どうやら夢から覚めることはなかったみたいだ。昨日食べたレーションの味を思い出しつつ業者には一刻も早く来てもらって食材を届けてもらわなければならない。あれを毎日食べるのはごめんだ。長門達の嬉しそうな顔につられて私も笑みをこぼす。佐賀山よりかはまだ私の方がましだろう。その点については自負がある。管理面については大淀を中心に軍事では長門を中心に頼って行こう。私が無知の素人であることをいいことに、艦娘達にいいように扱われる可能性もあるだろう。しかし彼女達が私を信じてついてくると言ってくれるのであれば、私もその期待に出来るだけ応えよう。ここにいる3人にレーションについてあれは食えたもんじゃないなと笑いながら問いかけると3人ともうなずいていた。特に赤城はうんうんと食い気味に首を縦に振っていた。今日の昼までは我慢だぞ赤城。
「明石!!提督は昨日のままの提督だった!」
提督から明石にこのことを一応報告してこいと言われ工廠に向かった。嬉しさのあまり柄にもなく走って来たため少しだけ息が上がってしまう。なんだかんだ言って私も浮かれているのを自覚し冷静になろうと咳払いをする。そんな私とは裏腹に明石はやったぁ!!と素直に喜んでいた。こういう素直なところは見習いたいものだ。明石と同室の部屋で普段を過ごす私は寝る前に昨日の夜のいきさつを話していたのだ。その時の明石の反応は私達と一緒だった。不安も大きかったのだろう。昨日の装備開発の続きを行っている妖精達も報告を聞いた途端手を止め、一緒にばんざーいっと大きな声で喜んで三唱していた。
「これで大淀も気がだいぶ楽になるねぇ!しかもお昼からレーションじゃなくてちゃんとしたご飯がでるようになるんでしょ?もうこれだけで幸せだよぉ~。」
心底嬉しそうな喜びの声にわたしもうんうんとうなずく。これから。これからなのだ。しっかり提督を支えていくのだと高鳴る気持ちを確認する2人なのであった。
「間宮さん!今日のお昼ご飯よろしくお願いしますね!!」
一方食堂では厨房に向かって赤城のご機嫌な声が間宮に届けられていた。赤城から昨日のいきさつをきいた間宮は不安な様子だったが今目の前にいるご機嫌な顔をみるにうまくいったのだろう。つられて笑顔になって任させてくださいね!と力強い返事を返す。いつの間にやら改修されて広くなっているキッチン。そして提督の続投。こんなにいいことが続いてよいのだろうかと思わず頬をつねってみる。間宮さんどうしたんですか?と伊良湖からの問いかけに何でもないのよ今日から忙しくなるから頑張りましょうね。と声をかけ早朝から届いた食材に目を通した。設備が新しくなって驚いて質問してくる伊良湖を上手くいなしつつ、これからきっとこの鎮守府は少しずつ変わっていくと優しく返しながら食事の準備に取り掛かった。
「提督よ。実は少し不安だったのだ。提督がもしかしたらどこかにいってしまうのではないかと。昨日は恥ずかしながらあまり眠れなかったのだ。だが提督はこうして、目の前にいる。これほどうれしいことはない。」
執務室に残った長門が嬉しい言葉をかけてくれる。
「長門よ。私は昨日も言った通り素人だ。戦闘の指揮は基本お前に任せることにする。私は大まかな戦略目標を伝えるだけだ。」
「何を言うのだ提督よ。これから学んでいけばいいのだ。誰だって最初から上手く出来る者などいないさ。だが指揮を預けてくれるというのはありがたい。装備の件といいこれで奴らとも戦えそうだ。」
戦場の様子を確認できない私が実際に現場で戦っている者たちにどうこういうつもりはない。要はスポーツクラブのオーナー的なポジションになればいいはずだ。ある程度現場の者たちに指揮を任せて大まかな方針を伝え、その目標達成に必要な提案や進言があれば取り入れていけばいいはずだ。金はだすが、現場のきめたことにいちいち文句を言わないオーナーであれば、現場の者たちにとってやりやすいはずだ。きっとそんな感覚でいいはずだ。後はおいおい私も学んでいけばいい。資材や施設管理についてはサラリーマンの時の経験をいかして応用していけばなんとかなるはず。当面は軍事関係の座学が必要だと思っているとそれぞれ伝令を頼んだ2人が戻ってきた。いちいち使いをだすのも面倒なので工廠や厨房に内線をつくってもらうのもいいかもしれない。妖精達の報酬をたかる様子を思い浮かべながら思いついた案をメモをしていると3人がそろったのを見計らって長門が声をかける。
「本日の任務については哨戒行動のみでよろしいか?」
「それで構わない。出撃する際に明石の工廠で生産された装備を一式駆逐艦と軽巡洋艦の者たちに装備させるように。なれない装備だろうが使っていかないことには慣れることはないからなどんどん経験を積ませていけ。そのうち実践形式の演習もやっていく予定だ。」
「装備につきましてはさきほど工廠に伝えに行ったときに装備の開発はほとんど終え、人数分は開発済みとのことです。あとは予備の分と損傷した艤装の修復作業にうつるとのことでした。」
大淀の痒い所に手が届くような報告をしてくれた。こちらが求めている情報を先回りして報告してくれるのはありがたい。赤城達空母組も訓練ができるはずだ。
「では赤城たち空母組は艦載機のパイロットたちの訓練を行ってくれ。パイロットの育成は時間がかかると聞いた。日ごろから訓練をつんでいざというときに戦えるようにしとおいてくれ。訓練で消費する燃料等についてはしっかり報告してくれればいくらでも使って構わん。」
「了解しました。近海であれば哨戒任務もかねることができます。飛行訓練ついでに行えますのでそちらの訓練もおこなってよいでしょうか?」
「了解だ。そちらについても許可する。ただしメインはあくまで発着訓練であることを忘れずにな。」
「ありがとうございます。新兵に空の感覚を叩き込み、いち早く使い物になるようにさせてみせます。」
あまり過剰な訓練はしないようにな。と声をかけると勿論です。と返事を返すとともに赤城が部屋から去っていく。工廠に向かい艦載機の確認をしにいくのだろう。哨戒については軽巡洋艦に偵察機を使ってもらうようにするので赤城の艦載機もあわせれば敵の早期発見につながるはずだ。長門も駆逐艦達に装備の件を伝えてくると部屋を後にする。残された大淀に覚えていただくことはいっぱいありますよと眼鏡をくいっとさせて目の前に書類や分厚い本をどさっと出される。漫画みたいな行動しやがって。だが彼女達も頑張っているのだ。私も頑張るとするか。先生に質問をしながら一つ一つの書類を整理していく。今日の朝飯を抜いた分さぞかし昼飯はおいしく感じるだろう。モチベーションを高めつつ作業をこなしていくのであった。
無事?2日目を迎えた真船。次話から駆逐艦たちも登場予定です。