供たちの夢であり、一般市民の憧れと希望であった。
だが、社会に馴染めずに爪弾きにされた者、今の世の中に不満を抱える者や、ヒーローとは真逆の存在「魔王」に憧れてヴィランになった人間もいる。
超常は今では「個性」と名付けられて、それぞれの人間の1つのアイデンティティとして扱われており、ヒーローのみが公の場で個性を使うことが許されている。ライセンスがなくても、ヴィランと遭遇したための自衛手段として扱うことは許されてはいるが、原則的にはヒーローでない者は個性を使うことが出来ない。
しかし、ヴィランは「悪」である。悪とは社会から許されていない行為をはたらいた者に与えられる名前の通り、彼らは一般市民の犠牲など顧みずに自分達がやりたいようにやりたい事をやる。そんな彼らを捕まえるのは超常社会となった今でも警察の仕事であるが、止めるのはヒーローの仕事である。
個性発現黎明期からこの世全ての悪を体現したような男が現れてからというもの、彼の出身である日本においてヴィランの数は急速的に増加した。皮肉なことに、それに伴ってヒーローの質も高まり、全てのヴィランをねじ伏せることができるであろう、今現在最も注目を集めているヒーローがいた。
その名をオールマイト。
黄色い触角のように立った2本の髪と筋肉隆々な体つきに、どんな悪の前でも決して笑顔を絶やさずに正義のために戦うヒーローの登場に日本だけでなく、世界中が歓喜した。
デビューは密やかに、しかし活躍は大きく取り上げられるオールマイトの存在に、市民やヴィランは失笑し、誇張表現が過ぎると一蹴したが、たった1ヶ月で都内の警察署に貼られていた凶悪ヴィランの指名手配リストが8割もオールマイトの手によって捕縛されたとなれば、世間の評価はガラリと変わる…………はずであった。
個性発現黎明期から数年経ち、警察各所が情報統制を行ったおかげもあるが、ヴィラン界の魔王の存在は秘匿され、世間には一時的な平和が戻りつつあったが、突如として起こった無個性の人間の集団誘拐や、優秀な科学者達の誘拐・失踪事件により、社会は再び不安の闇に包まれた。
警察やヒーローの努力も虚しく、次々と誘拐されていく研究者たちに世間はひどく憤慨した。税金を返せ、何のためのお前たちなのだと。
世間からの弾圧により、警視庁捜査一課長は責任を取って辞職を決意したその日、これまた世界を震撼させるようなマンション集団殺人事件とそれを調べていた警察官たちが謎のビールスに感染するという事件が起きた。
たった数時間の間に立て続けに起きた事件であったが、期待のニューヒーロー、オールマイトにより警察関係者には死亡者を出すことなく事態は鎮圧。しかし、ビールスに感染した者たちは未だに血に飢えたハイエナのように、新たな感染者を求めて縛り付けられたベッドの上で牙を光らせていた。
幸い、その事件での感染を最後にビールスの感染は止まっているものの、首謀者の足取りは掴めていない。けれども、現場に駆けつけ、顔が無くなり、上半身が吹き飛び、体が灰になったマンションの住人達の無惨な姿にオールマイトはこの事件には"あの男"が関わっていると確信できた。
オールマイトはヒーローになってから日が浅いものの、活躍や注目度はトップクラスであり、早い段階で警察関係者に知り合いができた。福井警視である。
福井は自分が可愛がっていた2人の部下を助けてくれたオールマイトに恩義を感じており、年齢や立場など関係なしに力になれることがあれば連絡して欲しいと彼に自分の連絡先を渡していた。
まさか連絡先を渡した当日の夜に、事件解決の報告と共に協力して欲しいという打診が来るとは思わなかったが。その内容は個性発現黎明期から暗躍する魔王こと、オールマイトの師匠を殺害した憎むべき相手"オールフォーワン"。警察内部では上層部でしか情報の取り扱えない重要人物であり、警視である福井でも過去の犯罪歴や特徴を集めるだけでも時間がかかる人物であった。
