海渡る願い   作:哨戒艦艇

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前の話で文章が重複していることに全く気が付きませんでした。お恥ずかしい限りです。ご指摘いただいた方に感謝です。


第13話

 『第二陣部隊には悪いがメインディッシュは頂いたな。よし!このまま引きあげるぞ!』

 

 

 自分たちの後に続いた翔鶴隊は獲物こそ小さいがしっかり当てたみたいだ。上々の戦果に満足した様子の赤城艦爆隊の隊長は遅れて突入している瑞鶴隊の様子を眺める。こちとらきっちり対空をひきつけてやったんだ。上手くやってもらわないと困る。工廠のやつらの話だとなんでも酒保ができるらしい。生きて帰ったらあいつらに一杯ぶどうジュースでも奢ってやろう。

 

 

対空がよわまっているとはいえ、それでも弾の雨は降り注ぐ。最後に突入する瑞鶴隊の艦攻隊も投下体勢に入った。

 

 

 『投下高度よし!進路よし!まだだっ。びびるな!もっと近づいてっ・・・!投下!!よし・・ってうわっ!!?』

 

 

 先頭を走る艦攻は魚雷の投下に成功したものの、投下後の上昇中に敵の対空砲火に右主翼を撃ち抜かれ煙を上げている。しかしこちらとてただでやられたわけではない。放った雷撃は敵重巡の横っ腹に突き刺さり大きな水しぶきをあげていた。後に続いた列機の雷撃も上手くいったようで、水柱が次々と上がっていく。

 

 

 『ルーキーにはルーキーの意地があるってもんよ!瑞鶴隊の戦果も赤城隊に負けてねぇぞ!』

 

 

 瑞鶴艦攻隊隊長の声に無線越しにうぉぉーーー!!っと歓声があがる。流石に赤城隊には及ばないが、それでも重巡2隻のうち一つを沈め、もう1隻は小破、駆逐1隻を沈めた。こちらも多少の損害を出したがそれでも初陣としては破格の戦果と言える。戦果の最終確認をし、空母部隊と水雷戦隊に打電する。これでかなりの数を減らすことができた。戻って瑞鶴に報告するのが楽しみだ。笑みを浮かべながら操縦桿を握っていた手のひらの汗はいつのまにか渇いていた。

 

 

 『瑞鶴飛行隊から打電!雷撃及び爆撃により戦艦1、重巡1、軽巡2、駆逐2の撃破に成功!及び敵重巡1を小破においこんだとのこと!!』

 

 

 無事神通と合流できた川内は先行した航空部隊からの通信を確認する。航空隊は半分も、しかも重火力のものばかりを沈めている。残りは手負いの重巡と駆逐4だけ。戦況報告を聞いた他の駆逐艦たちも味方の活躍に歓声をあげた。これならばいけると神通とうなづきあい、はるか先に見える黒煙を目標に進んでいく。

 

 

 「これより第一水雷戦隊及び、第二水雷戦隊は残った敵艦を追撃し叩く!みんな遅れずについてきて!」

 

 

 深海棲艦は旗艦を失い、慌てふためく。まさかいきなり敵機に奇襲を仕掛けられるとは思ってもいなかったのだ。あれほど痛めつけていた人間側にこれほどまとまった戦力がのこっていようとは。しかも明らかに最初に襲ってきた航空部隊は手練れだった。こちらの弾幕をかいくぐりあっという間に仲間達を沈めていったのだ。残されたのは駆逐が4隻。自分を含め計5隻だ。先ほどの雷撃により通信まわりがやられて連絡をとることができない。駆逐のやつらは人のなりをしていないので会話ができない。生きて帰り、この情報を仲間に報告しなければ。撤退命令をだし進路を反転する。タービン回りもやられているようで思うように進まない。もたついているうちに遠くからダーーーーン!と複数の音が聞こえたかと思うと自分のまわりに水柱が立っていく。この時すでに狩るもの、狩られるものの立場は切り替わっていたのだと気づいたときにはもう遅かった。

 

 

 『これより着弾観測を開始する!』

 

 

