頭が割れる程の痛みとはよくいったものだ。酷い頭痛が仕事帰りで疲労している私を襲い、コンビニで買ってきた開けたばかりのビールを思わずこぼしそうになる。こういった時の痛みは中々ひかないもので、どうしようものかと悩んでるうちに電子レンジで温めておいたおつまみが温まったぞとこちらの様子お構いなしにチ──ンっと軽快な音を鳴らして自己主張してくる。この痛みに耐えてわざわざレンジまで取りに行くほど私は飲んべぇではないのだ。そう自分に言い聞かせながら今は煩わしく感じるお笑い芸人達の笑い声が聞こえてくるテレビを消し、布団に潜り込んだ。こんなことだったら頭痛薬を買っておけばよかったと小言を言いながら少し横になって目を閉じた。だが、この頭痛が治ったら頭痛薬を買って常備しておくという発想はきっと忘れているのだろうと思うと少しの笑いと余裕が出てきて多少痛みが和らいだ気がした。男の一人暮らしなんてそんなものだと思いながら私は鈍い痛みとともに意識を手放した。
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「く……いとく……提督! ……大丈夫ですか? どこか具合が悪いのですか?」
心地よい女性の声で目を覚ますとそこには見知らぬ風景が広がっていた。知的な雰囲気を醸し出す眼鏡をかけた女性と正面には赤い袴らしき物を着ている女性が私の様子を伺っている。よくみると眼鏡をかけている女性はセーラ服だがスカートの側部は謎の穴が開いているのに気づいた。悲しいかな男とは簡単に罠にはまってしまう生き物なのだ。決して私だけがやましい心をもっているのではない。男とはそういうものである。
「いや……大丈夫だありがとう。ところでここは……?」
いつの間にか頭痛が治っているのに気が付きながらも状況が掴めず、思わず尋ねてしまったがここは夢の中なのだ。夢の中で美女との会話でも楽しむとしようかと意識を切り替えながら自分に言い聞かせ落ち着きを取り戻そうとする。しかしこうもリアルな夢だと違和感はどうしてもぬぐい切れない。思考を巡らせていると
「提督もご冗談を言われるようになったのですか? ここは○○鎮守府の執務室ですよ」
……執務室とは一体? 執務室自体の意味はわかるのだが鎮守府? まるで海軍の基地みたいな場所ではないか。実際は鎮守府なるものが基地なのかは私にはわからぬがそういう場所に違いない。女性からもたらされた情報によって私はさらに混乱していた。よくみると自分の来ている服は寝る前と違う軍服らしき物を着ているではないか。こんな上等な服なんて久しく買ってないと自分の最近の買い物事情を思い出しながら心の中で笑いつつ、少しおいてから、まぁ夢なのだからそういうものかと冷静になることができた。提督と呼ばれていたのでおそらく私は司令官的な立場なのだろう。華麗に軍を指揮し、敵を倒して戦果を挙げるという子供ならだれもが一度くらい憧れるシチュエーションだなと懐かしい気持ちになりながら2人の様子を見てみると強張ったような緊張しているような様子でこちらを伺っていた。とくに目の前の女性は私の言葉にどう反応していいのかわからないといわんばかりに口を噤んで立っていた。
「あの……提督……先日申し上げました艦載機の補充の件なのですが……」
かんさいき……? 戦闘機のことなのか? とすればこの赤い袴を来ている女性はパイロットかなにかなのか。その恰好で戦闘機の操縦をするのか? はたまたなにか武道を嗜んでいてその合間にこの部屋にやってきたのか今の私にはわからないが、とりあえず
「ああ。いいぞ。その件については任せる」
と無難な回答をしたところ女性はまさかと言わんばかりに驚いた表情をしていた。まるで誕生日にダメ元でゲーム機をねだったら買ってもらえたような雰囲気だった。これが子供であればやったやったと喜びまわるのだがあいにく目の前にいるのは大人の女性だ。流石にはしゃぎはしないが驚きつつも、表情はどこか固いままだ。そこまで驚くことなのか? しかしここは軍事基地で彼女は軍人なのだから当然兵器の補給、補充は必要だろう。その了承をもらって驚いたことにこっちが逆に驚いていまった。妙な空気の中、傍にいたもう一人の女性が私に尋ねてくる。
「あの……提督。何点か質問をよろしいでしょうか?」
「かまわんよ」
「先日の作戦において出撃させた部隊についてですが……補給が済んでおりません。この補給を行ってないのはご存知ですか?」
「いや、そのことについては知らなかった。申し訳ない。直ちに補給、修理を行ってくれ。万全な状態でな」
「…………本部から送られてくる予定の資材関係についてですが、こちらに関してはどうされるおつもりでしょうか?」
「君に任せるつもりでいるが……なにかまずかったか?」
明らかに2人が動揺しているのがわかる。私が何をしたというのだ。こちらも不安になってくるではないか。まるで私が悪いことをしているような気分になり罪悪感みたいな感情が生まれてくる。先ほどよりも不穏な雰囲気が空間を包む。いたたまれない気持ちになり、なんとかしようと思わず白状するような形で私は喋る。私は悪くないぞ決して。
「すまない……正直に言うとな……以前の記憶がないのだ。というよりも私が持っている記憶と君達が思っている私としての記憶はおそらく一致しない。何を言っているのかわからないとは思うが自分でもこの状況がわからないのだ」
こんな気まずい夢なら早く覚めてくれと願うばかりであった。
投稿の仕方がわからず時間がかかってしまいました。修正できるところは順次していく予定です。見やすく読みやすい文章を書けるように心がけて執筆できるよう頑張ります。