この男と集団ビールス感染事件の犯人グループが繋がっているとなれば福井も手伝わないわけにはいかない。先日、緑川博士を誘拐されて、またもやバッシングを受けて世間からの信頼回復を目指す福井としては何としてもオールフォーワン、あるいはマンションの住人や自分の同僚たちを巻き込んだであろう犯人グループを探すべく上司に取れと命じられた有給休暇も返上して、捜査活動に身を乗り出した。
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オールマイトが事件を解決していく中で、奇妙な事件が起きた。どこから入ってきたか分からない蛇と目が合うと身体の自由が利かなくなるという事件だ。
昨今の個性による超常化社会によって、動物が個性を持つケースがいくつか発見されたこともあり、「目を合わせることで身体を麻痺させる」という個性を持つ蛇がいてもおかしくないだろうという結論に至った。
身体が硬直化するだけの個性であったが、目が合った人物たちは痺れに多少の差はあれど、日常生活に支障が現れていた。初めは誰もがすぐに落ち着くだろうと楽観視していたが、痺れを取る方法、緩和させる手段も見つからなかった。
これが全国的に広がれば、ヴィランの侵攻を許してしまうだろうと考えた警察はその蛇の個性を「蛇睨み」と呼称し、事態の収拾を図った。
目を合わせなければ身体が硬直しないならヒーローの手助けは借りずとも警察だけで解決出来ると、所轄の警察官だけで捜査を行った。
「いたぞ」
「待て、罠にかかるまで待つんだ」
警察官たちは蛇の好物とされている小動物たちを餌に、個性「蛇睨み」を持つと思われる蛇を発見することに成功。
さらに罠に捕えることで蛇の身動きが取れなくなったことを確認すると、問題の目を塞ぐために蛇へと近づいた。
意外に楽な仕事だったなと笑う警察官たちであったが、1人が急に立ち止まった。
「おい、なんか変な音が聞こえないか?」
「変な音?」
どんな音だよと言う仲間に立ち止まった警察官は「こう、なんか普段聞かない。不気味そのものみたいな……」となんとも形容しがたい物音について説明しようとすると、今度は他の警察官達にもハッキリ聞こえるような謎の声が部屋に響いた。
「へぇ、耳がいいんだね。けど、おかげで楽に死ねなくなったね」
「だ、誰だ!?」
「どこにいる!?」
「出て来やがれ!」
自分たち以外に人の姿が見えないというのに、どこからか聞こえてくる澄ました声に警察官たちは身を寄せあって警戒の色を露わにする。
「では、望み通り出てきてあげるとしようか!」
謎の声の主がそう言うと、突如として蛇を捕らえていたトラップが爆発し、煙が上がる。その光景に警察官たちが目を見開くとそこにいたのは、ただの蛇ではなかった。人間の成人男性のような体つきをした身長が180は超えているであろう蛇の顔をした化け物が彼らの前にいた。
「シャァッ〜〜!!」
「「「ばっ、ば、化け物!?」」」
鷹の意匠を表したエンブレムを腰に巻き、長い舌をくねらせながら化け物は言った。
「僕は化け物なんかじゃないさ。死に土産に教えてあげるよ、僕の名前は蛇男! 我が偉大なる首領が生み出した改造人間さ!」
「か、改造人間!?」
聞きなれない単語に恐怖を顕にした警察官たちは近づいてくる蛇男から距離をとるため後退りをするも、部屋から出るためのドアは蛇男の真後ろであり、このままでは壁に追い込まれて一巻の終わりである。
「光栄に思うといいよ。君たちは僕の第2の能力で殺されるんだから」
「な、なんだと!?」
蛇男は第1の能力である、自分の網膜から人間の網膜へと目に見えない毒素を送ることで神経麻痺を引き起こす実験は終了しており、残り1つの最後の実験はまだ済んでいないということだった。これが終われば、自分はオールマイトを倒してこの日本を恐怖の海に沈めると。
「そんなことさせてたまるかよ!」
しかし、ここで黙ってやられるほど彼らもヤワではなく、彼らは顔を見合わせて互いに鼓舞し合うと、腰に携帯していた警棒を抜くと3人は蛇男へと突貫する。