 戦闘開始を告げるラッパの音が鳴り響いた後に川内及び、神通それぞれの水偵から報告をうけると狙いを定めて一斉に砲撃を開始する。今まで散々こけにしてくれたカリを返すときが来たのだ。それぞれの戦意は非常に高く、砲を構えるその目にはいつもの怯えは誰一人なかった。

 

 

 『弾着まで・・3.・・2・・1・・川内至近弾!次弾発砲諸元、高め1!左寄せ1!時雨至近弾!次弾発砲諸元、下げ2!右寄せ1!』

 

 

 それぞれの水偵からの情報と敵味方の発砲音、そして火薬の匂いが穏やかな海の上に広がっていく。深海棲艦側も応戦するもいかんせん数の差が大きい。そして負傷した重巡の速度にあわせているため距離はみるみる詰められていく。そしてついにその時がきた。

 

 

 『敵駆逐に夕立の射撃命中!敵駆逐に夕立の射撃命中!』

 

 

 「当たったっぽい!?妖精さん次弾装填急いで!このままきめるっぽい!」

 

 

 夕立の放った主砲が敵を捕らえることに成功する。そして1隻を沈めるとまた1つ、1つと沈めていく。敵との距離はすでに開戦当初よりはるかにつまっている。

 

 

 姉さん!と神通の呼びかけにわかってると返事を返し全軍に指示を出す。今の距離、角度が絶好のチャンスだ。こういう戦いを自分は望んでいたのだ。夜戦でないのが少々不満だがそんなことは今はどうだっていい。猛る水雷魂を抑えきれない。敵を倒すのだ。敵からの反撃に被弾する者が出てくるがそれでも反撃の速度は緩まない。

 

 

 「全軍魚雷発射準備、川内隊の敵目標は敵重巡!神通隊は後続の敵駆逐艦を狙え!3.・・・2.・・・1・・・魚雷発射!!撃てぇーーーーーーー!!」

 

 

 号令を合図に足元の魚雷が一斉に投下され敵に向かって走っていく。当たるのを祈りながらすかさず発砲を再び開始し、水偵の観測をまつ。やがて伸びていったわずかにみえる魚雷の軌跡が敵にたどりつくと大きな水柱が複数上がった。

 

 

 『川内及び吹雪の魚雷の命中を確認!敵重巡撃沈です!』

 

 

 『神通、並び時雨と雪風の魚雷命中!こちらも撃沈を確認!やりました!敵艦隊殲滅です!』

 

 

 それぞれの水偵から通信がはいる。やった・・・やったのだ。数がこっちが勝るとはいえ自分達の力でやり遂げたのだ。やりましたね!姉さん!と神通が声をかけてくる。こちらの損害を出すことなく勝つことができた。これ以上の何を望むだろうか。皆と勝利の喜びを分かち合いつつ、 敵残存兵力がいないか確認しつつ水偵を納め、提督に戦果報告をする。提督と会話をしなければならないことに少しだけテンションが下がったが、今はそれ以上に喜びが大きかった。

 

 

 「提督。第一及び、第二水雷戦隊の戦闘終了を報告します。敵重巡1及び駆逐4の轟沈を確認。殲滅に成功しました。こちらの被害は軽微で終えることができました。」

 

 

 「よくやった。君たちの奮闘に感謝する。帰投後速やかに詳しい戦果報告を行ってくれ。帰投中も油断せぬようにな。1人も欠けることなく帰ってくるのだ。」

 

 

 何かが違う。やはり何かが違うのだ。ねぎらいの言葉出てくるとは思わず、周りの駆逐艦たちも驚いていた。もちろん神通もだ。装備の件といい、提督の中でなにか大きな変化があったに違いない。だが今はこの子達と勝利を分かち合い、しっかり戻ることが最優先だ。それが旗艦である私と神通の役目なのだから。初めて上げた戦果のおかげか、後ろの駆逐艦たちは長いこと騒がしかった。仮にも任務中だ。だが今回は特別に許してやろう。




ついに戦果をあげることができた水雷戦隊。翔鶴、瑞鶴のパイロット達も上々の戦果をあげることができました。
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