「フッ、忘れたのかい? 僕の第1の能力を」
嘲笑うように蛇男は向かってくる3人へと目を合わせる。
「し、しまった!!」
3人のうち2人はあらかじめ目をつぶって突き進んでいたが、1人だけ目を開いていたために走っていた勢いも余って床へと倒れ伏す。だが、2人は目を開くことなく雄叫びを上げながら突っ込むも蛇男はそれを冷めた表情で見つめた。
「はぁ、そんなことしたって無駄なのに……愚かな」
言うと蛇男はストローのような細さの舌をうねらせ、彼らの喉仏を辻斬る。その切れ味は凄まじく、彼らはあまりの痛みに走りを止めそうになるも無理矢理身体を動かして蛇男に向かっていく。
だが、蛇男は彼らが目を瞑っているのをいいことに進行方向から動くと「そろそろか」と興味深そうに2人の男へと目をやった。
「ァッ……ァァ……? あがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」
「ッァ…………がっ、がはっ!! ああああああああぁぁぁっっっ!!!!」
喉を切られて、声を出すのも辛いはずの2人は突如として大きな叫び声を上げる。そして、蛇睨みの神経麻痺に冒されて倒れ伏した警察官が見たのは自ら喉を引っ掻いて絶命をはかる仲間たちの姿であった。
「お、お前ら、なに、やって…………」
「ふふふ、これが僕の第2の能力さ。面白いだろう?」
蛇男第2の能力、それは舌に染み込ませた猛毒である。その猛毒は10数秒で体内へと蔓延し、毒を受けた者はあまりの苦しさから自ら死を選び、毒は死とともに解毒されるという恐ろしい能力なのだ。
「これによりショッカーは完全犯罪が可能となり、日本の首脳陣、さらにはトップヒーローの暗殺ができるというわけさ」
「ショッ……カー……? なん、だ、それは……!」
「おっと、ちょっと喋りすぎたかな。まぁいいさ。君にも死んでもらうだけだからね」
ヒュロロと不気味に伸びた舌に警察官は目を閉じた。自分も彼らのように自決するのかと。
「い……や……」
「そうか。嫌か。でも仕方ないね」
蛇男は「嫌」と警察官の呻きを解釈したが、実際はこの後に「これは」と続くはずだった。蛇睨みの神経毒が口にも及んで、言葉を続けられなかった警察官であったが、思考はハッキリしていた。
この能力には大きな矛盾があると。蛇男の能力はどちらも強力であるが、神経麻痺を起こされてから毒を投入されても身体が動かないのであれば自決は出来ない。無論、蛇男が言うには自分から死を選んでしまうほどの猛毒なのだから、自決できなくとも殺すことができるのかもしれないが、警察官には頭脳が間抜けなのかと思わざるを得なかった。
「じゃあね、アデュー」
徐々に迫り来る舌に警察官は微かな希望にかけた。けれども本当に僅かなものだ。わざわざ大声を上げて蛇男に向かったのは何も恐怖をかき消すためだけではない。
自分たちはヴィランなどの犯罪者を捕らえることが出来ても、基本的には無力だ。どんなに力を持とうとも、個性の行使ができない。凶悪ヴィランに対しては手柄をヒーローに譲るしかない。
一部ではその事に不満を上げるものもいるが、彼はヒーローの存在を信じていた。それも金や権力のために活動する偽りのヒーローではない。
自分がどんなに傷つこうとも、あらゆる悪を跳ねのける本当の正義の味方を。
その瞬間、蛇男の後ろから強烈な風が吹いた。
「Texas Smash!!!」
蛇男が無視できないほどの強風と共に蛇男の背後の壁が破壊され、コンクリートの破片が辺りに散らばる。そして、蛇男はその姿を見て舌なめずりをし、警察官はその姿を見ずとも先程のような絶望の顔ではなくこれから起こる歓喜の出来事に思いを馳せた希望の表情であった。
「私が来た!!」
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「Hey, You!! ここにいた警察官2人と個性を持つ蛇を知らないかな!?」
「ふふふ、これがオールマイト……話に聞いていた通りだね」
「私のことを知っているのか! けど、私は君の事は知らないな」
手始めに言葉のジャブ。無意味な会話にも見えるが、オールマイトは敵側の出方を窺いつつ、他のヒーローや警察官の到着を待つ時間稼ぎをしていた。
人型の蛇という異形型の個性の持ち主であろう怪物は、オールマイトの言葉を鼻で笑った。
「知らなくていいさ。どうせ君は僕に殺されるんだからね」
「そうか、つまり……君はヴィランってことでいいのかな?」
「僕をあんな下等な人類と同じにしないでくれないかな。僕は上位種とも言うべき存在さ」
「どういうことかな?」
蛇男の物言いにオールマイトが口を開くと、蛇男は誇らしげに語った。
「僕は偉大なる首領の改造手術を受けた改造人間なのさ」
ニヤリと微笑んだ蛇男は細くストローのような舌をくねらせながら、不敵にオールマイトへと向かってくる。オールマイトはこれから戦闘になると察するも蛇男の背後に倒れる警察官の身を案じた。身体を動かそうとピクリ、ピクリと身体が震えていることから生きてはいるのだろうが、聞いていたとおりに蛇睨みによる神経麻痺にあったのは容易に想像できた。
改造人間。普通の個性持ちとは異なるのか、オールフォーワンが個性を与えたのか。首領とはオールフォーワンのことを指すのか。
「聞きたいことは山ほどあるが!」
戦う場所を変えさせてもらうと、昔読んだ漫画を参考に両手の拳を突き出すことで突風を生み出すと、蛇男の身体は背後の壁をぶち抜いて空へと舞い上がった。
「警察と救急車の手配は済んでいる! 君はここで待っていてくれ!」
オールマイトは倒れ伏している警察官にそう言うと、膝を曲げてそれを一気に伸ばすと大きく跳躍した。蛇男を飛ばした方向は特に意図していなかったが、廃工場であり、オールマイトはそこへ降り立つと既に体勢を立て直したのであろう蛇男と再び向かい合った。
「ちっ、中々に荒っぽいじゃないか」
「すまないね。君には聞きたいことが多くてね」
「それを僕が話すとでも?」
「いや……思ってないさ!」
言葉と共に大きく踏み込んだオールマイトは拳を突き出す。コンクリートを容易く砕き、風圧だけで並大抵のヴィランを鎮めてきた自慢の拳を蛇男は余裕の表情で受け止めた。
「くっ! やるじゃないか!」
「君こそ!」
その威力は蛇男と彼を作った首領の想定を超えていたとはいえ、蛇男が爆死するほどではなかった。バッタの跳躍力と人間の脚力を合わせたキックの威力と比べれば、オールマイトのパンチは幾分か低いという想定であったが、受け止めた蛇男の手には僅かな痺れが残り、それが彼のプライドを刺激した。格下だと思っていた相手から考えを改めた蛇男は「お返しだよ」とオールマイトへの腹部へと膝蹴りをお見舞いする。
「ンッ! …………?」
しかし、オールマイトは首を傾げた。自賛するわけではないが自分のパンチを受け止めたのだから、かなりの攻撃力があるのだと思っていたのだが腹部へときた衝撃は軽いもので、あらかじめ攻撃が来るとわかって腹筋に力を入れていたこともあってか大したことはなかった。
「この程度か……改造人間!」
「がはぁっ! 図に乗るなよ人間!!」
掌底が蛇男の右頬を直撃するも、蛇男もすかさずチョップでオールマイトへと攻撃するも、それは簡単に躱されて身を屈めて蛇男の脛へと肘打ちを食らわせると敵の体勢が崩れる。
「おのれ!」
しかし、それで怯む蛇男でもなく、オールマイトと目を合わせると目に見えない神経毒を送り込む。
「ッ!?」
近距離でモロに食らってしまったオールマイトは身体が急激にだるくなり、屈んだままの姿勢となり立ち上がることが出来ず、何度も脳から身体へと動けと命じるもピクリとするだけで一向に動く気配がなかった。
「フン、これで形勢逆転だね!」
隙だらけとなり、反撃のできない身体となったオールマイトに蛇男はいたぶるように殴打を繰り返していく。反撃することの出来ないオールマイトは殴られ続け、口の中は鉄の味でいっぱいとなり、端からは血が零れ始めていた。
「なんだ大したことないじゃないか」
嬲るように蹴りながらそう言う蛇男を睨むようにオールマイトは顔を上げた。
「き、みの目、的は……?」
「……そうだね、これから死ぬんだ。冥土の土産に教えてあげるとしようか」
すると、蛇男は語った。自分の目的を。日本の首脳陣とヒーローの暗殺。さらには無個性人間、科学者達の誘拐や集団ビールス事件に関しても自分たちが関与していると。
そして、勝利を確信すると大体の人間は口が滑りやすくなる。
「ショッカーは世界を征服して、地球を僕たち改造人間の楽園とするのさ」
「……ショッカーか。なるほど、それがお前たちの組織の名前か!」
「何っ!?」
聞きたいことは全部聞けたとオールマイトが立ち上がるのを見て、蛇男は思わず後ずさる。馬鹿な、神経毒は自分が死なない限り永続のはずなのにと訝しむ蛇男はオールマイトへと問いかけた。
「何故だ! 何故動ける!?」
「決まっているだろう! 私がヒーローだからだっ!!」
子供たちの夢を守り、みんなの日常を守る希望の光! それがヒーローだと叫んだオールマイトは拳に力を目一杯込める。膨れ上がった筋肉とほとばしる血液のビートは血管を浮き上がらせ、蛇男はそれが自分へと向けられるとわかった時オールマイトよりも先に舌の猛毒を与えようと舌を伸ばすが───────。
「遅いッッッ!!!! DETROIT SMASHッッッ!!!」
「があ"あ"あ"あ"ッッッ!!!!???」
まるで天候すら変えてしまいそうな痛烈な一撃が蛇男の左頬へと突き刺さり、背後へと大きく身を飛ばす。オールマイトは死んではいないだろうと、未だにやや痺れる身体を引きずりながら蛇男へと向かおうとするが、彼の異変に気付いて立ち止まる。
「ふ、ふふっ、み、見事だよ、オールマイト……! けれど、君はこれ以上、僕を追えない」
「何?」
「僕たち改造人間は個性よりも強力な力を与えられている反面、敗北は許されない……、君のせいで僕の身体を駆け巡っていた毒はめちゃくちゃさ……」
言われて蛇男をよく観察してみれば、身体の節々が紫色に変色し始めてボロボロと崩れ出していた。神経麻痺の毒と、自殺へと追いやる猛毒が体内で混ざりあった結果、蛇男の身体が崩壊───────いや、それより先に爆発するだろうと察した蛇男は生まれて最初にして最後の宿敵へと言い放った。
「我々、ショッカーは必ず世界征服を果たす! 首領の作り出す改造人間の恐ろしさはもう既にこの世界は知っている! 君を殺せば我々は目的を果たせる! 君はこれからも多くの改造人間と戦うことになるだろう! 君があの世に来るのを楽しみに待っているぞ!!」
「待て───────」
蛇男の毒素が抜けていき身体の自由が戻り始めたオールマイトが彼へと駆け寄ろうとしたその時、蛇男のベルトのエンブレムの中に仕込まれていた爆弾が起動した。
元々、ボロボロに崩壊していた身体は爆発により粉微塵となり、蛇男が死んだことで身体を蝕んでいた神経毒も完全に消え去って、蛇男という存在がいた証明は何一つ残らなかった。
残ったのは、無個性の人間を改造し世界征服を企んでいるショッカーという組織の存在のみ。オールマイトは未だに実体の掴めていない悪の組織の首領とその近くにいるであろう宿敵の存在に顔を強ばらせていた。
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「ショッカー……ね」
オールマイトが福井の下を訪れたのは、蛇男が文字通りの爆死をしてから数時間後であった。倒れていた警察官からの事情聴取と合わせて、情報の整理を行った2人であったが、ショッカーという組織はどこにも存在しておらず、公には活動していない組織だった。しかし、蛇男が残した言葉から無個性の人間を首領と名乗る人間が改造して、世界征服を企んでいる悪の組織であることは掴めた。
だが、構成メンバーや基地に関しての情報は全くなく、次に彼らが現れるまで待つしかないというのが実情であった。
手がかりである蛇男も死んでしまい、彼が個性を持った超常社会で生まれた人間なのか、彼の言う通り科学的な手術を受けて改造人間となったことでアレらの能力を得たのかもわからず、オールマイトは自分は人を殺したのか、それとも人ならざるものを殺したのかと頭を抱えた。
「こんな時お師匠様ならどうする……?」
流石の彼女でも人か分からないものを間接的とはいえ、殺してしまったとなれば思い悩むだろうかと、もうこの世にはいない女性の姿を思い浮かべながらため息をつく。
「まぁ、話を聞く限り、敗北者に死をってのがショッカーのルールだから、蛇男を殺したのは首領なんじゃないかな」
だから気にする事はないと言外に言った福井にオールマイトは会釈を返す。しかし、まだ納得のいっていないという顔であった。
それを見て福井はオールマイトから聞いた蛇男の遺言を繰り返す。
改造人間を作るにはやはり無個性の人間が必要であり、改造を主導しているのは首領で間違いない。では、攫われた科学者たちは何をしている? 外側を首領が作って、毒は個性ではなく科学者たちが作っていると考えるのが自然だ。
目的と手段は分かり、実働部隊と暗殺、誘拐と様々な改造人間が用意されている事も蛇男のおかげで想像はできた。けれども、自分たちが知っているのはたった1体。これからどんな改造人間が何をしてくるか分からない。福井はこれから長く続くであろう戦いを想像しながら、資料作りを進めた。
2日後、福井はこれらの事を上層部に報告書を提出した。だが、蛇男の死体もなく、蛇男の毒も彼の死と共に消え去っていたために証拠がなかったため懐疑的であった。しかし、オールマイトの証言ということもあり無下にするには早計かと検討を重ねて、最近の世間を騒がせてきた全ての事件にショッカーという組織が本当に関わっているのならば、対策は急務だと判断した。
同時に、普通のヴィランと異なる力を持った改造人間を擁し、組織で行動するという狡猾さから捜査一課でも手に負えないと判断して、対特殊犯罪対策チームを設立した。公には、対ショッカーに向けての組織と公表せずに、組織行動で犯罪を犯すヴィランへの対策チームとして発表した。
「これで少しはマシになるといいんだけどね」
「そうですね」
特殊犯罪対策チームのリーダーとして命じられた福井は、ショッカー怪人をその目で捉え生還したという理由から同じチームに引き入れた新人警官や、ビールス感染事件でオールマイトに救出された刑事2人と設立したばかりでまだ少数であるが、全員ショッカーの被害者たちだ。
以後はこの4人とオールマイトや対ショッカーに向けて選抜されたヒーロー達で対処に当たる予定であったが、ショッカーの狙いはオールマイトばかりで、性能実験と称して無関係の人々を殺し、オールマイトが成敗するという流れが当たり前となってからしばらく経った。
ショッカーの怪人はある時を境にピタリと姿を現さなくなった。発電所を襲ったマンドリラーや、漁船の沈没事故を引き起こしたカニ男、エビ男も倒し、つい先月自らを闘牛戦士と名乗る怪人うし男を下してからは、何の音沙汰も無くなっていた。
誘拐事件も緑川博士を最後としており、これ以後は無個性の人間も優秀な研究者の誘拐事件も起こっていない。オールマイトはショッカーが現れなくなってもいつも通りであり、日本中をその足で飛び回っては各地のヴィラン逮捕に協力していた。
一方で特殊犯罪対策チームはというと、これまで現れた怪人と活動内容のレポートはとっくにまとめ終わっており、暇を持て余していた。
「暇ですねー」
「俺らが暇なのはいいことなんだがなぁ……」
「他のヴィランは元気に動き回ってるもんね」
そのせいでオールマイトは大忙しさと笑う福井に笑い事じゃないでしょとビールス感染事件で生還した渡真利が呟くと、後輩の珂神がですねーと同調する。
「そういえば、後藤くんは?」
「あぁ、うし男事件の時にたまたま居合わせたカメラマンのとこに行ってるみたいですよ」
後藤とは蛇男の神経毒にやられて倒れ伏していた男で、この中では一番階級は低いものの、福井を含めて年齢や地位を気にしない人柄のため直ぐに馴染めていた。
「確かフリーのカメラマンだっけか」
「はい、非公式のプロレス大会の取材のために近くにいたみたいです」
個性が一般的となった今では、日本最高のヒーロー育成機関の運動会が主流となっており、過去に世界を熱狂させていたという格闘技は地下大会にまで衰退しており、公の大会も年に1回あるかないかというところにまで追い詰められていた。しかし、今でもプロレスを愛する者は存在しており、そのカメラマンは非公式大会にまで赴いて、プロレスファンたちへと向けた写真を撮ろうとしていたところにうし男事件の現場近くに居合わせたというのがオールマイトと本人からの話である。
「事情聴取は福井さんがやったんですよね?」
「うん。面白い青年だったよ」
福井はその時のことを思い出して微笑みながら、その青年から受け取った簡素な名刺を見遣りながら、つかの間の平穏に心を満たしていた。
オールマイト……またお師匠様のこと考えて……感動的だなぁ……!
特殊犯罪対策チームの苗字の由来(全員苗字だけで下の名前は考えてません)
福井警視→「ドライブサーガ 仮面ライダーチェイサー」での泊進ノ介と照井竜の会話より
渡真利刑事(巡査長)→仮面ライダードライブの主人公 泊進ノ介の苗字の漢字を変更。
珂神(巡査)→仮面ライダーカブトの加賀美新の苗字の漢字を変更。実は女の子。
後藤→仮面ライダーOOOの後藤慎太郎。中身は違う。
怪人解説→全員漫画版を元ネタに勝手にいじいじ。オールマイトは倒せたらいいなくらいで作られてるので、そんなに強くない。
蛇男→ポケモンの技「蛇睨み」と自決は「ひぐらしのなく頃に」から
マンドリラー→この話では詳しくしてないが、マンドリルのパワーと体内に電気エネルギーを蓄えている。元ネタはモンスタハンターに出てくるラージャン
カニ男・エビ男→こいつらに関しては何も無い。元々は首領の晩御飯だった。
うし男→自らを闘牛戦士と名乗るという設定があったが、蛇男が予想以上に長くなったのでボツ。ナレ死してもらった。
感想欄でサラッとはぐらかしてきた質問に答えられのはサラッと答えるコーナー。
世間はショッカーのことどう思ってるの?→被害者以外知らない
警察はショッカーをどう思ってるの?→AFO以来となるやべーやつら
ショッカーは目撃者を消さないの?→今はね
怪人は皆爆死?→基本的には
オールマイトは怪人を倒しても罪悪感ないの?→死なない程度のギリギリのダメージを与えてるのに怪人が勝手に自爆してるし、その前に何人か人が死んでるから、罪悪感抱いてる場合じゃなくなったよね。
首領のライダー知識→昭和は完走。平成はディケイド、見ていたため、リ・イマジナリーライダーは知っているが本来のは知らない。ダブルは見ている。OOOはメダルのライダーと知ってるくらい。鎧武はひよっこ。フィフティーンの方が印象強い。ドライブはライダー? ゴーストはパーカーライダー。ジオウ以降に関しては見る前に死んでいるためノータッチ。基本的に昭和ライダーが映画に出ていれば見るレベルの人だから、昭和ライダー以外の知識はにわかレベル。
世界の破壊者とか時をかける電車とか来そう→なんだかジオジオしてきたジオ!(大嘘)
地獄大使大丈夫?→蛇男は地獄大使の考案といえばわかるかな。
今回もほんへとあとがきで1万字超えてるからコラムなし! またニチアサに会おう!
好きなライダー世代
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昭和
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平成1期
-
平成2期
-
令和
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一つに絞りきれないほどに仮面ライダーの歴史は豊潤だ!